女エルフに異世界転生して親友(勇者候補)と再会する話   作:エイジアモン

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50.エピローグ ~2人のその後~

 

 魔王討伐から7年の歳月が経った。

 カズヤのたってのお願いにより、寿命を延ばす方法探しの旅は2年延長して7年となり、その7年目も終わろうとしている。

 

 カズヤももう25才だ。

 肉体的には戦闘経験込みで最盛期、ではあるんだけど、魔王のような強大な敵はいないからあの時から更に強くなったのかは分からない。強さを図る尺度が無いからだ。

 

 それはさておき、もう7年だ。もう旅は終わりにしたい。

 寿命を延ばす方法なんかあるわけ無いと思っている私。残りの時間を考えたら、私はもっとゆっくりカズヤと一緒にいたい。

 旅で一緒といっても、安全な場所で過ごすのとはわけが違う。

 

 私は家で2人でゆっくりくつろいだり、2人で街に出掛けたりして楽しみたいんだ。

 もっと、カズヤとイチャイチャしたいんだ。子供だって欲しいし。

 

 もう旅は終わりにしよう。

 カズヤの短い残りの時間を大切に生きよう。

 

 明日、もう旅は終わりにしようと言わなければ。

 

◇◆◇

 

 カズヤにもう旅を終わりにしようと言うと、やはりというか、予想通り旅の期間延長しようと言ってきた。

 だから、私の気持ちを、やりたい事を、もう待てない事を伝えた。

 

 流石にこれはカズヤにも効いたようで、悩み、考え出した。

 そして考えた末、カズヤは最後の一つだけのお願い、として泣きの一手をお願いされた。

 私はそれで本当に終わりだからね。と念を押し、それを了承した。

 

 その内容とは、後3ヶ月だけ、エルフの里で何か手掛かりが無いか調べて貰う、という事だ。

 

 私はあれから一度も里には帰ってない。結婚報告もしていない。

 そう思うと一度報告も兼ねて里帰りしても良いかも知れないと思った。

 カズヤは里には入れないので、王都の図書館でそれらしき文献が無いか調べてもらう事となった。

 

◇◆◇

 

 久しぶりの里帰りだ、といってもたった7年程度だけど。

 里のエルフからすれば出掛けたと思ったらすぐ帰ってきた、忘れ物かな?くらいの感覚だろう。

 

 両親に結婚の報告をする。

 最初は祝福してくれたけど、相手が人間だと知ったとたん、態度が変わった。

 興味を失い、別に報告なんか要らないのに、と言われてしまう。

 

 理由は簡単だ、相手が人間だからだ。

 相手の人間が死ぬまでせいぜい後50年、それは何千年と生きるエルフにとっては短く、一般的なエルフが里から出掛けて帰るまでの間隔よりも短い。エルフは平気で100年単位で出掛けるからだ。

 エルフの世界ではその間隔が普通だ。400年と少ししか生きてない私も以前はそうだった。

 

 その後はエルフの長老に挨拶し、過去の書物や記録を調べる許可を貰う。

 長老は以前からエルフにしては勉強熱心な私を気に入ってくれていて、あっさりと許可が下りた。

 

 ちなみに両親にも長老にも魔王討伐の事は話してない。エルフにとって魔王などは興味の無い外の世界の出来事だからだ。

 エルフの里は人間の世界とは違う異空間にあり、そこで自給自足で生活も出来る。

 だから魔王の脅威にしても極論、魔族よりは交流しやすい人間が絶滅すると少し面倒くさい、という程度だ。

 

 だから魔王の話をしても意味が無いし、興味も持たれない。

 

◇◆◇

 

 蔵に籠もり、毎日記録や書物を漁る。

 本当は手を抜いて、寿命に関する記録は無かった。とカズヤに報告しても良いんだけど、カズヤの最後のお願いだ、手は抜かずにちゃんと調べていた。

 

 期限の3ヶ月が近づき始めた頃、そろそろ諦めようかと思い始めた時、それは見つかった。

 

 はっきりとに"寿命を延ばす"というものでは無かったので見逃していたけど、ふと気に掛かってなんとなく眺めていたそれは、秘宝についての情報だった。

 

 それは"寿命の半分を分け与える"という秘宝だった。

 詳細は分からないが、千年以上昔、人間の錬金術師が作り出した物であるという。

 その秘宝は今は失われた国の宝物庫に収められた、という事だった。

 

 寿命を延ばす秘宝は存在した、今でもそれが残っているかは分からないけども。

 風化して失われてもおかしくないし、盗掘士どもに奪われてそこには無い可能性もある。

 だけど、それは存在したのだ。存在してしまったのだ。

 

 これをカズヤに言うかどうか迷う。

 言わなければ私たちはあと数十年は幸せに暮らせるだろう。

 だけど、これの存在をカズヤに知らせてしまったら、何年、最悪何十年とこれを探し続ける事になるのだ。

 見つかる可能性の方がどう考えても低い。

 カズヤの短い人生を、今も存在するか分からない物のために使う事になるんだ。

 

 大きなため息が出た。

 

 ──私は悩んだ。期限ギリギリまで、書物を前にして、ずっと悩み続けた。

 

◇◆◇

 

 私は結局、秘宝の事をカズヤに伝える事にした。

 カズヤが喜ぶ様を想像し、秘宝を見つけて長く、なが~~く一緒に過ごす事を想像したら、無かったと伝えてがっかりするカズヤより良い、という結論に至ってしまったのだった。

 

 ただし、何十年と探し続けるつもりはないので期限は設けさせてもらった。5年だ。

 5年後カズヤは30才、それ以上私は待てなかった。

 食い下がるカズヤに対し、私は泣き出してしまった。そしてカズヤは黙ってそれを受け入れたのだった。

 

 こんなのは卑怯だと思ったけど、自然と涙が溢れて止まらなかった。

 私はただ、カズヤとの残りの時間を大切にしたいだけなのに、なんで何度言っても分かってくれないのか、それが悲しくなったのだった。

 

◇◆◇

 

 それからすぐに秘宝を探して旅に出発した。

 場所については大体の目処があって、その地方で探索を続けた。

 

 宝飾探知や宝物探知など、里に戻った時に役に立ちそうな魔法を新たに覚えて、それらを駆使して探し回った。

 

 そして、4年が過ぎ、5年目に差し掛かった頃、カズヤ29才。何度目かの宝物反応があった。

 

 既に何度も宝物探知で宝物庫が見つかっていて、今までは目当ての秘宝は無かったけど、文字通り宝物を発見し、私の魔法袋には財宝だけが貯まっていった。

 

 何度も宝物庫荒らしをしていれば手慣れてくるもので、魔法で邪魔な地形を吹き飛ばし、目的地まで一直線。そしてそこにはお宝もしくは当時はお宝だった数々の物。

 

 地下何十mという場所にあったそこは如何にも古く、歴史を感じさせる厳かな代物だった。

 そして、その一つに目当ての秘宝が有った。

 

 見た目は飾り気のない壺に取っ手が左右についている、それだけの物だった。

 そしてそこには丁寧にも秘宝の説明書きが記してあった。

 

 この秘宝はどうやら、人間を対象として取っ手を持つ者の残りの寿命半分を、取っ手を持つもう一人に分け与える効果を持つ物で間違いが無いようだった。

 ただし、効果を受ける者の元々の残り寿命は計算されず、残り20年なら2人とも残り10年で寿命を迎える、という事のようだ。

 

 さて、問題はそれが他種族、つまり私のようなエルフの場合はどうなるか?

 それに関しては記されていない、あくまで人間同士を想定して作られた秘宝のようだった。

 つまりエルフの何千年という寿命を分けたからと言って、カズヤまで何千年と伸びるかは分からないし、私も残り数十年程度の寿命になるかも知れない。

 想定されていない運用は何が起きても不思議ではない。そういう事だ。

 

 しかし、例え結果的に寿命が短くなろうとも、同じ時に死ねるのなら、それはむしろ望む所だった。

 私たちはその秘宝を見つけた事を多いに喜び、抱き合って涙を流した。

 早速使おうか、そんな気分にまでなって秘宝を持ち上げた時、ある一文に気付いた。

 

 その秘宝には以下のような注意書きがあった。

 

 ──使用者は生殖機能を失う──

 

 私たちは顔を見合わせ、とりあえずその場での秘宝の使用は取りやめ、秘宝を魔法袋へ収納して近場にある街へと戻った。

 

◇◆◇

 

 街に戻った宿で私たちは今後の計画を立てた。

 

 生殖機能を失う、という事実を私たちは大きく受け止めていた。

 その結果、まず子供を2人設け、人里離れた場所に家を建て、そこに住む事に決めた。

 

 子供を2人作る事は以前からの私の要望でもあった。

 そうして、エルフと人間の間に子供は出来にくいのだけど、頑張って5年で一男一女の子供を設ける事が出来た。

 さらに人里離れた森の中に家を建て、そこで家族4人で暮らし始めた。

 

 長男はリク、長女はソラという名前にした。現在4才と1才の兄妹だ。

 子供たちはいわゆるハーフエルフ、寿命は5~600年程度と言われている。

 人間からもエルフからも別の種族として扱われる。

 だからこそ、こうやって人里離れた場所に家を建てたのだ。

 ここなら、子供たちは安全に暮らせる。そういう場所を作ったつもりだ。

 

 そしてカズヤ35才。

 カズヤは髭を伸ばし、それ相応な見た目へと変化していた。体力も全盛期とは比較にならないほど落ちてきていて、傍から見ていても老化を感じるようになった。

 それでも相手が魔王でもなければ負けないだろうけど。

 

 そしてとうとう、やっと秘宝を使う事になった。

 

 寿命は伸びるのか、何十年、もしく何百年、はたまた数千年か。

 だけど、一緒に死ねるのなら、それならば何年でも良い。ああでも、せめて子供たちが成人するまでは生きたい。その後なら、いつでもどんと来い。そんな気持ちだ。

 

 小さな子たちが見守る中、私とカズヤは秘宝の取っ手を掴んだ。

 魔力を込め、起動の呪文を唱える。

 

 光が私の手から取っ手を伝い、反対のカズヤが持つ取っ手へ、そしてカズヤへ移る。

 私とカズヤの身体が一際光り、収まった。

 

 ……。

 特に身体や体調に変化は無いようだ。

 カズヤも特に違和感は無いと言っていた。

 これで本当に寿命を分け合えたのだろうか、実感が無かった。

 

 そして、私たちはいつもの日常へと戻っていった。

 

◇◆◇

 

 私たちがいつ死んでも良いよう、子供たちには一人でも生きていけるよう、私とカズヤで英才教育を施した。

 勉強は当然として、私からは魔法、カズヤからは剣技を、みっちり教え込んだ。

 そして子供たちは才能も受け継がれたのだろう、しっかりとそれに応えてくれた。

 

 10年が立ち、カズヤ45才。長男リク14才、長女ソラ11才、子供たちはまだ若いながらも優秀だと思うのは親バカなのかも知れない。

 成長速度に関してはやはり人間と同じように思う。

 

 ああそうだ。生殖機能は確かに失われた。

 そしてそれが失われていても、愛し合う事は出来ていた、あくまでも子供が出来なくなるだけでそれ以外の機能は残っていた。それは嬉しい誤算だった。

 

 そして、その頃に私はある事に気付いた。

 カズヤがどうも若返っているような気がしたのだ。

 髭面で分かりにくいけど、肌の張りが戻っているし、目元も皺が減っているような気がした。

 

 それをカズヤに伝えると、早速髭を剃っていた。

 その後すぐ、慌ててカズヤが戻って来た。

 

 10年ぶりにスッキリした顎と頬、いやそれより、45才のはずなのにまるで20代のような肌の張りと艶、明らかに若返っていた。

 

 カズヤもそれを感じているようで、2人で何故だろうかと話し合った。

 そして出た結論は、長命種はずっと若い最盛期の姿を維持し続ける。

 それはつまり、常に若い細胞になって若返っているからじゃないか、という結論になった。

 

 最盛期までは人間と同様に成長し、それからずっと最盛期の姿を維持し続け、老化が始まると人間と同じように老化していく、それはつまりこういう事なんだろう。

 

 髭を剃って若返った姿は子供たちからは知らない人が居るみたい、なんて言われて落ち込んだりもしたけど、すぐに若々しくて元気な父親に慣れていったのだった。

 

◇◆◇

 

 その後、リクは冒険者になりたいと言って家を出て行った。

 ソラもその数年後に兄と同じように外の世界に出て冒険者になりたいと出て行った。

 

 子供は巣立つものだと理解はしていたけど、いざとなると寂しいものだ。

 カズヤは大層悲しんだけど私には分かっていた。

 子供たちは帰ってくる、と。

 

 私にも経験があるからだ。初めてエルフの里を出た時、私はまだ前世の記憶がハッキリとあった頃で、人間との生活なんてすぐに馴染む、そう思っていた。子供たちはハーフエルフで半分人間だから似たような感覚なんだと思う。

 だけどそれは間違いだ、10年もすれば身に染みる。自分は人間とは違うのだ、と。

 自分だけが年を取らず、環境だけが変わっていく。それを初めて経験する時は精神的にきつい。頭では分かっていても実体験ではやはり違うものなのだ。

 

 そして私の読み通り、10年もする頃、子供たちは帰ってきた。

 だけど、それは私の予想とは違う形での帰還だった。

 

 それぞれが結婚相手を連れてきたのだ。

 

 子供たちはエルフである私よりも異性への興味、性的なものへの興味があったようで、やはりそこは人間の血が混じったハーフエルフだからだろうか。

 

 結婚相手と子供に対して、カズヤと私の2人で話をした。

 ハーフエルフである事、将来の事、苦労する事などなど。

 

 だけど2人の決意は硬く、それでも揺らがなかったので、結婚を祝福する事にした。

 

 それから更に約80年後、2人は帰ってきた。

 若々しい、全盛期の姿だった。

 

 話を聞くと、リクの子供は、つまりクォーターは見た目が余り人間と変わらず、10年程度若さを保った後、老化が始まったらしい。

 そしてその子供、つまりリクの孫はほぼ人間で、他の人間と変わらなかったらしい。

 

 そしてとそれを見て、もう愛した人もこの世にいない、子供どころか孫まで老化が始まり、自分より老けていく姿を見ていられず、家を飛び出したそうだ。

 ソラも似たようなものだった。

 

 私とカズヤは子供たちを暖かく迎え入れ、また家族4人で暮らし始めたのだった。

 

 その後、4人で旅行がてら冒険をし、各地を回ったりした。

 側から見ると18才前後の4人組にしか見えなかった事だろう。

 

 その頃にはリクとソラは兄妹ながらも愛し合うようになっていた。

 人間でもない、エルフでもない、たった2人のハーフエルフはそうならざるを得なかったのかも知れない。

 ある程度の気持ちが分かる私たちは2人を咎める事は出来なかった。

 そして、基本的にエルフの性欲が薄い事や異性への興味が少ない理由が分かったような気がした。

 

◇◆◇

 

 さて、少し話題を変えて知り合いのその後はどうなったかというと。

 

 ロイは一度は貴族に雇われたのだけど、反りが合わずに2年と保たずに冒険者に戻ったそうだ。

 そして、ある程度冒険者を続けた後に、村に戻り、クラウディアとジョセフさんと一緒に弟子をとり、後継者育成に励んだらしい。

 

 そしてドミニクはというと、やはり冒険者を続けていて、あの時の女性3人となんだかんだで幸せに暮らした、らしい。性格は大分大人しくなったらしいけど。

 

 ザックはオリハルコンの武器を作成したドワーフとして名声を上げ、その後戦乱なんかもあってかドワーフの集落に戻り、静かに暮らしたようだ。

 

 ファビオは魔王を倒した勇者が使用していたマントを売り出した切っ掛けから、商才を発揮して大商人となって国中にファビオ商会が出来たという。

 

 しかそれらは全て何百年も前の事になってしまった。

 あの当時の王国は今は無く、違う国に取って代わられている。戦乱なんかもあったのでもう何代も前の国の事だ。

 

 カズヤが勇者であった事を知る者は誰もいない、記録はあるのだろうがそれだけだ。

 少し寂しい気もするけど、私は元々そういう事を少なからず体験してきていた。

 

◇◆◇

 

 子供たちが500才を超えた頃、とうとう老化が始まった。

 リクとソラはそれから50年ほどで息を引き取った。

 

 子供たちが先に老化し、先に逝くのは堪えた。

 私たちなりに愛情は注いだつもりだったけど、どう感じたんだろうか。

 時々思うのはハーフエルフでなければもっと良い人生だったんじゃないかという事だった。

 人間なら、エルフなら、もっと違う充実した人生だったんじゃないか、そう思う。

 

 今度は本当に、2人だけの生活が始まった。

 

◇◆◇

 

 私とカズヤは、喧嘩もあったりしたけど、数百年経った今でも愛し合っていた。

 私はカズヤしか知らないし、他の男には興味も持てない、そしてカズヤだけを愛していた。

 

 カズヤはどう思っているのかは気になっていた。

 カズヤは私と違い、私と会う前は何人もの女性と関係を持っていたという。カズヤは今でも私を愛してくれているんだろうか、時々不安になった。

 

 ある時、2人で街へ買い物に出かけた。

 別々に買い物を済ませていたその時、カズヤは綺麗な女性に言い寄られていた。そしてカズヤも満更でもなさそうで、そのまま2人でお店の中に入って行ったのだ。

 私はショックを受け、それとは別に、やっぱりそうなんだ、そう思った。

 帰りは私から話しかける事もなく、カズヤもソワソワしていて、終始無言のまま家に帰った。

 

 食事を済ませた後、カズヤは話がある、と言ってきた。

 私は最悪の事態を想定してしまった。別れ話だろうか、と。

 

 カズヤは対面に座った。

 もう嫌な予感しかしない、目の前が真っ暗になりそうだ。

 カズヤをチラリと見ると、何やら言いづらそうにしていて、気合いを入れていた。

 

「ミキ」

 

 名前を呼ばれてびくりとする。

 

「う、うん……」

 

「あれ?俺の緊張が伝わっちゃったかな?ミキ、楽にして聞いてほしい」

 

「……」

 

 楽にして聞けるわけない、むしろ聞きたくない。

 

「ミキ、600年もの間、一緒にいてくれてありがとう」

 

 あ、やっぱり別れ話なんだ、もうここで終わりにしよう、そういう話なんだ。

 

「……そして、これから先も、何年になるか分からないけど、俺と一緒にいて欲しい。そして俺を愛していて欲しい」

 

 ……え?今、なんて?

 これからも一緒に?愛して欲しい?

 

 想像と全く違う言葉を聞かされた私は混乱していた。

 

「ミキ、これを受け取って欲しい。俺の一生変わらない気持ちだ」

 

 それはネックレスだった。

 大きなダイヤと、その周りに小さなダイヤが散りばめられた、飾り気は少なく、しかし豪華なネックレスだった。

 

「え、だって……今日、綺麗な女の人と一緒だったのに……」

 

「え?あれ見られてたの?──ああ、だから帰りから様子がおかしかったのか。全くミキは……。いいか?あの女の人は宝石店のお店の人、宝石とか分からないから教えてもらったの。それに綺麗っていうけどな、俺は昔から、そう、何百年も前から言ってるだろ。ミキ以外の女の美醜が分からない、それくらいミキは綺麗だって。俺が他の女に目移りする事なんてあり得ないから、ミキはもっと自信を持ってくれよな」

 

 その後、私は嬉し泣きしたのは言うまでもない。

 そしてその日の夜、カズヤは発奮し、俺がどれだけ愛してるか分からせてやる!と言って分からされたのだった。

 

 その日以降、私はもう迷わなくなった。

 

◇◆◇

 

 秘宝を使用して800年、とうとうその時がやってきた。

 

 私たちはこの幸せがずっと続くんじゃないか、そう思い始めていた。

 だけどそんな事は無く、砂時計の砂は落ち続け、残り少なくなっていたのだった。

 

 私とカズヤの老化が始まった。

 

 それに気付くと、私たちは残った時間を大切にし、より愛し合うようになった。

 

 そして更に40年後、カズヤは最後の時を迎えようとしていた。

 

「ミキ……今までありがとう。君のおかげで……俺の人生は幸せだった。沢山の、本当に沢山の素晴らしい経験をさせてもらったよ。本当に、ありがとう」

 

「私こそカズヤのおかげで色々経験させてもらったよ。魔王だって倒したしね。カズヤと出会えなかったら私はきっと今もぼんやり普通のエルフをしていたし、中身の少ない人生を送っていたと思う。カズヤに出会ったからこそ、幸せになれた。私こそありがとう。──それに、言ったでしょう?“一生一緒にいてやる“って。カズヤ、愛してる」

 

「ふふ……そうだったな、一生一緒にいてくれるって話だったな……あの出会いに感謝だ。ミキ、今でも世界で1番綺麗だ、愛している」

 

「こんなお婆ちゃんに何言ってんの」

 

 2人で微笑み、私とカズヤは最後に口づけを交わした。

 

 ──そのまま、カズヤは息を引き取った。

 それは幸せそうな死に顔だった。

 

 そして、その後1ヶ月もしないうちに、私も最後の時を迎えた。

 目を瞑ると、カズヤが迎えにきているような、そんな気がした。

 やっとそっちに行ける、そう思うと死ぬ事も怖くなかった。

 

 最後の意識は、カズヤと抱き合い、天へと登る。そんな光景だった。

 

 ──これで、私とカズヤのお話は終わりになります。

 エルフとして転生し、前世の親友に出会い、その親友が勇者として活躍し、2人は結ばれて結婚し、子供をもうけ、そして共に召される。

 そんなお話でした。




 以上でミキの物語は完結です。
 勇者の相棒視点での異世界転生TS物語、いかがだったでしょうか。
 多少のパロディ要素がありつつも、納得の行くお話になったと思います。
 感想など頂けるとメチャクチャ喜びますので出来ればお願いします。
 今までお付き合いありがとうございました。
 また次回作でお会いできる事を願っています。
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