転生したら『死の細胞』だった件   作:ホム竜

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なかなか本編に入れないので、さっさと本編に入っていきましょう。

それではどうぞ


リザードマン

――今俺たちは、ジュラの森にある、かなり大きな水辺の近くに来ていた。

 

 

「(ここがリザードマンがいるところかな?)」

 

「そうだ」

 

 

俺とゲルドは、偵察部隊が返ってくるのを待ちながら話す。

 

そう、今はリザードマンたちが暮らす水辺にやってきている。

理由はもちろん、ゲルドに強い個体を食わせ、魔王へと進化させるため。

なんで魔王に進化させるか、俺はそこらへん詳しくないからわからないが、きっとゲルドの目標に近づくことができるのだろう。

 

なんて、俺は何の根拠もないことを、あたかもそれが本当のことであるように考えている。

 

そうこうしているうちに戻ってくる偵察部隊。

 

それから特に関係のないことがあって、明日の夜中にリザードマンを襲うことになった。

 

 

「(なんで今日にしなかったんだっけ)」

 

「ここまでノンストップで動いているからな。少しでも休める時間を取っておく方が効率がいい」

 

「(なるほどなぁ)」

 

 

今の体になって、疲れとは無縁になってしまった俺にとっては無駄な時間だ。

だが、他のオーク――特にゲルドはスキルの影響があってか、疲弊する速さが尋常ではない。

 

だから今は、それぞれが思い思いのことをしている。

まぁ、だいたいが寝ているのだが。

 

俺はというと、コハクが死んだあの建物で見つけた、自分の身長の倍はありそうな大太刀を腰に携え、抜刀の構えをとっている。

そして……

 

 

「――――ッ!!」

 

 

振り抜く。

 

目の前の数本の木は何の変化もない。

 

周りにいるオークたちは、失敗したのか?何をしたんだ?と、声を上げる。

 

俺はそいつらの声をガン無視して、大太刀を鞘にしまう。

 

カチン、と刃がすべてさやに入りきると同時に、轟音。

 

目の前に生えていた木々が切り倒されていく。

その斬り口は、まるで機械で斬ったみたいに綺麗だ。

 

唖然とするオークたち。

ゲルドだけが俺に近寄って、頭を叩いてきた。

 

わかっていると思うが、俺とゲルドでは体格にかなりの差があり、また種族的にもゲルドの方が数段上の豚頭帝(オークロード)である。

その言葉が意味するのは……

 

ドゴッ!

 

俺はものの見事に下半身が地面に埋まり、なんとも格好のつかない状態になってしまう。

 

 

「(なにすんだよ!)」

 

「ばかものが!この音でリザードマンがこちらの方に来たらどうするつもりだったんだ!」

 

「(ぐ……。そ、それは……)」

 

 

つい反射的に言葉を吐いてしまったが、明らかに悪いのは俺。

ド正論パンチ……ではないが、ぐぅのねも出ない俺は、大人しくする。

 

 

「(悪い。……つい暇だったから)」

 

「はぁ、やってしまったものは仕方がない」

 

 

ゲルドは呆れたように――実際に呆れている――溜息をつくと、オークたちに目を向け、言い放つ。

 

 

「今からここを離れる。先ほどの轟音でリザードマンがやってくるかもしれん。ここで待ち伏せて返り討ちにするのもいいが、それによって思わぬ厄介ごとを引き寄せると厄介だからな」

 

「(……まじでごめん)」

 

 

 

 

 

別の場所へと移動し終わった俺たちは、次は物音を立てないように休憩をしていた。

すると、

 

 

「おい、何をしているんだ。貴様ら」

 

 

森の奥から、身に覚えのあるペストマスクをした魔人――ゲルミュッドが歩いてきた。

 

珍しいことだ。

こいつはある程度のことを指示したら、あとは俺らに完全にお任せって感じだったはずだ。

それなのに、こんな時間、こんな時期に来るのは珍しいことだ。

 

 

「ゲルミュッド様。今は仲間たちを休めて、次の戦いの準備をさせているところです」

 

 

ゲルミュッドの存在に気付いたゲルドが近づいてきて、説明をする。

 

ゲルミュッドは黙ってゲルドの話を聞いているが、何やら様子がおかしい。

杖を握っている右手がふるふると震えている。

よく見ると力の限り握っている様子だ。

 

なんだ?と思って、ゲルミュッドの顔を見ると、ペストマスクに隠されているのにもかかわらず、怒りに顔を歪めているのがわかる。

 

 

「貴様、誰が休んでいいと言った?!!」

 

 

杖の先を地面に突き刺すゲルミュッド。

 

ゲルミュッドの怒声によって、異変に気付いた他のオークたちが様子を見に来る。

 

 

「貴様は俺様の言葉だけ聞いて動いてればいいんだ!……所詮は魔物だな。簡単な命令も満足に熟せないとは」

 

「(いちいち発言が癪に障る野郎だ……)」

 

 

俺は誰に言うでもなく、心の中で吐露する。

だが、俺の心中を知ってか知らずか、ゲルミュッドはリザードマンがいる水辺の方を指さし、

 

 

「休む暇があればリザードマンの王国を攻め落とせ!!」

 

 

そう言ってのけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は進み、現在俺たちは、リザードマンが住まう水辺を侵攻していた。

 

 

「ぐ……!オークごときが……!!」

 

「後退するな!オークどもをこれ以上進ませるな!!」

 

「蹂躙せよ……蹂躙せよ……!」

 

 

オーク一体につき、リザードマン二体から三体。

通常なら過剰戦力なのだが、今ではこれだけリザードマンが集まってもほぼ互角か、むしろ押されている。

 

次々と切り伏せられていくリザードマンたち。

 

俺も大太刀を使って数体同時に切り伏せる。

 

 

「(ここはもう大丈夫そうだな……)」

 

 

俺は焦っていた。

それは、オークが少しずつ削られているか?

 

 

自分の力がリザードマンとあまり差がないから?

 

 

俺が真に不安なのは、――ゲルドだ。

 

休んでいるときは、少し苦しそうだったが、それでもいつも通りだった。

だが、ゲルミュッドが命令をした瞬間、あいつの目が変わった。

 

生き物の目から、ただ命令をこなすだけの、機械の目だ。

 

あいつにだけはあんな目をさせちゃいけない。

正気に戻さなくては……!

 

急いであいつのもとへ行きたいのに、こいつら(リザードマン)が邪魔をして先に行かせてくれない。

 

 

「(どけぇ!!)」

 

 

乱暴に大太刀を振り下ろし、リザードマンを一刀両断する。

 

早く……早くゲルドのもとへ行かなくては……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リザードマンを一刀両断し、上と下を泣き別にし、首を切り落とし……。

ありとあらゆる攻撃を用いてリザードマンの波を退けていく。

 

そして……

 

 

「(ッ!!見えた!)」

 

 

少し先にひと際大きいオーク、ゲルドが見えた。

ゲルドは凄まじい槍裁きを繰り出している一体のリザードマンと戦っていた。

 

見ている限りでは、ゲルドが押しているみたいだ。

良かった、このままいけばあのリザードマンは始末できそう……ッ!?

 

俺は頭上に嫌な予感を感じ、上を見る。

肉眼ではなかなか見えない位置に、()()()()

 

蝙蝠のような翼を生やし、あのときゲルミュッドと一緒にいた魔人たちがつけていたものに似た仮面をつけた髪が水色の人型。

魔素はあんまり感じないが、それ以上に何か、恐ろしさを感じる。

 

 

「げ、ゲルミュッド様ぁぁぁぁ!!?」

 

 

ゲルドの方から悲鳴のようなものが聞こえたので、声がした方を見ると、先ほどのリザードマンに杖を向けるゲルミュッド、……あいついつの間に……。

 

ゲルミュッドの周りに魔素が集まりだす。

どうやらゲルミュッド自らが、あのリザードマンを始末するつもりらしい。

 

 

死者之行進演舞(デスマーチダンス)!」

 

 

大量の魔力弾が作り出され、それらがリザードマンに向かって放たれる。

 

水しぶきをあげながら衝突する魔力弾。

 

水しぶきが収まり、リザードマンのほうを見ると、件のリザードマンは倒れておらず、代わりに別のリザードマン三体が地面に伏せていた。

 

 

「(……なるほど、あの三体が盾となったか)」

 

 

俺は冷静に分析しながら、こっちに迫ってくる、謎の大きな気配のほうを見る。

 

 

「(こっちから複数の気配。それも大きいな)」

 

 

俺じゃかなわないかも、なんて考えるが、その考えは一度捨てる。

 

 

「(やるかやらないかじゃない。絶対にゲルドのもとへ向かって助けるんだ。これ以上は取り返しのつかないことに……)」

 

 

だが、時すでに遅し。

 

ゲルミュッドがもう一度魔力を練り上げ、さっきと同じ技を放つ。

今度こそは当たる、と勝ちを確信するゲルミュッド。

 

でも、だめだ。

 

 

考えるが早いか、否か……。

空中を飛んでいた謎の人型が、ものすごい速さでこちらに向かってきているのが見えた。

 

俺はそいつを止めるために走り出すが、もう遅い。

 

気が付いたらリザードマンとゲルミュッドの間にあの水色髪の人型が割って入ってきていて、ゲルミュッドの魔力弾を全て掌で受け止め……いや、吸収していた。

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