特別特級ドブカス転生無双   作:ToZooNo

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ファ!?
日間に上がってもうてるやん!みんなそんなに人の心無いんか!?


親の心とかない奴視点のクソガキ無双

「はっはっ、馬鹿な」と私は息を荒げながら、冷たく硬い床から体を起こす。

 

 

この稽古場の空気は、まるで凍りついたかのように静まり返っていた。

ここは、厳かで歴史ある、禪院の血と汗が染みこんだ修練の間。

壁には先人たちの名札が、歴史と共に積み上げられている。

 

 

その修練所で、なぜ、私が、我々が息を荒げて床に伏している?

もちろん、床に倒れるのは、幾度となく経験してきたことだ。

 

しかし、一人立っているのは、狐目で金髪のガキだ。

私は特別1級術師で、此奴はようやく稽古に混じり始めたばかりだぞ。

 

確かにハンデとして此奴には術式を禁じていなかった。

というより普通許可されていても、術式は十全に使いこなせない年齢である。

術式を使おうとそちらに気が取られれば、呪力操作がおろそかになる。ハズだ。

そして痛い目をみて体術と呪力操作の基本の大切さを身を以て学ばせるという訳だ。

訳だった。ハズだ。

 

だというのに、術式がないとはいえ体術の修練は積んできているはずの躯倶留隊の連中はおろか、禪院の精鋭たる炳のメンバーまでもが、床に転がされていた。

何度も床に叩きつけられて。

ありうべからざる事態である。

 

投射呪法。

コマ割りを使った高速機動と失敗した場合の1秒間の硬直。

当主の術式であり、相伝の術式だからその有用性は皆理解していた。

しかし、それは当主直毘人が使いこなせているからという面が大きいはずだった。

やはり自分が硬直のペナルティをくらうのはキツイ。

それに対してこの小賢しいガキは自分に対して一切術式を使わず、あくまでペナルティを相手に押し付けるやり方に終始した。

 

そして、それは実際にやられてみると想定よりずっと厄介で対処不能だった。

 

すなわち、よりコンパクトな形、カード状にフリーズさせて、地面に投げつける。

シンプルだが、打撃と違って相手の体重と地面を使えるので、子供の腕力であっても十分威力が出る。

しかも、いきなり体勢を崩して地面に叩きつけられた瞬間に、脱出しないと、また捕まる。 

そしてまたカードにされて同じ事の繰り返し。

 

あのガキはそれを得意げにドリブルと呼んだ。

他人の事をボールに見立てた失礼な物言いだ。

 

だが、一対一の場合、この無限の投げから抜けられなければ、その場でドリブルし続けられて、そこで終了だ。

 

 

先手を取られるとすぐに詰む。

ではこちらが先手を取るとどうか。

 

後の先を取る方法としては御三家秘伝、落花の情がある。

これは呪力操作をある程度自動化する必要があるため、相当に修練が必要だ。

子供が使いこなせる技ではない。

だが、受けた瞬間ではなく、攻撃を受け止めた時にそこに術式を乗せる事は比較的簡単に出来る。

そうすると、やはり先程の流れに合流だ。

つまり、不用意に肉弾攻撃を放って受けられた瞬間、トラップされてドリブルをくらう事になる。

 

そうして出来上がったのが今の惨状だ。

 

 

 

 

 

 

「上等だ、ゴラァ。ぶっ殺したらぁ!!」

 

その一言が、凍った空気を燃やして火にくべるかのような熱を持っていた。

一際顔の濃い男、禪院甚壱が物騒な気勢を上げたのだ。

彼の目は怒りに燃え、暴力的なオーラが周囲を支配していた。身からは、先ほどまでとは一回りも二回りも大きく、脅威的な呪力を纏っている。

その呪力は、ひび割れた大地から湧き上がる熱気のように感じられ、見る者すべてを圧倒する。

 

「ちょっ、甚壱さん、抑えて、本音、本音出てますから」

 

躯倶留隊の信朗が慌てて彼をなだめようとする。

その声は、甚壱の怒りの海に小さな石を投げ入れるようなもので、彼の感情の高まりを抑えるには到底足りない。

奴とて常識人ぶって止める素振りはみせるが、間に割り込んだりはしない。

もちろん私もだ。

 

「ホンネなんかい」

 

本人がうすら笑いを浮かべながら突っ込みを入れている。

随分余裕な態度だ。

こちらの苛立ちを煽るには十分である。

それは甚壱にとっても同じ。いや、直接煽られた分、それ以上の怒りが拳に乗るのは当然だった。

 

「歯ぁ食いしばれやぁ!!クソガキィ」

 

放たれた一撃は、まさに剛腕。

流石に術式までは使わなかったが、元々甚壱の術式は拳に呪力を乗せるもの。

野獣のような体格と動きから繰り出される本気の一撃は、術式なしとはいえ、相当な威力だ。喰らったら、タダではすまない。

程度の低い術師が喰らえば冗談ではなく、死ぬ。

よって、攻撃を受けてから術式でカウンターは成立しない。

 

それが理解できない者はこの場にはいない。

彼らの目は、甚壱の一挙手一投足に釘付けになっていた。

 

 

パシン

 

 

だが、予想と裏腹に響いたのは、あまりにも軽いあっさりとした音。

強大な拳が叩きつけられる轟音でも無ければ、肉が潰れる音でもない。

 

しかし、小さなはずのその音は、やけに大きく道場に響いた。

 

怒りを露わにしていた甚壱の姿が消えていた。

代わりに残ったのは、一枚の薄っぺらなカード。

少年は宙に浮かんだカードを手に取ると、流れるような動作で下に叩きつけた。

まるで子供がメンコで遊ぶかのような光景。

 

ドバンッと、巨体が道場の床に叩きつけられる音が鳴り響いた。

 

「っ」

 

再びこの場に返って来た甚壱が床に叩きつけられてその大きな身体を弾ませた。

反撃はこの瞬間しか、チャンスがない。

だが、やはり今までと同じで、急に姿勢も崩されて意識の連続も飛ばされた状態で、どこに居るかも分からなくなった相手に攻撃を決めるのは無理がある。

 

パシン

 

また軽く響く音で、甚壱の巨体が少年の手に収まる。

こうなると、もはやまともな試合にはならない。

 

それを思ったのは周りの人間だけでは無かったようで、少年は手にしたカードを放りなげた。

今度は下に叩きつけられるのではなく、適当に放られただけだったが。

 

カードの拘束から解かれた甚壱がゴロゴロと床を転がって私の所までやって来た。

 

「ちっ。くそっ!」

 

甚壱は起き上がりながら、吐き捨てるように舌打ちすると、眉根をあげて私の方を見て問いかけてきた。

 

「どうみた?…手ごたえはなかった」

 

そこに先ほどまでの苛立ちはもう失せている。

自分の拳を見て、残った感触を確かめるかのような仕草だ。

 

「ガードは間に合っていなかった。手を合わせた訳ではないな」

 

そう、先ほどあのガキが術式を発動したのは、パンチを当てたまさにその場所からだった可能性が高い。

ガードできた素振りは無かった。

だが、その事実は受け入れにくい。

 

「マジかよ。じゃあ攻撃された場所から術式を発動してんのに、間に合っちまってるのか?」

 

「…」

 

当然、落花の情など、手ほどきどころか、まだ存在を教えてもいない。

これは御三家秘伝、呪力操作をある程度自動化する必要があるため、相当に修練が必要だ。

相当に、修練が必要なはずなのだ。

子供が使いこなせる技ではない。

はずなのだ。

 

「次は私だ」

 

私は前にでて、構えを敷いた。

本家の落花の情だ。

呪力を使って迎撃態勢を整える。

 

「先手は譲ってやろう」

 

その言葉は、表面的には礼儀正しいもののように聞こえたが、その声の奥には、貪欲な手負いの獣が潜んでいる。

彼の姿勢はリラックスしているように見えたが、獣が獲物を狙うような緊張感も漂っていた。

 

「待ちガイルかいな。ま、ええけど」

 

少年はよくわからない例えのような事をつぶやきつつ、構えて、こちらに拳打を繰り出す。

確かに構えや動作は見れるものになっているが、その動き自体は秀逸なものではない。

 

此奴が呪力に触れた瞬間、自動の回避動作と迎撃動作が発動し、仕留める。

こちらの拳が相手の身体を捉えた、と信じた瞬間。

 

パシン、ばちん、と

 

この一連の出来事は外から見ればわずかな間があるように見えたかもしれないが、私の体感では拳を振るったと同時に地面に叩きつけられたかのような衝撃だった。

 

硬直した身体、痛み、そして突然の衝撃。全てが一気に襲い掛かる。

だが、私はここで終わるわけにはいかない。

落花の情を発動した状態だ。衝撃を受けても切らしてはいない。

体勢が崩れ、意識が途切れていたとしても、そこから反撃出来る…!

 

無理な体勢から繰り出した、反撃の一撃は、しかし届かなかった。

 

パシン、ばちん、と

無情な衝撃が再び私を襲い、冷たい床に伏す羽目になる。

 

 

 

なぜだ、なぜ、これほどの差がある?

 

兄の子は神童。

こちらはできそこない。

 

ぎり、と私は歯を割れんばかりに食いしばった。




実際には別に高速コマ割り機動も使えるねんけど、さすがにそれやと試合にもならんから自重。
でも縛りプレイでもあんまし試合にならんかったね。反省反省。
ちなみに、前世は特に格闘技経験ないから術式無しやとゴリラ廻戦はまだちょっとキツイわ。なんやねんあのゴリラ、子供相手にめっちゃ本気で殴ってくるやんけ。ゴリラの心とかないんか?!
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