Fate/DisspectOrder 作:一般デーモンコマンド
二つ目の特異点は西暦60年の古代ローマ帝国。皇帝ネロが母アグリッピナを毒殺するも、まだ民衆に愛されていた繁栄の時代。
「じゃあ、レイシフトを開始する。いくよ!」
「はいっ!マシュ・キリエライト、出ます!」
「がんばろう!」
「フン」
装置が起動する。そして、機械音声が流れ始め...
『アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します。
レイシフト開始まで あと3、2、1...全工程 クリア。
グランドオーダー実証を開始します』
「ぬぉぉぉぉぉぉ!」
龍魂珠達は、ローマへとレイシフトした。
◇
「...む、着いたか」
「...どうやら、そのようですね」
レイシフトが終わり、次に目に入ったのは一面の丘や平原。
その穏やかな景色を見て、マシュは大きく深呼吸する。それを見た龍魂珠はため息をついた。
「何だ、急に深呼吸なんかして。緊張でもしてたのか」
そう言われたマシュは、少し驚いた顔をして言う。
「え...してましたか、わたし?なんていうか、多分、圧倒されているのだと思います」
「フランスの時は驚くことばかりおこりましたから。今、やっとこの景色と向き合えている気がするんです」
「確かに、フランスは最初から大変だったからね...龍魂珠がいきなり逸れてたりしてたし」
「それはあの優人間のミスだ。我の知ったことではないわ」
そうやって話していると、マシュの胸辺りから小さな影が飛び出してくる。フォウだ。
「フォーウ!」
「フォウさん!?」
「今、マシュの胸から出てこなかった!?」
立香とマシュは驚く。それに対して、フォウは特に気にすること無く鳴いた。
「キュー、キャーウ」
「どうやら、今回も同行すると言っています。狭い基地より外の方がいいようです」
「ふん、アホらしい。ま、勝手にすればいいではないか」
そう言う龍魂珠だが、現れたフォウにひっかかることがあった。
(あのリスモドキ...マシュの胸辺りから出たと立香は言ったが...どう考えても、何も無い所から現れなかったか?)
しかし、二人は気づいていない。取り敢えず、一旦おいておくことにした。
ふと、二人が上を向いているのに気づく。つられて龍魂珠も上を見れば、あいも変わらず空には光の帯ともいえる線が真っ直ぐとその存在を主張していた。
「...ここにもあるのか。特異点にはアレがあるのが当たり前なのか?」
『...分からないけど、多分そうだと思うよ。相変わらずこっちからは上手く観測できないけど』
ロマニの声が通信越しに聞こえてくる。後ろからざわざわと向こうに残ったサーヴァント達の声も聞こえてくる。どうやら近くに居るらしい。
「あの、ドクター。何か人の声が沢山聞こえるのですが」
『あー、えっとね。カルデアのあれやこれや説明し終わって、各自自由行動にしたんだけど...皆ここに集まってきちゃった』
あはは...と笑うロマニをよそに、男の声が聞こえてくる。
『そりゃあ、他の時代なんて滅多にお目にかかれないからね。皆好奇心で見に来てるのさ』
アマデウスの声。続くように清姫の声も聞こえてくる。
『あなた様についていけないのはとても悲しい...でも、次はついていきます。今は、ここから応援しますよ』
さらに、ジャンヌ・オルタの声も聞こえてくる。
『ふん、せいぜい頑張りなさい。マスター。勿論、あんたもよ、まんまる』
「銀色...いや、もうこれは辞めておこう。黒ジャンヌ。うん、黒ジャンヌだ。...そんなこと言われなくても分かっているわ!黙って見ていろ黒ジャンヌ!」
『何よ黒ジャンヌって!変な風に呼ばないでくれる!?』
わいわいと通信越しに喋っていると...マシュが、何かを聞き取った。
「皆さん、一度静かに...これは、戦闘音?」
マシュの言葉に立香、龍魂珠は耳を傾ける。
...微かだが、金属がぶつかり合う音が聞こえるのが分かった。
『言われれば、確かに...というか、立香ちゃん達ローマの首都にいるんじゃないの?』
「いえ...丘陸地にいます」
その言葉に一瞬沈黙するロマニ。直ぐに驚いた様子で喋り始める。
『あ、あれぇ?ホントだ、首都じゃない。可笑しいな、確かに転送位置を固定した筈なんだけど...』
「時代はどうなのですか?」
「時代は間違いないよ。そこは一世紀のローマだ」
「どーせ寝ぼけてミスしたのだろう。ちゃんと確認しないからそうなるんだ」
龍魂珠の言葉にうっ、となるロマニ。龍魂珠はため息を一つつくと、音が聞こえる方へと向いた。
「とにかく、音がする方へ行くぞ。もしかしたらサーヴァントがいるやもしれん」
『確かに、この時代は戦争は起こっていない。それなのに戦闘の音が聞こえるということは、間違いなく歴史の異常だ。龍魂珠の言う通り、音の方向へ向かってくれ!』
「分かりました!いきましょう、マスター!」
「うん!」
龍魂珠を先頭に、立香、マシュ、後フォウは戦闘音の方向へと向かうのだった。
◇
「くっ...!このままでは...!」
たった一人で多数の軍勢をなぎ倒していく、彼女の名はネロ・クラウディウス。正式にはネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスだが、それはともかく。
彼女の味方はほとんど満身創痍。戦えるのは、もはや彼女だけ。
「今だ!やれぇ!」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
大量の兵士が彼女に向かって行く。剣や槍で彼女の首を取ろうとした、その時であった。
「アタック・チャンス発動!パギャラダイダ、いけ!」
異形が黒い瘴気を放ち、兵士達を無力化していく。周りを見れば、敵の兵士達はその場に倒れ伏していた。
「こ、これは...」
困惑するネロをよそに、人影が近づいてくる。敵か...と、思ったが、良くみれば敵の兵士ではなく、妙な格好をした少女二人だった。
「大丈夫ですか?」
「う...うむ!いや、助かった。その方等、首都からの援軍か?いや、それにしては少々妙な格好だ。異国の者か?」
ネロの質問に問われた少女...立香は答える。
「通りすがりの援軍です」
「なんと都合の良い。ブーディカ辺りの手の者か?あやつの采配は抜け目の無いものだからな」
そう笑って言うネロ。
すると、パギャラダイダを引っ込ませつつ、龍魂珠がネロに質問した。
「ところでだ。貴様の名は何だ、人間」
「む?む、むむむ?誰が余に名を聞いたかと思えば...何だ、この球体は?」
「...早く答えろ」
「むぅ。余に対して偉そうに命令するとは。不敬な球体だ」
むすっ、とした表情になるネロに対して、龍魂珠は内心毒づきながら、冷静にもう一度質問する。
(不敬なのはそっちだろうが!人間如きが...我が名を聞いているのだからさっさと答えろ、まったく...)
「...もう一度聞く。名はなんと?」
龍魂珠の声色が少し低くなったのを感じたのか...立香とマシュもフォローするように名を聞いた。
「た、確かに名前は気になるよね...ね、マシュ?」
「そ、そうですね。名前がわかれば、適切な対応ができますし」
その言葉にネロは納得した。立香とマシュのフォローに少しだけ感謝する龍魂珠。
(...ようやく話が進んだな...この人間の相手は立香達に任せたほうがよさそうだ)
ネロは一息つくと、それはそれは尊大な態度で名乗り始めた。
「では改めて。余こそ、真のローマを守護するもの。ローマそのものである者!」
「神々、神祖、自身、民達に必ず帝国を再建すると誓った者!」
「ローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウスである!!」
ふんすっ!と言わんばかりの表情でこちらを見るネロ。
一方、立香と龍魂珠はやっぱりなー、という目でそれを見ていた。
(なんか、そんな気はしてたけど)
(やはりか。コイツからはセイバーオルタと似た気配があったからな)
これは幸先が思いやられるな...と思う龍魂珠であった。
「キキキ」
別に最後に笑った人は某万魔殿のマコなんとかさんではありません。