チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり 作:julas
リオンがクリスと黒騎士の戦いの場に向かってた頃、アンジェ達は船を護るべく再びモンスター達と対峙していた。
その中には剣と盾を装備したカーラの姿も。
公国の船に人質として囚われてたカーラは心身共に相当疲弊してたが、アンジェ達の奮戦する姿に自分だけ休んでなどいられないと奮起し武器を取り共にモンスターの群れに立ち向かっていた。
そんなカーラがモンスターの攻撃を盾で凌ぎつつも剣を鞘に納めポケットに手を入れる。その手には公国投降前にルクシオンに持たされたままだった、通信機能も兼ね備えてた発信機。
「ルクシオンさん?」
『カーラ。マスターとクリスが黒騎士相手に勝利しました』
ルクシオンの報告にカーラは笑顔を輝かせる。そしてそれは隣で拳を振るっていたアンジェも。
「本当かルクシオン!? 流石リオンだ!」
ルクシオンの報にアンジェは高らかに歓喜の声を上げる。
「みんな! リオンとクリスが黒騎士に勝ったぞ!」
アンジェの声に共に戦っていた生徒たちも歓声を上げる。未だモンスター達との戦いは続いているが、リオン達の勝利に沸き立ち最後まで戦い続けようと気合が漲る。
その一方で公国王女ヘルトルーデは驚愕で目を見開く。
「嘘……。嘘よ! バンデルが敗けるわけ無いわ! 公国最強の黒騎士が王国の騎士などに!」
ヘルトルーデはその言葉が信じられないとばかりに怒鳴り声を上げアンジェ達の方を睨み付ける。
その怒声と視線に、アンジェがそっちがその気なら受けて立つぞと言わんばかりに一歩踏み出そうとするとカーラが宥め制す。そして静かな視線をヘルトルーデに向ける。
それは公国旗艦に囚われてた時も決して折れない意志の光を宿してたのと同じ眼。その眼が意味することが、彼女らの言う黒騎士の敗北が嘘偽りでない事の証左であることを分かってしまう。
ヘルトルーデは悔しさに顔を歪め俯き「嘘よ、嘘よ……。そんなの信じない……」と現実が受け入れられないとばかりに呟き続ける。
無念と怨嗟の言葉を呟き続けるヘルトルーデ。その姿を静かに見詰めていたカーラは違和感を抱く。
気付けばヘルトルーデの発してたのは怨嗟の声ではなく異様な呪文。
「ヘルトルーデ殿下!? 一体何をなさって――」
気付いた時にはヘルトルーデの呪文は完成し力ある言葉が発せられ、異様な魔力の波動が迸る。
場に緊張が走り、ヘルトルーデの顔に妖しい笑みが浮かぶ。
「何を、と問うたわね? 教えてあげるわ。モンスターを私の支配から解き放ちました。今迄本能のまま暴れていたモンスターは、ここからはより明確な敵意と殺意を持ってこの場を狙ってくるわ。この船の周囲に居るモンスターだけでなく遠くに離れたモンスターも。モンスター達を支配してたこの私を狙って!」
生徒達に恐怖と困惑の色が浮かぶ。今迄モンスターの攻撃を凌ぎ続けてきたとはいえ、この先さらに膨大な数が押し寄せてくるという言葉に慄かずにはいられなかった。
「貴方達が頼みとするあの騎士、バルトファルトと言ったかしら? 敵を殺す覚悟もない欠陥騎士と侮ってましたが、どうやら覚悟が足りてなかったのは私も同じだったようですね。ですがバンデルが敗れたというのなら私もここで潔く散りましょう。貴方達を道連れに!」
ヘルトルーデの瞳は覚悟を決めたというよりは、むしろ追い詰められた狂気染みた光を湛えていた。顔に浮かべた冷たく妖しい笑みと相俟って見るものに戦慄を与える。
嘲笑するような笑みは絶望的な顔を浮かべる生徒達だけでなく己自身にも向けたかのよう。
死の覚悟を口にしておきながらも、黒騎士バンデルの活躍に知らずに縋ってた生への執着への気付き。そんな己の覚悟の甘さを嘲笑うかのように。
彼女の言葉と、狂気染みた眼光に生徒達の間に動揺が走る。
その言葉通りと示すように船の周囲にはより多くのモンスター達が群がって来る。遠く離れた場所からも、この空域全てのモンスター達が集まってくるようで。
これほどまでの夥しい数のモンスター達に一斉に船に群がられては万事休すかと絶望的な空気が漂おうとしていた。
「狼狽えてはなりません!」
そんな空気をかき消そうとするかのように凛とした声が響き渡る。声の主はオリヴィアだった。
「王女殿下。覚悟と仰られましたね。ならば私も覚悟を決めましょう」
彼女の声に呼応する様に首元の首飾りも強い光を発する。
「なっ!? その輝き、その魔力!? まさかその首飾りはっ!?」
「公国に魔笛と言う至宝がある様に、我が王国にも古より伝わる神器があります。これはその一つ聖なる首飾り」
「聖……なる、首飾り……」
静かに言い放たれたオリヴィアの言葉であったが、そこに込められた強い意志にヘルトルーデは気圧される。
「アンジェ。手を……」
オリヴィアが手を差し出すと、アンジェは察したように頷き手を差し出し、繋ぎ指を絡ませる。
首飾りだけでなく、其々が手首に巻いた属性の加護もまた強い光を発する。
オリヴィアの放つ清らかな光とアンジェの深紅の炎が融け合い一つになり、純白の炎が発現する。
二人が互いに指を絡ませた手を天に向かって突き上げると純白の火柱が立ち上り、そして噴水のように広がり爆ぜ周囲に集ったモンスター達に降りそそぐ。
降りそそぐ白き浄化の炎が次々とモンスター達を焼滅させていく様子に、ヘルトルーデは呆然と声を上げる。
「そ、そんな……あれだけ居たモンスタ-達が……」
やがてモンスター達はそのほとんどが駆逐され、後に残るはモンスターが倒された際に滲み出す黒い煙。
夥しいモンスター達が駆逐されたことに生徒達が喜びの歓声を上げる。
だが――
「リビア!? 大丈夫かリビア!」
オリヴィアが崩れ落ち膝を着きそうになるのをアンジェは慌てて支える。見ればオリヴィアの顔面は蒼白で鼻と口元に当てた手の隙間からは血が滴っていた。
「フフ……アハハハハ! 成程我が公国の魔笛に匹敵すると豪語するだけの力があるわね、その神器とそれに選ばれた公爵令嬢には! でもその強大過ぎる力を限界以上に引き出してタダで済む訳があろうはずもない! あのような強力な魔法はもう放てないでしょう! それどころか立つこともおぼつかない様子!」
オリヴィアとアンジェの強力な合体魔法にモンスター達を全滅させられたヘルトルーデは一瞬気落ちするも、直後今度は憔悴しきったオリヴィアに強気で捲し立てる。
オリヴィアがこのように強力な魔法をここに至るまで使用しなかったのは、反動の大きさなどから。
精神および魔力消耗などの激しさから二発目を撃つどころか戦線離脱を余儀なくさせられるほどに。
加えて発動前も戦う全生徒達に強化魔法迄施していた。彼女の魔力の使用量は限界を超えていた。
「黙れ! 公国の王女! 全力を尽くしたリビアを愚弄するような物言いは許さんぞ! 何より、もうあのような強力な魔法放つまでもない! 貴様の頼みとするモンスター達は全て焼き尽くしたのだからな!」
ヘルトルーデの言葉を跳ね返す様に吠えたのはアンジェ。合体魔法を共に放ったのにオリヴィアに比べれば余力があるのはオリヴィアが魔法の主導であったのに加え、それだけ無理をしたからであろうか。
アンジェが強い意志を宿した視線で睨み付けるもヘルトルーデも怯まない。
「貴女達こそ忘れてるんじゃない? 貴女達の敵はモンスターだけじゃないのよ? 確かにモンスターを全て撃ち果たしたのは見事でしたが、我が公国艦隊は健在だという事を!」
モンスターの群れが駆逐されたことに沸き上がり安堵していた生徒たちの表情が不安で曇る。
だが生徒達の中の一人がそんな不安をかき消すように声を上げる。
「そっちこそ分かってんのかよ! こっちにはアンタと言う、公国王女と言う人質が居るんだぞ! 撃ってこれるわけが無いだろ!?」
本能のままに暴れるモンスター達には人質など通用しなかった。更には人質であるはずのヘルトルーデがモンスターの軛まで解き放ち自分諸共生徒達を葬り去ろうとした。
だが公国艦隊はモンスターと違い人間。公国の王女に仕える臣民。自国の王女が人質に取られた王国の船を撃てるはずがないと。
そんな生徒達の楽観的観測を打ち砕くように公国艦隊旗艦から拡声器を通して放たれた声。
その言葉の内容に生徒たちは愕然とした表情を見せ、ヘルトルーデは冷たい笑みを浮かべる。
艦隊から告げられた声。それは――
公国艦隊旗艦。
リオン駆るアロガンツにより貴賓室はメチャクチャに破壊され王女までも連れ去られたが、船自体は未だ航行可能な状態。
そして王女が連れ去られた後、その指揮を担っていたのは気絶から回復し意識を取り戻したゲラット。
王女を奪われるという失態に気落ちするも直後黒騎士の出撃に挽回の目を期待していた。
だがその黒騎士も敗北。モンスターの群れも王国の船から放たれた白き炎により焼き尽くされた。公国軍の御旗である王女も人質に取られ、王女の身を案じる他の将兵たちからはこれ以上の戦闘継続すべきでないとの意見も。
だがゲラットに引くという選択肢は無かった。
相手はたかが学生たち。その様な若輩者たちに公国軍が後れを取る事ないと思ってただけに、思わぬ苦戦を強いられてる現状は受け入れ難かった。
何よりこのまま逃げ帰り敗戦の責を負うなど御免被りたかった。更に付け加えるなら自慢の髭を根こそぎ奪われた私怨も。
そして発せられたのは公国の将兵たちにとっても信じがたい命令。
「王女殿下はその身を公国に捧げた! 各艦、総攻撃を開始せよ!」
公国の船から放たれた総攻撃の言葉に王国の船に動揺が走る。
その様子にヘルトルーデは狂気じみた笑い声を上げる。
「アハハハハハッッ! ゲラット! いけ好かない男ですが此度に限ってはよくぞ申しました! そうです! 私諸共この王国の船を沈めてしまいなさい!」
「貴様!? 自分が一体何を言ってるのか分かってるのか!?」
「ええ、分かってますとも! 私も貴女たちもここで共に散るのです! 公国の勝利の礎として! フフフッ、ええ、貴女達のこと侮ってました実際大したものでしたよ。モンスターを蹴散らしバンデルを倒し。それでも! この数の艦隊にはさすがに手も足も出ないでしょう! ここが限界なんですよ貴女達の――」
「ふざけるな!」
ヘルトルーデの言葉を遮るようにアンジェが声を上げた。
「勝手に私達の限界を決めるな! 私は諦めんぞ! 最後の瞬間まで戦う! それに! 私はリオンを信じてる!」
「確かに、あの王国の騎士の強さは並々ならぬものでしょう。それでも所詮鎧一機の力でこの公国艦隊をどうにかできると本気で信じてるわけだじゃないでしょ!?」
「本気で信じて悪いか!? リオンは! 私の最愛最強の騎士はこの状況からでも跳ね返してくれると、私は信じてる!」
アンジェの強い信念の込められた言葉にヘルトルーデは一瞬気圧されるも、それでも公国の勝利を信じ嘲る様に見下す姿勢を崩さない。
「そこまで行くといっそ滑稽で哀れね。でもじきに思い知るわ。貴女があの騎士をどんなに信じようと所詮無駄だったと!」
「貴様! 未だ言うか!?」
ヘルトルーデに向かい思わずアンジェが手が出そうになる。だがそれを阻み宥める声が。
「落ち着いて、アンジェ!」
声の主はカーラだった。
「アンジェ、貴女の言う事は正しいわ。リオンさんを信じるという言葉は。ええ、貴女の恋人で、そしてコリン君――私の婚約者のお兄様でもあるリオンさんは絶対この窮地を覆してくれるわ」
カーラが掲げて見せた手にはルクシオンから託された通信機能も併せ持った発信機。そして視線を上空へ移す。アンジェも釣られて視線を上空へ向けるとその顔に笑顔が灯る。
「パルトナー! そうか! ついに来てくれたか!」
パルトナー。それは表向きリオンが保有する最大戦力である巨大飛行船。700メートルを超える巨体はこの時代の飛行船の中にあっては群を抜いている。
最大速力もまた現存するあらゆる飛行船を凌駕してたが、その速力をもってしても公国軍の攻撃開始時には間に合わなかった。故に到着までに凌ぐべくアンジェやオリヴィアを始めとした生徒たちは公国のモンスター相手に奮戦してたのだった。
その雄々しき雄姿に、アンジェ達既に知ってる者達は勿論、初めてその姿を目の当たりにする生徒達の顔にも希望が灯る。
反対に公国王女ヘルトルーデは驚き圧されるも、気圧されてなるものかと口を開く。
「たかが一隻の増援程度で何を浮かれてるのです! たった一隻、こんな船増えたところで貴方達の命運など変わらないわ! 私と一緒に沈むのよ!」
ヘルトルーデのその言葉を証明する様に公国艦隊から砲撃が放たれる。直撃すればひとたまりも無いだろう。
だがその砲撃は一つも王国の船には届かない。パルトナーが展開したバリアが王国の船をも纏めて包み込み全ての砲撃を防いでみせたのだ。
艦隊の一斉射をも防いでみせたその力に生徒たちの歓声が上がる。
『未だ未だです。パルトナーの力はこんなものではありませんよ』
カーラの手にした発信機からルクシオンの自信に満ち溢れたかのごとき声が響き渡る。
次の瞬間パルトナーの主砲が火を吹く。その砲撃は公国艦隊を驚愕させる。
この世界の軍艦に備え付けられた砲と言うのは側面に並べ面で制圧する使い方を用いる。
それに対しパルトナーの砲は二連装の可動式の砲塔が二基、砲口は全部合わせても四門。だがその砲口から放たれた砲撃は恐るべき破壊力を見せつけ、公国艦隊の戦意を折るに十分だった。
王国の船と公国艦隊は未だかなりの距離を保っており、それは正確に砲撃を命中させるには心許ない程。だが公国艦隊は数で押し切ることで命中率の低さを補っていた。
それに対しパルトナーの砲はたった二基四門であるが、恐るべき命中率で正に百発百中。しかも速射性にも優れ恐るべき速さで続け様に放たれる砲撃に、公国の軍艦は次々と沈黙していく。そしてまた、着弾させる個所も船の航行能力を奪いつつも人員に被害が及ばぬ配慮迄なされてる。
それは余程の力の差が無ければできぬ芸当。圧倒的強者にだけ許される不殺の戦い。
そんなパルトナーの戦い振りに船の生徒たちは勝利の確信に沸き上がるのだった。
パルトナーの戦い振り、それは離れた場所で戦っていたリオン達も当然目の当たりにしてる。
「間に合ってくれたか……」
公国艦隊は当初モンスター任せで砲撃などは撃って来なかった。だが攻めあぐねればいつその砲門を開いてもおかしくなかった。
直前ギリギリとは言え公国艦隊の砲撃が始まる前にパルトナーが到着してくれたことにリオンは心底安堵する。
だが、それとは対照的に不機嫌な声を黒騎士が上げる。
「あのような強力な船を温存してたというのか!? そんな強力な力を使わず、手を抜いてたとでもいうのか!?」
若しパルトナーが最初から参戦してればもっと早い段階で圧倒され公国艦隊は敗北してたのは想像に難くなく、故に手を抜かれたのかと不快感を露にする。
そんな黒騎士にリオンは反論の声を上げる。
「手を抜いてただ!? 馬鹿言ってんじゃねぇ! そんな余裕あるか! 全速力で応援に駆け付けさせやっと到着したんだよ! 最初から傍に居れば最初から使ったに決まってるだろ!」
リオンが一気にまくし立てると黒騎士は目を見開く。
「……そうだな。貴様らがその様な者でないことは刃を交えた俺が一番分かってる筈だったな。貴様らとの戦いを汚すような言葉を吐いてしまったな。許せ」
黒騎士の殊勝な態度にリオンは小さく溜息をつく。そしてコレでやっと終わりかと肩の力を抜く。
だがルクシオンから未だ警戒を緩めるには時期尚早と言わんばかりの言葉が告げられる。
『マスター。傍受した公国の艦隊から不穏な会話を拾いました』
そして流れてくる公国のゲラットと将兵たちの会話。
《お待ちください伯爵! 【アレ】の使用は本国か若しくは王女殿下の許可が無ければ認められません!》
《何を悠長なことを! 黒騎士が討たれ、艦隊もほぼ航行不能に陥り、王女殿下迄失った今、このまま敗北を受け入れろと!? その様な事許されないのです! 我が公国が王国に敗れるなど!》
《そんな! 王女殿下は未だお亡くなりになられたとは限らないではありませんか! いえ、未だこちら側に一人の死者も出てない状況からすれば御存命の可能性の方が》
《敵の情けに縋るとは何事ですか! もういいです! 貴方達が何と言おうと私は【アレ】を使います! 最早手段など選んでいられません! このまま敗北して私がその責を負わされ無能と誹られるくらいなら!》
公国軍の会話から未だ奥の手が残ってたのかとリオンは身構えると黒騎士が声を上げる。
「愚か者が! この場の全てを消し去るつもりか!」
「どういう事だ?」
「その前に一つ聞かせろ! 姫様は御無事なんだろうな!?」
黒騎士の言葉にリオンは一瞬驚きつつも、やっぱりかと何処か安堵した気持ちに。
公国王女は自らの命も顧みない覚悟を見せ黒騎士もそれに応えると言ってたが、その一方で黒騎士の戦い振りは王女を傷つけない気遣いが感じられ、また隙あらば王女を取り戻そうとしてるのが感じられた。それでも尚アロガンツを傷だらけにした恐るべき強さに終始圧倒されたのだが。
「聞くまでもねぇだろ。俺は敵も殺せない欠陥騎士だって散々アンタらが言ってくれた事だろ」
嫌味の利いた捻くれた口調の答えだが、黒騎士は安堵の溜息を漏らす。
「……御無事なんだな。ならばゲラットの愚か者を止めろ! あ奴が使おうとしてるのは魔獣の大群を呼び寄せる魔道具! このままでは公国も王国も関係なく、この空域に居る全てが無に帰すぞ!」
黒騎士の言葉にリオンの顔色が変わる。
「クリス! 黒騎士の爺さんを頼む! それと、借りるぞ爺さん! アンタの大剣!」
アロガンツが黒騎士の大剣を握り翔ぶ。公国の旗艦に向かい。
「ルクシオン! あのクソ髭、いや、髭ナシの場所分かるか!?」
リオンの問いに応える様にモニターに公国旗艦の一点がクローズアップされる。そして透視図の様なグリット状のCGに切り替わり、そこに早足で移動するサーモグラフィーの人影。
「そこかぁっ!」
アロガンツがその人影の進行方向1メートルほど先に向かい剣を突き刺す。そして剣を引き抜き、その切り口をアロガンツの鋼の掌で開きこじ開ける。
そこには泡を吹き気絶し仰向けに倒れてるゲラットの姿が。それを確認したリオンは安堵する。
それは魔道具の使用を阻止できたこと、そして殺さずに済んだこと。
『この様な救いようの無い輩にまで情けを掛けるとは。つくづくお優しいことで』
「本当に切羽詰まればそんな甘いこと言ってられないのは分かってる。でもギリギリまでは避けたいんだよ」
言いながらリオンは艦内に侵入し降り立つ。
「ルクシオン、髭ナシ野郎拘束しとけ」
リオンはゲラットが向かってた方向に進み、廊下の先にある扉を開き部屋を漁る。ゲラットの愚行は止められたが、このような危険な魔道具捨て置けるわけなく安全のため回収するため。
そして拳銃に似てるがそれとは異なる奇妙な道具を見つける。
「ルクシオン、コイツがそうか?」
リオンの問いに応える様に、ルクシオンのレンズからスキャンする様に光が照射される。
『間違いありません。モンスターの召喚プログラムの術式を確認しました。おそらく魔笛を研究する過程で生み出されたのでしょう』
ルクシオンの確認も済み、魔道具を回収したリオンはアロガンツのコックピットに戻ると、今度こそこれで終わりかと肩の力を抜き飛び立つのだった。
アンジェ達の待つ船に向かって。
修学旅行及び公国襲撃の話はコレにてひと段落です。
次回からは新展開予定ですが想像以上に難航してます。
エルフの里とクレアーレは出さない予定です。