Fate/DisspectOrder 作:一般デーモンコマンド
龍魂珠が魔風の眷属を追いかけている頃。立香達はネロと共にローマの首都にある城へ戻っていた。
「さて...今、余のローマは危機の時にある」
物々しい表情でネロは状況を説明し始めた。
「栄光の大帝国の版図は今や、バラバラに引き裂かれている」
「かたや、余の統治する正統なるローマ帝国。かたや、突如として姿を表した、余ならぬ皇帝どもが統べる、連合。」
「連合ローマ帝国。かの者共はそう自称し、帝国の半分を奪って見せた。連合は、その実態も良くわからぬ。なにせ、兵候を放てど、いずれも戻ってはこぬからな」
ネロは少し悲しげな表情になる。戻ってこなかった兵のことを思い出しているのだろう。
ネロは続ける。
「偽の皇帝どもが集うという首都の位置すらわからぬ始末。余にとっては大逆の徒である奴らの場所も分からないとは、歯がゆいものだ」
「そして...いや、この話はいいか。逆賊どもが妄言を述べているに過ぎぬからな」
一瞬沈んだ表情になったネロを、立香は見逃さなかった。立香はネロに聞く。
「なにか気になることがある?」
立香に質問に、一瞬考えたネロだったが、一息つくと話し始めた。
「そうだな...そなたらには話しておこうか。と言っても、本当にただの妄言であるかもしれんが」
「連合の敵将に、カリギュラという男がいる。皇帝を名乗る、大逆者のひとり。そして、その、男は...」
「余の、伯父...なのだ」
それを聞いた立香は驚く。
「つまり、敵に寝返っていた、てことなの?」
しかし、その言葉をマシュとロマニが否定した。
「いえ、それはあり得ませんマスター」
「どういうこと?」
『ざっくりいえば...その男は、この時には既に死んでいるんだ』
その言葉にはっ、と何かに気づく立香。そのやり取りを聞いていたネロはロマニの言葉に頷いた。
「うむ、その通りなのだ、姿の見えぬ魔術師よ。我が宮廷魔術師も生きていればそなたとは話があったろうに」
「その口ぶりということは...」
「うむ、その魔術師は死んでいる。他ならぬ、余の伯父、カリギュラによってな」
その話を聞いたロマニは、確信したように喋った。
「この時代の魔術師を容易く倒す。普通の人間じゃあない。サーヴァントだ」
それを聞いたマシュは、現時点で考えられる自身の考えを話す。
「つまり、複数いる皇帝のうち誰かが聖杯を手に入れ、歴史に異常を起こしている、ということでしょうか?」
『可能性は高いだろうね。それがこの時代の特異点の原因になっている筈だ』
改めて、ネロは話を続ける。
「...正直なところ、連合帝国は強大だ。各地で暴虐の戦いを起こし、民を苦しめている。余の配下たる総督や将軍、軍団も殆ど投入した。しかし、それでも連合の勢いは納まらない」
「先程のように首都にも連合の遠征組に侵入される始末。もはや、それを防ぐための手勢すら余の手元にはない。...口惜しいが...思い知らされた。もう余ひとりの力では状況は打破できまい」
「故に、だ。貴公たちに命ずる。いや、頼もう!余の客将となるがよい!それならばそちらの聖杯を手に入れるという目的、余とローマが後援しよう!」
そのネロの言葉にロマニは嬉しそうに答えた。
「願ってもない申し出だ。ありがたい。恐らくボクらの目的は共通ではある」
「そうですね。先輩はどう思いますか?」
マシュもロマニに同意する。マシュに聞かれた立香も、真剣な表情で答えた。
「勿論、協力しよう」
その言葉に、ネロはとても嬉しそうな表情になる。
「おぉ!そうか、快諾とは!では、改めて、貴公たちのうち一名に提督の位を与えるぞ。それと、先刻の働きの報酬もな。今夜は、ゆっくりと休むがよい。それぞれに提督にふさわしい寝床を用意させよう」
そう言うネロは、ふと思い出したようにロマニに質問する。
「と、そうだ。姿の見えぬ魔術師殿にも必要かな?」
それに対して、ロマニは断る。
「いや、おかまいなく。寝床に関してはそこの二人だけで十分だ。時に、皇帝陛下。1つ聞きたいことが――」
そこまでロマニが言った時だった。扉が開かれ、兵士が一人急いだ様子で入ってくる。
「どうした、そんなに息を切らして」
「ほ、報告いたしますっ!そ、空が...」
「空が?」
「十字に、割れましたっ!」
◇
「はっ、はぁ、はぁ。...追い詰めたぞ、魔風の眷属...!」
魔風の眷属を追いかけていた龍魂珠。魔風の眷属はある洞窟に逃げ込んだため、龍魂珠もそれに続いて追いかけていた。
そして、洞窟に逃げ込んだ魔風の眷属に追いついた龍魂珠。追いつかれた眷属は、キー!という声を上げる。そして、その姿を変え始めた。
「!?何をするかと思えば、その姿は...」
龍魂珠は驚く。それもそのはず。眷属が変化した姿は、龍魂珠
正確には、中で渦巻く『色』が違う。普通の龍魂珠の色は五色に対して、眷属が変化した龍魂珠は赤、青、白の三色のみ渦巻いていた。
「その色...成程、やはり貴様は我の『混成』の力だったのか」
その言葉が聞こえているのかそうではないのか...何も喋らない混成の力。それに対して龍魂珠は考察する。
「ふーむ...性質的にはディスタスとして召喚した我の分身と同じか?...まぁ、そこはいいか。さて、混成の力よ。主はここにいるぞ。戻って来るが良い」
ゆっくりと、混成の力は動き出す。ようやく混成出来る...そう龍魂珠が油断した瞬間だった。
シュバッ!と混成の力が後ろに下がる。何事だ、と龍魂珠が混成の力を見れば、近くに一枚のカードが浮かんでいた。
「それは...マリーのカード!?いつの間に...!」
混成の力は何も言わない。だが、龍魂珠にはなんとなく言わんとすることが理解できた。
お前はもういらない。これからはこの自分が新世界を作る、と。
「...我の力の一端如きが。我に反抗する気かぁ!」
龍魂珠が叫ぶ。それを意に介さず、混成の力はもう一枚カードをその場に取り出す。そのカードは、『闇鎧亜クイーンアルカディアス』。この世界の存在ではない、龍魂珠の世界の存在。
「...まさか!?」
混成の力の身体が輝き出す。そして、多数のモザイクが現れると、マリー、クイーンアルカディアスのカードを飲み込む。更に、混成の力もそのモザイクの中へと入っていく。
それを見た龍魂珠は、ある計画を思い出していた。
それは、多数の問題が発生した故に先延ばしになっていた計画。
別の世界の存在同士を、合体させる、というもの。
その別世界の存在を合体させたディスペクターの総称は...
『
本来ならば現れることのない、異界の冒涜者。
洞窟の天井に穴が空き、そこからモザイクが空へと飛び去っていく。龍魂珠は我にかえると、急いで洞窟の外へと出ていった。
...その日、ローマにいる全ての存在が...人も、動物も、サーヴァントも。同じ時間、同じタイミングで。それを、見た。
立香達のいる、ネロの城から。
「な、何だ、アレは...」
「ど、ドクター!」
『ボクに聞かないでくれ!今解析中だ!』
また、とある野営地では。
「圧政!!!!」
「スパルタクス、うるさい!今何時だと、
思っ、て...いや、何あれ...!?」
「感じる、感じるぞ...!凄まじい圧政を!此処にいる圧政者達を遥かに超える圧政!
...叛逆するならば!今!この時っ!!現れた悪逆の圧政者に...叛逆!!!!!」
「...なんでだろう。全く緊張感が湧いてこなくなったんだけど...」
また、とある小島では。
「...へぇ。そういう事をするのね。冒涜的なこと」
「うーむ!まさしくなその迫力に全身の毛が逆立つ気分だったり!」
「何で二人ともそんなに落ち着いてるのよー!?」
また、ある城では。
「な、何なのだ、アレは...こんなもの、主からは何も聞いていない...!っ!まさか!あのイレギュラーか!」
「...どうする?なかなか骨が折れそうな相手だが...」
「...いや、問題ない。いくらアレがイレギュラーだろうと...こちらには聖杯がある。それに、主からいただいたあの姿もあるしな...!」
星が瞬く空が昼間のように輝き、十字に、割れていく。
そして、割れた十字の中心から、ソレは現れた。
ソレは、愛した民を虐殺するだけになってしまった存在。
最悪の王妃は、高らかに声をあげた。
オリジナルディスペクター紹介
闇妃混成クマリーン・アルカワネット
マリー・アントワネットのカードを奪った混成の力が、闇鎧亜の方のクイーンアルカディアスとマリー・アントワネットを混成し作り出したAWディスペクター。
マリーの身体にクイーンアルカディアスの四肢がそれぞれ第三、第四の腕や足として混成されている。腹の部分には混成の力がコアとして嵌っている。
クイーンアルカディアスの身体は加工され、首を切り離して処刑する道具の刃のような剣になっており、剣の柄の先には前髪が垂れ、表情の見えないマリー、目から光を失ったクイーンアルカディアスの頭部が戦利品を飾り付けたように混成されている。
頭の無い異形となった王妃のディスペクター。
宝具
国を、民を、冒涜した王妃(ディス・マリー・ブレイカー)
フレーバーテキスト
2人の王妃の願いは混成された。もう、慈愛はない。