チェンジリング・悪役令嬢と平民主人公の入れ替わり 作:julas
長らく続き投稿できずお待たせしてしまって申し訳ありませんでした。
公国軍襲来を返り討ちにし、その後フランプトンの奇襲もしのいでみせた所までが前回までのお話でした。
「悪いなマリエ。お前だって旅行から戻ったばかりで疲れてるだろうに」
「気にしなくていいわよ。コッチは普通に楽しい修学旅行だったしね」
ここは王都のダンジョン。時は修学旅行から帰還した翌日。
『ご協力のほど感謝しますマリエ』
「いいわよ。私も何時も世話になってるからね。それにあの乙女ゲー関連ともなれば頼れる人限られてきちゃうもんね」
マリエが今言ったようにリオン達が今この場にいる理由は乙女ゲームのシナリオやイベントと関連してのこと。
『ハイ。このダンジョンに眠ると言われる聖なる腕輪。首飾りの方はマスターがオリヴィアに献上してしまったので同種のロストアイテムである腕輪の方は是非入手して頂きたく』
聖女の為のアイテムであるはずの首飾り。そこには【聖なる】と言う名を冠したアイテムからは想像も出来ない恐ろしい怨霊が憑いていた。
そんな聖なるアイテムと怨霊にどう言うわけかルクシオンは並々ならぬ関心を抱き、同様に怨霊が憑いてると思われる腕輪を望んだのだ。
「一応念を押しておくが腕輪も首飾り同様に後で殿下を通してオリヴィア様に献上するんだからな?」
『……』
「ルクシオン!?」
『存じております。ですから観察調査は譲渡するまでの間だけと私の方も了承したではありませんか』
ルクシオンの返事に何処か不本意そうな思いが感じられ、リオンはやれやれと言わんばかりに溜め息を吐く。
そんな様子を眺めながらマリエは乾いた笑みを浮かべる。
「まぁでも、いきなりオリヴィアに渡すより一時的にルクシオンに預けた方が良いんでしょ? 首飾りの時はそれでとんでもない事になったみたいだし?」
マリエは首飾りの時に起こった危難についてリオンから聞いていた。
首飾りの時はそれに怨霊が取り付いていたと言う想定外の事態に、危うくオリヴィアが乗っ取られそうになったと言う危難に遭っていた。
その時はアンジェのお陰もあり無事怨霊を祓えたが、リオンも可能ならあのような危難は二度と被りたくない。
それはオリヴィアは勿論のこと、リオンにとって何より大切なアンジェの為にも。
ルクシオンに預けることで怨霊の危険を排除できるのならリオンにとっても望ましい事なのだから。
リオンは「分かってるよ」と言わんばかりに溜め息を吐いた。
「主人公様も大変ね。そしてそんな主人公様を陰ながら支えるアンタも。それで今回のメンバーが――」
言いながらマリエは首を巡らせる。今ここに居るのはルクシオンを交えながら会話を交わすリオンとマリエの転生者、そしてその先を談笑しながら歩を進めるアンジェとカーラ。
「アンタとルクシオンはこの探索の発起人。私は事情を共有してる転生者仲間。アンジェリカは戦闘力高い上にアンタにベタ惚れしてるから裏事情とかにも合わせてくれる。で、最後の一人のカーラ、だっけ? あの子もここに呼んだってことは強いの?」
今回のパーティーメンバーは今マリエが挙げた面子。その中でカーラだけがマリエと面識が無かった為の疑問。
「いや、割と普通の子だし特別強いとかは無いな。ぶっちゃけ純粋に強さだけ求めるなら他を当たったさ」
「ふーん? それなのに今回のメンバーに選んだってことはそれだけ信頼してることって事? まぁ確かにアンジェリカと仲良さそうだし? でもそれだったらクラリス先輩とその取り巻きさん達の方が良かったんじゃない?」
夏期休暇の始まりの頃にダンジョン探索が行われた時もマリエはリオン達に同行してた。そしてその時にはクラリスと彼女の取り巻き達が同行してた。
突出した強さでは無かったが上級生ならではの頼もしさも見せてくれた。
「そうだな。だけど今回の目的の腕輪、本来なら入手出来次第直ぐにオリヴィア様に献上しなきゃいけないのを一時的にとは言え此方で所持する形だろ。そういう事情に先輩みたいな上位貴族やそこに連なる人は巻き込むの口止め頼むの気が引けてな」
リオンの答えにマリエは得心が行ったと言う表情を見せる。
とは言えそれだけでこのダンジョンの最深部への同行選別としてカーラで良いのかとの疑問は残るようだ。
『ご安心を。カーラはアンジェリカに対し強い恩義を抱いている信頼に値する人物なのは勿論ですが、それだけで選んだ訳ではありません』
「それって?」
『ご心配なさらずともモンスターと遭遇し戦闘になれば分かりますよ』
そうしてリオン達の一団はダンジョンの奥へと歩を進めていくのだった。
「くたばれッッ! モンスター!」
アンジェが吼え、眼前の巨大な猛獣の姿をしたモンスターに向け拳を振るい叩き込む。炎を纏った拳を正面から叩き込まれたモンスターは頭蓋を砕かれ息絶えると黒い煙となって霧散する。
だが大振りの渾身の一撃を放った直後の隙を狙い別のモンスターが襲いかかる。
「危ない! アンジェ!」
そんなアンジェに向かいカーラが左手を伸ばす。カーラの前腕に装備された小型のシールドが分裂しアンジェに向かい飛んで行くとモンスターとの間に電磁シールドを展開し、彼女を護る。
死角からの攻撃から免れたアンジェは直ぐ様振り向き迎撃の拳を叩き込みモンスターを葬りさった。
「ありがとう! 助かったカーラ!」
カーラはアンジェに向かい「気にしないで」といった感じで微笑みで応える。
「成る程大したものね。ルクシオンに任されてるのも頷けるわ」
得心が行った風に呟いたのはマリエ。言いながらも彼女は手を緩めることなくモンスターを締め上げまた一体仕留め黒い煙に変えていた。
そんなマリエの呟きを耳にしたアンジェがカーラの肩を抱きながら笑顔で口を開く。
「ああ! 私もリオンもルクシオンも信頼を寄せる頼もしい親友だからな」
アンジェの言葉にカーラは照れくさそうにはにかみながら言葉を紡ぐ。
「そんな……私なんかアンジェや皆さんに比べれば全然だから。今のだってルクシオンさんが用意してくれたこの盾のお陰で……」
『そんなことありませんよ。確かにそのシールドは私が用意し十分にその性能を保証するものです。それだけに信頼出来る相手でなければ託したりしません。自信を持って下さい』
「そうだぞ! お陰で私も護りを託し存分に戦えるんだ。存分に胸を張ってくれ!」
謙遜するカーラだったがアンジェやルクシオンの言葉に照れながらも何処か嬉しそうに微笑みを浮かべる。
そんな様子を眺めながらマリエはポツリと呟く。
「良いわね……信頼出来る同性の親友が居るって」
マリエは前世では共に旅行に行ったりする仲の良い親友も居たが、今世ではそこまで親しい友人を作れていなかった。その日その日を凌ぐので一杯一杯でそんな余裕もな無かったから。
「何を言う。マリエ、君だって私の友人だろ? 前回のダンジョンでだって回復魔法で助けてくれて、今回も同行してくれて」
言いながらアンジェは親しみを込めマリエの肩に手を回す。マリエはアンジェの近すぎる距離感に戸惑いながらも満更でもなさそうな表情。
そんな賑やかな彼女達の様子を見ながらリオンは「女三人寄ればかしましい、とはよく言ったものだ」と呟くのだった。
「それにしてもルクシオンもよくカーラにピッタリなシールド用意できたな?」
『このダンジョンに向かうのは修学旅行前からの決定事項でしたからね。その頃から準備進めていました』
「どんだけ聖女のアイテム、と言うかそれに憑いてる怨霊に興味あんだよ」
言ってリオンは呆れ混じりの溜め息を吐いた。
『修学旅行時に公国襲来と言う予測外の事態に見舞われましたが、結果的にはそれもダンジョン攻略の準備、計画には助けになりました』
「どう言う意味だ?」
『船に残っての戦いぶりを拝見しカーラも思った以上に動けていたので最終的なメンバー選考の決め手になりました』
ルクシオンの話を聞きながらリオンは得心が行ったと言う風な表情を浮かべる。
「しっかしお前もご苦労なこったな。公国軍相手の迎撃で俺のサポートとかもしながら、船のアンジェやカーラにそこまで目を配っていたとは」
『彼女が戦ってる間中もずっと私が預けた発信機を持ってくれてたのも助けになりました。あれには発信機や通信機能は勿論のこと、それを所持する者の身体データや脳波、魔力パターンなどの解析――』
「ちょい待ち。お前、その事カーラは了承してたのか?」
『そう言えばそこまでは申し渡してはいませんでした。まぁ大した問題では無いでしょう』
「んなわけあるか! 勝手に人のデータとるとか人にはプライバシーってモンがあんだよ!」
リオンは呆れながらも思わず怒鳴り声を上げた。
そしてその声に反応したカーラが視線を向けるとリオンと目が合う。
目が合ったリオンは気まずそうに申し訳なさそうに口を開く。
「悪いな。ルクシオンのヤツ、人のプライバシーの尊重とかそう言うのに全然気に留めないヤツで」
「い、いえ全然気にしてませんから。むしろそのお陰でこんな凄い盾準備出来たんですよね?」
『ハイ。お陰でこうして帰国後の翌日に準備してカーラに手渡すことが出来た訳です』
そうしてカーラはルクシオンと会話しながらリオンに目配せしてくる。自分は平気だから大目に見てあげて欲しいと言った感じで。
リオンも溜息を吐きつつも苦笑いを浮かべる。
「分かったよ。でもなルクシオン。次からはこういうのは一言断り入れろよ? カーラだから笑って許してくれたけど誰でも彼でもこんな寛大な対応してくれるわけじゃないんだからな?」
『善処いたします』
ルクシオンの返答にリオンは、本当に分かっているのかよと言わんばかりの微妙な表情を浮かべる。
そうしてリオン達一行は他愛ない会話をしながらダンジョンをさらに奥へと進むのであった。
ダンジョンを奥へ奥へと進むにつれモンスターの強さも増してくる。
学園生徒達は学園のカリキュラムとしてダンジョンには何度も潜る事になっている。そして卒業までにある一定の深さ、全体で言えば中層の入り口までの到達が課せられている。
リオン達が目指すのは最深部の為、当然そこも通過。そして目の前に現れたのは立ち入り禁止エリアの旨が書かれた看板。
冒険者の末裔として腕を鳴らした学園の生徒達でさえその危険さから侵入が認められないエリア。
だがリオン達は構わず進む。その先に進まねば聖女のアイテムには辿り着けないのだから。
その後もモンスターとの戦闘と移動、時には罠の張り巡らされた場所にも遭遇するが、リオンの前世知識やルクシオンのセンサーで看破することで危なげなく進んでいく。
そうして進んで行くなか、マリエがカーラの腕を引く。カーラが「何でしょうか?」と問いかえそうとするとマリエの目は「黙ってて」と言ってるようだった。
カーラは前を進みながら会話を交わしてるアンジェとリオンを気にしながらも、マリエに手を引かれて行った。
「あ、あの……?」
「背中見せて。あぁホラやっぱり怪我しているじゃない」
マリエはカーラの長い髪をかき分け背中の傷を見付けると返事も待たず回復魔法をかける。
「あ、ありがとうございます」
「さっきの戦闘、モンスターの数大分多かったからね。シールドの展開アンジェリカの方に回しすぎて、アンタ自身の護り薄くなっててそこを抜けられちゃったのね」
「良くお気付きに……。重ねて御礼申し上げます。あ、でもこの事アンジェには言わないで頂けますか? アンジェは情に厚い子ですから。知ったら自分のせいで私が怪我したと思って気を使わせてしまうから……」
カーラの言葉にマリエはやっぱりか、とその返事を予想してたかのような表情を見せる。
「そんな事じゃないかと思ったわよ。だから黙って来て貰ったわけだし」
マリエの言葉からカーラはその気遣いに改めて感謝の言葉を紡ぐ。
「お心遣い感謝します。私だけじゃなくアンジェにまで気遣っていただけて」
「アンタ、本当にアンジェリカの事好きなのね」
「ハイ、アンジェは私の大切な親友ですから。彼女と出会えた縁は私にとってかけがえのない宝です」
そう言って微笑みを浮かべたカーラの顔はとても幸せそうなもので、それは彼女が大切に想うアンジェ自身の幸せをも表してる様にも。
「クラリス先輩といいアンタといい、アンジェリカの周りの人ってみんなあの子の事大好きよね。……人徳かしらね。私には無いものよね……」
ゲームでは公爵令嬢だったアンジェ。実際のこの世界では主人公枠である平民特待生として収まってる。
どちらの彼女も人の環の中心となる魅力を持っている。
その姿は嘗ては自身も主人公に成り代わろうとしていたマリエは格の違いを見せ付けられた思い。それで思わず呟いてしまった。
「ええ、アンジェは仰る通り素敵な女性です。でも貴女も素敵な女性ですよ。私、回復魔法の使い手ってオリヴィア様以外では初めて見ましたし。それにこうして私にもアンジェにも気配りしていただけて。改めて御礼申し上げますマリエ様」
カーラの励ましの言葉にマリエは若干照れ臭そうに「ありがとね」と返し、直後「様?」と問い返す。
「ええ、だって子爵令嬢様ですよね?」
「子爵家って言ったって名ばかりの借金だらけの録でもない実家よ。様なんて御大層な呼び方しなくても良いわよ。何なら呼び捨てでも」
「いえ、そんな呼び捨てなんて……。では、マリエさん、とお呼びさせていただきます」
「それで良いわよ。じゃぁそろそろ戻りましょ」
そうして二人はリオンとアンジェの元へ戻るのだった。
「どうした、何かあったのか?」
「一寸ね、路の脇に魔石を見かけた気がしたんだけど、どうやら見間違いだったみたい。一人で行くのも危ないかもだからカーラに一緒に来て貰ったの」
マリエの言葉にリオンはカーラに視線を送ると彼女は肯定の意を示すように微笑んでみせた。
実際には自身を治療してくれた為だったが、その事を伏せてくれた事にも心の内で感謝しながら。
「魔石ぐらい別に良いだろ普段のダンジョン探索なら兎も角、今回は別に目的があるわけだし」
「しょうがないでしょ。小さなチャンスでも逃さない心構えでやって来てるんだからコッチは。ホラ、先に進むんでしょ」
そうして一行は再び最深部を目指すのであった。
祝、アニメ二期スタート。
早速カーラ本編&OPEDでも登場で今後も楽しみ。
放送開始日には間に合いませんでしたが帰って参りました。
アニメ同様に本二次創作も対公国最終戦に向けて進めて行きます。
再びお付き合いいただければ幸いです。