女エルフに異世界転生して親友(勇者候補)と再会する話   作:エイジアモン

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25.オリハルコン

 

 1等鍛冶師のザックは興奮気味に捲し立てた。

 あの角はオリハルコンだったのだ!と。

 

 オリハルコン!?あの角が伝説の鉱物オリハルコンだって!?

 でもそんな有名ならなんで鍛治師ともあろうものがすぐに分からなかったんだろう?

 

「なんでそんな有名な鉱物なのにザックでもすぐには分からなかったんだ?」

 

 そう問うとザックは難しい顔をして答えた。

 

「逆だ、伝説の鉱物だから実際に触った事のある鍛治師は少ない、だから情報も少ない。それに伝え聞いている話じゃオリハルコンは最高の硬度を保ち、柔らかく、魔力伝導率も高い、と言う情報だけだ。この硬いだけの角からは想像も出来ない」

 

 なるほど、伝説だから実物を目にした者は少ない、と、納得だ。

 

「それにこれをそのまま剣にしたところで硬いだけですぐに折れる剣が出来上がるだけだ、そしてオリハルコンとして最高の剣を作るにはミキ、お前さんの協力が必要だ」

 

「協力?何をすれば?」

 

 カズヤのためならばどんな協力でも喜んでしよう、だけど、どんな協力が出来るのだろうか。

 

「ちょっと待ってくれザック、ミキの協力って、何をさせるつもりなんだ?俺が協力するんじゃダメなのか?」

 

 カズヤが私とザックの間に割って入った。

 私に何をさせるか不安なんだろう。なるほど、心配してくれてるわけだ。

 

「カズヤ、お前さんじゃダメだ、魔力量が少なすぎる。協力というのはな、オリハルコンに魔力を込める作業の事だ、それも強い魔力を大量にな。カズヤの魔力じゃ足りない、それだけの事だ。まあミキが心配なのは分かるがな。安心せい、手荒な事はせんよ。ま、厳しくはするがな」

 

 協力とはオリハルコンに魔力を込める事だったのか、確かにそれならカズヤでなく私が適任だろう。

 

「オリハルコンはこのまま精錬しても硬いが割れやすく脆い鉱物だ、しかし大量の魔力を込めつつ精錬をすると純度の高い、硬く、折れず、柔らかく、魔力伝導率の高いオリハルコンが出来上がるというわけだ。さらにその特性を高める為には基本的は作業中ずっと、精錬や鍛錬中、最後まで魔力を込める必要はある。つまり基本的には付きっきりで魔力を込め続ける必要があるというわけだ、そこらの魔法使いには真似出来んよ」

 

 付きっきりと聞いて、一体どれだけの時間が必要なのか気になって聞いてみた。

 

「付きっきりと言っても四六時中ずっとじゃないし寝る時間や飯を食う時間くらいはあるから心配するな、まあ初めから完成までって考えると……そうさな、俺なら大体5日ってところか」

 

 う、中々長い、いや5日でも早いのか?

 それだけの期間カズヤと会えなくなるのは中々辛いけどしょうがないか。

 

「2人共そんな心配そうな顔をするな、カズヤも不安みたいだし特別にカズヤは見物しに来ても良いぞ」

 

 不安そうなカズヤと私を見て、ザックはそう言った。

 

「え、良いのか?ありがとうザック」

 

「ただし、鍛冶場では俺の命令を聞いてもらうからな、それが絶対条件だ」

 

 カズヤと見合い、頷きあった。その条件を飲もう。

 

「分かった、頼むザック、最高の武器を作ってくれ」

 

「私からも。協力する、なんでもするから、お願い」

 

「任せとけ、オリハルコンを扱うんだ、最高の武器を作って見せらあ。……それにしても、前に冗談でオリハルコンでも持って来いとは言ったが、本当に持ってきちまうなんてなあ」

 

 確かに、まさかオリハルコンだったなんてね、それに私の魔力が必要になるなんて、それも嬉しい。

 

 というわけで、明日の朝から取り掛かる事に決まった。

 作業開始後は夜中の作業もあるという事で私はザックの家に泊まり込む事になった。

 

 ザックからは鍛冶場でのイチャイチャ禁止令が出た。

 まあ流石に他人の家でそんな事は……と思うけどカズヤはしてきそうで自信が無いから、禁止令がでるのも仕方が無いかも知れない。

 

◇◆◇

 

 翌朝、宿で目が覚める。

 

 いつものようにお互いの背中に手を回し、抱き締め合い優しく抱擁し合う。

 

 今日から私は暫くザックの鍛冶場で魔力を込める作業を行い、そして寝泊まりもザックの家だ。

 ザックはドワーフだから美醜感覚が違う。人間、ましてやエルフには異性として全く興味が無いそうなのでそういう意味では安心らしい。

 カズヤは、ザックがドワーフじゃなかったら絶対に一緒に泊まり込むかそもそも武器制作を依頼しなかっただろうと言っていた。

 とはいえ、それでもカズヤは不安だと言うので、念のためにも結界は張ってから寝るようにする、と伝えるとカズヤはそれならばとやっと安心した。

 

 そして安心したカズヤは耳をはむと甘咬みしてきた。

 

「ひッ!!」

 

 いつ来るか分からないので毎回驚いてしまう。

 そしてそのまま味わうように耳の先を舐め、コリコリと耳の軟骨を優しく唇で弄ぶ。

 

 明確な気持ち良さでは無いけど、くすぐったいような痺れるような、どちらかというと気持ち良い、そんな感じだ。

 もう不快さは感じない。

 

 その舌触りも唇での感触も、全てが甘い音となって鼓膜を響かせる。

 直接鼓膜を震わせるような感覚は今までに感じた事の無い未知の感覚で、音に翻弄されるような気持ちになる。

 

 舐める音に時々吐息も混ざって耳の中に吹き付けられ、ぞくぞくとするような感覚も交じる。

 

 そして夢中になるカズヤは勢いのまま少しキツめに抱き締めてきて、それが今の私には心地良さすら感じてしまう。

 

 カズヤが口と身体を放す時、私はいつも物足りなさを感じるようなような状態だ。

 だけど、もっとして欲しいなんて言えるはずがない。

 今は流されそうになってるけど、冷静になればまだ、まだなんだから。

 

◇◆◇

 

 2人でザックの鍛冶屋へと向かう。

 

「おう来たか、それじゃ早速始めるか」

 

 ザックは待ってましたとばかりに作業服を渡してきた。

 ザックはザックで嬉しそうだ。そりゃそうか、伝説の鉱物を扱う機会なんてそうそうあるものじゃない。

 

 作業用の服、相当な耐熱効果が施された服に耐熱手袋、さらにサングラスのようなメガネを装備し、作業場に戻る。

 

「カズヤ、集中するから作業を始めたら話しかけるなよ」

 

「分かってるって、がんばれよ、ミキ!」

 

 ザックは適当なサイズまで砕けた鉱石、それはアースドラゴンの角だったもの、を大量に取り出して待っていた。

 

「ワシの合図で魔力を込めるんだ、出来るだけ純粋な魔力をだ。魔力を膨大に消費するから危なくなったら早めに言ってくれ、準備は良いか?」

 

「ああ大丈夫」

 

 こんな事もあろうかと、魔力回復用のポーションを里から持ってきているから大丈夫だと思う。

 

「それじゃ行くぞ!」

 

 ──カズヤが見守る中、オリハルコンの精錬作業が始まった。

 

 元々は黒かった鉱石は熱され紅く光り、それと同時に魔力を籠める事で銀色に輝きを放つようになっていく。

 そして不純物を取り除き、純粋なオリハルコンに精錬し、更に魔力を籠める。

 

 その作業がもう5時間近く続いている。

 

 全ての鉱石に魔力を通したところで休憩&食事となった。

 ザックの言った通り、大量に魔力を消耗する、魔力量の多い私でもなければとっくに魔力切れになっていた事だろう。

 持て余す事の多い魔力量の多さだったけど、こんなところでカズヤの役に立てるなんて嬉しい事だ。

 

 カズヤが気を利かせて食事を買ってきてくれていて驚いた、というか集中していたし回りを見るほどの余裕も無かったのでカズヤが買い物に行っていた事にすら気付かないほどだった。

 

 ザックも私も全身汗びっしょりとなっていて、水分を取って身体を拭き、3人で食事となった。

 

「カズヤ、ご飯の準備は有り難いけど、修行はしなくて良いのか?ザックの話しだとまだ数日は掛かるっていうし、何か高難易度なクエストでもこなして来たら?」

 

「そうだな、この後ギルドに行ってみるよ、丁度良いクエストでもあれば良いんだけど」

 

 そんな雑談をしながらの食事はさっきまでの緊張感のある作業とは違い、心が解されるようで安らぎの時間だと感じた。

 とはいえ、カズヤにはもっと強くなって貰わなければいけない、何日もここで時間を潰すのは勿体無い。

 

「よし、それじゃ次の作業に取り掛かるか」

 

「おう、任せろ!」

 

 立ち上がるザックにそう応え、自分も立ち上がる。

 

「カズヤ、ご飯ありがとな、絶対に凄い剣を作るから、カズヤも頑張れよ」

 

 そうカズヤに伝え、手を振る。

 

「おう、楽しみにしてるよ」

 

 そう応えるカズヤは、少し淋しそうだった。

 そんな顔をするなよ、私だって淋しい、だけどこれはカズヤの為だ、最高の武器を作る為に私の力が必要だと言われて断るわけにはいかない。

 

「そんな顔するな。私だって我慢してるんだから、それにこれはカズヤの為なんだぞ」

 

「分かってるって、……でもそうだな、ミキを不安にさせちゃ悪いから笑ってないとな!ミキ!任せた!俺は俺でさらに強くなって迎えに来るからな!」

 

「うん、待ってる!」

 

 そう応えると、カズヤはいつもの微笑みを見せ、ギルドへ向かっていった。

 私は私で気分を入れ替えて、集中しなければ!

 頬をパンパンを両手で叩いて気合を入れた。

 

「ザック!お待たせ!」

 

 ザックは静かに頷き、2人で鍛冶場へと向かった。

 

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