特別特級ドブカス転生無双   作:ToZooNo

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人の心ギャザリング

その少年は生き物の死骸が好きだった。

 

セミの脱皮したカラカラに乾いた抜け殻、翅や手足を失ったバッタの死体、そして潰されてしまった毛むくじゃらのネズミの残骸。

彼はこれらを見つめることに、決して飽きることはなかった。

ある年頃の子供たちがこういったモノにつよい興味を持つのは、世間の常識とは裏腹に、非常に稀な事ではない。

 

少年にとって、セミの抜け殻はただの老廃物ではなく、透き通るような繊細さと、生命の一瞬を刻んだ美術品だった。

 

翅を失ったバッタの死骸、その脆弱さと儚さに、少年は奇妙な美しさを見出していた。

 

彼はそれらを、まるで宝石のように丁寧に蒐集した。

 

そして、毛むくじゃらのネズミの残骸。

腐臭を放つそれは、少年にとって、生と死の狭間を超えた超常現象の確たる証のごときものだった。

 

彼は、これらの死骸をすこぶる大事にしていた。

彼にとって、乾いた魚の骨は、単なる食べ残しではなく、価値あるアイテムだった。

運良く手に入った鶏の手羽先の骨は、しばらくの間、彼の最高のレアアイテムとして君臨していた。

 

 

不幸な事に彼の家はひどく汚れていて、足の踏み場もないほどゴミに溢れていたし、ボロボロの家の壁には主張と色彩がキツいポスターがベタベタと張ってあったが、

ものをこっそり隠しておくことができる点だけは気に入っていた。

 

 

しかし、彼の親は、自分たちは分別もなにもなくゴミの山を積み上げる一方で、少年の宝物を見つけると、理解を示さずに激怒した。

親の怒りは、しばしば手が出るほど激しかった。彼のコレクションへの愛情と、親の無理解の間で、少年は深い孤独と葛藤を感じていた。

 

ある日、彼の大切なコレクションが、彼が知らないうちに捨てられた時、彼の心は氷のような絶望と火のような激しい怒りに満たされた。

ゴミ袋に詰まったゴミすら捨てない、だらしない母親が、なぜ少年のモノをわざわざ捨てることに能動的な情熱を燃やすのか全く意味不明だった。

 

 

だが、その怒りに包まれている中、不思議なことに何かが少年の心を引き寄せていた。

彼の散らかった部屋の隅から、ほのかに呼び声が聞こえてきたかのようだった。

 

それは彼の大切な手羽先の骨だった。

姿形が見えないのに、なぜかそれが直感出来た。

その小さな白い骨は、ごみ袋と古びた雑誌、使い古された服の間から、まるで生命を宿したかのように昏い光を放って少年に囁いていた。

その微かな呼び声は、少年の心の奥深くに響き、彼の怒りの渦を静かになだめるようだった。

 

少年はゆっくりとその場所に近づき、手をゴミダメの中に突っ込んだ。

彼の指がその冷たく滑らかな表面に触れると、一瞬、ぴりっと静電気のようなナニカが少年の指先を通り抜けていった。

 

彼の心には、不思議な安堵感が満ちていった。そして唐突に閃きがおりてきた。

 

「ああ、鍵だ。俺だけの鍵を作ろう。ワクワクするような宝箱(プレゼント)の鍵だ」

 

少年はそう決心した。

 

その日から、彼はその小さな骨を決して手放さなくなった。

彼にとって、それはただの骨ではなく、その小さな骨片を見つめるたびに、彼は不思議と落ち着きを感じ、自分だけの秘密を抱えているような特別な感覚に包まれた。

 

そして、彼は少しずつ、自分だけの鍵を作り始めた。

 

学校で使っていた凧糸は、まるでこの瞬間のために存在していたかのように、骨を首にかけるのに完璧な道具となった。

凧糸の軽やかさと強度は、骨を安全に、しかし確実に彼の身近に留めておくのに理想的だった。

 

いつでもその骨に触れられる安心感。それは彼にとって、この世界の中で唯一変わらないもの、自分だけが理解できる秘密のシンボルだ。

その骨を首にかけることで、少年は自分がこの世界にしっかりと根ざしていると感じた。

その小さな骨の中に、彼は湧き上がるような自信を見出していた。

 

ある日、体育の授業の後に着替えているとき、彼は気づいた。

着替えた時に外した骨がない。

外したくなかったが、教師に外せと強く怒鳴られた。

少年の心は慌てて乱れ、思考が混乱した。

彼の周りでは、同級生たちが彼の動揺を見て嘲笑の声を上げていた。

彼らの笑い声は、まるで鋭い針のように少年の心を刺し、彼の怒りをあおった。

 

その怒りは、以前にも増して激しく、制御不能なものになっていた。

しかし、今度もまた、骨は少年に答えてくれた。

それは以前よりもはるかに明確で、目に見える形での応答だった。

 

教室の外の木の枝に、骨の飾りがひっかけられているのが見えた。

その瞬間、少年の中で何かが切り替わった。

彼は迷うことなく駆け出して、窓から飛び出すと、自分の宝を手に取った。

ウワッとかキャーとか、動物の鳴き声のような雑音が混じるが、どうでもいい。

 

木の枝のしなりを利用して、教室の窓へと再び飛んで戻る。

運動神経が良かったことなどないが、なぜかできるという確信があった。

ゆっくりとした世界の中で、同級生たちの唖然とした顔がよく見えた。

 

 

そして、その勢いのまま先ほどあざ笑っていた集団のリーダー格、骨を隠したか、隠すよう指示したかは間違いないクソ野郎、に向けて助走すると、怒りのままに彼をぶん殴った。

 

偉そうにしていた相手は思いのほかあっさりとぶっ倒れたうえに、何と前歯が折れて、かつんと床に落ちた。

少年は口をゆがめて笑うとそれを拾って“戦利品”にした。

敵を殴ったらアイテムドロップするなんて、ラッキーだった。

 

 

 

その後、同級生たちは先生にあることない事を吹き込み、殴られた同級生の親からは学校へ猛抗議があった。

少年の親は学校に呼び出されて著しく気分を害して、学校でもあたりをはばからず、しこたま少年を罵倒し殴りつけた。

いつもは頭がバカになりそうな気がするくらい痛いのだが、なぜか、その日はそうでもなかった。

いや、むしろ痛くもかゆくもなかった。

“戦利品”(ドロップアイテム)を握りしめていたからかもしれない。

 

レアアイテムがまた一つ彼のコレクションに加わった。

今度のはもっとレアアイテムだ。

困ったことに、この歯を骨の鍵にくっつけようとすると、途端にベースとなるはずの手羽先の骨がみすぼらしいものに思えてしまう!

 

その事の方が、学校よりもクソババアよりもよっぽど大きな問題だ。

 

「もっと、もっと。。。発想(インスピレーション)は湧いて来てるんだ」

 

少年は心の中で叫んだ。彼の中で渦巻く衝動(インスピレーション)は、まるで止まらない嵐のようだった。

彼はもっと作りたかった。自分だけの、独自の作品を。

 

しかし、彼が必要とするパーツは、手元にはなかったし、もちろん譲って貰える見込みもない。

 

「足りない... もっと、もっとパーツが必要なんだ。」

 

彼は自分の戦利品を見つめながら、心の中で何度も呟いた。いつの間にか鳥の骨の代わりに、その戦利品が彼の一番になっていた。

 

 

少年の心は不安定な波に飲み込まれていた。欲望と創作への衝動が、彼の内面で絶え間なく高まっていく。

彼は新たなインスピレーションに導かれ、次なる創作物を求めてさまよい始めた。

彼の心は、創造的なエネルギーと、満たされない渇望に満ち溢れていた。

 

彼の目は輝き、手は震えていた。

彼には新たなビジョンが見えていた。それは、まだ具体化されていないが、心の中で確かに存在している。

彼はそのビジョンを実現させるために、何が必要かを必死に探し求めていた。

 

そして、外から見た苦悩する少年の挙動はどんどん不審なものになっていった。

彼をいじめたりからかっていた同級生たちも全く寄り付かなくなった。

 

ある日、不審な挙動を咎めたかったのか、それとも虫の居所が悪かったのか、少年の母親は彼をこっぴどく殴る蹴るの折檻をした。

しようとした。

だが、インスピレーションに包まれた彼にとっては、それは何の脅威でもなかった。

 

ムカついたというよりも単に邪魔だった。

 

たった一発ぶん殴れば、鼻血を盛大に吹きながら、母親はゴミダメの上でノックアウトされた。

それは実に単純で簡単な解決策だった。

もっとはやくこうすべきだったのだ。

そこに、かつての光景がフラッシュバックする。

 

「そうだ、戦利品(ドロップアイテム)…!」

 

彼は、嬉しそうに笑った

 

「あるじゃんか、材料(ざいりょう)!」

 

こんなにもコイツが素敵に見えたのはハジメテだ。

プレゼントに手を伸ばそうとしたとき、唐突に、ソレは現れた。

 

闇の中から、夜よりも昏い影を纏って。

 

ゴミだらけだった一角がそこだけぽっかりと空いて、床が見えていた。

床がそんなに空いているのは見たこともない光景だった。

そこに和装を身に纏った金髪の少年がいつの間にか佇んでいる。

 

その少年の目は、狐のように鋭く、何かを狙う獣のような冷たさを湛えていた。

彼の視線は、まるで獲物を見るかのように、こちらを突き刺していた。

 

「ソレ、解体(ばら)すんは、やめといた方がええで」

 

「…なんだ、オマエッ」

 

理不尽に邪魔をされたことで彼の中で怒りが沸騰し、それを抑えることができなかった。

彼は和装の少年に向かって拳を振り上げ、彼の拳は和装の少年に向けて力強く振り下ろされた。

だが、殴ったはずなのに、倒れていたのは自分の方だった。

一体何をされたのか、全くわからない。

 

「なんやと言われたら、呪術師(まほうつかい)やね。君もその卵やけど」

 

和装の少年はただ混乱する彼を見下ろしてそう答えた。

 

「ま、僕は偉大な大先輩ってヤツや。例えば、この家を簡易的な結界の外殻やと捉えると… こんな事(・・・・)もでける」

 

狐目が腕を使って何かの動作をすると…何かが、何かドロリとした目に見えないものが、彼をすり抜けて、部屋中に広がっていった。そして…

 

パシュンと、部屋を飲み込んでいった濃厚な気配とともに全て床に散乱していたゴミが消え去った。

 

すべて。

 

残ったのは、もう長い間座る事も出来なくっていた椅子と、物置台と化していた机、そして机の上の一枚のカードだけ。

初めて見る、がらんどうでスッキリとした家。

 

気を失った親の身体だけはまだ床に転がっている。

あれもスッキリなくなっていれば、もっとずっと(・・・)スッキリしたハズなのに。

いつの間にか彼の、“身近な戦利品”への熱は失せていた。

 

なにせ、もっと面白いものが目の前にある。

 

「ほら。これで多少話しやすなったやろ?座ったら? 組屋鞣造クン」

 

金髪の少年は先に椅子に座ると、彼にも席を薦めた。

…一応、ここは彼の家だったはずだが、家で椅子に座った記憶はなかったから、やけに新鮮だった。

 

椅子を作ろう。

 

座り心地がよくて、すっきり居心地がいいやつがいい。

 




じゅうぞうくん、何気に機能付きの呪具作れるオンリーワン人材やし、
五条悟と敵対しても相対してもハンガーラックの素材としてしか見てへんかった大物やからね…
ガキの五条を遠くから見てブルっとる連中とはやっぱ格が違うわ。
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