チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり   作:julas

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17、決闘 その1

「まさかこんな熱いエール送ってもらえるとはね」

 

 観客席から送られたアンジェと、そしてオリヴィア、クラリスと彼女の取り巻き達からの声援を受け柄にもなくリオンは感激していた。

 王子達の元からの人気と実力、賭けの比率などから完全アウェイを覚悟してたリオンにとってその声援は素直に嬉しかった。

 完全アウェイからの予想を全て覆しての勝利も良いが、やはり応援は気持ち良いもの。

 

「元から負けるつもりはないが、こりゃ増々気合入るってものだな」

 

 

 リオンは自分の専用鎧アロガンツに向かい歩を進める。

 人間の数倍の体高、見上げる程の黒鉄の巨人。その巨体の胸部にあるコックピットの位置は高すぎてそのままでは乗り込めない。

 だがアロガンツは主たるリオンが目の前に来ると腰を落とし片膝を着く。胸部コックピットハッチを開けると地面とその間に手を差し入れ乗降に適した形に。

 リオンは巨大な鉄の掌に足をかけ、そのままコックピットに乗り込み着座するがハッチは未だ閉めない。決闘が始まれば否応なく閉めなければならないから今暫くはそのままに。

 対戦相手もまた未だハッチを解放したまま。

 

 

「一番手はブラッドか」

 

 相手の顔を確認しリオンが呟く。

 美形揃いの五人の中で特に甘いマスクで女性からの人気の高い優男。

 爽やかな笑みを浮かべ白い歯を見せると観客席から女性たちの黄色い声援が上がる。

 あからさまな女性からのモテっぷりにリオンが少々不機嫌そうな表情を浮かべると、それに気づいたブラッドが得意気に口角を上げる。

 黄色い声援とリオンの不機嫌顔に気を良くしたのか、ブラッドは観客席に向かい投げキッスを送る仕草を取る。その方向はアンジェ達が座ってる方向。

 リオンは自分の恋人に向かいあからさまな色目を使う行為に増々不機嫌さを顔に滲ませる。だが直後アンジェの声が上がる。

 

「気色悪い真似するなこのナルシスト紫! リオン! こんな青びょうたんさっさと片付けてしまえ! いや、紫だからナスビ野郎か? リオン! そんなナスビ刻んで酢漬けにして漬物にしてしまえ!」

 

 アンジェの声にリオンは最初呆気にとられ、直後吹き出す。

 

「ハハハッ! ナスビで漬物か、そりゃいい! 流石アンジェだ上手いこと言う!」

 

 リオンは先ほどまでの不機嫌さなど忘れて楽しそうに声を立てて笑った。

 反対にブラッドは最初アンジェの声にショックを受けていたが、その後今度はリオンの楽しそうに笑う様に怒りを滾らせる。

 当初ファンサービスでもするかのように笑顔を振り向いてた様子は見る影もなく、その不機嫌顔は試合開始の為ハッチを閉めるまでそのままだった。

 ブラッドに続きリオンもハッチを閉める。完全密閉のコックピットだがモニターや計器類の光で思いのほか明るく、また大柄な機体だけあり内部もそれに合った広さでそれほど閉塞感はない。

 

 

「じゃ、先ずは初戦、目の前のナスビ野郎を軽く蹴散らしてやるか。ルクシオン、コンテナの一番からブレードを出せ」

 

 リオンの相棒であるルクシオンは当然アロガンツの操縦サポートも担っている。リオンの指示に従い一番コンテナから武器が射出されアロガンツの手に。

 だがその手に握られた武器は剣状の武器のブレード、ではなく両手で使う掘削用の道具――スコップであった。

 

「オイ! 何でスコップなんだよ!?」

『前回試運転の時使用された後、コンテナの一番に格納されたではありませんか』

「た、確かにそうだけどよ……でもブレードって言ったんだからブレード渡せよ!」

 

 コクピット内でルクシオンに文句をぶつけるリオン。そんな彼の耳に観客席から耳に馴染んだ明るい元気な声が届く。

 

「なるほど! 畑のナスビ相手ならスコップと言う訳か! さすがリオンだ!」

 

 リオンのアロガンツがスコップを手にしてるのがルクシオンの悪ふざけと知らぬアンジェは、その様子にむしろツボにはまったようである。

 

『アンジェリカに随分と受けてますね。で、あらためてお聞きしますが武器交換されますか?』

「……アンジェも気に入ったみたいだし……もういいわコレで。まぁ見てくれは兎も角、鋼よりも頑強な合金で作られてるしな」

 

 アロガンツの体格に見合った巨大なスコップ。先が尖った所謂剣スコ。以前の試運転で地面の掘削で使ってみたのだが固い土も岩もお構いなしにサクサク掘れたその切れ味は戦闘でも十分耐えうる代物であった。

 スコップで戦う事を受け入れたリオンであったが、対戦相手のブラッドは馬鹿にされたと思い「ふざけるな!」「おちょくってるのか!」と怒りの声を投げかけてきてる。

 そんな中審判による決闘の宣誓が行われる。

 

 そうして始まる第一試合。「初め!」の掛け声が下されるや否やブラッドが手にした騎兵槍を構え突撃を仕掛けてきた。

 狙いはアロガンツの胸部中央。完全にコックピット狙いの殺る気満々である。

 だがリオン駆るアロガンツは軽やかにひらりと半身で躱し、更に蹴たぐるとブラッド機は派手に転倒した。

 倒れ突っ伏し無様な姿を晒すブラッド機。だが直接的なダメージも無いのですぐさま起き上がろうとするが、その脚をアロガンツに掴まれる。

 次の瞬間ブラッドが感じたのは上下逆転した世界。一体何が起きたのか混乱するブラッド。そして気付く。自身の鎧がアロガンツにより片手一本で掴まれ宙づりにされてるのを。

 

「な、何だと!? 馬鹿な!? 有り得ない! 片手で鎧を持ち上げるパワーをもった鎧など聞いたことが――ってうわわあぁっ!?」

 

 ブラッドが驚き戸惑いながらも藻掻きその手から逃れようとしてる間に、アロガンツにはブラッド機を掴んだ手を振りかぶった。

 そして放り投げられたブラッド機は闘技場の壁に激突する。

 規格外のパワーに闘技場の観客が静まり返る。

 

 

 

 

「圧倒的じゃないか! 流石私のリオンだ!」

 

 観客が静まり返る中アンジェだけが無邪気にはしゃぎ手を叩き歓喜の声を上げる。そしてその腕をクラリスの肩に回し続ける。

 

「クラリスの姉御も見たろ!? だから言っただろ! リオンは無敵だと!」

 

 喜色満面で語り掛けるアンジェだったがクラリスが呆然としたように声を漏らす。

 

「有り得ない……」

「姉御?」

「何なのよあのパワー!? いやそりゃ男爵には勝って欲しいわよ!? だからって何なのアレ!?」

「……落ち着きになってアトリー嬢。戸惑われる気持ちは私も分かります。分かりますが……」

 

 クラリスだけでなくオリヴィアもまた目の前の光景が信じられないとばかりに驚きを露にしている。

 

「いや、あの、二人とも何をそんなに驚いているんだ?」

 

 二人が驚き戸惑ってる理由が分からないとばかりにアンジェが首を傾げるとクラリスがため息を一つつき口を開く。

 

「えっとね、最初男爵の鎧を見た時私たちはその重厚なフォルムからスピードは期待できないけどパワーには秀でてるのかもって思ったのよ」

「かも、も何も実際すごいパワーだったろ?」

「最後まで聞きなさい」

「あ、ハイ」

 

 口を挟んだアンジェはクラリスに窘められ素直に頷き黙る。

 

「それで実際試合開始とともに仕掛けたブラッド機の刺突。あれをひらりと躱したその軽やかな動きには予想を覆されたわ。それで思ったのよ。重厚で鈍重な見かけは相手を欺くための偽りの姿で、その実態はスピードタイプなのかも、って。そしたら今度は腕一本で釣り上げて投げ飛ばすとか……スピードもパワーも規格外とかどうなってるのよ!?」

 

 既存の鎧の常識を覆すどころではないアロガンツの見せた力に戸惑いを通り越して混乱してた。

 

「考えられるとしたらロストアイテムでしょうね。男爵は入学前にダンジョン踏破しロストアイテムを入手されてたようですが、その中にあの鎧もあったのでしょう。しかしロストアイテムだからと言って現行機より強力とは限らない、というのが通説でしたが、まさかこれ程のものが眠っていたとは……」

 

 オリヴィアはクラリスの言葉を補足する様に言葉を紡いだ。平静さを装ってはいるがその表情は驚きを隠しきれていない。

 

 

「でも良かったではありませんかお嬢様。これで勝ち筋にほぼ確実性が見え、いざという手段も取らずに済みそうですし」

 

 後ろから見てた取り巻きの声にクラリスは慌てて其方を向き唇の前に指を立てる。

 そして先ほど言葉を発した取り巻きはしまったとばかりに口に手を当てる。

 そんな様子にアンジェが首を傾げるとクラリスは観念したように取り巻きに視線を送ると取り巻きが口を開く。

 

「実はアンジェリカ嬢。お嬢様は万が一バルトファルト男爵が敗北された場合、アンジェリカ嬢と男爵お二人逃亡可能なように手配されてたのだ。それこそ最悪国外逃亡も視野に入れて」

 

 その言葉にアンジェは驚き目を見張りクラリスに視線を向ける。

 クラリスは何処か気まずそうに視線を逸らしてたがアンジェに向き直り口を開く。

 

「その、余計なお世話かもって思ったんだけど……。あとゴメンね。男爵のこと信じてないみたいなマネして……」

「そんな事ない! そこまで心配してくれて気遣ってくれて……本当にありがとう! やっぱりクラリスの姉御は頼りになる最高の姉貴分だ! 大丈夫! リオンは勝つ! 勝って姉御の無念を晴らしてくれる!」

 

 アンジェはクラリスの手を握り感謝の言葉を紡ぐ。そんなアンジェをクラリスもまた笑顔で応え抱きしめるのだった。

 

 

 

「クラリス先輩には世話になりっぱなしでマジで感謝の言葉もねぇな。本当良い姉貴分持ったよアンジェは」

 

 リオンはルクシオンが収音マイクで拾ってくれた観客席の音声を聞き、クラリスに感謝の気持ちを込めながら満足気な笑みを浮かべる。

 そうして感慨に耽りつつも壁際に叩きつけられたブラッド機への注意を怠らない。

 壁に手をつきながらヨロヨロと立ち上がるブラッド機。

 

「お~。ちゃんと立ち上がってこれたな。あの程度でダウンされちゃこっちも物足んねぇし、お客さんも納得しないだろうからな」

 

 リオンの言葉を証明する様に観客席からは立ち上がるブラッドを応援する声が巻き起こる。

 だがその声の中には、全財産賭けてるんだから負けるんじゃねーぞ、と言った何とも世知辛いものが多い。

 何とか立ち上がったブラッド機に向かいアロガンツは手の平を上に突き出し、そして親指以外の四指を上下に動かしてみせ、かかって来いと挑発の仕草を行ってみせる。

 その挑発にあっさり乗せられブラッド機が騎兵槍を構え突撃をかけてきた。

 リオンはその突撃をスコップの匙の部分で受け止めあっさり弾く。渾身の突きを弾かれ大きくバランスを崩すブラッド機。

 そのブラッド機に向かいアロガンツは片手でスコップを大きく振り上げるとブラッド機は慌てて騎兵槍を両手で頭上に水平に構える。そして振り下ろされるスコップの打ち下ろし。

 金属と金属のぶつかり合う重々しい衝突音が響き渡る。

 

「バ、バカな!? 何だこの重い一撃!? こっちは両手で受け止めたってのに向こうは片手だと!?」

 

 しかも両手で受け止めて尚その威力に押され片膝まで着いてしまう。

 そうしてアロガンツの抑え込みに堪えてたブラッド機だったが、上から抑え込むアロガンツの圧が消える。直後代わりに正面から飛んできたアロガンツの蹴りを受け派手に後ろに転がる。

 

 

「オイ、やる気あんのか? その背中に背負ってるのは飾りか?」

 

 言ってアロガンツはスコップを肩に担ぎ、やれやれと言わんばかりに担いだスコップの柄で肩を叩いて見せる。

 リオンの言葉にブラッドは苛立ちを覚えつつも平静を取り繕おうと呼吸を整える。

 

「良いだろう。そこまで言うのなら見せてあげようじゃないか僕の本気! そして後悔しろ! 僕を本気にさせたことを!」

「御託は良いからさっさとかかってこい」

 

 リオンの言葉にブラッドは歯噛みし、叫ぶ。

 

「スピアよ! 僕の忠実なしもべたちよ!」

 

 ブラッドの言葉に彼の鎧が仄かに紫色の輝きを放つと背負った取っ手の無い騎兵槍の様な兵装が宙に浮く。その数四つ。

 

「行け! そして見せてやれ! 蝶のように舞い蜂の様に刺すその力を! そして目の前の敵をズタズタにしてしまえ!」

 

 ブラッドが号令をかけ手を突き出すと取っ手の無い騎兵槍――スピアがアロガンツに向かい襲い掛かる。

 魔力操作により宙を舞い敵を倒す槍状の武器、通称スピア。武器を持っての白兵戦より魔法を得意とするブラッドの奥の手。

 ブラッドは他の四人に比べ剣や槍など武器の扱いに劣っていることに劣等感を持っており、だからこそこの試合で槍を用いて勝ってコンプレックスを払拭したかった。

 だが払拭するどころかこのままでは敗北すると悟り覚悟を決めスピア使うことを決心したのだった。

 ブラッドの魔力により意志ある生物の様に飛び回るスピアがアロガンツに迫る。

 

 

「ハチの巣になれぇぇっっ!」

 

 鋭い穂先がアロガンツに狙いを定め襲い掛かる。固い金属音が会場中に響き渡る。

 だがブラッドのスピアはアロガンツの頑強な装甲に阻まれ一本も刺さっていない。

 

「バ、バカな!? 僕のスピアが刺さらないだと!?」

「ん? 蚊でも刺したか?」

 

 驚きの声を上げるブラッドにリオンはまるで効いてないとばかりに暢気な声を上げる。

 

「え、ええい! ならば何度でも突き刺すのみ!」

 

 ブラッドは再びスピアを操りアロガンツへの攻撃を繰り出す。間断なく繰り返されるスピアの刺突による連続攻撃。

 だがどれほど繰り出しても全くダメージの通らないアロガンツの装甲にブラッドの冷や汗が止まらない。

 

 

「ハァ……もう十分気が済んだか? これ以上やってもそっちに勝ち目無いの解るだろ? 解ったら降伏してくんない?」

「こ、断る!」

 

 ブラッドのスピアによる攻撃にまるで堪えた様子の無いリオンの声にブラッドはきっぱり拒絶の言葉を表す。

 

「たしかに僕の攻撃はお前に効いてないかもしれない! だがお前の方も僕のスピアの連続攻撃に僕の鎧そのものへ攻撃できない状態だろ!?」

 

 ブラッドは虚勢を張り現状互角の膠着状態とでも言いたいようだった。

 

「ぶっ飛ばされなきゃわからないってか? だったら……」

 

 リオンの言葉にアロガンツが手にしたスコップを振り抜いた。直後固い金属同士のひと際大きい衝突音が響き、スピアの一本が地面に転がる。

 その後も虫でも叩き落すかのようにスコップを振るうと次々と叩き落され最後の一本はアロガンツの腕に捕まる。

 アロガンツはスコップを地面に突き刺すと掴まえた最後のスピアを両手で掴みあっさりとへし折って見せた。

 

「で、どうする? 頼みのスピアは全滅したぞ。降伏するか? それとも……」

 

 言って地面に突き刺したスコップを引き抜きブラッドの方に改めて視線を向ける。

 

 

「う、うわああぁぁぁっっっ!」

 

 頼みのスピアが全滅したブラッドはヤケクソとばかりに騎兵槍を構え突撃してきた。そして激突。

 

「「バルトファルト男爵!?」」

 

 クラリスとオリヴィアが同時に悲鳴を上げる。

 彼女たちの目に映ったもの、それはブラッド機の騎兵槍の先端がアロガンツの胸部に深々と刺さった様に見える姿。

 だがアンジェは二人の様に動じることなく力強く声を上げる。

 

「大丈夫だ! 姉御もリビアもよく見てみろ!」

 

 アンジェの言葉を証明するかのようにアロガンツのスコップを持ったのとは逆の手がブラッド機の眼前に。その手にはあるものが握られていた。

 

「コレなーんだ?」

 

 アロガンツから聞こえるリオンの声にブラッドが眼を剥く。

 

「まさか!?」

 

 ブラッドが騎兵槍を引くとそこに穂先は無くアロガンツは無傷。そしてアロガンツの手に握られてたのは騎兵槍の穂先。

 

 

「無事で良かった~。ってアンジェには見えてたの!?」

 

 リオンの無事にクラリスは安堵の声を上げ、直後アンジェを見る。

 アンジェは力強く頷き答える。

 

「ああ。ナスビ野郎の騎兵槍がリオンの鎧に届く前、高速で振りぬかれたスコップが穂先を切り落としたのがな!」

 

 その後は言わずとも分かる。穂先を失った騎兵槍など当たっても何のダメージにもならない。

 もっとも傍から見れば騎兵槍が深々と突き刺さってる様にも見え二人が悲鳴を上げたのも無理のない事。

 そして自分たちに見極めれなかったアロガンツの剣閃もといスコップ捌きを見極めたアンジェにオリヴィアは感嘆の声を上げる。

 

「バルトファルト男爵も凄いですが、アンジェの動体視力も大したものですね。先日ダンジョンで拝見した戦い振りも見事でしたし」

「こう見えて目にも自信はあるんだ。子供の頃から体を動かすのは得意だったし殴り合いもしょっちゅうだったから。ま、それで鍛えられたようなものだな」

「そっか~。あの時のダンジョン探索、オリヴィア様と一緒だったんだ。いいな~オリヴィア様、アンジェの活躍振り間近で見られたんだ~」

 

 クラリスはダンジョン探索の装備品買い揃えの為の買い物に付き合ってあげた日の事を思い出しながら呟いた。

 

「あの日は装備品買い出しに付き合ってくれてありがとうな姉御。そのお陰もあって後日のダンジョン探索も無事乗り越えられたようなものだったしな。そうだ折角だから姉御さえよければ今度一緒にダンジョンに潜らないか?」

「いいの!? 行く行く!」

 

 アンジェの提案にクラリスは嬉しそうに頷く。

 

「じゃぁ決まりだな。詳しい日時はこの戦いが終わってからで。あとは、勿論リオンも一緒で。それと取り巻きの兄さんたちも来るだろ?」

 

 アンジェが言いながら後ろを振り向くと「兄さん?」と取り巻きが自身の顔を指さしながら問い返す。

 

「あ、スマン。馴れ馴れしかったか?」

「イヤ! 全然そんな事ない! これから先困ったことでもあれば自分たちの事は兄貴と思って遠慮なく頼ってくれ!」

「うむ! お嬢様の妹分なら俺たちにとっても妹みたいなものだからな! 困ったことがあれば何でも言うんだぞ!」

「差し当たってダンジョン探索には勿論同行しよう。何時如何なる時もお嬢様をお守りするのが俺たちの義務だからな!」

「そしてその妹分であるアンジェリカ嬢もしっかり守ってみせるから任せてくれ!」

 

 答える取り巻き達の顔は心なしか嬉しそう。

 そんなアンジェと取り巻きの様子をクラリスは微笑ましげに見詰めるのであった。

 

「それより。もうそろそろ決着が付きそうですよ」

 

 闘技場を見詰めていたオリヴィアが声を上げると一同の視線が闘技場に戻る。

 

 

「まさに矢尽き刀折れ、って奴だな」

 

 スピアも全て落とされ叩き折られ、騎兵槍も穂先を落とされたブラッド機に向かいリオンが呟く。

 

「終わりだな。引導渡してやるよ」

 

 そしてブラッド機の穂先の落とされた騎兵槍を掴むと機体ごと持ち上げ、くるりと半回転させるとブラッド機の頭が下を向き、そのまま地面に叩きつけた。

 激突音と巻き起こる土埃。土埃が収まるとそこには大の字に伸びたブラッド機の姿。

 

「審判!」

 

 リオンが声を上げると鎧に乗った審判が駆けつけてくる。

 鎧同士が戦う闘技場。審判とは言え生身の人間が共に立つのは危険すぎるので審判も鎧に乗って両選手の戦いを見守る任に当たっていたのである。

 審判の鎧が屈みブラッド機とパイロットの状態を確認する。

 

「パイロット気絶により戦闘続行不可能とみなす。よって、勝者、リオン・フォウ・バルトファルト!」

 

 審判が宣言すると観客席の一角、アンジェ達から歓声が上がる。

 

「やったぞ! 流石だリオン! 見事な勝利だ! 先ずは一勝ー!」

 

 アンジェが嬉しそうに高らかに声を上げると一緒にいるオリヴィア、クラリスと彼女の取り巻き達も歓声を上げる。

 そんな彼女たちに向かいリオンはアロガンツの手を振り応えてあげるのだった。

 




以上、先鋒ブラッド戦をお送りしました。
決闘そのものより観客席の方が書いてて楽しかったかもです。

次回、その2に続きます

※ブラッドのセリフを一部改めました。ご指摘ありがとうございました。
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