チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり   作:julas

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19、決闘 その3

「どうしたお前ら! 三人がかりで掛かってきてそんなもんかぁ!?」

 

 グレッグ、クリス、ジルクによる攻撃の第一波を難なく凌いで見せたリオンのアロガンツはスコップを掲げ煽ってみせる。

 

「う、うるせぇ! こんなのはまだ序の口だ! 直ぐにその減らず口――」

「グレッグ!」

 

 相変わらず挑発に乗せられやすいグレッグを制する様にジルクが強い語調で言い放った。

 

「これで分かったでしょう! あれがとんでもない怪物だと言う事を! 言うことも聞かずに一人先走った結果がそれです!」

「グッ……! 面目ねぇ……」

 

 ジルクの叱責にグレッグは柄を両断された槍を見詰めながら悔しげにつぶやく。

 

「しかもまたそんな量産品の数打ちの槍を使って……まぁいいです代わりにこれを使いなさい」

 

 言いながらジルク機は腰にマウントしてた槍を引き抜く。携帯の為縮めておいた柄を元の長さに戻すとそれをグレッグ機に投げて渡す。

 グレッグは「すまねぇ……」と言ってその槍を受け取る。

 

「クリスも! 何故グレッグと二人掛かりで掛からなかったのです! 剣士としての誇りですか!? 三対一の戦いを了承した時点で今更なんですよ! 覚悟を決めなさい!」

 

 クリスからの返事はない。返す言葉も無いのだろう。

 

「驕りは捨てなさい。私は後方から射撃で援護しますから貴方達は連携を意識して二体がかりで攻めなさい。目の前の相手をただの鎧と思わないことです。それこそ我が王国にとっての悪夢、公国の黒騎士に匹敵する強敵と思って臨みなさい」

 

 

 そうこう話してる内にアロガンツが一歩踏み出してきた。

 

「作戦会議は終わりか? だったら続き始めようぜ」

 

 アロガンツから聞こえてくるリオンの声。

 その声にジルクは戦慄を覚えながらも口を開く。

 

「お二人とも。くれぐれも私の言葉を肝に銘じておいてください。行きますよ!」

 

 そしてライフルを構えアロガンツに向かって撃つ。その銃撃を合図とばかりにグレッグ機とクリス機が飛び出す。

 そして放たれる鎧二機による連携を生かした攻撃。

 

「ふん、やっと本気になりやがったか。ま、最も最初から本気だったとしてもまとめて叩き潰すことに変わりねぇけどな」

 

 リオンはグレッグ機とクリス機の同時攻撃、更にはその隙を埋めるように撃って来るジルク機の射撃を難なくいなす。

 いや、実際には何発かはスコップの防御を潜り抜けアロガンツのボディにヒットしてる。

 だがそれはアロガンツの分厚い装甲を傷つけるには至らない。

 そして全力の攻撃が全く通じないグレッグとクリスは攻め続けながら冷たい汗が止まらない。

 一見膠着状態に見えるが、必死に攻めあぐねてるグレッグとクリスに対し、リオンの表情には余裕が見て取れる。

 そんなリオンに向かいルクシオンが声を上げる。

 

『マスター。グレッグ機の槍の穂先から異常な高エネルギー反応が感じられます。このままだと十秒と経たず爆発します』

「なんだと!? 爆発って予想される威力はどれほどのものだ!?」

『アロガンツの装甲を傷つけるには至らないでしょう。ですがそれを振るうグレッグ機が被るダメージは甚大なものになるかと』

「な!? 共倒れ狙いの自爆特攻だと!? いや、まさか……」

 

 言いながら思い出されるのは先ほどジルク機がグレッグ機に槍を渡してた様子。

 

「ジルクの野郎そうする為にあの槍を渡しただと!?」

『成程、敵を欺くにはまず味方から、ですか』

「それでも限度ってもんがあんだろ!? クソがっ!」

 

 言ってリオンがスコップを地面に突き刺し土を巻き上げる。

 突然巻き上がった土砂にクリス機とグレッグ機が一瞬硬直する。

 その隙を逃さず一閃するとグレッグ機の両手首が断ち切られる。

 

「間に合えッッ!」

 

 そして両手首ごとグレッグ機の槍をスコップの匙の部分をラケットの様に用いて打ち上げる。

 上空に打ち上げられたグレッグ機の槍が爆発する。

 間一髪のタイミングであった。

 

「隙ありッッ!」

 

 槍を打ち上げアロガンツの腕が上方に上がった瞬間を狙い定め、ジルク機から放たれたライフル弾がアロガンツのコックピットのある胸部を襲う。

 

「槍に仕掛けた爆弾に気付くとはやはり貴方は恐るべき人だ! だが鎧二機を纏めて貫く威力の特殊徹甲魔弾! 幾らその鎧が頑強でもひとたまりも――」

 

 言いかけたジルク機の眼前にはスコップの刃先が迫っていた。そしてスコップはジルク機の右肩の付け根に突き刺さり、ジルク機の右腕を斬り落とす。

 鎧の腕を落とされたジルクの目に映ったもの。それはスコップを投げ放ったアロガンツの姿。

 

「バ、バカな! あれを喰らって無傷だと!?」

 

 奥の手の特殊徹甲魔弾を喰らって平然としてるアロガンツの姿にジルクは慄く。

 そんなアロガンツに向かいグレッグ機が襲い掛かる。

 

「まだ終わっちゃいねぇぞ!」

 

 槍も両手も失ったグレッグ機が選んだ攻撃はドロップキックだった。だがその飛び蹴りもアロガンツに片手一本で受け止めらえる。

 

「先ずはお前から退場願おうか」

 

 アロガンツはその手にグレッグ機の脚を掴んだまま頭上に掲げ、もう片方の腕も上げるとグレッグ機の頭部を掴み仰け反らせると両肩に担ぐ。

 それは所謂プロレス技のオーバーヘッド・バックブリーカーの様。

 アロガンツは頭上に掲げたグレッグ機の背中の腰の部分に鉄兜の如き己の頭部を叩きつけるとグレッグ機は上半身と下半身に真っ二つに分断される。

 ショッキングな絵面ではあるが、コックピットのある上半身のブロックは無事なのでパイロットの安否は問題ない。

 

 

「審判! コイツはもう戦闘不能でいいだろ? 安全のため下げてくれるか?」

 

 アロガンツは片手で、手首も失い上半身だけになったグレッグ機の頭を掴んで掲げる。

 

「あ、ハイ。グレッグ機、戦闘継続不能とみなします」

 

 審判の乗った鎧は上半身だけになったグレッグ機を受け取り下がる。

 

 

「おのれ……化け物め……」

 

 右腕を斬り落とされたジルク機は残った左手でライフルを構えようとする。そんなジルク機に向かいアロガンツがグレッグ機の千切れた下半身を投げつけると、ジルク機はまともに喰らい仰向けに倒れる。

 

「今暫くじっとしてろ。ジルク……お前は最後だ」

 

 リオンは底冷えするような声で語り掛けるとクリス機に向き直る。

 

「来いよ。まさか無手相手には戦えないとか舐めたこと抜かすんじゃねぇだろうな?」

「ここまでお前の力を見せつけられて、そのセリフが吐ける程私は傲慢ではない」

「なら来い。見せてみろ全力の一撃」

 

 リオン操るアロガンツが額をコツコツと叩いて見せる。

 クリス機はその言葉に応えるように剣を大上段に構える。

 

「参る……!」

 

 そして一気に駆け出す。間合いに入るや否や繰り出される電光石火の一撃。

 クリスの一撃が放たれた後そこにあった二体の鎧の姿。それは渾身の一撃を放ったクリス機と、その剣を合掌の形で両の掌で挟み捕えていたアロガンツの姿。

 

「真剣白刃取り。一度は使ってみたい技だよね」

 

 リオンはマイクを通さずひとり呟く。

 アロガンツはクリス機の剣を両掌で掴んだまま捻り奪い、更に足を蹴たぐるとクリス機が地面に倒れる。

 仰向けになったクリス機の頭に向けてリオンは奪った剣を逆手に持ち替え突き刺した。

 一拍置いて鎧からクリスの声が発せられる。

 

「見事だ……。私の完敗だ」

 

 リオンはクリス機を一瞥するとジルク機に向き直る。

 

 

「待たせたなジルク。お前はあの二人の様に行くと思うなよ。アンジェと、その姉貴分にあんだけの事してくれたんだ。ただで済むと思うなよ……?」

 

 底冷えするようなリオンの声を耳にしながらジルクの背中を冷たい汗が伝う。

 持てる手を全て尽くしたというのにまるで歯が立たなかった。悔しさに歯噛みしつつも敵わないことを認めざるを得ない。

 

(だが……これで良かったのかもしれません。ここ迄一方的な敗北を目の当たりにすれば殿下も棄権して下さるだろう……)

 

 ジルクは戦う前にユリウスに話したことを思い出していた。若し自分たちが完敗するようなことがあれば棄権するように言ったことを。

 そんなジルクの耳にユリウスの声が届く。

 

「ジルク! お前たちは十分戦った! あとは俺に任せろ!」

「な、何を仰っているんです!? 戦う前に私が言ったことをお忘れですか!? 若し私たちが完敗しバルトファルトの鎧が無傷であったのなら棄権してくださいと申し渡しておいたではありませんか!」

「お前たちが全力で戦ったのに俺だけ戦いもせず身を引くなど出来よう筈もないだろ!」

「殿下……」

 

 ユリウスの言葉にジルクは感嘆の声を漏らす。

 

「分かりました殿下! 殿下のお覚悟に水を差すようなことをして申し訳ありませんでした」

 

 ジルク機は腰に装備した槍を引き抜く。それはグレッグが装備してたのと同型の槍。

 

「あの槍……! このクソバカ野郎が……!」

 

 それを見たリオンが唾棄するように呟いた。

 

「ならば私も最後まで足掻きせめて一矢報いてみせます」

 

 ジルク機はともに爆発して果てようとするかのように残った片手で槍を構え突撃して来た。それも槍の柄を脇に抱えるように構え短く持ち。それはグレッグ機の様に手首を断って奪われないようにという意思が見て取れる。

 

『爆発までの時間はグレッグ機の時よりさらに短そうです。あれでは突撃接触後直ぐ爆発します。こちらが受けようと躱そうと』

「なんだとッッ!?」

 

 ジルクがその槍を用いた思惑。それはおそらく自爆による共倒れ――いや若し勘付かれ躱され自機のみが爆発で果てたのならリオンが爆弾を用いたなどと濡れ衣を被せるつもりも十分考えられる。

 或いはその爆発を理由に決闘そのものを有耶無耶にしようとする可能性も。

 

「クソがァァッッ!」

 

 リオンは気を吐き今まで使用してなかった使用するまでもないと思ってたブースターを吹かす。瞬間、その急加速により一瞬でジルク機との距離が詰まる。

 

「バカなっ!? こんなスピード鎧が出せるわけが――」

 

 ジルクが驚愕の声を上げる間も無くアロガンツがその穂先を掴み引っぱり上げる。

 掴まれ伸び切った肘に向かいアロガンツはもう片方の手で手刀を放ち叩き斬る。

 そしてジルク機を蹴り飛ばす。

 蹴りを受けたジルク機が吹き飛ばされると、アロガンツの手に残ったジルク機の槍が爆発する。

 やがて爆炎が収まるとそこにあったアロガンツの姿は無傷。

 

 

「共倒れ狙っての自爆特攻とか舐めてんのか!? 大体なんださっきの茶番は! 聞いてて耳が腐るわ!」

「何ですと!? 私の殿下への忠義を――」

「黙れ陰険クソ緑! 忠義だと!? 忠義の意味を履き違えてんじゃねぇ! アンジェにも言われなかったか!? 忠義と言うのなら何故婚約破棄を諫めなかった! アンジェの大事な姉貴分と親友を虚仮にし傷付けるような真似しておいてよくもそんな口が叩けたな!」

 

 リオンは怒りの言葉を吐き出しながらアロガンツの手をジルク機に向かい伸ばし、その頭を鷲摑みにし振り上げ地面に叩きつける。

 

「大体お前らも王侯貴族の跡取りなら婚約の重大さ理解せんか! お前らのしたことは婚約者のみならずその家と、延いては自分の家をも貶め泥を塗った行為だという自覚あるのか!?」

 

 アロガンツの足が地面に倒れ伏したジルク機の脚を勢いよく踏み抜くと膝から下が千切れ飛ぶ。

 両腕と片足の無くなったジルク機の残った片足をアロガンツが掴むと振りかぶる。

 

「そもそも恋人のいる女性を決闘を理由に別れさせ奪おうとするような真似して貴族として! いや人として最低極まりないわ!」

 

 振りかぶり手にしたジルク機を地面に叩きつけると、その勢いで足が千切れ手足の無くなった鎧はワンバウンドして転がっていく。

 

「何より! アンジェを決闘の景品みたいにモノみたいに扱うような舐めた物言いしくさりよって! 人として恥ずかしいと思わんのか!? 答えんかこの陰険クソ緑! って、あぁ!? 今ので気絶したか!? オイ審判!」

 

 リオンの声に審判の乗った鎧がジルク機の元へ駆け寄る。

 

「損壊状態から戦闘継続不能と判断。またパイロットの気絶も確認。三名とも戦闘継続不能と判断しこの試合、リオン・フォウ・バルトファルト選手の勝利とします」

 

 審判の宣言を聞くまでもない程に勝敗は決していたが、だが改めて宣言されたことで王子側に賭けた生徒たちのため息と嘆きの声が漏れる。

 未だユリウス王子が残っているが、クリス、グレッグ、ジルクの三人を同時に相手取り完勝した相手に果たして勝ち目などあるのだろうかと意気消沈してる。

 そしてそんな中でも全く空気を読まずアンジェが嬉しそうに手を叩きながら声を上げる。

 

「凄いぞリオン! 三体同時に相手にして尚圧倒的勝利! やはりお前こそ私の最愛最強の騎士だ!」

 

 アンジェに続きオリヴィアやクラリスとその取り巻き達も拍手や歓声を上げると、応えるようにリオンはアロガンツの手を振り上げるのだった。




やりたい放題大暴れのアロガンツ書けて楽しかったです。

次回、その4に続きます
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