特別特級ドブカス転生無双   作:ToZooNo

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ババァ人の心とかないんか?

 

 

少女は帰宅の途中だった。

空は黄金色に染まり、夕日が街角を照らしている。

その美しい光景の中で、ふと彼女は、周りに人の気配がまったくないことに気づいた。

普段なら子供たちの声や帰宅する人々の足音で賑やかな住宅街が、まるで異世界のように静まり返っていた。

 

彼女の周囲は、夜の帳が徐々に降りるにつれ、不気味な静寂に包まれていった。

街灯の光が薄暗く、影を長く伸ばしている。遠くから聞こえるのは、風の音だけだった。

 

そのとき、人影もないはずの通りの端から、小さな黒い影がゆっくりと伸びてくるのが見えた。

それはまるで、夜の影が自らの手を伸ばしているかのようだった。

少女の心臓は高鳴り、彼女は不安に駆られながら、その影の正体を探ろうと足を止めた。

 

 

 

ぽつねんと、一人の少年が影の上に佇んでいた。

 

 

少年は本格的な和装に身を包んでおり、その装いとは対照的に金髪を風になびかせていた。

 

そして、その少年の腰には、日本刀が帯刀されていた。

刀は、何か恐ろしい、目に見えない力を帯びているように感じられた。

 

少年は細い目で、静かに少女を見つめていた。

ヤンキーのようなちぐはぐな見た目とは裏腹に、その目は年経た古狐のような目だった。

 

彼の存在は、この静かな夕暮れの住宅街に、圧倒的な存在感と緊張感をもたらしていた。

 

少女は、この異様な雰囲気の中で、少年の目と目が合うと、何か言葉を交わさない訳にはいかなかった。

 

「あ、あのー、通して貰えませんか?」

 

 

「どこ行くん?」

 

少年は関西弁のイントネーションで、軽く問いかけた。彼の声は意外にも柔らかく、少女の緊張を少し和らげた。

その言葉は、この静寂に包まれた街角に、ほんの少しの温もりをもたらした。

 

「お家に帰りたいんですけどぉ…」

 

少女は少し戸惑いながらも答えた。

彼女の声は小さく、しかしはっきりとした意志を持っていた。

彼女の目は、まだ疑念と好奇心を秘めたまま、金髪の少年に注がれていた。

 

この予期せぬ出会いに、少女は何を感じるべきか分からずにいた。

しかし、少年の存在が何かしらの意味を持っていることは、彼女にも感じられた。

少年は、まるでこの住宅街の静けさを打ち破る鍵を握っているかのように見えた。

 

 

「嘘こけや、ババア」

 

突然の突き放すような冷たい声色。

 

それに呼応して、少女の纏う雰囲気が一変し、顔からは瞬く間に表情が消え去った。

怯えも驚きもなく、ただ、狡猾で知恵深い女狐のような鋭い目だけが残った。

その視線は少年を鋭く捉えていた。

 

 

「アタシがババアだって?」

 

 

少女の声には、不信と若干の挑戦的な響きが混じっていた。

彼女の言葉は、驚きや怒りではなく、むしろ興味を引かれたかのような、冷静で計算されたトーンで投げかけられた。

 

彼女の眼差しは、依然として鋭く輝いていた。

その表情は、自身のアイデンティティに対する確信と、少年の挑発的な言葉への好奇心を同時に表しているようだった。

 

 

 

「父親殺すためだけに娘を殺して使うとか、なぁ、ババア、人の心とかないんか?」

 

少年は目を細めたまま吐き捨てた。

 

 

「ふん、筒抜けかい。それとも…嵌められたか?」

 

若い少女の姿をした老婆は、嘲るように鼻で笑った。

そう。この身体は殺した少女のもの。少女の家へ入り込み、標的である父親を殺す依頼を果たすために、調達した。

仕事だ。

オガミ婆は呪詛師として、そう、生きてきた。

 

 

「術師の家のガキか?その年で帳を使いこなすとは」

 

一般的に術式はセンスが物を言うが結界術は理論や経験が物を言う。

帳に捕らわれたことよりも、いつ帳にとらわれたのか、気づけなかった事の方が驚きである。

しかも、信じがたい事にこの帳は一見して“閉じられて”いない。

見た目をごまかしているのだとしても相当な技量。

もし、もしも本当に境目がないが故に気づけなかったのだとするなら、神業。

 

「いや、見た目通りの歳とも限らんか」

 

己の事を思えばそれも不思議でない。

 

 

「あ? 一緒にすんなやババア」

 

不快感を露わに少年の目がわずかに開かれた。

それとともに圧力が大幅に増大する。

 

「っ」

 

オガミ婆の顔に、ジワリと汗がにじむ。

予想以上の、だが帳を張った技量に違わぬ、膨大な圧力。

周囲に視線が散る。

逃げ道を探ったのか、視線を外したのか。どちらにせよ逃げ腰を強いられていた。

 

 

「ああ、一応開示しといたるか。この帳、ババアは出られんで。そういう縛りや」

 

その逃げ腰を見透かしたように小僧はそうほざいた。

 

 

「一応聞いておくわ、なぜそんな縛りを?このままなら逃げれるって事でしょ」

 

オガミ婆は尋ねた。彼女の声は少し動揺していたが、同時に戦略を練る冷静さも保っていた。

しかし、帰って来た答えは、想定したものよりも、ずっと酷薄な響きを伴っていた。

 

「そら、いたぶるんやったら、ババアよりJKのがおもろいやろ?」

 

 

少年はニヤニヤとしながら、無造作に歩みよって来た。

 

腰の刀に手すらかけずに。隙だらけ。よほど自分に自信があるらしい。

 

呪詛師として長く生きて生きた。

それを見逃すほどお人よしでも無ければウデが鈍っている訳でもなかった。

 

懐に隠していた暗殺用の棒手裏剣を鋭く投げ打つ。

動作は瞬時に行われ、手裏剣は空を切り裂くように飛んでいった。

 

しかし次の瞬間、状況は一変した。

オガミ婆は衝撃とともに地面に縫い止められていた。

 

「がっ」

 

彼女の胸の上には、少年の足が乗っている。

動けん。何が起こったのかも解らなかった。

だが、噂には聞いたことがある。

 

 

「何が目的じゃ禪院の」

 

禪院家相伝の投射呪法。

最速の術師の、おそらくは後継。

 

 

「ちょっとええ刀手に入ったから試し切りしとなってな。どうせ切り刻むなら女の子の方が楽しいやん?」

 

少年は刀を抜きながら、けらけらと破綻した人格を刃とともに丸出しにする。

 

「でも流石になんも悪ない女の子切り刻むんはかわいそや。でも君らみたいな好き勝手してるドブカスは、何されても文句言えんし自業自得やろ?」

 

刀の刃が蛇の舌のように少女の、拝み婆の、頬を舐めた。血がトロリと流れだす。

 

 

「嬲るのは三流だよ、小僧」

 

「アホか。遊びに一流も三流もあらへんわ」

 

老婆の先達としての忠告を少年は鼻で笑い飛ばす。

 

「けど、そうやな。僕が遊んでる間、お前が変身を解かんかったら生きて返したるわ。縛り結んだる」

 

その提案を値踏みしようとした、その時

ぞぶり、刃が肉を切り裂いて、頬から顎をへし割って喉へ至る。

衝撃と燃えるような刺激、そして強烈な痛みが少女を襲った。

 

「っぐぁ」

 

ごぽごぽと、悲鳴の出来損ないが血のあぶくを作りながら喉から漏れ出る。

 

先ほどの言葉とは裏腹に、明らかな致命傷。

 

だが

 

「ぇげ、ひゅ、ぁぁああああああーーー、ああああーああ」

 

刀が抜けると共に、喉は塞がり悲鳴は形に絞り出された。

その声には恐怖と痛みが混ざり合っていた。

 

 

「っあ、はっぁ、はぁ、ぅな?」

 

彼女はもがきながら言葉を発した。

引いていく痛みと混乱が彼女を襲い、その表情は衝撃と苦痛で歪んでいた。

そして彼女は何が起こったのかを徐々に理解した。

 

 

「ぁは、んてん、じゅ、つしき」

 

「そうそう。すぐ終わってもうたらつまらんからな」

 

負の呪力を掛け合わせて反転させ、正のエネルギーを生むことで肉体を治癒する反転術式のアウトプット。

反転術式そのものの難易度と相まってじつに希少な能力。

それを遊び半分に操る少年。

 

そして、先ほどの縛りは、より残酷な内容へと姿を変えていた。

 

 

辺りはもう、暗くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、れ、私…?」

 

 

 

 

 

少女は、なぜか横たわって夜空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひょこりと少年がその顔を覗きこんだ。

 

「気ぃついた?」

 

金髪の、なぜか和服を着た、ヤンキーのような少年。

場違いに明るくて軽い声。

 

「あれ、なんで、私生きて…?」

 

…殺された。恐ろしい老婆に。手際よく。

母さんの事を叫んで呼んだのに。

だれも助けてくれなかった。

そして、そして…

 

「まあよかったやん?身体なんともない?ちょっと服がボロボロやったから僕の上着被せてんねんけど、寒いかなぁ」

 

少年の問いかけに、少女は自分の身体に意識を向けた。

 

「身体…えぁ、?ぁあああ!?」

 

「ん、どしたん?」

 

何があったか、少女は覚えていない。

彼女の魂は何も覚えていない。

 

しかし、身体が、何かを覚えていた。

覚えていちゃいけない事を。

 

「ひっひっ、ひぅ」

 

体をぎゅうと抱えて縮こまる少女を見て、少年は自らの頭に手を当てた。

 

「あちゃあ、こらスマンなぁ」

 

ポンと少年が肩を叩いた。

軽い感触だった。しかし、反応は激烈だった。

 

「ひゃっっ!?」

 

ビクリと身体を震わせると、彼女は失禁していた。

毛穴という毛穴から、ごちゃまぜの感情が吹き出して垂れ流されていた。

一瞬で理解した。

理解させられた。

この身体は、身体の芯から、この少年に屈伏している。

 

 

「どっかでシャワーでも浴びて、あったまろか?」

 

 

「…はい」

 

少女は差し伸べられた手を汗が吹き出す手で、じっとりとキツく握り返した。

生と死の狭間で、言い知れぬ情念に濡れた目で少年を見つめながら。

 

 

 

 




理子ちゃんはよく救済されてるけど、父親殺す変装のためだけに殺された名もないJKはあまり救済てへんから、救済?してみたで?
ワイ、性格ええやろ。
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