Fate/DisspectOrder 作:一般デーモンコマンド
「――――――ッッッ!!?!」
龍魂珠、そしてネロ。二人の攻撃を食らい、ロムイーンは爆発四散する。
「...ようやく戻ってきたなぁ!」
そう言うと同時に龍魂珠が取り込んだのは、今までローマで暴れた龍魂珠の混成の力。
力を一つ取り戻した龍魂珠の身体が鈍く三色に光る。
「龍魂珠、もしかして...」
「あぁ。ようやく我の力が一つ戻ってきたのだ」
龍魂珠の失われていた力の一端である混成の力。その力が戻ってきたおかげか、龍魂珠は少し余裕を取り戻したように見えた。
(さて、あとは聖杯を手に入れるだけだな)
オルレアンで手に入れた聖杯はいつまにかカルデアに回収されていたことを思い出しながら、龍魂珠は辺りを見渡す。
すると、柱の影から一人の男が現れるのを見た。
「貴様は...!」
「久しいな、イレギュラー。そして、愚かなカルデアの生き残り諸君」
現れたのは、カルデアを爆破し、オルガマリーが死んだ原因でもある、人理焼却の主犯...
「レフ・ライノール...!」
「はっはっは!久しぶりだね藤丸立香!いやいや、しかし成長したものだね君たちも。あのロムルスを取り込む怪物を倒したのだから」
「それは我の力がもたらしたことだ。つまり、貴様のサーヴァントとやらよりも我の力のほうが上ということだ」
そう言う龍魂珠を鼻で笑いながら、レフは続ける。
「もともとサーヴァントには期待していないさ。所詮、聖杯の力に勝ることはないからな」
完全にこちらを舐めきった態度でいるレフを見て、ネロは立香たちに質問する。
「あやつが宮廷魔術師か。では、ああして携えている杯が...」
『あぁ、僕たちの探している聖杯だ。...しかし、王が怪物になるのをみすみす見過ごしていたとはね。そして、倒された途端でてくる辺り、裏切りが相当板についたんじゃないか、レフ教授?』
ロマニはそうレフを皮肉るが、ニヤニヤとした顔を崩すことはなかった。すると、しびれを切らしたのか立香が語気を強めてレフに聖杯を渡すよう言った。
「無駄口はあとにしよう...!聖杯を渡せ、レフ・ライノール!!」
「おやおや、いっぱしの口をきくようになったね、お嬢さん。聞けば、フランスでは大活躍だったそうじゃないか」
「まったく――おかげで私は大目玉さ!本来なら神殿に帰還しているというのに、子供の使いさえできないのかと追い返された!」
「結果がこれさ。まったく、聖杯をふさわしい愚者に与えて、その顛末を見物する愉しみも台無しだよ」
そう苛立ちながら言うレフに対して、その言葉を聞いたロマニは冷静に呟いた。
『なるほど、時代を狂わせる英霊、または人。それに聖杯を渡せば、勝手に歴史は狂い始める。あとは、傍観していれば勝手に歴史は滅びていく...』
そんなロマニの呟きに龍魂珠も続いた。
「だが、ロムイーン...いや、ロムルスとかいう人間モドキは滅びを望んではいなかった。だから、滅ぼすためにわざわざ自らの手で干渉するしかなかった、ということか。...計画性のクソもあったものではないな」
やはり、やるなら魂ごと身体を奪って操るに限る...なんて自身のやり方を棚に上げつつ、龍魂珠はやれやれと言わんばかりに装備した機械腕を動かした。
「はっ、ほざけカス共。人間には初めから期待していない」
そう目を見開き、歯茎をむき出しにしながらレフは喋る。
「凡百のサーヴァント集めた程度でこのレフ・ライノールを阻めるとでも?」
「あの時とは違う!お前の目的は何なんだ!」
完全に敵意をむき出しにした立香の問いに、レフは答えることなく喋り続ける。
「やれやれ、確かに成長しているな。...自分が世界を救えると思っている愚かなところが!」
「人理を守るぅ?バカめ、貴様たちでは既にどうにもならない!」
レフはそこまで言うと、突如として聖杯を天高く掲げた。
「多少のイレギュラーはあったが問題ない!我らが
『不味い!この聖杯の反応、間違いなくこの特異点で一番やばい!』
「そんな!あのアルカワネットよりもですか!?」
「どうやら優人間の言うとおりだな...根本の出力が違う!」
サークルが現れ、光が中心へと収束していく。そして、金色に輝いたかと思えば...そこに、美しい白髪の女性が佇んでいた。
「さぁ、その力で敵を、ローマを、世界を破壊しろ!ははは!終わったぞロマニ・アーキマン!そしてイレギュラー!人理継続など、夢のまた夢――」
「――黙れ」
「え?」
すぱっ...と。先程まで酷くこちらを煽っていたレフの身体が真っ二つになり、地面に倒れ伏す。突然の展開に動きが止まる龍魂珠たち。
「...私は」
「フンヌの戦士。そして、大王でもある」
「この西方世界を滅ぼす、破壊の大王」
「破壊の――」
瞬間。
アルテラの身体から膨大な魔力が発せられる。
『魔力反応増大...これは、宝具――しかも、対城宝具クラス!』
「こ、これは余にも分かる...不味いぞ、立香、マシュ、龍魂珠!!」
「おい盾人間モドキモドキ!さっさと宝具を展開しろ!」
「駄目です、先程のロムイーン戦で使ったのでインターバルが...」
「令呪を使う!マシュ、宝具を今すぐ使え!!」
「了解です!先輩!」
「急げ――!!」
立香が令呪を使い、マシュが宝具を展開した瞬間...世界は、真っ白に染まった。
◇
「...耐えた、のか」
「危なかったね、ネロ。それに立香たち」
声の方向へと振り向けば、そこには息を切らしながら立っているブーディカの姿があった。
「ブーディカさん!」
「慌てて宝具を使ったけど、間に合って良かったよ」
「ブーディカさんの宝具のおかげで、防ぎ切ることができました。ありがとうございます!」
「おい、我も手伝っただろうが!」
「あっ、そうですね、龍魂珠さんもありがとうございます」
「...ふん。おかげでジャンダルトレスが消し飛んだがな。...しかし、あの爆弾剣人間モドキめ、どうやら外へと逃げたみたいだぞ」
龍魂珠の言葉に、全員が辺りを見渡す。確かに、アルテラの姿は既に消えていた。
『ひとまず、外にでて追いかけよう。こちらで観測してみるかぎり、どうやら首都ローマへと向かっているようだ』
「それなら、急いで向か「ソウはサセん――」!?」
低く、底冷えする声。声のした場所は、直近でアルテラの宝具を受け、消し飛んだと思っていたが、何故か残っていたレフの死体からだった。
「ワガ、主の祝福でワタシ直々にキサマらを殺してやル――!!」
レフの死体が黒い泥のようなものに覆われたかと思いきや、次の瞬間、黒い柱が現れる。
醜悪極まる腐肉の柱がそびえ立ち、それに無数の赤い眼が開かれた。その眼が一つ光を灯し、大きく輝く。
「―――ワタシは、レフ・ライノール・フラウロス!七十二柱の魔神ガ一柱、魔神フラウロス―――コレガ、王の寵愛賜りしワガ姿――!」
『フラウロス、だって!?七十二柱の魔神。まさか、そんなはずはない――』
「ちいっ、あの爆弾剣人間モドキにも対処しないといけないのに、あのパーマ人間、こんなのを隠し持っていたのか!!」
レフの隠し玉に驚く立香たち。すると、龍魂珠はパギャラダイダを召喚すると、首都ローマの方向へと飛び立った。
「龍魂珠!?どこに行くのっ!?」
「あの爆弾剣人間モドキも、その目玉柱も相手にしなければならないのくらい分かるだろう!ならば、別れて対処したほうが少しは時間が稼げる!!」
『確かに、今は急する事態だ!確かに龍魂珠の言うことには一理ある!』
ロマニの言葉に納得したのかよくわからないが...立香は龍魂珠をまっすぐ見据えて言った。
「...任せるよ、龍魂珠」
「あぁ。任せておけ」
そう言い残し、龍魂珠はパギャラダイダと共に外へと飛び去っていく。それを見届けた立香は、マシュ、ネロ、ブーディカと共にフラウロスへと身体を向けた。
◇
「ふん、アルカワネットの通ったあともまぁまぁ酷かったが、こっちはそれ以上だな」
アルテラの通ったであろう場所を辿って進む龍魂珠。アルテラを追いかけながら、龍魂珠は思考を巡らせる。
(あのパーマ人間が変化した柱...なかなかの力を感じた)
(そして今我が追いかけているアルテラとかいう人間モドキ。...どちらも得難い素材だ)
(ま、どちらも回収するとして...混成の力は何故暴走したのだ?)
龍魂珠は考える。回収してすぐに確認したが、混成の力は特に異常が
つまり、このことから考えられるのは...
(...何者かが、我の力に干渉した?)
龍魂珠の脳裏によぎる考え。龍魂珠は馬鹿馬鹿しい考えだと思うものの、そう考えれば龍魂珠の力の欠片に過ぎない混成の力が自我のようなものを持って襲ってきたのにも説明がついた。
(なんにせよ、警戒するに越したことはないか...む)
パギャラダイダの動きを止める。龍魂珠の視線の先にいたのは、三色に輝く剣を持つアルテラの姿。
「ま、うだうだ考えても仕方ないか。...さぁ追いついたぞ、人間モドキ!!さっさと倒され、我の素材の一つになるがいいわ!!」
「...行く手を阻むか、私の」
龍魂珠を視認したアルテラは、明確な敵意を龍魂珠へと向ける。しかし、それに臆することなく龍魂珠はアルテラの前に立ちふさがった。
「そうだ。貴様が世界を滅ぼそうがなにをしようが勝手だが、それが我の目的を邪魔することならば、我直々に貴様を討ち滅ぼすのみだ」
「わたしは、フンヌの戦士...」
「またそれか。そんなに戦士を自称するなら、こちらもいいヤツを紹介してやろう」
龍魂珠の身体が赤、白、青に輝く。
「番人の炎。そして叡智の龍素。二つが合わさる時、誇りを全て無に帰さん!」
「諸行無常の響きあり!いでよ、『龍鳳混成ザーディクリカ』!!」
「――――!!」
降り立つは、腕を無数に持ち、どこか仏を思わせるようなポーズをとる龍とも、天使とも取れるディスペクター。
龍鳳混成ザーディクリカ。龍魂珠の作り出したディスペクターの中でも最高傑作と呼ばれるディスペクターが、アルテラの前に現れた。
「...どんな相手でも、滅ぼすだけ――」
「やれ、ザーディクリカ!!」
龍魂珠の命令と同時に、ザーディクリカは手に持った錫杖を振りかぶり、アルテラへと打ち込もうとする。
「っ!」
ガキィン!と音がした場所を見れば、その攻撃を剣で受け止めるアルテラの姿。アルテラはゆっくりそれを押し返しながら距離を詰めていく。
「はぁっ!!」
「――ッ!!」
剣を振るい、振るった軌道に虹を残しながら、ザーディクリカの身体に傷をつけていく。ザーディクリカが龍魂珠の傑作のように、アルテラもまたサーヴァントの中でもまた別格の存在だった。
「終わりだ、『軍神の――」
アルテラを中心に魔力が集中していく。マシュ、ブーディカ、龍魂珠三人がかりで防げた宝具が今度は龍魂珠だけに向けられて放たれようとしていた。
「...ザーディクリカ、能力を発動せよ」
構えていたザーディクリカがぴたりと動きを止める。そして、錫杖を構えると、小さく呪文の名前を呟いた。
「...
「!?」
アルテラが宝具を放とうとするのを止め、ザーディクリカのつぶやきと同時に現れたソレらを避け始める。
「ぁぁぁぁぁっ!?」
さすがのアルテラも避けきれず、大ダメージを負ってしまう。そこに、隙を与えぬかと言わんばかりにザーディクリカの拳が迫った。
「――――!!!」
「がっ――」
直撃。アルテラの全身に衝撃が走る。
そんな様子を見てニヤリと笑うと、龍魂珠は混成のアタック・チャンスを宣言した。
「では、トドメだ。『混成秘伝デュアルスタック』!!」
それは必然によって滅びへと収飲する、宿命の一撃。
ザーディクリカの上下に星の描かれた陣が展開されると、そこから何本もの光線が放たれる。
それは、アルテラの身体をがっちりと縛り付け...
「終わりだ」
ザーディクリカの放った最後の光線が、アルテラの身体を貫いた。
◇
「ガガガっ―――!!ば、バカナぁあぁ!?」
魔神の身体が消滅していく。巨大な目玉は萎んでいき、その身体は塵となって消滅していく。
「コンな、たかが英霊如きニィィィ!!我らの御柱ガ退けらレルワケがァァ!!」
「...言ったはずだ、レフ・ライノール。わたしたちは、成長してるって!!」
「クソォォォォ!!申し訳ござイマセン、ワガ王よォォォォッッッ!!!」
声にならない悲鳴を上げながら...魔神と共にレフの姿は消滅していった。
「...しかし、おぞましいものだったな。さすがの余も、一人では危なかっただろう」
「えぇ、それほどまでに恐ろしい相手でした」
先程まで行われていたフラウロスとの激闘を思い出し、よく勝てたな...なんて立香は内心思いつつ、フラウロスが消滅した地点へと顔を向けた。
「あった...聖杯だ」
視線の先には、床に落ちた聖杯があった。それをマシュは拾うと同時に、立香たちの身体が透け始める。
「!?立香、マシュ!なにか透け始めているぞ!?まさか、お前たちも消えるのか!?」
「うん。そうさ、ネロ。わたしたちの役目は終わったんだ」
「ブーディカ、お主も...」
「はいはい、そんな顔しないの。...ありがとね、立香、マシュ。なんやかんやあったけど、私としては満足だよ」
「ブーディカさん...」
「大丈夫大丈夫!また会えるって!一旦別れるだけだからさ。...じゃ、またね」
ブーディカの身体が光となって消滅する。それを少し悲しげな目で見ていたネロは、立香たちの方向を向くと、声を張り上げて言った。
「立香、マシュ!そしてこの場にはいないが龍魂珠よ!!貴様たちの活躍、誠に大義であった!!この戦い、余は決して忘れぬ!」
「さらばだ!また、いつか会おう!!」
「...はい。きっと、また――」
マシュがそこまで言うと同時に、立香たちの姿はローマから消えていくのだった。
次回、エピローグ。