幻想にて見ゆるもの   作:K.アート

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第一話

 深き森の中、獣や妖(あやかし)共が蔓延っており人が足を踏み入れるには危険な場所を悠々と歩く一人の青年の姿があった。

 

「うん……うん…それで?またやっちゃったの?」

 

 長い黒髪を後ろで束ねている長身の青年は、紺色の浴衣を身につけ足には草履を履いていた。そんな彼の周りに人影はなく、もしもこの場を目撃した者がいれば、何を独りごちているのかと思うことだろう。

 

【仕方ねぇじゃん。こう、ついカッとなっちまってさぁ】

 

 しかし、彼の近くでは確かにもう一人分の声が響き渡る。

 

「その短気は直した方がいいって言ってるじゃん。そのうち損しちゃうよ?」

 

【おいおい、別に俺は短気じゃねぇよ。ただ沸点が低いだけだ】

 

「はぁ……それを短気っていうんだよ」

 

 返ってきたのはため息。青年は、相変わらず頭がすっからかんだなーとか考える始末だ。

 

「そんなことよりも、随分と人が増えてきたものだね。村に出ればどこもかしこも人だらけだ」

 

【俺は万々歳だがな、強ぇヤツが増えればなお良しだ!】

 

「まぁ君らはそういう存在だからね」

 

【僕らは、だろう?自分を棚にあげるなよ】

 

 これを聞いた青年はまさか、と心外そうに肩を竦める。

 

「僕とお前が同じな訳がないだろ。」

 

【種族云々はな。俺もお前も人間から見ちゃ化け物だろうよ】

 

「僕はお前ほど酷くっ!?」

 

 気配。横の茂みから何者かの気配が漂ってくる。それも一つではなく複数、下手すれば二桁に及ぶ程の気配だ。

 

【ん?なんかあったんかー?】

 

「面倒事ができちゃったみたい。中々どうして順調に行かないもんだね」

 

【もう近くには来てんだろ?】

 

「後半日もしない内に着くと思うよ」

 

【分かった、あんまり遅れんなよー】

 

 じゃあな、言って声は途絶えた。それを待っていたのか茂みから獣たちが現れる。否、現れたのは獣などではなかった。それは妖と呼ばれる異形の者共、獣の倍以上の強靭な体躯を持ちその獰猛性や残虐性は比にならない。そんな妖、妖怪の主な食い物は人間である。中には人間の恐怖心といった精神を食べたり普通に人間同様の飲み食いをする妖怪もいるにはいるが、どう考えても青年の目の前にいるのは前者だろう。

 

「ひー、ふー、みー、よー、………、十二匹か。疲れるなぁ」

 

 カロロロロ…

 

 見た目は狼の様な妖怪が円陣を組むように青年を取り囲み、徐々に距離を詰めてくる。

 

「意外と賢いなコイツら、取り敢えず経路の確保しとかなきゃ」

 

 ほい、と言って上げた手を下ろす。

 たったそれだけの行動が大きな変化をもたらした。青年の目の前にいた四匹の妖怪の頭が、重力に引かれて落ちる。呆気なかった。抵抗らしい抵抗もなく、妖怪はその命を散らした。少しの間をおいて、リーダー格らしき妖怪は事態を理解する。仲間が殺された。それもいとも容易く、訳のわからない攻撃で。

 

 ゥオーーーン!!

 

 殺す!最初は追い詰めに追い詰めて殺すつもりだったが、もう容赦はしない。四肢に力を込め残りの妖怪達は青年に飛び掛かった。その喉に喰らいつき、仲間の仇を殺す為に。

 

「残念だけどそれは悪手だ」

 

 手を軽く握り今度は横に、円を描くように振るった。すると今度は飛び掛かってきた妖怪の胴体が三層に裂かれた。

 

 ガ、グアァァァァ!?

 

 なんだこれは!なんだこれは!!

 結果は理解できている、だがどうしてそうなったのか、過程が分からない、とでも言いたげに顔を歪めるリーダー格の妖怪。

 

「ごめんね?けど正当防衛だよ」

 

 そう言って妖怪達に止めを指さず、背を向けて歩き始める。

 

「その傷だと厳しいかもしれないけど、頑張ってみなよ。じゃ、縁があったらまた会おうか」

 

 ばいばーい、と言って青年は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、んなことがあったんか。ついてねぇな相変わらず」

 

 先ほど青年が話していたのと同じ声の人物。鈍い銀色の短髪に、同じく紺色の浴衣と草履を身につけている。

 

「本当だよ。あの後も猪に追われるわでてんやわんやだったし」

 

 妖怪に襲われた後、約束通りに銀髪の青年と合流した彼は夕餉(ゆうげ)を楽しんで―

 

「いいじゃねぇか。お陰でこうやって飯にありつけてんだからさー」

 

「それはそうなんだけどね…」

 

 ―いなかった。流石に面倒事が重なって不満げなご様子。

 

「過ぎたことは置いとこうぜ。そんなこんなより次はどうすんだよ、情報も集まったんだろ?」

 

「そうだね、思い詰めても仕方ない。それでだけど、今度はここから西に行こうと思う」

 

「西?あっちに何かあったか?」

 

 うん、と肯定を示す青年。

 

「聞いた話だと諏訪の国があるらしい。そこに土着神がいるとかいないとか」

 

「ほう、神様か。そりゃいいね、面白そうだ!」

 

「異議は無さそうだね。それじゃ一眠りしたら向かっちゃおうか」

 

「おう。今度は見つかるといいな、お前の探し物」

 

 さっきまでの調子と打って変わって、染々としたものになる。

 

「そうだといいね。けど見つからないならその時はその時だ」

 

「そう簡単に見つかりそうなもんじゃねぇからなー」

 

「人なのか物なのか、はたまた場所なのか、すでにそれがあるのかさえ分からないんだもんね。」

 

「気長にいけばいいさ。俺はどこまでも付き合ってやる」

 

 

「ありがとう、頼りにしてるよ」

 

 それじゃお休み、と言い眠りに入る。もう一人の青年もそれを確認すると睡魔に身を委ねた。

 




どうもK.アートです。

いろいろあって始めることになった「幻想にて見ゆるもの」ですが、いかがだったでしょうか。
今回は序章というか導入というか、まあそんなところなので短めとなっています。これからは徐々に増やしていく予定です。今回出てこなかった主人公たちの名前も次回で明らかになります。
感想やご意見なんかもどしどし募集してます!ただ、「楽しかった」「つまんない」だけじゃなく理由も添えてもらえると助かります。それだけだと改善の仕様が^^;
ではでは、また次回-そう遠くないと思います-にお会いできれば嬉しいです。それでは(^^)ノシ
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