時系列としてはレユニオンが蜂起して間もない頃を意識して書いています
大まかなレユニオンの行動としては
チェルノボークで蜂起したレユニオンが都市の重要地点を制圧し、連結を切り離した他都市に侵攻→ユーゴ入隊→掃討作戦→ウルサスの子供達、学校から出立→ロドスの介入(ドクター救助)&ウルサスの子供達を保護→龍門へ
を意識して物語を立てていこうと思います。
自分自身、シナリオ初期の具体的な時系列や各々のキャラクターの行動などよく知らないのでご指摘があればお願いします。
先の戦闘で少なくない損害を受けた俺たちの部隊は味方戦線内に後退し兵員の補充を受けることになった。
予想に反する高い損耗率。次々に入れ替わる隊員たち。
「俺の隊員の出身はそれぞれ異なっている。感染者になるまでは商人だったり農民だったり、ホームレスだったり学生だったり、ごく稀に軍人だった奴もいる。が、そういう奴は貧困層の奴らと違い潤沢な医療支援を受けられるから感染リスクがほとんどないんだ。」
「そういう意味じゃあ、お前は珍しい。大抵のやつは初陣で過度な緊張や焦りですぐ死ぬが、お前に至っては五体満属で生還してる。」
「……大体、一度の戦闘で何人程度戦死するんですか?」
「そうだな……状況にもよるが、最大で20人以上だ。」
「?!」
「戦場じゃあ装備の質だとか互いの兵員の数だとかの優劣で簡単に勝敗が決まるわけじゃない。地形、天候、視界、士気、連絡、補給、ありとあらゆる要素が混ざり合わさった結果として勝敗が決まる。」
「そのこと、下っ端のお前も意識して動けよ?……少なくとも矢の装填を忘れないようしとけ。あんなミスは新人でも珍しい。」
(見られていたのか……)
「……そう気落とすなよ!初陣で生き残った。これこそが最大の戦功だ!」
ブランドは締め括りにそう言って、報告書やら事後処理などの書類仕事へ移った。
今回の戦闘は指揮系統も援護も不十分で混乱状態にあったウルサス兵だからよかったものの、これが潤沢な補給線を確保し、遠距離部隊・術師による十分な援護を受けた部隊との戦いだったらどうなっていただろうか
『最大で20人以上だ。』
20人ということは……ブランドが指揮する3個小隊(1個分隊)のうちほぼ半数が戦死することを意味する。
これは即ち軍に於ける「壊滅」を意味している!
教導官だった父曰く、一般的に部隊は戦闘開始前の戦力のうち3割を失うと戦闘継続は困難とされ、通常は戦闘終了後に後方へ移動し、物資と人員の補充を受けての再編成を受けるものだ。
そして、半数…‥5割の戦死は部隊の再編成が不可能なほどの損害を受けることを指す。と、父は戦争映画を見ていた時に教えてくれた。
ブランドとは出会ってまだ日は浅いし、俺自身が持つ軍事知識も父から教えられた程度のものだが彼は信頼できる男だった。
自ら前線に立って指揮し、常に状況把握と舞台の展開に尽力しているのをこの目で見た。
……逆に言えば、ブランドほどの指揮官であったとしても高い損耗率は避けられないということだ。
その理由としてはまず、部隊員の殆どが寄せ集めでかつ戦闘経験のない連中だからだろう。
俺自身は近いうちの徴兵に備えてある程度の軍事知識や基礎訓練を幼い頃から父に叩き込まれてきた。
が、言われたように俺のようなケースは稀だ。
つい最近まで鍬やレジしか打ったことのない一般人が、最低限訓練された人間と同じ働きをしろという方が無茶というものだろう。
逆を言えば、今回のチェルノボーグ事変のような綿密かつ緻密に計画された上での侵攻作戦でもそのような「無茶」を背負って前線の指揮官は戦わなければいけないということだ。
それに気づいた時、俺は何か取り返しのつかないような決断を過去にしてしまったような気がしてならなかった。
今回は勝てた。
だが永遠の勝利など何処の国の歴史書にも存在しない。
この「無茶」のツケをいつの日か俺たちは払う日がくるだろう。
できることなら、その日に俺は前線にいないことを願う。
初陣以降、俺を含むブランドの小隊は惰性とも言える任務遂行の日々だった。
民間宅に押し入り、食糧に物資、できれば武器や銃器の調達に、住宅街(特に防衛に適したビルや密林地帯)での掃討作戦などをこなしてきた。
俺や後から補充された連中の半数はクロスボウ部隊、もう半数は近接戦闘部隊として戦ってきたが相変わらず隊員の顔ぶれは変わり続けている。
つい一週間前、漸く互いに名前を覚え直す必要がないだろうと思えたしぶといペッローの兵士と出会い、戦利品を交換し合う程度には関係を築けた戦友がいたのだが、死んでしまった。
彼は俺と同じウルサス出身の感染者であり、北東の強制労働所に送り込まれた後、蜂起したレユニオンの派兵によって助けられた人物だった。
ブランドの部隊に俺と同じクロスボウ部隊に所属していたのだが、2日前の掃討戦時に装甲車を装備した重装兵に押し切られ乱戦となった。俺以外の隊員も同様にナイフやマチェテを装備してはいたのだが、近接戦闘員でない以上戦況の不利はどうしようもなかった。
俺のとった行動というのは至って単純で、姿勢を低くして後方へ素早く退き、味方もろともクロスボウで射抜くというものだった。
客観的に見ても酷く倫理感の欠如した戦術だったというのは理解している。
しかしだ、他にやりようがなかった。
ブランドが直接率いていた近接部隊のα分隊は前方50〜60mの位置で敵の軽装部隊と乱戦状態にあり援護など求めようもない状況にあったし、機動力の劣る重装隊が装甲車を用いて後方を直接を叩くなど考えもしなかった。
通常、これらウルサス兵の用いた軍用車両はメンテナンスや燃料補給が受けられない場合、乗員の手で爆破処理するか、外装部品を取り払って遺棄するかのどちらしかないからだ。
「クソッタレが!こいつら一体何処にんな高級車を隠してやがった!」
当然、それらが何の問題もなく稼働しているということは協力者がいるということだろう。即刻偵察隊を送り出して協力者を探し出す必要がある。
「この死に損ないどもがあ!我らがウルサスの大地を汚したこと、その身を以て償え!」
「ギャァ!」
兎にも角にも酷い様相だった。
武器を構えた射撃隊(クロスボウ隊)は出来うる限りの働きをしたが、まるで鷹に掻っ攫われたウサギのように、巨躯な重装兵の攻撃に一蹴された。
乱戦から切り抜けられた少数の射撃隊は俺と同じく重装兵或いは装甲車の脆弱部分を狙って狙撃したが、厚さ何mmもの合成装甲には歯が立たなかった。
だが次の瞬間、目前で大爆発が起きた!
俺は死を覚悟した。残党兵の奴ら、装甲車だけでなく迫撃砲すら残してやがったと思ったからだ。だが
その不安はすぐに取り除かれることとなった。
何故なら初弾である先程の試射の着弾から、俺たちレユニオン側にではなくウルサスの重装兵たちに向かって着弾点が修正されたからだ。
「ぐあ!」
「迫撃砲弾だ!伏せろ!」
遠く彼方の援護に味方は声を出して歓喜した!片腕を頭上に突き出し、興奮していた!
父は歩兵や多岐に渡る陸兵に強力な火力支援を行う砲兵を「戦場の女神」といってやまなかった。
いかに強力な部隊といえどそれが前進する時、多方面から敵部隊の妨害に遭う。であれば敵の視界外から強力な火力を投擲する砲兵は、他でもない強力な助っ人だ。
彼らはその所在さえ隠蔽することに成功すれば、絶え間なく爆発物の雨を最も無防備な敵の頭上に降らせることができるのだから!
「グアァァァア‼︎」
「俺の、俺の腕があぁぁ……」
「退避!装甲車に退避しろ!急げ!」
およそ20分程度の戦闘で、ブランドの小隊は大損害を負った。
射撃隊が属するβ、Ω分隊は文字通り壊滅した。俺と各隊含めて残存兵は8人にも満たなかった。ブランドが直接率いたα分隊は比較的人的損害は軽微で、負傷者を5人出した程度だった。
一方敵方の重装部隊だが後退に使用した装甲車に砲弾が直撃し、天井を突き破って密閉式の車内で爆発した結果、敵の一個分隊(10人)が丸焼けになった。
その光景は凄まじいもので、何の前触れもなく鉄を打ち破る甲高い破裂音に加え、爆発に伴って前部、後部の強化ガラスや分厚い装甲ドアがくの字に曲がって四方に吹き飛ばされた!
砲兵の正体は付近で同じく掃討作戦に参加していたレユニオンの小隊で、彼らはウルサス軍から鹵獲した迫撃砲や野戦砲を装備した戦闘のエキスパートだった。
通信部隊の連絡を受けて急遽、陣地移動を行い俺たちの眼前に強大な金槌を振り下ろしてくれたのだ。
だが、勝利の歓声に包まれたのもつかの間だった。
天を見上げて生き残った勝利したという精神的な美酒にしたれた後に見下げてみれば、そこにあったのは味方の死骸だ。
腕が吹き飛んだもの、体を両断されたもの。酷いものは迫撃砲弾の爆破破片によって体が蜂の巣のように穴だらけにされたもの。
ペッローの戦友も例外ではなかった。
無機質な白い仮面を剥がしてみると、その目は剥き出しに此方を睨みつけているようだった。
死因は味方のクロスボウの矢であり、誰が撃った物かは分からない。
寧ろ、分からずにいるべきなのだろう。
……死ぬ間際に彼は何を思ったのだろうか
人は死ぬ直前、走馬灯なるものを見るそうだ。
過去の記憶や出来事を一斉に思い出し、死に物狂いでそれらから目前の死を回避する方法を見出そうとするためだ。
そんな抵抗も、眼前に迫る運命からは逃れないようだ。
いかに崇高な理想や目標を掲げても、それに反発する存在は無数にある。
人、物、時としては運すらも俺たちに対して刃を向ける。
俺はまだレユニオンに入隊して一週間程度の人間だ。
他の連中と比べれば比較的しぶといと言われているが、戦闘経験も一般的にはまだ浅い。
幹部や上官達が言い放つレユニオンの理想や思想それら全てに納得できるわけでもなければ順応しきれる自信もない。
それらが本当に正しいのか間違っているのかすら分からない。
俺はあまりにも自分以外のことについて知らなさすぎる。
だが今日、一つだけ確かなことを知った。
いかに崇高で正義的な理想も、死の前では防弾チョッキ程度の機能すら果たさないということだ。