敵対組織の幹部とか、最高戦力に好かれるお話し。 作:パッチワーカー
この世界の住民の約5%が超能力と呼ばれるものを持っている。なんでかは分かっていない。
その中で、多分僕の住んでる国で1番有名で強いのは彼女だろう。
「烈火」と呼ばれる国を守る騎士団の最高戦力がいた。
鎮圧時以外では人目に現れることはほとんどないし、出たとしても仮面をつけて式典に参加するだけだ。
だが、その仮面を貫通して余りある威圧感、「烈火」の名の通りの火を連想させる真っ赤な長い髪の毛。敵対組織を鎮圧するときの、剣に纏わせ振るう火と同じ色をしている。
彼女が一度剣を振るうだけで、敵対しているものは簡単に焼け死ぬほどの威力だ。
······
「君は弱火でじっくり煮込むのが好きだよね」
「ええ、じっくりコトコト煮込むのが性に合っているんですよね──炎華さんは強火が好きそうですね」
コンロの火加減を少し調整しながら、こちらをじーっと見ているお姉さんの質問に答えた。
赤みがかった茶色の髪に、鋭い目、綺麗な顔、長身という初見では絶対に怖がる容姿をしているお姉さんだ。
──料理中もずっと見られるのはほんとうにやりづらい。けど何回も言っても辞めてくれないから諦めた。
「私はそもそも料理をしない質なのさ······だからより一層君の手料理が美味しく感じるよ」
「あ、ありがとうございます······」
「ふふっ、何度も君の料理や容姿、性格を褒めてるというのにいつも顔を赤くしてくれるね······耳まで真っ赤じゃないか。手でも繋いで落ち着くかい?」
「······からかうのはやめてください。誰だって炎華さんみたいな綺麗な方から褒められると嬉しくなるのが人ってものなんです」
「······そういう私も君から褒められるのは慣れないね······顔が熱い──ふふっ、この私が······ね」
僕をよくからかう彼女だが、全然男慣れもしておらず褒められることも慣れていないため、両者赤面してしまうときが
「······こういうやり取りはホントに何十回もやってきましたよね。飽きないんですか?」
「飽きないよ、君と話すだけで私は幸せなんだ。飽きるわけがないし、早く私と結婚して欲しいって思ってる」
声のギアが2段階ほど上がり、目つきもまるで獲物を仕留める蛇のようにギラついてしまった。
(まずい、話を変えないと······
「冗談はやめてくd」「冗談じゃないよ──そうだね、じゃあ君に合う言い方に変えよう。私の味噌汁を毎朝作ってくれないか?」
逃がさない、と言わんばかりの強い目をしながらも、柔らかな笑みを浮かべていた。
──ほんとに炎華さんは魅力的だ。
(いつもの鋭い表情から、そんな柔和にならないで······)
「か、考えておきます」
「······ほんと君は手強いね······でもどんどんと私に対する態度は軟化してるみたいで嬉しいよ──初めは
「炎華さんみたいな綺麗な人が売れてもいない、目立たない場所の喫茶店なんかに来られたので、驚きと疑問が······」
「驚き、疑問······ね──そのような類いのものだろうけど、なにか違う気がするが今は置いておこう······私がここに来たのは、単純に君の顔が窓から見えたからのさ······そのときから私は君に一目惚れをしているよ······何度も言うけど。しかも器量よし、雰囲気良し、料理の腕前も良し、女性に慣れていない──こんなにも良い人は他にいないさ」
髪が真っ赤であれば、誰が見ても「烈火」が誰なのかが分かる。
しかし、鎮圧時ですら仮面をつけているので素顔を町の誰も見たことはない。
髪が背中ほどあるため女性であるとされているが、性別さえも分かっていない。秘密でしかない存在だ。
その秘密の存在が仮面を外し、髪を茶髪にしてまでも
僕に求婚しに来てるのはなにかの夢だと思いたい。
──そんな綺麗な目で見つめられると恥ずかしいです······
そうかい♪私のコンプレックスの鋭い目を褒めてくれるのは君くらいだよ。大抵の人には怖がられるんだけどね。
······炎華さんが喜んでくれてよかったです。琥珀色の目、僕は好きですよ。
ホントに君は健気だね。抱きしめたくなるよ······抱きしめていいかい?
······それ言う前に抱きしめるんなら聞く必要あります?······今は味染み込ませてる段階だから大丈夫ですけど。
おや?その言い草だと、火を扱っているとき以外は抱きしめてもいいよって言ってるように聞こえるね。いいのかい?
危なくないから大丈夫って意味で、了承の意味の大丈夫じゃ、ヒャッ······ちょっ!へ、変なところ触らないでください!!
すまないね、手が勝手に···ね。
そういう時間が炎華さんが通信機からの呼び出しで、「遅いよ!!」と言われるまで続いた。
帰るときの炎華さんが寂しそうで、それに釣られて僕も寂しく···って絆されすぎだって···!
「遅いよ!···またアンタ、探してたの?」
いつも通り凛とした声が私を問い詰めてきた······どうやら昼休憩の時間はとっくに過ぎていたらしい······愛しの彼との時間が···
「······ただ喫茶店でくつろいでただけだよ」
「そっちね──で、その愛しの彼とは進展はないの?」
「今回も赤面と「考えておきます」って言われて躱されてしまったよ──涼音、何が悪いんだろうか······」
「目とか怖がられてはないのよね?」
「そんなことはないさ。よく綺麗だと褒められるよ」
「······なら大丈夫だと思うけど──ちなみに今回なんて言ったの?」
「──毎朝私の味噌汁を作ってください。そう言ったよ。家庭的な彼にぴったりだと思ったんだけどね」
「············まだ付き合ってもいないのよね?」
「ああ」
「······まず付き合ってくださいからでしょうに······炎華に好かれてる子が可哀想だわ······でもね炎華」
「なんだい?」
いつもふわりとしている目が真剣な眼差しになったら、お叱りか忠告だ。
今回は両者だろうね。
「名前まで伝えていてしまってるという状況はまずいと何度も言ってるわよね?しかも、相手の名前を知らないなんて信頼も信用できないわよ······だからなんとしてでも捕まえなさいよ!」
「······分かってるさ。もとより逃すつもりはない」
「──まぁ、アンタの話を聞いてる限り心配はしてないけど······」
「それならよかった」
「──話は変わるけど、アンタの宿敵は見つかったの?」
「宿敵だなんて······ただ1度競り負けただけさ······もう何も思ってないよ」
「嘘つき······って言いたいけど、ここ2ヶ月のアンタは本当につきものが取れたように晴れやかね······3ヶ月前のアンタが嘘のようね」
「············」
涼音が言う通り、私は1度負けた相手を血眼になって探した。
戦ったのは、悪徳とされていた貴族の家から金銀財宝を持って逃げている2人組を見つけたときだ。
1人は女性か男性か分からないほど華奢で、もう1人も細かったが骨格が男性だった。
私たち騎士団が裁けないタイプの悪党からお金を奪ったのは少しありがたかったが、仕事は仕事だ。
"手加減はしてあげよう" そう考え、炎を纏わせた剣を振るった。
だが、結果は私の負けだった。
男性だと思われるその人の右腕から青色の炎が出たときは少し驚いたが、火力はあからさまに私の方が強かった。勝負を決めたのは火の扱いの差だろう。下から上に私の火が押しあげられ、彼の火は私の鎧を焼き、上にズレた私の火は悪徳貴族の家をぶっ壊した。
「負けた」
そう認識するまで時間はかからなかった。
「同じ火なのに」
今まで「火」には誰にも負けないという自信を持ってきた。それが崩れ落ちる感覚があった。
「ーッ!」
タッ!
考え込んでる時にはもうその人の足音しか聞こえなかった。
「足音······覚えた······!」
自分が思ってるより、どうやら耳もよかったらしい······
それからというもの、暇さえあれば変装して町を歩きその足音を探した。
その足音を探すのに1ヶ月はかかった。
かすかではあるが、店の通りで聞こえたあの時の同じ足音を頼りにし追いかけた。
追いついたと思ったら、その人は路地裏の喫茶店に入ってしまった。
さすがに何の罪もない喫茶店を焼き尽くすのは気が引けるし、今は茶色のウィッグをして仮面さえ着けていない。その状態で炎を撒き散らすものなら、一発で私が「烈火」だとバレてしまう。
そう考え、私はその人が出てくるのを待った。
追いついたときには後ろ姿しか見えなかったが、窓の外から見てみるとやはり男だった。······私好みの綺麗で少し可愛げがある感じなのが、そのときは少し腹立たしかった。
それからずっと彼のことを見ていると、どうやら彼は客ではなくマスターであったらしい。なにやら料理の用意をしていた。
(ならいいか)
喫茶店を焼き尽くすのはなしにしても、こんな人目につかない家で憎き相手に出会えたのだ。斬り殺してもいいだろう、と思い中に入った。
中に入った瞬間、ビーフシチューだろうか?良い匂いがした。
「!────いらっしゃいませ······まだ、開店時間ではありませんよ?」
私の顔を見たとき、彼はかなり恐怖混じりの驚きの表情をしていた。敵として向き合ったことが分かっているのか、はたまた私の目が鋭すぎるのか······まぁ、どちらでもいいと思った。
──驚いてる顔も可愛い······なんてことも、この時から思ってしまっていた。
(······変な気分になる前に、こいつの右腕をさっさと斬ろう······)
「そうなのかい。そんなのは······どう、でもい······い······」
「?」
そう思い、競り負けてしまった右腕をまず斬ろうと視線を向けた。
そのときに目に入った。
彼が小さく弱い火を大切に、そして恐怖感を持って扱っていたところを。
自分の右腕から出る炎の方が、この前に喰らわした私の炎の方が何十、何百倍強いのにだ。
それを見てもなお、彼は火を怖がって丁重に扱っていた。
(それなのに、コイツはなんだ!?────なんて繊細で丁寧に火をあやつるのだろうか────)
そう思った瞬間初めて負けた憎い相手だとか、コイツは悪だとか、全部どうでもよくなった。
顔が好みだった、雰囲気がよかった、料理をつくるのがうまそうだった。
それらのことも霞み見えなくなるほど、私の心はそんな風に火を扱う君に夢中になった。
「??······あの、大丈夫、ですか?」
「──ああ、大丈夫だよ······開店前だったのかい······それは悪いことをしたよ」
「い、いえ······僕1人でやっているので大丈夫ですよ······それよりなにか······僕にご用、ですか?」
そのときの彼の姿をよく覚えている。
「裁かれたい、けど僕1人の責任にしたい」まるでそう思っているように見えた。
(なんて健気で可愛いんだろう······共犯者に少し、いやかなり妬けるな)
「ああ、君に用というか、言いたいことがあるんだ」
「ッ!!······な······なんです、か?」
(そう怯えないでくれ。好きな子に怖がられたくはないんだ)
私は1つ大きな息を吐いて吸い、気持ちを整えた。
······見せ場だったからね。
「私は君に一目惚れをした。私と付き合って欲しい。もちろん結婚前提で」
「────────────────────────────────え?は?えっ?えっ?」
状況を飲み込むのに時間がかかって、どんどんと顔が赤くなっていく顔を見ているのはホントに楽しかった。
まあ、今もずっと見てるんだけどね。
誤字報告など待ってます。
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