特別特級ドブカス転生無双   作:ToZooNo

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オッサン人の心とかないんか?

仄暗い、人気(ひとけ)のない樹海のただ中。

 

「ごめんなさぃいいいいい!!!!!」

 

首から下を地面に埋められた男の悲痛な絶叫が響き渡る。

一本の木には、血が滴る人の皮がいくつか磔にされていた。

 

「む、途中で破れてしまった」

 

一人の男が、剥いだばかりの皮をじっくりと真剣な表情で眺めつつ、響き渡る悲鳴を眉すら動かさずに聞き流している。

 

「ここから出してくださいぃい……!!」

 

 

叫びを上げている男のほうは、幸か不幸か、まだマシだった。

顔の皮を後ろから剥がれた状態で横に埋められたままのもう一人は、もはや声を上げることもできず、

むき出しの歯の間から弱弱しいかすかな呼吸の空気が漏れているのみである。

 

 

「なんでっ…こんなことするんですか…!?」

 

 

涙ながらに問いかける犠牲者の声が、ひっそりとした森に響いた。

その声には、恐怖と混乱が満ちており、助けを求める切実な響きが含まれていた。

犠牲者の目には、信じられない現実への絶望が映し出されていた。

 

その問いに対して、この凶行をする男は、悪びれることなく答えた。

彼の顔はいかつく、特徴的な濃い顔立ちで、その容貌は彼の冷酷な内面を如実に表していた。彼の眼差しは冷たく、その声には一切の同情や後悔の気持ちが感じられなかった。

 

 

「人を殺す仕事なんだ」

 

男の答えは、彼の冷徹さと、自分の行動に対する正当化を示すものであり、犠牲者の恐怖を一層増幅させる効果しかなかった。

ごつごつと節くれだった手に持ったナイフで、涙と鼻水を垂れ流す哀れな被害者の後頭部に、切れ込みを入れる。

 

「人体の仕組みはよーくしっておかないとな」

 

指を皮に突っ込んだ、まさにその時、別の声がそこへ割り込んだ。

 

 

「なら医学部でも行っとけやオッサン」

 

 

和装に帯刀、武士の様な時代錯誤の格好をした、狐のような目つきの金髪のふてぶてしい子供だった。

子供特有の歯に衣を着せず、相手を論破するような口調。

しかし、常軌を逸した男の凶行が支配するこの場に限っては、どんな辛辣な皮肉も言い過ぎの心配はなかった。

あるのは少年の命の心配だけである。

 

 

「き、きき、みっ!、にげ、逃げなさい!!」

 

自らの命の瀬戸際で、子供に逃げろと言える男は、善良な社会の一人だったのだろう。

だが、社会からはみ出したケダモノにとっては、ただの狩りの対象だった。

 

しかし、男が少年を見る目は、先ほどからの淡々とした作業のような様子よりも鋭いものになっていた。

 

「ちっ噂を聞いた事がある」

 

苛立たし気な舌打ちとともに男がはじめて感情をみせる。

 

「呪詛師を狩ってる金髪のガキ。呪霊が勢いを増してんだろ?俺なんかに構わずそっちを狩っとけよ」

 

「ジブンは好き放題しといて、こんな子供に前線で働かせる気ぃか?人の心とかないん?」

 

どこまでも自分本位なモノ言いに少年はあきれたように吐き捨てる。

 

「は、俺は俺のやりたいようにやるんだよ。楽しいぜぇ。自由は。ガキには分からんかもしれんがなぁ。カハハハ」

 

その男は大声で笑いながら言った。その言葉には傲慢さと、自由を謳歌する喜びが満ちていた。その笑い声は、いまだ男がこの状況を完全に支配しているかのような自信に満ちていた。

 

「まあ聞くだけ無駄やね。すまんすまん、言いたかっただけやねん」

と、少年は軽く返した。その態度は、この状況を軽く見ているかのようだ。そこに気負いも危機感もない。

 

「ま、自由が楽しいんは分かるで。けど、ただの獣なら、狩られて皮剥がれても文句いえんよ?」

 

言葉の端々に皮肉と軽蔑を隠さずに現していた。

 

その一方で、男はただ笑っていた。

彼の笑い声には、危険と狂気が混じり合い、酷薄さを一層強調していた。

目は、まるで狩りの最中の獣のように輝き、少年への嘲笑と同時に、彼自身の野生的な本能を露わにしていた。

 

「生意気なガキに現実を分からせるのも大人の勤めってなっ」

 

 

男がナイフを構え、獰猛な獣のように素早く突進した。

彼の動きは無骨で、直線的な最短経路を選んでいる。

その動きには計算されたものがなく、ただの勢いだけがあった。

 

いまだ少年は、静かに立っており、刀に手をかけてすらいない。

彼の態度は、周囲の危険をまったく意に介していないかのようだった。

 

しかし次の瞬間、少年はそこにはいなかった。

彼は男の視界からも、先ほどまで立っていた場所からも、まるで霧の中に消えるようにして消え去っていた。

 

「ふぅん、なかなかやるじゃねぇの。居合ってやつか?」

 

男は首筋を押さえながら、感心したように言った。

彼が血で汚れるのを避けるために着ていたレインコートのフード部分は、まるで紙を切るようにきれいに切り裂かれていた。

しかし、男の声には焦りの色はなく、首筋には血も傷跡もついてはいなかった。

 

 

「チッ、切れへんか。僕もまだまだウデが足らんね」

 

と少年は言いながら、男の背後に静かに立っていた。

少年の刀は依然として、もしくはすでに、鞘に収まっている。

 

 

「ちょこまか元気だなぁ。将来有望じゃねぇか。殺りがいがある」

 

男は嬉しそうに嗤う。そこに焦りはない。

彼の声には楽しげなトーンがあり、少年に対する期待と挑発、そして狩りの愉しみが感じられた。

 

「つきあってやるからもっと本気で来いよ。剣は腰を入れて振らねえとな?」

 

 

挑発するようにくいくいと手招きをする。

余裕をみせつつも、誘っているのは明らかだ。

 

 

「ええよ、そのやっすい売り文句買うたるわ」

 

少年は今度はスタスタと無造作に間合いを詰めた。

先ほどの目にもとまらぬ動きではないにもかかわらず、彼の動きもまた自信に満ちていた。

 

少年の方が腕のリーチは短いが、ナイフの間合いよりも剣の間合いの方が長い。

だが、男も一歩踏み出せば攻撃が届くところまで、少年は無造作に間合いを詰めた。

 

それでも男はナイフを構えて、じっと動かない。

速度が少年の手札にある以上は先手を取っても無駄という判断だろう。

 

そこへ、少年は軽い手つきで懐から何かを取り出して放りなげた。

 

 

それは一枚のカード。

 

 

虚を突かれはしたが、男にとって躱せない距離ではない。

だが、意図が読めない。一瞬の戸惑い。

 

そこへ少年の声が畳みかける。

 

還元(ゲイン)

 

その言葉とともにカードに呪力が走り、バキンとカードが弾け飛ぶ。

中から姿を現したのは横幅1mを優に超える、巨大な鉄の立方体。

しかも、それは投げられた時の勢いを失っていない。

 

「っぬおお!?」

 

いきなり大きくなったせいで、すでにそれは躱せる距離ではなくなっていた。

両手で受け止めるも、その質量の暴力には踏ん張りきれず、そのまま勢いよく鉄塊に張り付いたまま弾き飛ばされて、背後の木に激突した。

 

けして細くない木の幹がバキャリと音を立ててへし折れ、鉄塊は少し逸れつつまた別の木にぶつかり、そちらもメキメキと音を立てて倒れ始める。

 

当然、その衝撃に挟まれた人間が無事で済むはずはない。

 

普通ならば。

 

だが、男は倒れた木の後ろから鉄塊を押しのけて立ち上がった。

変わらず傷も無ければ血も流れていない。

明らかに異常なタフネスだった。

 

「はー。やるじゃねえか、ビックリしたぜ。それが術式か?」

 

男は驚きを隠しきれずに尋ねた。彼の眼差しはカードから放たれた未知の力に対する興味と警戒が彼の表情に浮かんでいた。

 

「拡張術式や。モノをカードにして持ち運べるねん。呪力込めれば解放した時に呪力纏った状態で解放もできる。便利やろ?」

 

少年は術式を開示し説明しながら、自慢げな笑みを浮かべた。

その手元には懐から取り出したカードの束が握られていた。

 

「斬撃の次は打撃ってか。セオリー通りだな?で、次はどうするんだ?煮るなり焼くなりしてみるか?」

 

男は少し感心したように言いつつ、挑発を忘れない。

 

「この貪婪符呪(グリードカード)は、人間もカード化できるけど、流石に縛りがある。効くんは、相手に触れてから1秒だけ。固定化するんは相手の同意が必要や」

 

と、少年はやや弾んだ声で更なる術式の開示をおこなった。

彼の目は年相応に、自らの持つ秘密の力(おもちゃ)を誇示するように輝いていた。

 

 

「ふーん、なら結局俺相手の決め手にゃならんな」

 

と、男は少し興味を示しながらも、自信満々に返答した。

 

 

「いや、もう詰んどるで」

 

少年の術式を分析し、その限界を見極めようとしていた男の姿勢を嘲るように、

少年は確信と共に言い放つと、男のすぐ真横に現れて、

 

そして、ぽんと軽く肩を叩いた。

 

構えたナイフによる反撃の暇もなく、ピシュンと、男が一枚のカードへと圧縮され、少年の手に収まった。

 

「ほいゲット。かーらーのーボッシュートッ」

 

少年は手にしたカードを流れるような手つきで、放り投げた。

先ほど出した巨大な鉄塊に空いた、目の様な形をしたスリットの中へと。

 

パキンと、開示した情報通りきっかり1秒で、男は元の姿へとカードから還元された。

冷たく暗くて臭い鋼鉄の牢獄の中で。

 

「っ!? なにがっ」

 

と男は困惑し、声を上げた。

彼の目は暗闇の中で慌てて周囲を探るが、見えるのは暗くぶ厚い鉄壁と、外から差し込む一筋の光のみだった。

ごんごん、と鉄塊を中から殴る鈍い音がわずかに響いた。男の力強い拳が鉄壁にぶつかるが、それは文字通りの鉄壁の前には無力だった。

 

「いくら呪力込めて殴っても無駄無駄。100mm厚の鋼鉄製やし、僕の呪力も通ってるからな」

と、少年は余裕の声で言った。彼の口調は、計画通りの展開に満足しているようだった。

 

「クソッ、かてぇ、しかもなんだ!?この鼻が曲がりそうな臭いは!?」

と男が叫んだ。閉ざされた空間の中で、異様な異臭が彼の感覚を刺激していた。

 

「特注やから高かってんやで?まあ、欠点があるとすると、()()()()ができん事かな?」

と少年は言い、その言葉には軽い冗談のような響きがあった。

 

しかし、その意味する所は実に酷薄で残酷なものだった。

 

ばきりと踏ん張った男の足が何かを踏みぬく感触。

殴った外壁にこびりついた、べとついた汚れ。

そして、なにより、このむせ返るような臭気は。

 

「クソガキ――――!!!」

 

男は絶叫した。

 

 

「イカついやろ?ワイのDIY獄門疆」

 

 




投射呪法、物理法則内で加速する部分よりも、物理法則超えて空間ごと物体圧縮できるペナルティの方がヤバいと思うねん。
後1秒の無抵抗時間は大抵普通に詰みやで。
解説と人助けしかしてへんやん。人の心に溢れすぎか?
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