Fate/DisspectOrder 作:一般デーモンコマンド
「ほら、きみの力はそんなものじゃないだろう!?」
アレキサンダーはそう言いながらネロに凄まじい剣さばきを浴びせる。その威力は、とてもその少年の姿からは想像できないものだった。
「あ、たりまえだっ!!」
しかし、ネロも負けてはいない。まだサーヴァントになってない身でありながら、アレキサンダーと互角に打ち合っている。
「なんて凄まじい...!」
その戦いぶりに感嘆するマシュ。だが、その隙を彼が見逃すはずがない。
「ほら、よそ見は駄目だろう」
エルメロイの蹴りがマシュに叩き込まれる。もろにそれを受けたマシュは後方へと吹き飛ばされた。
「うぅっ...!」
「本当に勝つ気があるのか?戦いの場でそんなよそ見をするとは」
「それもそうですね...では、今度はこちらからです!!」
マシュの盾を使った打撃。しかし、それを器用にも受け流しながら、エルメロイはマシュにカウンターを叩き込んだ。
「マシュ!」
立香がすかさず礼装に宿った回復の魔術をマシュにかける。マシュは体制を立て直しながら、エルメロイの攻撃を見極めようとしていた。
(この人、隙が見つからない...!)
しかし、隙を見つけようとしてもエルメロイの隙が見つけることができない。それは、マシュに指示を出している立香も同じだった。
「貴様達には悪いが、まぁ、許せ。...宝具、発動」
「『
そうエルメロイが言ったと同時に、空が曇ったかと思えば、その雲から八つの柱が降りそそぐ。そして、マシュと立香を閉じ込めたかと思えば、その中で魔力の奔流が起こった。
「こ、これは...」
「せん、ぱい...」
二人は力なく倒れてしまう。その様子を見て、淡々とエルメロイは言う。
「安心しろ、死ぬわけではない。...ただ、少しばかり動けなくなるだけだ」
そう口に加えた煙草を吸いながら、エルメロイはアレキサンダーとネロの戦いへと目を向けた。
ネロとアレキサンダーの打ち合いは続いていた。だが、まだ純粋な人間であるネロの方が押され始めていた。
「くぅっ...だが、負けぬ...!」
「いいね、そうこなくっちゃ!」
そう言いながらアレキサンダーが剣を振った時、ネロの剣がアレキサンダーの胴体へと命中した。
「かはっ!...はぁ、へぇ?流石ネロ・クラディウス。人間ながら、その力...凄まじいね」
「貴様も、連合も倒す。そしてブーディカ、余のローマを取り戻す!」
「なら、まずはこのぼくを乗り越えてみせなよ!...宝具、発動!」
アレキサンダーから発せられる莫大な魔力の奔流。それと同時に、どこからともなく馬の嘶きが辺りに響いた。
「暗雲よ、
現れしは漆黒の馬。漆黒の馬...ブケファラスは、アレキサンダーを背に乗せると、勢いよく飛び上がった。
そして、そのまま落下の勢いを加え、ネロを踏み潰そうとする。
(マズ――)
そのあまりの圧にネロは目をつぶり、その攻撃をもはや待つしかなかった...
...かと思いきや。いつまで待ってもブケファラスの蹄はネロへとやってくることはなかった。
どういうことかと、ネロが目を開き確認してみれば、眼の前に広がっていたのは...
「ぶん投げろ、ジャンダルトレス」
ブケファラスをどこかへと投げ捨てるジャンダルトレスの姿だった。
「くっ...君は、一体...」
「今から死ぬヤツが聞いてどうなる?...ほら、貴様らも何をやっているのだ。寝てないで起きろ」
ジャンダルトレスの背に乗る龍魂珠がそう言うと、ジャンダルトレスの下から燃え盛る武装された山がせり上がってくる。
『
その山は反撃の象徴。主の仲間に、反撃を可能にさせるその山に取り付けられた砲台から、石兵八陣の柱に向けて砲撃が撃たれる。
「なっ!?」
それを見たエルメロイは困惑しながらも砲撃を避ける。砲撃は、そのまま柱を吹き飛ばし、立香とマシュを蝕んでいた結界を破壊した。
「た、助かりました...」
「助かったけど...ちょっと、手荒すぎないかな!?」
「この程度で死んでしまうようなら最初から助けん。...ほら、さっさとそこの人間モドキ二人を倒せ」
「くっ、だが、もう一度宝具を使えば...」
そうエルメロイは宝具を発動させようとするが、山から撃たれる砲撃で宝具をキャンセルさせられてしまう。
「...はぁ、ここまでか」
そう諦めたように言うエルメロイ。その隙をついて、マシュの盾がエルメロイの身体へと叩き込まれると、エルメロイを吹き飛ばし、戦闘不能にさせた。
「...やられちゃったか。...ここまでだね」
「...そのようだな。くらえっ!」
「さっさとその道を開けろ、人間モドキ」
アレキサンダーは剣を構えて防ごうとするが、健闘虚しくネロの斬撃とジャンダルトレスの砲撃が、アレキサンダーへと叩き込まれた。
「っ...」
アレキサンダーは力なくその場に倒れる。
こうして、また一つ戦いが終わったのだった。
◇
「ぬぉぉぉ!速いなコレはー!」
アレキサンダー、エルメロイ...またの名を諸葛孔明を倒した立香たちは、アルカワネットが連合の本拠地へと向かっていったということを龍魂珠から聞き、急いで追いつくためにジャンダルトレスの背に乗って連合の本拠地へと向かっていた。
「しかし、ジャンヌさんをディスペクターにするとは...ドクター、カルデアにジャンヌさんはいるんですよね?」
『あぁ、なにもかも正常な状態でここにいるよ。ディスペクターのジャンヌ・ダルクは別の個体と考えていいだろうね。...しかし、聖女にそんな武装をさせるとは、少し悪趣味じゃないかい?』
「知るか。大事なのは力だけだ。我の所持している力が他人からどう見えようが、知ったことではない...と、見えてきたぞ」
目の前に現れるのは力の象徴だと言わんばかりの巨大な城。
そんな城の壁の一部分に、突き破ってできたであろう巨大な穴が空いているのが確認できた。
「近い...!ここにいる...!」
穴から内部へと侵入する。入った瞬間、龍魂珠が目にしたのは...
「...まさか、そんなバカな。どれだけ我なのだコイツは...」
『ちょ、ちょっと!?何なんだこのディスペクターは!?アルカワネットではないぞ!?』
驚く龍魂珠たちが見たのは、アルカワネットを組み替えたような見た目のディスペクター。その名を、龍魂珠は感じ取る。
「ロムイーン・アルカディルス...なるほど、どこのサーヴァントか知らんが、回復するために再混成したか」
「どうするのだ、龍魂珠...!?」
ネロが龍魂珠に質問しようとした、その瞬間。
ロムイーンの全身からオーラが放たれた。
「うっ!?こ、これって...」
「力が、抜けて...」
「ヨウ――コソ――」
ロムイーンが口を開く。ロムイーンはゆっくりと話し始めた。
「ワガ――ナハ―ロム――ルス」
「ロムルス、だと...!?まさか、神祖ロムルスだというのか!?」
「ソノ――トオリ――ココマデヨクゾヤッテキタ、愛し子ヨ――」
ロムイーンは自らをロムルスと名乗る。ディスペクターになってなお、その意識を保っていたのだ。
「...」
「ミテノトオリ――私ハ、モハヤローマデハ、ナイ――」
「伝統ヲ汚シ――ホロボスダケノ存在」
「ダガ―ネロ・クラディウス。ローマ帝国第五代皇帝――」
「オマエニナラ――私ノ歪ンダ
「...あぁ。過去も現在も、未来であっても。ローマ帝国第五代皇帝である余が...」
「余の剣たる強者たちとともに、そなたを止めてみせよう!!」
ネロの答えを聞き、ロムイーンは笑うと...大きな咆哮をあげ、ネロたちに突進した。
「しっかりしろ貴様ら!ジャンダルトレス、
龍魂珠の指示により、先程の戦いでも展開された結界宝具であるインビンシブル・ディスエテルネッルが展開される。
その効果により、立香たちの身体に力が戻る。
「ありがとうございます、龍魂珠さん!対AWディスペクター戦、開始します!!」
マシュの掛け声と同時に、ネロの剣とロムイーンの持つ槍がぶつかり合う。ローマ最後の戦いが、今始まった!!
「だぁぁぁっ!!」
「―――!!」
ズガガガガガッッッ!!!
そう表現するしかないだろうというほど、ネロとロムイーンの武器の打ち合いは強烈だった。
「まわりの雑魚は任せろ!やれ、ジャンダルトレス!!」
「わたしもいきます!はぁぁぁっ!」
ロムイーンの咆哮によって呼び寄せられたのだろう、二体のキメラをジャンダルトレスとマシュ、そして立香と龍魂珠が迎え撃つ。
「『瞬間強化』!」
立香が自らの礼装に込められた魔術を使い、マシュを強化する。強化された力で、マシュは盾でキメラを殴り飛ばした。
「ジャンダルトレス、全弾発射!!」
龍魂珠の指示で、ジャンダルトレスはキメラにとんでもない量の弾幕を浴びせる。
「「ギャァァァ!!」」
消滅するキメラたち。一方で、ネロもロムイーンを追い詰めていた。
「これが余の力だ――!!」
「―――――ッ!?」
混成されている部分を縦十字に斬られ、悶絶するロムイーン。そこに追い打ちをかけるように、マシュの盾とジャンダルトレスの砲撃が叩き込まれた。
「ッ――」
しかし、追い詰められてなおロムイーンの目は死んでいなかった。いや、諦めていないのは操っている混成の力だろう。混成の力は、生き残り、目的を達成するために、残ったエネルギーでロムルスの宝具を発動しようとした。
「ふん、宝具を使う気か。...ならばこちらもジャンダルトレスのもう一つの力を見せてやろう!!」
龍魂珠が指示をだす。それと同時に、どこからともなく詠唱が聞こえてきた。
" 諸天は主の為に。大空は主の手に。"
" 最終兵器の発動を告げよ。"
" 話す事も語る事もない "
" その光は遍く全地に、果ての果てまで届いて "
" その心を巡らせる"
" 主の心は我が内側で熱し、思い続ける程に燃ゆる。"
" 我が終わりは此処に。我が命数を此処に。我が命の儚さを此処に。"
" 我が生は無に等しく、影のように彷徨い歩く "
" 我が弓は頼めず、我が剣もまた我を救えずとも、それで良し "
" 残された唯一つの物を以って、主の歩みを切り拓け。"
" 主よ、この身を委ねます―― "
「――『
ロムイーンが宝具を解放しようとしたその時、一筋の光がそれを遮った。
「...貴様に予想できたか?いや、無理だろうな。所詮貴様は我の一側面に過ぎんからな」
ガシャリとその身体に纏った機械の腕、そして砲台といった武装を稼働させながら、龍魂珠は言う。
『そ、それは一体...!?』
驚くロマニ。それに龍魂珠は得意げに名乗った。
「クックック!ジャンダルトレスのもう一つの力!それは...」
「自らを『クロスギア』へと変形させ、纏ったものに力を与えるという能力!」
「今我が名乗るとするなら...『アントマ・クロス・タンゲンド』、とでもいおうか」
ジャンダルトレスが変化したクロスギアを纏い、不敵に名乗る龍魂珠。突然のソレにロムイーンは驚くが、すぐに気を取り直し、再び宝具を発動しようとした。
「こりんヤツだ。...せっかくだ、盾人間モドキモドキ。貴様がアレを防いでみろ」
「えぇ!?」
「何を驚く。貴様は立香を守りたいのだろう?ならばあの程度防げずどうする」
突然の無茶振りにマシュは困惑するが、龍魂珠の言葉は正しかった。マシュは立香の方を向き頷くと、その盾を構え呟いた。
「真名、偽装登録――宝具、展開します!」
『
マシュを中心に広がる巨大な魔力の盾。それを打ち破ろうとするように、ロムイーンが宝具を放った。
『
天高く槍が投げられたかと思えば、次の瞬間、その槍から極大の光線が放たれた!
ズ...ズズ...と、マシュが光線の勢いで後方へと押される。しかし、ただ威力が高いだけの攻撃宝具など、あのエクスカリバーを防いだマシュにとっては大したものではなかった。
「――っ、ふぅー...」
『凄いやマシュ!完璧に防ぎきった!』
「さすがマシュ!」
ロマニと立香に褒め称えられ、照れるマシュをよそに、龍魂珠とネロは宝具を放ってできたロムイーンの隙を見逃さなかった。
「ま、よく防いだとだけ言っていてやろう。...いくぞ、赤皇帝」
「ネロ・クラディウスだ!あぁ!ロムルスに...示すのだ!!」
「喰らえーーっ!!」
「これが本家の力だ!我の破片よーー!」
龍魂珠の機械腕のラッシュ、そしてネロの連続斬撃。その攻撃を食らったロムイーンはその衝撃に耐えきれず...
「――――――ッッッ!!?!」
ドガァァァァンッ!!
その身体を爆散させるのだった。