女エルフに異世界転生して親友(勇者候補)と再会する話   作:エイジアモン

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44.ロイの回想

 

 魔王城へと着いた。

 もう門番は倒されていて一番乗りじゃなかったのは残念だったけど、6人全員無事でここまで辿り着けた事を喜ぼう。

 

 俺は勇者ロイ、魔王討伐に向かった3人の勇者の一人だ。

 俺のパーティには幼馴染で今は恋人同士となったレンジャーのクラウディアと、そのお父さんで俺の師匠の元勇者ジョセフさん、そしてもう一人幼馴染の戦士ウィンダム、そしてここまでの旅で仲間となった双子シスターのエリンとコリンの6人だ。

 

 覚醒も使いこなせるようになって、発動も早くなり出力も上がって持続時間も長くなった。

 俺の覚醒は紅い炎の爆炎覚醒、師匠は蒼い炎の蒼炎覚醒だ。

 

 師匠はよく俺の事を「バカ弟子」と呼ぶがその言葉に反して表情には厳しさと優しさが溢れている。だから俺は「バカ弟子」と呼ばれるのも嫌いじゃない。 

 

 師匠は現役を引退していた事と40過ぎという年齢から、流石に長時間の覚醒持続は出来ない、だけど短い時間なら今でも俺と変わらない出力を出せる。

 師匠はよく「ロイは戦闘力だけならもう儂を超えたな」と言っている。

 だけど俺は師匠を超えたとは思っていない。師匠の出力を大きく超え、師匠を安心させて引退して貰いたい、クラウディアと一緒に面倒を見るから俺の義父としてゆっくり過ごして欲しいと思っている。

 それが恩返しだ。

 

 さて、俺たちはここまでの旅で魔王幹部の一人、龍王リバイアサンを倒して名実共に立派な勇者の仲間入りを果たし、強くなったと思う。

 だけどまだまだ、魔王を倒すにはもっと強くならなくては、と思う事しきりだ。

 

◇◆◇

 

 魔王城に入り奥へ進んでいくと、地下への入口を発見した。

 そして地下に降りるとそこには俺とは別の勇者ドミニクとそのパーティがいて、一緒に休憩して交流をする事になった。

 

 ドミニクは街の人たちから聞いていた印象とは違い、見た目に反して気の良い奴で、気さくなやつだった。

 やはり人の噂というのは当てにならないものだと痛感する。

 

 カズヤといいドミニクといい、それに何と言っても師匠だ。やはり勇者とは相応の人物に授けられるものなのだと思う。だから俺も勇者の端くれとして、その肩書に恥じないようにしなくてはと気持ちを新たにした。

 

 休憩を終え、分岐路でドミニクたちと分かれる事となった。

 

 やはり地下は上と違い複雑で、何度か迷いながら、出現する魔物と戦いながら進むと、クラウディアが戦闘が行われている音がすると伝えてくれた。

 こんなところで戦闘となれば勇者と魔物の戦闘だと思われる。となるとドミニクか、もしくはカズヤか、そのどちらかだろう。

 

 念の為、俺とクラウディアだけで偵察する事にした。

 消耗していた師匠たちを休ませる口実でもあったけど、俺たち2人なら気配を隠せるし、行動速度も早い、様子見には丁度良く、今まで何度も2人だけの偵察はしてきたからだ。

 ……告白をしたのも偵察中だったのは秘密にしてたはずだったんだけどなあ、何処でバレたのやら。

 

 と、それはさておいて、部屋を覗き込むと、そこではカズヤが戦っていた。

 相手は間違いなく魔王幹部クラス、それも相当に強い魔族だ。

 奥を見るとドミニクとその仲間たちがいて、ドミニクは右腕を失くしていた。

 

 一体何が起きていたのかは分からない、だけど、カズヤと魔王幹部の戦いは非常にレベルの高いものだった。

 

 特に驚いたのはカズヤが覚醒を瞬時に発動出来る事だ。俺でも、師匠ですら出来ない事をカズヤがしていて、その出力は大きく上回っていた。

 

 そして俺が驚いている間に、何も理解出来ないままに戦いは終わった。

 カズヤの圧勝のように見えた。

 

 俺は確信した。

 今、勇者の中で最も魔王討伐に近いのはカズヤだと。カズヤとミキさんのコンビは俺たちより強いと。

 

 クラウディアもそれを感じたのだろう、不安そうに俺を見つめていた。

 俺は何も言えず、みんなのところへ戻るため肩を叩いただけだった。

 

 この事はみんなには言えない。言えば、対抗心を持つにしても、何か思うにしても、良い方向には向かわないだろうから。

 それに、みなは俺を一番の勇者だと信じてついてきてくれている、その思いを裏切りたくない。

 

 

 ──いや、それは嘘だ。

 本当はカズヤの強さを見て、みなの心が揺らぐのを俺が見たくないからだ。

 俺を一番だと思って欲しい、俺を褒めて欲しい、俺を認めて欲しい。それが無くなるのが嫌だ。見捨てられたく無い。それが俺の本音だ。

 俺の醜い自己承認欲求が顔を覗かせて、それをまざまざと自覚させられていた。

 

 クラウディアには口止めだけをし、みなの元へ戻った。

 

◇◆◇

 

 カズヤたちと合流した。

 

 カズヤは相変わらずで、そう、あれだけ強くなっているにもかかわらず、何も変わっていなくて心から安堵した。

 そしてミキさんは相変わらず美人で、綺麗さは世界で一番だとすら思う。

 カズヤを羨ましいと思った事が無いかと問われれば、無いと言えば嘘になる。だけど俺の心はクラウディアだけだ。ミキさんは綺麗だとは思うがそこまでだ。

 

 カズヤはドミニクの事を何も話さなかった。

 あの怪我だ、もう戦えないと判断したのだろう。

 

 この先に魔王幹部らしき気配がすると伝えるとカズヤはさっきの雷帝を含め、すでに4体倒しているから譲ると言ってくれた。

 4体も!……それが俺とカズヤの差だろうか。

 

 それにしても、魔王幹部を4体も倒しているだけあって余裕が感じられる。

 あれだけの強さだ、そりゃあ余裕も出てくるか。

 

 そう、あれだけの強さがあれば、俺だって。

 

◇◆◇

 

 蜘蛛の魔物が大量にいる大広間に入った。

 

 想像以上の数に気圧され、動けないでいると、カズヤが道を作ると言って魔物を倒しだした。

 これだけの数に気圧されず、すぐに対応出来るなんて、そんな事が出来るのは戦闘経験豊富な師匠だけだと思っていた。

 

 そしてミキさんが大きな雷の槍を出す魔法を2つ同時に唱え、奥まで一直線の道を作ってくれた。

 またしても圧倒される、そんな事が出来るなんて。

 エリンもコリンも一般の冒険者より優秀だ、トップクラスと言っても良い。だけどそれが霞んでしまう。

 エリンとコリンを見ると、対抗心を持つより、ミキさんを憧れの人を見る目に変わっていた。

 それはつまり、自分たちはライバルではないと認めたという事だった。

 

 自分たちとカズヤたち、圧倒的な格の差を感じざるを得なかった。

 

◇◆◇

 

 ミキさんに作ってもらった道を進み、奥まで到達すると、そこには女性が3人いた。

 

「ああ、助けて下さい勇者様!!蜘蛛の魔物に囲まれて逃げるに逃げられず、困っておりました」

 

 明らかに嘘だ、こんなところに人がいるはずが無い。

 騙されるわけがない。馬鹿にしている。

 

 ──だけど、俺たち、いや、俺と師匠とウィンダムの男たち3人は女性から目が離せないでいた。

 

 女性3人はみな美人で、美しい、ミキさんほどではないけど、十分に綺麗だ。

 そしてその出で立ち、白を基調とした綺麗なドレスの大部分が破れ、白いベールで覆うのみとなっていて、女性らしい曲線や秘するはずの場所が透けて視えていた。

 目を奪われるなという方が無理な話だ。

 

「バカ弟子よ、これは罠だ、気を抜くでないぞ」

 

 師匠は目を離さずそう警告した。

 分かっている、目の前の女性は魔物の化けた姿だ。分かっているのに、男のサガなのか手が出せない。

 

 女性たちが俺たちの方に手を伸ばし、招き寄せる。

 俺も、師匠もウィンダムもふらふらと引き寄せられつつあった。

 

旭光の矢(ライジングアロー)!!」

 

 そんな時、後方から光の矢が飛んできて、真ん中の女性に突き刺さった。

 

「ちぃ!後少しのところを邪魔しおって!!」

 

「まったく男連中はだらしないったら!!」

 

 動けない俺たちを尻目にクラウディアが牽制をしてくれたのだった。

 

 女性たちの下半身が蜘蛛の姿へと変化し、ドレスやベールを破って見る見る大きくなっていく。身体に纏われていた白いドレスやベールは蜘蛛の糸で出来ていた代物だった。全高3メートルといったところだろうか、それだけの大きさとなった。

 女性の上半身を持つ蜘蛛の魔物、それが女性の正体だった。

 

「すまない!助かった!エリン!コリン!支援を頼む!」

 

「ハイ!」

「まかせて……」

 

 支援魔法が掛かっていく、力の充実を感じる。

 

「蜘蛛の魔物よ!お前が魔王幹部、蜘蛛の女王で間違いないか!」

 

 真ん中の一番大きい蜘蛛の魔物を指差し、尋ねる。

 

「いかにも、妾が蜘蛛の女王、女郎蜘蛛のきぬ、この2人は妾の従僕、牛鬼と土蜘蛛だ」

 

 そう言った直後、何かの魔法が掛けられた。

 俺はなんとも無かったが、師匠とウィンダムが頭を抱えた。

 そしてウィンダムはそのままぼんやりと直立不動で立ち尽くした。

 

「ウィンダム兄ちゃん!!」

「お兄ちゃん……!!」

 

 エリンとコリンが叫ぶ。

 2人はウィンダムに懐いている、大きな身体がお気に入りのようでよく2人で挟み込み抱き付いていた。

 そして力持ちなウィンダムも2人を持ち上げたりしてよく遊んであげている。

 

「ロイ!クラウディア!あれは多分魅了の魔法だよ!解除するから攻撃を仕掛けて!」

 

 エリンの素早い判断と指示が飛んだ。

 

「!!」

「分かった!」

 

 俺は魔法抵抗の指輪をしていたので魅了の魔法には掛からなかったのだった。

 まだ師匠が頭を抱えて抵抗をしていたけど、あの状態じゃ戦う事も出来ないだろう。

 

 女王たちの魔法を止めるために攻撃を仕掛けて詠唱を止めさせて解除した。合わせて抵抗魔法をかけて貰っていた。これで魅了の魔法はもう大丈夫だろう。

 

 その後、俺と師匠が覚醒し、戦いに挑む。

 

 まずは取り巻きからと、師匠は牛鬼を目標に定めた。

 息を合わせる様に俺と師匠で炎の技を繰り出し、追い詰めていく。

 そして攻撃の合間を埋める様に、クラウディアは適時に魔族に有効な光属性の弓技でフォローしてくれて、魔物に隙を与えないでいた。

 

 師匠は牛鬼の背後を取り大技を繰り出した。

 

「蒼炎奥義 大車輪!!」

 

 自身を前転回転させ、蒼い炎を纏った剣で牛鬼の人間部分の頭から、そのまま蜘蛛の頭と胴体部分まで一気に切り裂いた。

 

「ばくはぁつッッ!!!」

 

 掛け声と共に切り裂いた部分が爆発し、牛鬼を倒した。

 続けて土蜘蛛は俺と師匠の合体技で倒した。

 

「爆炎奥義!」

「蒼炎奥義!」

 

「「双極獄炎斬(そうきょくごくえんざん)!!」」

 

 と、牛鬼と土蜘蛛を倒したところで師匠の覚醒はとけた。

 

「すまん、儂はここまでのようだ、後は頼むぞロイよ」

 

「任せて下さい師匠!」

 

 師匠が牛鬼を倒してくれたお陰で俺の消耗は少ない。これならまだいけるはずだ。

 

◇◆◇

 

 女王はやはり師匠抜きでは厳しいと感じていた。

 炎を操り、炎属性に強い事も俺には不利に働いていた。

 

 クラウディアの光属性の攻撃には魔族特攻があるので非常に助かっている。

 エリンとコリンは単独の攻撃魔法ではなく、2人力を合わせての合従魔法で攻撃をしていた。

 そしてこのレベルになると盾役のウィンダムは文字通り死に物狂いで後衛の盾として働いている。ウィンダムのお陰で俺は後衛の防衛を考えずに戦える、目立たないけど大事な役割で感謝している。

 

 そして、それでもやはり従僕の牛鬼や土蜘蛛と違い、女王の強さは幹部らしく別格だった。

 戦闘は膠着状態、いや、こちらが不利になりつつあった。

 そもそも制限時間のある覚醒に長時間戦闘は向かないのだが。

 

「でかいのかますよロイッ!!」

「それなら私も!」

「一緒……に」

 

 クラウディア、そしてエリンとコリンが均衡がを崩す為に大技を撃ち、一気に倒しに行くようだ。

 俺は女王に牽制をし、大技のための時間を作る。

 

 それにしても、女王と対峙していると不思議な感覚に襲われる。それは魅了の魔法ではない、魅了の技、気持ちが惹かれてゆくのを感じ、攻撃の手が緩みそうになる。

 その度にクラウディアを頭に浮かべ、精神の正常を保っている。

 

 そして、クラウディアの技が発動する。

 

「必殺必中!旭日の極み(ライジング・サン・アロー)!!」

 

 技を叫び弓を発射すると、光の矢が10本ほどに別れて扇状に広がり、その全てが女王目掛けて飛んで行き、女王を貫いた。

 続けざまにエリンとコリンの合従魔法が発動する。

 

「「合従魔法!氷獄(ひょうごく)の檻!!」

 

 女王の周りを無数の氷柱が囲み、女王に向かって連続で突き刺さる。

 

 弓技、合従魔法、共に女王にダメージを与えた。

 残るは俺が全力で止めを刺すだけだ。

 

「うおおおぉぉぉッ!!!」

 

 気合いを入れる、全身に力を漲らせ、手に力を集め、俺が持つ最強技で止めを刺す!

 

「超級奥義!!超爆炎豪爪斬(ちょうばくえんごうそうざん)!!」

 

 俺の拳が真っ赤に燃え上がり、剣を伝って剣の炎も激しく燃え盛る。

 剣を叩きつけると、女王の爪で防がれた。しかしそのまま剣を捨て、勢いのままに燃え盛る炎の爪を振るい、女王の身体を切り刻んでいく。

 そして最後には女王の頭を掴んだ。

 

「これで終わりだッ!!爆発!!!!」

 

 その言葉と共に身体についた傷が連鎖爆発し、女王の頭ごと全身が崩壊した。

 

 俺たちはなんとか蜘蛛の女王を倒したのだった。

 これならカズヤとも肩を並べられる、そう思っていた。

 

◇◆◇

 

 次に現れたアーシェラー、俺はここではっきりと、俺たちとカズヤとの差を身を持って実感させられた。

 

 アーシェラーは俺や師匠など眼中にない様子で、カズヤと師匠、3人の息を合わせる事でやっと戦いに参加出来る、それほどに強かった。

 そして問題は、俺と師匠はそうする事でやっと戦えるのに対し、カズヤは俺たちと息を合わせる為に手加減をしているという事だ。

 

 アーシェラーは本性を表した。

 3つの顔に6本の腕、さらに強さを増していた。

 

 俺の心は揺れ動いていた。

 

 このまま3人で戦ったとして、勝ったとして、カズヤは力を制限し、しかし覚醒で力を消耗した状態でこの後に控える魔王を相手に、果たして勝てるだろうか。

 

 ここで俺たちが残ってアーシェラーを相手して、カズヤたちには先に行ってもらい、力を温存したままの状態で魔王と戦って貰った方が、遥かに勝てる可能性は高いんじゃないか、そう思った。

 

 だけどそうした場合、俺たちでこのアーシェラーに勝てるのか。それは正直、厳しいとしか思えない。

 だけど、俺たち勇者の目的は魔王討伐だ、だったら、俺は1番その可能性が高い方法に賭けるべきなんじゃないのか?

 カズヤの力は抜けている、さらにミキさんの力が加われば俺たちでは足元にも及ばない、でも、だけど。

 ──迷い、決められずにいた。

 

 そんな時、師匠は俺の肩を叩いてくれた、それは俺の心を見透かし、力強く後押ししてくれたような、そんな気がした。

 振り返ると、みんなが俺を見ていた。その目は俺を心から信頼してくれていた。

 誰も俺に不信感を持ったり、見捨てる様な顔じゃなくて、俺の決断を、言葉を、待っている様だった。

 

 不信感を持っていたのは俺だけだった、カズヤを見て自分を信じられなくなった俺が、みんなを信じられず、みんなも同じ様に思ってると、そう思い込んでいた。

 あの時のクラウディアの不安そうな顔も、今思い返せば俺の事を心配していたと分かる。

 俺が間違っていた、みんなと一緒なら、アーシェラーもきっと倒せる。そう思えた。

 

 ──俺は、やっと覚悟が出来た。

 

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