チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり   作:julas

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23、結果オーライ?

「相変わらずそのちっせぇ体の何処にそんなに入るんだか」

 

 ここは学園外の大衆食堂。

 リオンとテーブルを挟んで大量の料理を掻っ込み続けてるのはマリエ。

 その憎まれ口に一度視線を向けるも直ぐに目の前の料理に視線を戻し食べ続ける。

 こうして食事しながらの情報交換などの話し合いももう何度目か。いちいち突っ込み返すのも飽きたとでも言わんばかりに。

 グラスの水で口の中の料理を一気に胃に流し込むとリオンに向かい口を開く。

 

「アンタと王子達との決闘観たわよ」

「お、観てくれたか。ま、あんだけ周りが騒いでりゃ観に行く方が普通だよな。で、どうだった?」

「ぶっちゃけドン引きよ! そりゃチート戦艦の話聞いてたから予想できなかったわけじゃないけど誰があそこまでやるなんて想像できるわけ!?」

 

 マリエの剣幕にリオンは思わず乾いた笑いで返す。

 

「正直王子達が可哀想に思えるぐらいだったわよ。アンタみたいなチート野郎を相手にする羽目になって。それに一歩間違えれば私もあっち側に居たかもなんて思うとゾッとしたわよ」

「ん? それってどういう意味だ?」

 

 リオンはマリエの言葉に疑問の声を上げた。

 

「入学式の日、アンタに主人公への成り代わり阻止されたじゃない。でも若し邪魔されずあの五人を落としてたらアンタを敵に回すことになってたかも、ってね。ま、今となっちゃ結果オーライって感じよ」

「若し、ねぇ……」

 

 リオンはマリエの平坦な胸を見ながら思い浮かべる。攻略キャラ達の本来の婚約者であるオリヴィアやクラリス、そして彼等が婚約者そっちのけで懸想してたリオンの恋人でもあるアンジェ。

 三人ともとても見事で豊かなバストの持ち主。

 どう考えてもマリエが敵うとは思えない。

 

 

「お前のその胸で若し、とか言われても――」

「あぁん!?」

 

 リオンの言葉を遮るようにマリエの口から発せられた声。オマケに"ビキィ"と言う何か壊れるような音に目を向ければマリエの握り締めてたグラスがヒビが入っていた。

 

「胸がなんだって!? 舐めた口きくとぶっ飛ばすわよ!?」

 

 マリエの握力と剣幕に押され、リオンは己の失言に思わず平謝りする。

 リオンが失言を訂正したのでマリエも追及せずグラスから手を放す。親指の辺りが少々切れたので自身の回復魔法で治す。

 異変に気付いたのかウェイトレスが大丈夫ですかと破損したグラスを下げに来ると、マリエは大丈夫と言わんばかりに手の平を見せ頭を下げる。

 

 

「そ、そういや試合観てたんならお前も賭けたのか?」

 

 先程マリエはチート戦艦から予想と言ってたから自分に賭けて儲けてたりするのかなと思い訪ねてみた。

 

「は? 賭けてないわよ」

「え? じゃぁまさかお前も王子達に――」

「だから、どっちにも賭けてないわよ」

 

 意外にもマリエから返ってきたのは至って真面目な答えだった。主人公になり替わろうなどと言う博打染みた考えを思えば予想外に思えたのだった。

 

「何だよ俺に賭けてりゃ大穴でドカンと儲かったのに勿体ねぇ」

「やめて! 私賭け事って大ッッ嫌いなのよ!」

 

 マリエは言いながらテーブルを両拳の側面で叩く。

 その剣幕にリオンは思わず押される。マリエが見せるあまりに激しい拒否反応にリオンは面喰らい思わず尋ねる。

 

「ま、まあ賭け事なんか手を出さない方が健全でいいけど……それにしてもすげえ拒否反応だな……?」

「私の前世の彼氏や旦那がギャンブル狂いで生活費にまで手を出すわ、止めようとしたら暴力振るってくる様なロクデナシで――」

「ストップ! 俺が悪かった!」

 

 マリエの賭け事嫌いの理由が思いの外重そうだったのでリオンは止めた。

 そして思い返すのはマリエの今世での身の上話。前世も今世も重い不幸とかコイツ呪われてるんじゃねぇのかと内心ドン引いていた。

 

「え、えっと未だ食うか? それともそろそろデザートに行くか?」

「そうね。未だ入りそうだし。あ、でも折角だからケーキでガッツリってのもいいかもね」

「おう、じゃんじゃん頼め! いっそ全種類頼んでもいいぞ!」

 

 リオンはマリエの重い前世の話にいたたまれなくなってたのもあって料理だけでなくデザートも勧めたのであった。

 

 

「それにお前とこうやって飯食うのもこれで最後になるかもしれねぇからな」

「え? チョッ何それ!? 情報聞き出すだけ聞いたらお役御免ってこと!? 待って! まだまだ伝えてない――」

「そう言うんじゃねぇよ。多分俺退学になるからな」

「ハ!? 退学!? 何で!?」

「何で、ってそりゃ王子様ぶっ飛ばしてお咎め無しってわけにゃいくまい」

 

 リオンの言葉にマリエは顔を歪ませる。それはまるで我がことのように怒ってるかのように。

 

「何よそれ……。あの王子試合ではカッコイイこと言ってたくせに……!」

「いや、殿下の事は信頼してるし立ち直ってくれると期待もしてる。とは言え周囲の連中とかまでそうとは限らねぇからな」

「だからって……じゃあアンジェリカとのことはどうするの!?」

「勿論結婚する。卒業後にな。アンジェには引き続き学園に通ってもらうさ。折角知り合いも増えたんだし。それに養子縁組先決めるの先延ばししてたのも結果オーライかな。まぁお前に色々頑張って貰ったのが無駄になっちまって申し訳なくもあるが」

「そんなこと気にしなくていいわよ! 私だって報酬はたっぷり貰ってたんだし……」

 

 マリエの紹介した女子達によりリオンの友人たちの多くが婚約者、または婚約を前提とした恋人を得るに至った。

 そうなると逆に選択肢が増えすぎてどの家にアンジェの養子縁組を頼むか決められなくなってしまった。

 更に言えばクラリスの実家のアトリー家の派閥寄子や、オリヴィアのレッドグレイブ家の派閥寄子迄選択肢は広がっており卒業までに決めればいいだろうと。

 だがリオンが爵位返上した場合、わざわざ養子縁組の必要もなくなるのでその状態を指しての結果オーライとの言葉。

 

 

「ま、コレに関しちゃ俺の友人たちが大いに助かったんだ。そう言う意味でも十分感謝してる」

 

 アンジェと言う恋人を得たリオンはいち早く婚活の悩みから抜け出せてたが、アンジェに出会えなければ彼もまた婚活に悩み奔走してたろう。

 そう言う意味で友人たちの悩みは他人ごとではなく、そんな友人たちを救ってくれたことは十分感謝に値した。

 

「そ、そう? まぁ役に立てたんなら良かったけど。にしても退学ねぇ……本当に退学になるのかしら?」

「どう言う意味だ?」

「アンタの鎧のとんでもない強さを考えれば責任の取らせ方は追い出すよりも囲い込んでその力をものにした方が良いって考えてもおかしくないんじゃない?」

 

 言われてリオンは腕組して考える。

 

「考えすぎじゃね?」

「アンタが楽観的すぎるのよ。自分がどんだけとんでもないことしでかしたか分かってんの?」

『その点は私も同意見です。マスターは色々自覚が足りません』

 

 マリエの言葉にルクシオンが同意を示す。

 

「言われてやんの」

「うっせ」

 

 軽口をたたき合う二人の気の置けない距離感は何処か家族、兄弟姉妹の様にも見えた。

 

 

 

「寂しくなるわね」

「何だよしおらしいこと言って。らしくねぇぞ」

「一応、転生者仲間だからね。他にそんな人間にこの先会えるか分からないし。それにご飯やら何やらで世話になったのは確かだからね。これでも感謝してるのよ」

「そうか」

「アンタは学園去るつもりらしいけど、私はどうもそうならないような気がするのよね。さっきも言ったけど。でも、アンタがそのつもりならそう言う前提で話進めるわね。退学後も元気でね」

「おう。お前も達者でな。それとこれ餞別」

 

 言ってリオンは革袋を渡す。中には金貨や白金貨が。

 

「チョッ!? 多すぎじゃない!? こんなに貰えないわよ!」

「イイから貰っとけ。俺が居なくなった後飢えて野垂れ死にでもされちゃ寝覚めが悪いからな。あと、アンジェのこともそれとなく見守ってやってくれ。アイツも最初の頃より大分落ち着いてるが基本的に無鉄砲だからな。目を離すと割としょっちゅう傷やら怪我とかこさえかねないし」

「アンタ、あの子の恋人ってよりまるでお父さんかお兄ちゃんみたいね」

「前にルクシオンにも似たようなこと言われたわ」

 

 マリエが呆れ交じりに笑うと、リオンも苦笑交じりに返す。

 

 

「お兄ちゃんか……」

 

 マリエは自分の口から出た"お兄ちゃん"という言葉にどこか腑に落ちた思いを感じる。

 リオンのこと何処か親近感を感じてたのは何となく前世の兄に似てたからなのかな、と思う。

 

「お兄ちゃん? 勘弁してくれ妹は前世でも今世でもこりごりなんだからよ」

「別にアンタにお兄ちゃんになってくれなんて思ってないわよ。チョットね、前世のお兄ちゃん思い出しちゃっただけよ」

「仲良かったのか?」

「そうね……少なくとも私は大好きだったわ。私が困ってる時大変な時、文句言いつつも必ず助けてくれて……」

「そうか……。そんなに慕われてるなんてその兄貴さん、ちょっと羨ましいかもな。俺にも妹は前世でも今世でもいるが、どっちも兄を兄とも思わないようなロクでもねぇヤツだからよ」

 

 言いながらリオンは疲れたような溜息を吐く。

 

「そりゃご愁傷様。アンタもどうせ妹持つんなら私みたいなのなら良かったのにね」

「さっきも言ったが妹はもうこりごりなんだよ。ってか同級生の同い年で兄も妹もねぇだろ」

「それもそうね。ま、若しアンタが上級生だったら妹分になってあげてたかもね?」

「だから、いらねっつーの。妹も姉も懲り懲りなんだよ。あ、でも姉みたいな人は良い縁があったかな?」

「みたいな?」

 

 リオンの微妙な言い回しにマリエは疑問の声を上げる。

 

「クラリス先輩。アンジェの姉貴分になって色々面倒見てくれてさ。恋人の姉貴分だから、俺にとっても義理の姉みたいなもの、ってとこかな」

「あー、そう言えば観客席にチラッと見たわアンジェリカと一緒にいるところ。あの人も悪役令嬢枠よね? あれ? 主人公のオリヴィアも一緒に居なかった?」

「良く見てんな。オリヴィア様とは愛称で呼び合うくらい仲良くやってるよ」

「へ、へぇ~……」

 

 リオンの答えを聞きマリエは引きつった笑みを浮かべる。

 思い返せばアンジェは入学早々攻略キャラ五人と本意でないとは言えフラグを立て、それに加え悪役令嬢枠と本来の主人公とも親密な関係を築いてみせた。

 

 

「アンタの彼女の悪役令嬢ってコミュ力チート染みてない?」

「でもアイツ一般生徒相手にゃ全然見向きされてねぇぞ? だけど数が少ない分みんな信頼できる人ばかりで……ってそうだクラリス先輩で思い出した。アンジェの奴、ダンジョン行く約束取り付けてたなそう言えば」

 

 言いながら思い出すのは決闘中ルクシオンが収音マイクで拾ってくれてたアンジェとクラリスの会話。

 

「アンジェも実技授業の時のダンジョン大いに楽しんでたし、クラリス先輩も乗り気だったし、俺が学園去る前に夏季休暇のうちに済ませておいた方が良いかもな……ってアイツのことだからまたモンスター相手に怪我こさえそうだな……」

 

 言いながらリオンは悩ましげに額に手を当てる。

 

「本当保護者みたいね」

 

 マリエが軽口を叩くと、リオンはマリエの顔を黙って見詰め何かを考えこんでる風。

 そしてややあって口を開く

 

「お前、バイトする気はねぇか? バイトって言うか今度のダンジョン、ヒーラーとして着いて来てくれると助かるんだが」

 

 マリエはリオンの言葉に直ぐ合点が言った表情を浮かべる。

 

「成程ね。さっき言ってたもんね。アンジェリカが眼を放すとすぐ怪我こさえそうだ、って。

OK。分かったわ」

「悪いな」

「いいのよ。それにさっきの餞別、貰い過ぎなくらいだったし貰いっぱなしじゃ申し訳ないからね。貰った分くらいはしっかり働かせてもらうわ」

「頼りにしてる。じゃ詳しい日程決まったらまた連絡するな」




という訳で次回も引き続きマリエ登場

遂に、と言うかリオン以外とも接触することになりました。
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