Fate/DisspectOrder 作:一般デーモンコマンド
「おのれ...あんなものを引っ張り出しおってからに...我の破片如きが...」
忌々しげに空のアルカワネットを見る龍魂珠。
一方で、アルカワネットはその場から動かず、天から地上を見下ろしていた。
「アレを倒さねばならないが...どうするか」
すると、近くから衝撃音がする。向かってみれば、横たわったボルスレン・バスターの上にパギャラダイダが立っていた。その表情からは、スーパーレアの名は伊達じゃない!という思いが伝わってくる気がした。
「ふん、倒したか。それはともかく...あのAWディスペクターを使ってヤツは何をする気なのか...うかつに近づいても危ない、遠くから観察してみるか...?」
「...いや、あのレベルの気配。恐らくこのあたりにいる全員が気づいているな。なら隠す必要もないし...立香達と合流して対策でも考えるか」
龍魂珠は歩き出す。その足取りは確かなものだったが...
「...そういえば、ここ何処だ?」
龍魂珠は、道に迷っていた。
◇
「退けっ退けぇぇぇ!」
「化け物だ!アレは...化け物だぁっ!」
龍魂珠が迷って、少し目を離していた隙。その一瞬で、アルカワネットは最初のターゲットを見つけ、虐殺を開始していた。
「――――」
カァンッ!!
アルカワネットは自身の持つ剣先を地面に向け...勢いよく地面に打ち付ける。周りに金属のぶつかる音が鳴り響いた。
「な、何...を...」
周囲の兵士やゴーレムの動きが止まる。先程までの騒がしさはどこへやら、一気に静かな空間と変貌していた。
「――」
短く、声にならない音を空っぽな穴から発するアルカワネット。それを聞いた兵士達は、一斉に跪き...
「...」
自らの持つ剣を、首にあてがう。そして。
ザクッ!!
跪いた全員が、自ら首を切り落とした。
「...恐ろしいヤツだ。自身の周囲にいる者達を一瞬にして支配下におき、自害させるとは。暴君そのものだな」
ふくよかな体系の男が自嘲気味に呟く。
「さて...どうするか」
アルカワネットはゆらゆらと身体を揺らしながら男の方へと向かう。自身の持つ黄金剣を握り直し、男は覚悟を決めるのだった。
◇
「こ、れは...」
ガリアでネロが見たのは、まさしく血の海、と呼ぶべき惨状だった。
兵士、ゴーレム、野生で発生した魔獣。皆等しくその首を落とされていた。
兵士は剣で。ゴーレムはねじ切ったように。それぞれが『自ら命を絶った』と思わされるのもまた、おぞましさを増長させていた。
「...敵とはいえ、これは酷い」
露出が少し多い赤髪の女性、ブーディカが嫌そうな表情でそう言う。そして、その傍らに居る筋骨隆々の、まさに『筋肉』な男、スパルタクスも普段の騒がしさは鳴りを潜め、怒りに満ちた表情になっていた。
「...うっ!」
「先輩っ!無理しないでください!」
思わずうずくまり、吐きそうになる立香の背中をマシュが擦る。立香は涙目になりながらもなんとか立ち上がって言った。
「ごめん...マシュこそ、大丈夫?」
「...正直、わたしもかなりキツイです。しかし、ここで止まるわけにはいかないというのもまた事実です」
すると、ロマニが全員に話しかけてくる。
『...解析が終わったよ』
「ドクター。それで、解析の結果は...?」
マシュの問いに、ロマニは暗い声で答える。
『...アレからは、2つの反応があった。一つは、未知の反応。そこはまた調べていく。そして、もう一つ。その反応は...サーヴァント』
「アレが...サーヴァント?」
ブーディカが驚いた様子で言う。
『あぁ。驚くべきことにね。因みに、そのサーヴァントの反応は、立香ちゃん達がフランスで会ったサーヴァント...マリー・アントワネットの物だ』
「マリーさんの!?どう見ても、マリーさんとは思えない姿でしたよ!?」
『それは、恐らくもう一つの未知の反応によるものだと思われる。そして、ここからが本題だ』
ロマニの真剣な声。全員が耳を傾ける。
『あの怪物からは龍魂珠が呼び出すディスペクターと同じ反応が観測された。つまり、あの怪物を生み出したのは...』
『龍魂珠、だと考えられる』
「...確かに、ディスペクターという存在は今のところ龍魂珠さんしか扱っていません...しかし、彼はマスター適性はないと前にドクターが言っていた筈です。ならば何故サーヴァントのマリーさんを龍魂珠さんが扱えるのでしょうか?」
困惑した声で、マシュはロマニに質問する。
『それは分からない。彼は詳細を全く話してくれていないからね。...それに、ここに来て直ぐに彼は何処かへ行ってしまったし』
そのまま静かになるロマニ。そして空気が重くなるが...それを破ったのは、ネロだった。
「...とにかくだ!あの怪物を止めるためにはその、龍魂珠とかいうヤツの所に行けばいいんだな!?なら話は早い!連合の皇帝共を倒しつつ!そいつも探せばいいではないか!」
「ネロ...そうは言っても、そんな余裕は私達には...」
「いいや、大丈夫だ!あの怪物のおかげというのも癪だが、敵勢力はジワジワと減ってきている!」
どうやら、ネロなりにこの空気を変えようとしているらしい。
改めて、全員でこの状況をどうするか話し合う。
その結果、立香、マシュ、ネロは連合軍を。
その他の、ブーディカやスパルタクス、そしてネロがスカウトしたもう二人の将軍で、あの怪物の相手をする、という結論に至った。
「では、これより!連合軍、そしてあの未知の怪物を打ち倒す戦いを始める!全員で協力し、このローマに安寧をもたらそうではないか!」
「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」」」」
兵士達の雄叫びが響く。新たな戦いが始まろうとしていた。
◇
「...これは」
兵士達に大号令をかけた後。ネロは、一人でとある岩の前に立っていた。そこには、急ごしらえで書かれたのであろう、文章が綴られていた。
「『これを見ているということは、私はあの悍ましき冒涜の獣に刈られてしまったということだろう』」
「『この文を読む者よ。そなたが今のローマを支配する皇帝だと信じ、この情報を送る。そなたと共に行動している者達が求めている聖杯は、我らが連合の首都にいる魔術師が所持している。それを、行動している者達に伝えよ』」
「『そして、当代の皇帝よ。あの御方は連合の首都で貴様の到来を待っている。心して、この戦いに望むのだ。さあ、進め。賽は投げられた』」
「『ガイウス・ユリウス・カエサル』...」
ネロも聞いたことのある、その名。岩には血糊がべったりとこびりついている。彼は、ここで必死に戦ったのだろう。
「...」
ネロは何も言わず、その岩のある場所から去る。
しかし、その目には黄金の決意が宿っていた。
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