チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり   作:julas

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37、会敵

 想定外の乗員追加があったものの概ね問題なく船に乗り込み出航を果たす。

 大海原ならぬ大空に巨体を浮かべを悠々と進むパルトナーの姿は優雅な船旅のようでもあるが、これから向かうは空賊討伐。決して暢気な気分で臨むものではない。

 だが、実際戦うリオンは自身の保有するロストアイテムの力に絶対の自信を持ってるのもあってか、せめて空賊と会敵するまでは恋人のアンジェとその友人であり此度の討伐の中核人物であるカーラには寛いでもらいたいと思う。

 

「じゃっ、アンジェ。カーラさんの船内の案内頼むぞ」

「うむ、任された! そう言う訳だからカーラ、私が責任を持って案内しよう」

「ありがとう。よろしくお願いねアンジェ」

 

 アンジェは夏季休暇中帰省でもパルトナーに乗っており、中の勝手は十分知ってたので案内を任せたのだった。

 

「という訳でお前らはコッチな」

 

 言ってリオンはブラッドとグレッグに向き直ると、二人は「えっ?」と疑問を顔に出す。

 その仕草にリオンは呆れと僅かな苛立ちを滲ませながら口を開く。

 

「当たり前だろ、アンジェにもカーラさんにもお前らなんかと一緒にさせられるか。ほらさっさと来い案内してやるから。それとも二人ともアンジェへの未練断ち切ったってのは噓か?」

「そんな事ねぇって! ただ……」

「男同士で船内巡りったのも華が無いと言うか……」

「遊びじゃねえんだぞ? イイから黙ってついてこい」

 

 言いながらリオンはブラッドとグレッグに来るように促し、二人も渋々と言った感じでついて行くのだった。

 

 そしてアンジェがカーラを、リオンがブラッドとグレッグを其々艦内を案内した後、一同は遊戯室へ。

 様々な遊戯台やカウンター席が備え付けられ暇を潰すにはもってこいの場所。未だ不安と緊張で身を固くしてるカーラを気遣いアンジェが気晴らしにと連れてきたのでリオン達も倣って来ていた。

 

 

 

「そろそろじゃない?」

 

 リオンが時計を見ながら口を開くとカーラも時計を気にしながら「そうですね……」と答える。だがその表情には不安が滲み出ていた。

 

「確かにそろそろですが……」

 

 それはカーラがオフリーの令嬢から空賊にリオンを襲うように通信を送る時間とポイントにもう直ぐ差し掛かろうとしていたため。

 企みは全てカーラを通じリオンに筒抜けであったが空賊を騙し返すため手引きの通信も指示された通り送る予定であった。事前に打ち合わせた通りの事。

 

「ですがまだ公爵家の艦隊が……」

 

 この空賊討伐はリオンと公爵家との合同での討伐という計画。だが公爵家の艦隊とは未だ合流できていない。それがカーラの不安の理由。

 

「大丈夫だよ。そうだな見てもらった方が早いかな。ルクシオン」

 

 リオンが呼ぶと彼の右肩の上に浮遊していたルクシオンが光学迷彩を解きその姿を現す。

 

『お呼びですか? マスター』

 

 突如姿を現した宙を浮く鈍色の球体にカーラはその顔に驚きを露にする。

 

「警戒しなくてもいい。コイツはルクシオン。俺の相棒で使い魔みたいなものだ」

『使い魔と言う呼び方には訂正を求めます。私は魔に属するものではなく――』

「まあ細かい事は良いじゃないか。言った通りリオンの相棒でこう見えて中々気の良い奴なんだ。リオンも私も色々世話になっててな」

 

 リオンに続きアンジェもルクシオンを紹介するべく声を上げ、親近感を示す様にルクシオンの球体ボディをバシバシ叩いて見せる。

 

「アンジェからも男爵からも信頼されてるんですね……。ルクシオンさんと仰るんですね。カーラ・フォウ・ウェインです。どうぞよろしくお願いします」

『ご丁寧なあいさつ痛み入ります。マスターと私に任せていただければ何も心配する必要はありません。このパルトナーも私の制御により人員を必要とすることなく運航制御が成り立っているのです』

「男爵から伺ってましたが改めて聞くと凄いですね。こんなにも巨大な船を……」

『ご理解頂けて、話が早くて助かります。マスターと、何より私のサポートがあれば何も心配することはありません。安心してお任せください』

 

 カーラの感嘆の声にルクシオンは何処か声色も弾んでいるようで、その球体ボディを心なしか反り返りドヤ顔決めてる様に見える。

 そんなルクシオンに向かいリオンが軽くチョップを当てながら口を開く。

 

「自慢話させるために呼び出したんじゃねぇんだぞ」

『そうでした。こちらをご覧ください。偵察のために飛ばした哨戒機からの映像です』 

 

 そしてルクシオンのレンズから映像が投射される。そこに映ってるのはいかにも空賊と言った髑髏旗をはためかせた飛行船。だがその数は――

 

「二隻……? オフリーのおじょ……性悪は空賊団の保持してる船の数は十にも上るって……」

 

 自身の持つ情報との違いに困惑気味の声を上げるカーラ。

 

「どうやら空賊の連中、俺たちのこと舐めてるみてぇだな。船も一隻、鎧も一体、しかも操るのはたかが学生、全戦力投入するまでもないとでも思ってるんだろ。おめでたい連中だな。だが、公爵艦隊と合流前の肩慣らしには丁度良いかもな」

 

 言ってリオンは自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。

 

「船二隻なら積んでる鎧も多く見積もっても二十は下らんだろ。油断してるところを先制かけてやりゃ少なく見積もったって勝算は十分すぎる。カーラさん、アンタの見立てでもそうだろ? 鎧の十や二十程度なら俺一人であしらえるって踏んでくれてたもんな」

 

 リオンの言葉にアンジェもカーラの肩を抱きながら、力強く言葉を次ぐ。

 

「リオンの言う通りだ! 千の鎧にも勝ると豪語したんだ! たかが二十程度おそるるに足らずだ! だから心配するな!」

 

 リオンとアンジェの力強く自信に満ち溢れた表情と言葉にカーラも力強く頷く。

 

「分かりました。では当初の予定通り空賊に向けて通信を送りましょう。通信機は私にご用意いただいた部屋に置いてありますのでそこから送ります。バルトファルト男爵とアンジェも来てください」

 

 カーラが言いながら目配せし部屋に歩みだすと、リオンとアンジェも頷きついて行くのだった。

 

 

 

 

 

「通信終わりました」

 

 通信機のスイッチを切ってリオンの方を振り返りカーラが語りかける。

 ここはカーラにあてがわれた部屋。部屋にはカーラに加えリオンとアンジェも。

 

「ご苦労さん。コレで空賊どもはコッチの不意をついたつもりで襲ってくるわけだな。罠にハメられてるのは本当は誰なのかも知らず」

 

 通信の一部始終を聞いてたリオンは笑みを浮かべる。だがその笑み、というか含み笑いはどことなく悪役染みたもの。

 そんな笑みにアンジェは呆れを含んだ笑いを浮かべる。

 

「リオン、その笑い顔はどうかと思うぞ? コレから空賊討伐と言う貴族の誇りと矜持をかけた戦いに赴こうというのに」

「ハハッ。それもそうだな。悪い悪い。うん、気を引き締めていかないとな」

「良し。それでこそ我が最愛最強の騎士様だ」

 

 笑顔で言葉を交わすリオンとアンジェ。そんな二人を見詰めながら「騎士様……か」と呟いたカーラは静かな微笑みをたたえつつもどこか羨望の思いが垣間見えるよう。

 

 

「そうとも! かって姉御とリビアの為に殿下達相手に一歩も引かず戦ってくれた我が最愛の騎士たるリオンだ! 同様に空賊を打倒し君を救ってくれるだろう! 私の、そしてカーラ! 此度の戦いに限れば君の騎士として!」

「私の……?」

「そうだな。俺はアンジェの騎士だが、だがこの戦い討伐は空賊と、ソイツ等と繋がってるオフリーをぶっ潰す為のもので、それはカーラさんをしがらみから救うのが目的だもんな。だからカーラさん、俺はアンタにとっても騎士としての誓いを立てよう」

 

 言ってリオンは姫に傅く騎士の様に片膝を着いて見せる。

 アンジェの言葉、リオンの言葉と仕草にカーラは一瞬目を見張りそして瞼を閉じる。そして瞼を開き言葉を紡ぐ。

 

「バルトファルト男爵。アンジェが全幅の信頼を寄せる彼女の最愛の騎士たる貴方を信じます。そして私の騎士になって下さると仰ってくれて事とても嬉しく思います。騎士様。騎士バルトファルト様。私の命運を貴方に託します。どうか御武運を」

 

 そうしてアンジェとカーラに見守られ見送られ、リオンは戦いの場へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

『いつになくやる気に満ちた良い顔をされてますね』

「そりゃな。アンジェに加え、アイツの大事な友人のカーラさんの為だ。気合も入るってものよ」

 

 リオンとルクシオンが言葉を交わしてるのはアロガンツのコックピット内。

 

『アンジェリカの友人、ですか。本当にそれだけですか?』

「何だよ、他に何があるって言うんだよ?」

『いえ、何でも。それよりそろそろ仕掛ける頃合いですね』

「そうだな。船から全部鎧が出るまで待ってやる義理もねぇし先制攻撃と行かせてもらうか」

 

 現在リオン駆るアロガンツは空賊船の、索敵外の遥か上空から見下ろす形。

 上空のリオンに気付かぬ空賊船からは鎧が出始めていた。

 その空賊船と鎧に向かいアロガンツは急降下を仕掛けるのだった。

 

 

 

 

「始まったな! 頑張れリオン!」

「頑張ってください、バルトファルト男爵……!」

 

 まるで自身も共に戦うかのように両手を握り締め画面に食い入るように見つめるアンジェ。

 両手の指を絡ませ祈る様に組み、真剣な眼差しのカーラ。

 二人が居るのはパルトナーの中に設置された一際大きなホール。そこには大きなスクリーンが備えられ、そこにはアロガンツの頼もしい背中が映し出されていた。

 

 撮影し映像を送ってるのはアロガンツのコンテナに格納されていたドローン。

 リオンの勇姿を見たいと望んだアンジェ。また未だ不安の残るカーラの不安を払拭するためにはリオンの戦闘での活躍を見てもらった方が良いとの判断もあって。

 そしてリオンも自身の活躍を見てもらいたいと思いルクシオンに戦闘の様子の中継を命じたのだった。

 ちなみにブラッドとグレッグも別室でリオンの戦いを見る様に言いつけられてる。

 今リオンが相対してる空賊はおそらく先遣隊。ならば目の前の敵との戦いを終えた後も空賊本隊との戦いは残っている。

 上手く行けばこの戦いで空賊の鎧を鹵獲できるかもしれないし、そうすれば本隊との戦闘には参加する可能性もあり、その為にしっかり見ておくようにとの指示で。

 そうしてパルトナーに残ったアンジェ達に見守られるリオンが今まさに空賊に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 空賊船から出てきたばかりの鎧の群れに向け凄まじい速度で突っ込むアロガンツ。

 想定外の速度で鎧の一群の中に降り立ったアロガンツの姿に戸惑い即座に反応出来ない空賊の鎧達。

 その中の一体に体当たりをぶちかます。並の鎧とは体格も質量も出力も全てにおいて大きく凌駕するアロガンツの体当たりを喰らった鎧が吹き飛ぶ。そしてそのまま先ほど出て来たばかりの空賊船の格納庫に逆戻り。

 たった今出撃したばかりの鎧が吹き飛ばされ戻ってきたことに次の出撃を控えていた鎧や乗組員の空賊たちは面喰う。そんな格納庫にアロガンツの巨体が姿を現す。その両手にはそれぞれ空賊の鎧を掴み脇に抱え。

 

 驚き戸惑う空賊たちが建て直す前に叩き潰すと言わんばかりにアロガンツは両手に掴まえてた抱えてた鎧を未だ待機中或いはこれから起動しようとする鎧に向かって投げつける。

 ハンガーに駐機中の鎧がアロガンツが投げつけた鎧を受け倒れ崩れ落ちる。

 飛び込んできたアロガンツに空賊船の格納庫は蜂の巣をつついたような騒ぎとなり完全に統制をなくす。

 慌てて起動させるも浮足立つ鎧や、起動の間に合わない鎧達をアロガンツは次々蹂躙していく。虚を突かれた空賊の鎧達はアロガンツの敵ではなかった。

 瞬く間に制圧されていく空賊の鎧達。さらには内側から船の動力機関にもダメージを与え船をも沈黙させる。

 

 そうして制圧したリオン駆るアロガンツは倒れ伏す無人の鎧の一体の足首を掴み持ち上げると大きく振りかぶり外に向け放り投げた。

 放り投げた先には侵入しアロガンツに攻撃を仕掛けようとしていた別の空賊の鎧。

 空賊船は二隻。今ここで制圧した以外にももう一隻控えていた。

 それらの残りの鎧も掃討すべくアロガンツは制圧した空賊船から飛び立つ。

 

 船から出て大空の下に再び姿を現したアロガンツを前に、万全の態勢で空賊の鎧達が待ち構えていた。

 空賊船の二隻の内一隻は鎧と共に成す術なく下されたが、その間にもう一隻に積まれた鎧達は臨戦態勢を取っていたのだ。

 アロガンツを挟み込むように左右に展開した二体の鎧が、アンカーが先端に着いた鎖を射出する。

 

「成程な。格上の相手に戦う時の定石の一つだな。鎖を打ち込んで絡めて動きを封じるのは。だがな……!」

 

 その鎖をアロガンツは躱すこと無くそれぞれ左右の手で捕まえる。

 その行動に空賊の鎧が「馬鹿がっ!」「舐めんじゃねぇ!」と声を上げる。そして互いに引っ張る。アロガンツを引き裂こうとでもするように。

 だがアロガンツはビクともしない。

 

 

「狙いは悪くなかったな。だが、アロガンツ相手にするにはパワー不足だった……なっ!」

 

 言ってリオンはアロガンツを操り両手の鎖を一気に引き寄せると空賊の二体の鎧が正面衝突を起こす。

 そして鎖を持った二体の鎧をそのまままるでハンマーの様に振り回し他の鎧を次々と叩きのめしていく。

 皮肉にもアロガンツを捕縛しようと用いた鎖と、更にはそれを操っていた鎧までもが逆に空賊たちを蹴散らす武器と化したのだった。

 そうして鎧達を全て蹴散らし、最後には空賊船の艦橋に迫ると空賊は諦めて白旗を上げるのだった。

 

『空賊船二隻、ともに制圧完了ですマスター』

「先ずは第一ラウンド勝利、ってとこかな」




先遣隊二隻制圧完了です。

大まかな流れはカーラifと同じ様な感じですが同じにならない様意識しました。

次回は大きく変わる予定です。
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