女エルフに異世界転生して親友(勇者候補)と再会する話   作:エイジアモン

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40.雷帝

 

 ドミニクの傷を嫌々ながらも癒し、戦況を見定める。

 

 覚醒状態のカズヤと相手は多分雷帝、雷属性同士の対決だ。

 今は互角にも見えるけど、どうなんだろうか。

 

 そして後方にはドミニクパーティのメンバーである女性が3人いる、ある程度の回復はしたけど、多分戦力にはならなそうだ。

 

 そして目の前には呆然とカズヤと雷帝の戦闘を目を奪われているドミニク、その姿は痛々しいものだ。この世界の回復魔法では傷が治っても欠損した部位、腕や足がくっつく事が無い。可哀想だけど、仕方が無い。

 それにこんなところにドミニクが突っ立っているとカズヤの戦闘の邪魔だ、下がっていて貰おう。

 

「ドミニク、ここにいると邪魔だから、下がってくれ」

 

 思わず不機嫌そうに、つっけんどんに言ってしまう。しまった、これじゃわざわざこっちに突っかかる口実を与えているような言い方じゃないか。

 しかし、ドミニクの反応は想定していたものとは違った。

 

「ん……ああ、わり。後ろで見てるわ……」

 

 いともあっさりと、後方の、女性たちの元へ戻って行った。そんなキャラだっけ?と思わずにはいられなかった。そういえば最初の「クソが」も以前のような軽さは無く、複雑な感情が入り混じったような口調だった気がする。

 

◇◆◇

 

 カズヤと雷帝を見ると、絶え間ない剣の交差が一旦おさまったようだった。

 向き合い、お互いに様子を見ているように見える。

 

 カズヤは覚醒状態を解いて、呼吸を整えている。

 

「バカな!なんで覚醒状態を解いた!?」

 

 後ろからドミニクが叫ぶ。何を言ってるんだこいつは。

 覚醒状態は燃費が非常に悪い、しかも相手が雷帝なら高出力を続ける必要があって、非戦闘状態なら覚醒を解いておくものだろう。

 それにカズヤは瞬時に覚醒状態になれる、だから今解いたからって問題は無い。

 それは勇者ロイのパーティメンバー、元勇者のジョセフにコツを聞き、特訓したおかげだと言っていた。

 多分ロイも同じように瞬時に覚醒状態を切り替える事が出来るだろう。

 

 ──まさかドミニクはそれが出来ない?……まあでも、疑問に持つとはそういう事なんだろう。

 技を磨かずにここまで来た、そんなところか。

 

「俺の名前はブリッツ、魔王様からは雷帝と呼ばれている。勇者よ、お前の名を教えろ」

 

 雷帝ブリッツが自己紹介し、カズヤに名前を求めてきた。

 この魔族の雷帝ブリッツ、魔王城で守りを任されているだけあって、知性も強さも兼ね備えてそうな雰囲気だ。

 そして雷属性とくれば絶対に強いだろう。雷属性って強いイメージしかないし。

 

「俺の名はカズヤ、そして後ろの女性が俺の相棒、ミキだ」

 

 それを聞いたブリッツは嬉しそうに応える。

 

「お前がカズヤか!今度こそ当たりを引いたようだ!歓迎するぞ、カズヤよ!」

 

 どういう事だ?カズヤに会いたい魔王幹部とか、そもそも勇者の個人指名って。

 

「カズヤよ、お前は巨人王、炎狼王、吹雪の女王を倒したそうだな。それに間違いはないか?」

 

「ああ、間違いない」

 

「な!?まじかよ!そんなバカな!」

 

 外野が、ドミニクが五月蝿い。一々反応するな。

 ドミニクを睨むと、口を押さえ、黙った。

 

 でもそうか、カズヤは魔王幹部を3体、ロイは龍王、ドミニクは地底の王と合わせて5体が討伐済みで、残る魔王幹部は2体。

 ここに雷帝がいて、残すは蜘蛛の女王のみ、既にロイの手で倒されている可能性はあるけど、それだけだ。

 つまり、それぞれ勇者毎にで対峙した強敵の数が違うと言う事、それだけの場数の違いがあったという事で、カズヤとドミニクでは経験値が全然違ってて、カズヤはいつの間にかドミニクを大きく超えていた、という事なんじゃないだろうか。

 

 そもそもの姿勢がカズヤとドミニクじゃ違うとは思うんだけどね。

 カズヤは強さに驕らず鍛錬を欠かさなかった、対してドミニクは覚醒すらまだ自分のものにしてない可能性が高い、そこの意識の差が今出ていると思う。

 

「良いぞ、本当に当たりだ、間違いの無い強さだ。俺の動きについてこれるなんてな!俺は嬉しいぞ、カズヤ!」

 

「ああ、なんか分からんけど喜んで貰えて嬉しいよ、ついでにあっさり倒されてくれたらもっと嬉しい」

 

「それは出来ない相談だ、俺は魔王幹部最強だからな。では次からは本気で行くぞ、カズヤよ、俺をガッカリさせずに楽しませてくれよ」

 

 またバトルジャンキーか、戦い大好きか。

 だけどそうでもないと魔王幹部最強まで上り詰める事は出来ないのだろう。

 

 カズヤはニヤリと笑い、言い放った。

 

「ああ、俺も次からは本気で行くぜ!」

 

 私はすかさず2重詠唱で身体強化などの支援魔法を掛け直し、戦闘準備をした。

 

◇◆◇

 

 カズヤが黄金覚醒し、ブリッツとの間合いを詰める。

 カズヤの武御雷とブリッツの持つ、雷が具現化したような光る剣が交差する。

 

 私に出来る支援は多くは無い。普通の魔法攻撃ではカズヤも巻き込む可能性があるからだ。

 それに2人の動きが速すぎてタイミングを合わせて、というのも難しい。

 

 だから、私は見守るしかない。

 

「カズヤ!こんなものか!?本気を出せ!!」

 

「残念ながらッ!とっくに本気なんだ!ブリッツ、お前はまだ本気じゃ無いってのか!」

 

「実は俺もとっくに本気だ!こんなにヒリつくのは久しぶりだぞ!最高だ!」

 

 2人とも本気だと言っているが、私にはまだ余裕がありそうに見えた。お互いに手の内を探っていそうな、そんな感じだ。

 

 2人はまた距離を離した。

 

「カズヤ!このままじゃ埒が明かないなあ!どうだ、お互いの奥義を打ち合って終わりにしようじゃないか!」

 

「ようやく本当に本気を出す気になったか。良いだろう!!行くぞ!」

 

 カズヤは構え、私を見た、私は意図を察し、頷いた。

 

「お互いが奥義を同時に打ち合う、それで良いな?」

 

「応!!」

 

 カズヤは応えて奥義を出す為のタメを作る、私はそれに合わせて雷霆の魔法をカズヤの武御雷に放った。

 これがカズヤの最終強化、最強のカズヤだ。

 

「「いくぞ!!」」

 

 同時に駆け、稲妻が走った。

 

極光(きょっこう) 稲光(いなびか)り!!!」

笑倣江湖(しょうほうこうこ) 雷鎚極(らいついのきわみ)!!」

 

 眩しく稲光、大落雷の如き破壊的に大きな音が耳をつんざく。

 

 目が慣れてきた頃、2人の姿はまたしても距離を離して立っていた。

 まさか!カズヤの剣が効いていないというのか!?私の雷を武御雷に受けて、最強状態のカズヤの技で倒せていないなんて。

 

 でもさっきの技、雷鎚極は意外だった。あれは雷の塊をハンマーのようにぶつける技で、斬る為の技というより雷属性をぶつける技だからだ。だからてっきり稲妻雷光斬を繰り出すものだとばかり思っていた。というか、そっちが最強技だったはず。何か意図が?

 

「カズヤ!楽しいなあ!お前のような勇者に出会えて嬉しいよ。楽しくてしょうがない!!なぜなら!お前との勝負、俺が必ず最後には勝つからだ!──どうしてか教えてやろうか?お前の最強技、アレは中々良かった、素晴らしい雷の技だ!……しかし残念な事に俺に雷は効かない!だからお前が雷を扱う限り、俺に勝てない!!」

 

 その通りだ、雷が効かない。というか雷帝なんだからそんなの予測つかないか?これ、ヤバいんじゃないのか!?

 それを聞いたカズヤは武御雷を肩にかけ、ニヤリと笑った。

 

「最強の雷技なら雷無効を上回るんじゃないかと思ったけど、やっぱ効かないか、まあそんなとこだと思ったよ、参ったね」

 

「フハハ!!その通り、お前の技は効かん!今度こそ終わりにしてやるぞカズヤ!我が奥義を喰らえ!!」

 

 その瞬間、またしても同時に稲妻が走る。

 

獄雷極光(ごくらいきょっこう)神鳴(かみな)り!!」

「天剣絶刀!! 稲妻雷光斬!!」

 

 またしても稲光、轟音がとどろく。

 その技で打ち合う瞬間は、もう私の目では追えない。それほどに速い、本当に光速なんじゃないか、そう思えるほどに。

 私はハラハラしていて、ただ無事を、勝利を祈るしか無かった。

 

 2人が交差した後、構え直したのはカズヤだった。

 

「な、何故だ、俺に雷は効かないはず……」

 

「そうだなブリッツ、お前に雷は効かない、だけど斬れないわけじゃない。稲妻雷光斬は雷の力を利用して加速し、剣に勢いを乗せる技で雷属性そのものは大した事は無い。極論、ただの光速の剣撃だ。だから相手の属性に関係無く斬る」

 

「そんな……バカな……」

 

「それじゃここまでだ、雷帝ブリッツ、俺も楽しかったよ。──成敗!!」

 

 カズヤはいつもの決め台詞と共に武御雷を払い、ブリッツは血しぶきを上げ、絶命した。

 武御雷を立て、鞘に収めて言う。

 

「お前は一番の強敵だった、だけど、それでも俺達2人の敵じゃない」

 

 そう言って、私に振り向き、笑顔を見せてくれた。

 

◇◆◇

 

 カズヤが4人目の魔王幹部、雷帝ブリッツを倒した。

 

 相手は最強の幹部だと言うのに余裕が感じられた。これは本当に魔王も楽に倒せるんじゃないか、そう思えた。

 

「カズヤッ!!」

 

 カズヤに駆け寄り、飛びつく。カズヤも両手を広げて迎え入れてくれて、抱え上げてくれた。

 

「なんだよー、心配かけさせやがって!なんで最初から稲妻雷光斬しなかったんだよ!」

 

 思わずの文句だ、だってそうだ、最初から全力ならそこで終わってた、こっちもハラハラする必要なんか無かったのに。

 

「いやー、なんとなくだけど、ああいう奴は奥の手を隠してそうだからな、相手に本気を出させてからそれを上回る技で倒す、みたいな美学とか持ってそうなやつだった。実際、最後は明らかに1番の技っぽい名前だっただろ?それに雷無効に通用する雷技ってロマンあるだろ?……でもそうだな、ミキの言う通りだ、心配掛けてゴメン」

 

 確かに強い相手だった、カズヤもバトルジャンキーの気質があるのは分かってた、だけど、うん、そう思ってしまうのもしょうがないのかも知れない。

 それにカズヤに素直に謝られると私は弱いのだ。 

 

「しょうがない、許す!でも気を付けてよ、魔王相手にそんな事するなよ!」

 

 と、一応釘を刺しておく。まあ、あんまり効果は無さそうだけど。

 

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