Fate/DisspectOrder 作:一般デーモンコマンド
「よーし、ついたぞ!うむうむ、素晴らしい風を掴まえたな。かつてない攻め攻めな船旅であった!!」
「...三半規管も強化されてて助かりました...もしデミ・サーヴァントではなかったと思うと...うぅ」
襲いかかってきた怪物達を打ち倒した立香達はネロの操作する船に乗り、古き神がいるといわれる島へとやってきていた。
皇帝直々の操船というわけなので、どれほどのものかと立香達が期待していた次の瞬間には、それはそれはブレイズクローも真っ青なスピードと動きを船はしていた。
結果、立香とマシュはともかく、共に乗っていた兵士たちは全員ダウンという悲しい結末を迎えることになってしまっていたのだった。
『あー...皆グロッキー状態だね。可哀想に...』
「あはは...あ、そうだ。ドクター、ここに龍魂珠の反応はある?」
立香の言葉にロマニは答える。
『ちょっと待ってね。...え?』
「ドクター?」
『ちょ、ちょっと、うん。見間違いかな?...いや、見間違いじゃないねどうなってるんだ...』
ロマニの動揺する声がしたその時、立香達の前に人影が現れた。
「!誰ですか!?」
「あら、そう警戒しないでほしいのだけど」
警戒する立香達の前に現れたのは、龍魂珠に怪物を倒してほしいと依頼した女神、ステンノだった。
「貴女は...?」
「ご機嫌よう、勇者のみなさま。当代における私のささやかな仮住まい、形ある島へ...と、言いたいところだけれど」
「ふふ、もう
残念そうにそう言うステンノ。一方、ロマニは立香達がいまだかつて見たことのないレベルで動揺していた。
『なんてこった...こんなことがあり得るのか!反応は確かにサーヴァント。しかし、違う!』
『数値で観測できるほどの神性!!間違いない、彼女は神...いいや、女神!!龍魂珠を探しに来たら、本物の神を見つけるなんて...!すごいぞ...!』
ロマニは早口になるほどに興奮しているようだった。そんなロマニに立香は質問する。
「そ、そんなにすごいの?」
『すごいどころじゃないよ!神様...神霊、って言うんだけどね。本来ならばそう簡単に現界できるような存在じゃないんだ。原理としては可能なんだけど、それでも分が悪い。とにかく、奇跡に近いことが起こった、と思ってくれていいよ』
「な、なるほど...」
ロマニの勢いに若干引いた様子の立香。それを後目に、ネロがステンノに名前を聞いた。
「ふむ。つまりは本物の女神だと。...では女神よ、そなたの名前はなんという?」
「あら、私の名前を聞きたいの?んー...まぁ、いいわ。私の名はステンノ。ゴルゴンの三姉妹が一柱。まぁ、好きにお呼びくださいな、みなさま」
『女神ステンノ...!凄いな、本物のギリシャの神さまじゃないか!しかし、まさかそのまま現れているはずはない。英霊にしてもそうだが、その力はダウンサイジングされていて然るべきだ。そして、既に神々は地上で権能は振るえない...ならば...』
そこまでロマニが言ったところで、ステンノが口を挟む。
「あら、詳しいのね魔術師さん。ええそう、間違ってはいませんわ。でも、一つ覚えておきなさいな、無粋な方」
ほんの僅かながら怒気を孕んだその言葉にロマニは萎縮しながら答える。
『な、何でしょう。...まさか、女神にご教授いただけるとは』
「あら、とても良い声、素敵な響き。是非お顔を見てみたいけど...残念。私の目でも届かない地平にいるよう」
「...手の届く範囲でしたら、一目でどうにかしてさしあげましたのに」
『うわっ!!全身がぞくってした!黒ジャンヌとはまた違ったプレッシャーだ!』
そんなこんなと立香達とステンノが会話していると、近くの洞窟の穴から声が聞こえてきた。
「――――みモドキィィィィ!」
「?」
「この声は...」
全員が洞窟の入口へと視線を向ける。そして、中から出てきたのは...
「女神人間モドキィィィィ!!このキツネ人間モドキをどうにかしろぉぉぉぉ!!」
「はぐっ!はむっ!」
「あははははっ!むっちゃ伸びてる!あははははっ!!」
メイド服をきたケモミミの女性にかぶりつかれた龍魂珠と、それを見て大笑いしているエリザベートだった。
◇
「よ、ようやく離れた...」
「あはははは!」
「何が可笑しいこのキツネ人間モドキ!」
洞窟から出てきた龍魂珠にかぶりついていた女性をなんとか引き剥がした立香達。あまりに突拍子のない展開に、思わず何があったのかを聞いてみると...
「何があったもあるか!そこの女神人間モドキに頼まれて洞窟の中のキマイラを倒したと思ったら、近くの箱の中からコイツが飛び出てきて、そのまま我に噛みついてきたのだ!!」
「しかも洞窟の途中で合流したこのアイドル人間モドキは見て笑うばかり!本当に散々な目にあったわ!!」
かなり怒っている龍魂珠。そのままの勢いで、龍魂珠はステンノに報酬を促した。
「あー、ともかく!おい女神人間モドキ、貴様の言っていた怪物は倒した。さぁ、貴様の知る情報とやらを話してもらおうか」
「あらあら、仕方ないですわね。では...情報を一つ話しますわ」
ステンノは一息ついて言った。
「貴方のお仲間が来てますわよ」
「...は?」
「はい、確かに情報は渡しましたわ。これでいいかしら?」
「馬鹿なのか貴様?」
「あら、私は確かに貴方に言われた通り報酬として情報を渡しましたけど?」
「...がぁぁ!もともとそういうつもりであのキマイラを倒させたのか!!おのれ女神如きがぁぁぁぁぁぁ!!」
どうやらステンノに一杯食わされたのに気づいた龍魂珠は、そのまま砂浜の上をのたうち回った。
「...ドクター」
『...あっ。そうだった。あまりにも急なことだったから忘れてた。マシュ、立香ちゃん。捕まえちゃって』
「イエッサー」
「了解しました」
「むっ?」
のたうち回る龍魂珠を二人で抑え込む。上から抑えられたのでむぎゅうと押しつぶされているようになっている龍魂珠は、立香達の行動を咎めた。
「おい、貴様ら。急に人の身体を押しつぶそうとするんじゃ...」
「龍魂珠さん。わたし達は貴方に聞かなければならないことがあります」
さっきまでの雰囲気は消え失せ、立香達の纏う雰囲気は真剣そのもの。龍魂珠も声色が低くなる。
「...何だ、聞きたいこととは」
龍魂珠の言葉にロマニが答える。
『...冬木で初めて出会ってからここまで、僕たちは君と共に過ごしてきた。でも、僕たちは君の事をまったくと言っていいほど知らない。だから、改めて君の事を聞こうと思ってね』
「...貴様達が我の事を知って何になる。くだらん事を言っていないで、早く話せ」
『...そうか。じゃあ、単刀直入にいうよ』
『龍魂珠。君があの空から現れた怪物...ディスペクターは、君が作ったのかい?』
「ん?...あぁー...そういうことか」
龍魂珠はため息をつくと、ゆっくりその事について説明をし始めた。
「あれはな...作ったのは我であって我ではない」
『...はぁ?いやいや、どういうことだい?』
「あまり話したくはなかったがな...」
龍魂珠は、五龍神に伝えられたことを話した。
自身の力が特異点に分かれて行ってしまったこと。
自身のそしてその力が本体である自分に反旗を翻し、この世界の歴史と超獣世界の歴史を利用して異界の
龍魂珠はそれをどうにか倒し、力を取り戻そうとしているということ。
その為に特異点にレイシフトできる立香達と行動をしている、ということだった。
そこまでを聞いた立香達は困惑した。
「えーと、つまり。龍魂珠さんは特異点に散らばった龍魂珠さん自身の力を取り戻すために私達についてきていた、ということですか?」
マシュの言葉に龍魂珠は何度も言わせるなと言わんばかりの表情で頷く。表情というより龍魂珠の中にうずまく色の光り方と雰囲気からそう見えるだけだが。
それはともかく。龍魂珠の目的(現在時点)を理解したロマニは、立香達に龍魂珠を離すように言うと、そのまま龍魂珠に聞こえないように少し離れた所で話し始めた。
『...さて。龍魂珠の謎が一つ解けたわけだが。二人はどう思った?』
ロマニが聞きたいことは、龍魂珠は敵なのかどうか、ということだろう。そう思ったマシュは自分の考えを話した。
「うーん...わたしはまだなんとも言えないかと...」
『それは何故?』
「自分の失った力を取り戻したい...力を持った存在というか、失ったものを取り戻したいというのは誰でもあることです。なのでそれだけを判断材料にするのは難しいですね」
『確かにね。だが、さっき聞いた話にもう一つ判断材料があるよ』
「もう一つの判断材料?」
マシュの問いにロマニは言った。
『あぁ。彼は自身の力が異世界の歴史と彼の世界の歴史を利用してディスペクターを作ったと言っていた。もし、異世界の歴史があのディスペクターのマリー・アントワネットの事を指しているのだとすれば...』
「龍魂珠にはサーヴァントをディスペクターにすることが出来るって事?」
『その通りだ、立香ちゃん。サーヴァントをディスペクターにする条件はわからないが...それができるということは、彼が僕たちと敵対しようとすればあっという間にこちらの戦力を奪われてしまうだろうね』
「でも、そうしていないということは...」
『...一応、彼には敵対の意思はない、ってことだろう。無論、僕がそう思いたいだけということもあるが』
そこまで言ってロマニは通信越しでも聞こえるほどの大きなため息をついた。安堵からによるものか、それともさらなる頭痛の種ができたことによるものか。それはわからないが、ここまでの話を聞いた立香は言った。
「じゃあ、龍魂珠は味方ってことでいい?」
「マスター、まだ確定というわけでは...」
「でも、一応ここまで協力はしてくれてるよね?」
「それは...そうですが」
立香はゆっくりと自分の考えを言い始めた。
「確かに、まだ龍魂珠が完全に味方って決まったわけじゃないけど...」
「わたし達に協力してくれたのは事実でしょ?」
「だから、わたしは龍魂珠の事を信じる。それじゃあ、ダメかな」
立香の言葉を噛みしめるように考えるマシュ。少し考えると、マシュは立香の考えに同意した。
「...わたしはマスターのサーヴァント。それがマスターの考えなら、わたしはマスターを信じます」
『マシュ...うん、よーし、わかった!二人が信じるなら僕も信じてみようじゃないか!』
ロマニも賛同する。が、その直後にロマニは立香にたずねた。
『信じるけど...もし、もしだ。龍魂珠が僕たちに敵対した時は...立香ちゃんはどうするつもりだい?』
その質問に、立香は笑って答えた。
「その時は、全力でぶっ飛ばします!」
『あ、あはは...そりゃ頼もしいなぁ』
話がまとまり、立香とマシュは龍魂珠の下へと戻る。キツネ人間モドキと龍魂珠が呼んでいた女性のキャットパンチをいなしている龍魂珠は戻ってきた立香達に気づくと、呆れた声をだしながら言った。
「話は終わったのか?まったく、我の事を信じるか信じないかなどで長々と話おって。時間の無駄だ、無駄」
「あれ、分かってたの?」
「あれだけ疑っているぞ感を出していれば誰でも分かる。...で?結論はどうなったのだ?」
恐らくニヤニヤしているのだろう。そんな声色の龍魂珠に立香はにっこりと笑って言った。
「ま、とりあえず信じてみよっかなー、て感じ」
「...ふん、そうか」
「そういう訳だからさ。改めてよろしくね、龍魂珠」
「...あぁ」
こうして、カルデアの龍魂珠に疑いが晴れていった。
しかし、それと同時刻。
連合の本拠地にて、とある男の手によって、新たなサーヴァントが召喚されていた。
「...あのイレギュラーが作り出したであろうあの化け物のせいで、こちらのサーヴァントは既に2騎やられた。まったく、色々修正しなくてはならなくなるこちらの身にもなってほしいな」
そう言いながら、手に持つ聖杯が輝くと...赤髪の少年が現界する。少年は少し怪訝そうな顔をしたあと、男に向けてクラスを名乗った。
「サーヴァント、ライダー。...ふぅん、それが僕のクラスというわけか」
「さて、マスター。...僕は何をすればいいのかな?」
新たなサーヴァント。いまだ虐殺を続けるアルカワネット。
ローマでの戦いは、もう少し続く。
そろそろセプテムも終わらせなきゃな...なんて思う今日このごろ。
活動報告でのネタ募集、絶賛受付中です。ネタをくれた方々の話も空いた時間で執筆中ですので、お楽しみに。