チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり   作:julas

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25、ダンジョン再び【後】

 リオンが裂帛の気合と共にブレードを振るい切り裂くと、襲い掛かってきたモンスターの首と胴が分かれ直後黒い煙となって霧散する。

 ダンジョンを探索してくなか当然の結果として、むしろ今回に限ればそれが目的ともいえるモンスターの群れとの遭遇そして戦闘。

 今対峙してるのは野犬のような姿のブルタリティハウンドと呼ばれるモンスター。

 野犬のような姿をしてるだけあって群れで行動し襲い掛かって来、たった今リオンが切り伏せた以外にもまだ数頭いる。

 

「アンジェ! そっち行ったぞ!」

「任せろ!」

 

 アンジェも負けじと愛用のミスリル製のナックルダスター――ミスリルフィストを嵌めた拳を振るうとモンスターの鼻面にヒットしぐしゃりと潰れひしゃげ、そのまま地面に叩きつけられ、黒い煙となって消える。

 更には拳に魔力の炎を発現させ、その状態で拳を繰り出すと炎弾が発射され別のモンスターに当たり火だるまにし焼滅させる。

 

「キャー! アンジェも男爵も二人とも一撃でモンスターやっつけちゃうなんて凄い凄ーい!」

 

 リオンとアンジェの活躍ぶりにクラリスは楽しそうに歓声を上げる。

 アンジェは答えるように笑顔で返して見せると、リオンも口を開く。

 

「ありがとうございます先輩。そちらの方は大丈夫ですか!?」

「お嬢様の方は任せてくれ!」

「こっちも男爵とアンジェリカ嬢に負けてられないからな!」

 

 答えたのはクラリスの取り巻き達。彼等は、クラリスを囲い守る者とモンスターを攻撃する者とで役割分担してた。

 攻撃を任された取り巻きたちはモンスターを取り囲みうまく連携して槍を突き立て丁度仕留め黒い煙に変えたところだった。

 リオンやアンジェの様に一撃必殺ではないが安定した堅実な戦い方である。

 

「久しぶりのダンジョンだけど、生で見る戦闘の迫力はやっぱ違うわね! よーし、次は私も」

「お嬢様は無理せず下がっててください!」

 

 クラリスが自分の腰のレイピアに手を掛けようとすると、盾で彼女の護りを受け持っていた取り巻きが声を上げた。

 

「そうです! 未だモンスターは居るんですから!」

 

 そして先ほど槍を振るっていた取り巻きも声を上げた。

 リオンもまた目の前のモンスターを一刀両断し声を発する。

 

「群れで行動するモンスターですからね。最後まで気を抜かず行きましょう」

「数があるから最後まで油断は禁物だな!」

 

 アンジェもまたアッパーカットの様に拳を突き上げると、食らったモンスターがそのまま天井に叩きつけられ息絶え霧散する。

 

 

「でも、もうそろそろモンスターも終りで……ってマリエ!?」

 

 驚きの声を発したアンジェの視線の先、マリエがモンスターと組み合っていた。

 

「ギロチンチョークゥ!?」

 

 リオンもまた驚きの声を上げた。

 リオンが発した技名、別名フロントネックロックと呼ばれる相手の頭部を前方から抱え、頸動脈を圧迫する締め技。マリエはモンスター相手に組み合い首を抱えギリギリと締め上げていた。

 首を絞められジタバタ藻掻いていたモンスターはやがてビクンッと体を痙攣させると息絶え黒い煙となって消えた。

 

「モンスターはコレだから嫌なのよねぇ。折角倒しても全部煙になって消えちゃうから。これが野生の獣なら肉は食料に、皮は毛皮として売れるのに……って、あれ?」

 

 マリエが倒したモンスターが最後の一匹だったのもあり、一同の視線がマリエに集中してた。

 

「貴女も強いのね……。さっきの野生の獣狩ってたって話信じてなかったわけじゃないけど、こうして目の当たりにすると本当なんだと納得し感心させられるわ」

 

 クラリスがマリエをしげしげと眺めながら感心したように言葉を紡ぐ。

 

「いえ、その、泥臭い戦いでお目汚ししてしまいました。と、それより誰か怪我してません? 居たら治しますけど?」

「いや、今一番治療必要なの貴女でしょ?」

 

 クラリスの言う通りマリエの体にはモンスターの引っ掻き傷が見て取れた。

 

「私達の方はあまり重いダメージ負った子いないから、先ずあなた自身の傷を癒しなさい。ね?」

「ではお言葉に甘えて。そうですね回復魔法の使い手としての証明も兼ねて……」

 

 マリエが言いながら手の平に魔力を集中させると淡い光を発し、その手を自身の怪我の場所に当てるとそこにあった傷は消え去ったのであった。

 回復魔法により綺麗に傷を治して見せた様子に一同は「おぉ~~っ」と、感心の声を上げる。

 皆からの称えるような視線を向けられマリエは気恥ずかしそうに頬を掻く。

 

 

「えっと、他に回復必要な人居ますか? アンジェリカは平気? クラリス先輩もリ……バルトファルトもアンタの事一番心配してたみたいだし?」

 

 マリエの言葉に反応する様にリオンもクラリスもアンジェに視線を向ける。

 

「大丈夫だ。今の戦闘では幸い傷は負っていない! わ、私だって毎回傷こさえてるわけじゃないんだぞ!?」

 

 アンジェが言うとリオンもクラリスもやれやれと言った感じで苦笑を漏らす。

 

「じゃぁ、そちらの先輩方は……」

「では、お願いできるか? マリエ嬢」

 

 クラリスの取り巻きに傷を負った者が居たのでマリエはそちらに向かったのだった。

 

 

 

 

 

「取り巻きの兄さんの治療ご苦労さん」

 

 治療が終わった取り巻きから礼の言葉を受けているマリエに、アンジェがねぎらうように声をかけると、マリエは振り向き応える様に会釈をする。

 

「しかしマリエ。君も中々大したものだな。回復魔法は最初に聞いてたが、それに加えモンスターまでやっつけてしまうなんて」

「アンタやバルトファルトみたいにスマートじゃないけどね……」

 

 マリエが照れくさそうに答えるとアンジェが感心したように口を開く。

 

「いやいやそんな事ないぞ! 間合いと言う意味でなら拳で戦う私も似たようなものだが、完全に素手で取っ組み合ってモンスターを締め落としてしまうとはやるじゃないか! 私の地元で素手で獣を制するのを見た事もあったが、大体が力自慢の大柄な大男とかだったからな。その小さな体で見事なものだ!」

 

 言って讃える様にマリエの肩を叩く。

 

「だけど単純に私の膂力だけでって訳じゃないわよ。まぁ、基本筋力も同年代よりは上だろうけど魔力による筋力強化も行ってるからね。アンジェリカ、アンタもでしょ? 戦ってる時深紅のオーラが見えてたわよ」

 

 マリエの言葉にアンジェは「これか?」と深紅のオーラを発現させて見せる。激怒した時や戦闘の時などは激しく迸るオーラだが、今は落ち着いた状態なので薄く滲み揺らめく程度。

 

 

「確かに言われてみれば私もコイツのお陰でモンスターとも互角に張り合えてたのかもな。炎が発現する前段階程度に思ってたけどそういう効果もあったんだな」

「そういやオリヴィア様の部屋のドアハンドルぶっ壊しちまった時も出てたなソレ」

 

 リオンが言うとアンジェは気まずそうに乾いた笑いを浮かべながら視線を逸らす。

 

 

「私達と初めて出会った時も出てたわねソレ。あと、ジルクの奴をぶっ飛ばしたのもそう?」

 

 そんなアンジェに向かい問いかけたのはクラリス。

 

「ん? ああ、決闘の発端になった時のアレか? あの時はオーラに留まらず完全に炎を発現させてしまってたな。まぁそうしなければ向こうの防御魔法ブチ破れなかったろうからな」

「アイツの防御魔法貫通したんだ!? やっぱ凄いわね。アイツの防御魔法ってかなりのモノよ?」

「そうなのか?」

「王子の乳兄弟として最も側に付き従ってるからね。何かあった時護れるようにって宮廷魔導士から叩きこまれての折り紙付きだから」

「あのクソ緑の防御魔法ってそんなに大したモノだったのか? まぁ腹立つ奴ではあるが曲がりなりにも貴族なんだと少し感心させられたな……ってそういやどうなったんだ姉御とジルクとは」

 

 先日決着が付いた決闘騒ぎ。そもそもはユリウスとジルクが其々の婚約者であるオリヴィアとクラリスに突き付けた婚約破棄撤回及び復縁が目的だった。

 ユリウスとオリヴィアは結局公爵家から破談が申し渡されたが、だがユリウスは再び王太子に返り咲き再度婚約を結んでみせると誓いを立て二人の絆はむしろ以前より強まったようであった。

 オリヴィア達は上手く関係修復に至れたが、はたしてクラリス達は――

 

 

「それなんだけど実はね……」

 

 クラリスは気まずそうな顔を浮かべると両手を合わせ頭を下げる。

 

「ゴメンッ! アンジェと男爵が折角私達の復縁ために頑張ってくれたのに結局破談になっちゃった! 今回の騒動でウチの家族が、特にお父様がカンカンで……」

 

 申し訳なさそうに口ごもるクラリスの肩をアンジェが優しく抱く。

 

「気にしないでくれ姉御。それよりアイツはちゃんと姉御に謝ったのか?」

 

 クラリスが頷くとアンジェは「そうか」とホッとした表情を見せる。

 アンジェのジルクに対する不信感は強く往生際悪く逃げたり言い逃れしたりしていないかと心配してたので。

 

「実はね……殿下がジルクの首根っこ掴まえて私の前に謝罪に連れてきてくれたの」

「殿下が? そうか。という事は殿下の方は本当に立ち直るの期待しても良さそうだな。と言うか、わざわざ連れて来られたってことはアイツ……」

「そ。ぶっちゃけ逃げて有耶無耶にするつもりだったんでしょうねジルクの奴。ま、そんな訳だから私の方もアイツに対する気持ちもすっかり愛想が尽きて冷めちゃってね……。本当ゴメンね」

「いやだから気にしなくていいって。姉御の心と誇りが護れたのならそれでいいさ。リオンもそう思うだろ?」

 

 アンジェがクラリスの肩を抱いたままリオンに問いかけるとリオンも頷く。

 

「ああ。アンジェ、その通りだ。だからクラリス先輩も気にしないでください。そもそもクラリス先輩みたいにイイ女にジルクみたいなクソ緑は相応しくないですからね」

 

 リオンが微笑みを浮かべながら答えるとクラリスも安堵した様に顔を綻ばせる。だが直後呆れを含んだ複雑な表情を見せる。

 

「男爵……気遣ってくれるのは嬉しいけど、恋人がいる身で軽々しく他の女に"イイ女"とか言うものじゃないわよ?」

 

 するとアンジェが不思議そうに首を傾げる。

 

「何でだ? クラリスの姉御がイイ女なのはその通りだろ? それこそあのクソ緑なんかには勿体ない私の自慢の姉貴分さ!」

 

 アンジェが無邪気な笑みを向けるとクラリスは益々呆れた顔を見せるも直後吹き出す。

 

「な、何だ? 何か私変なこと言ったか?」

 

 アンジェが戸惑いの声を発するとクラリスがその腕を首に回し口を開く。

 

「何でもないわ。良い妹分を持って私は幸せだな~って思っただけ」

 

 頬ずりしながら満面の笑みを浮かべるクラリスにアンジェも満足げに笑みを浮かべるのだった。




と言う訳でダンジョン後編でした。

次回も夏季休暇中のお話。アンジェが育った孤児院への里帰りになります。
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