転生したら追放系主人公の姉でした~やることが多すぎる〜 作:パンプジン
転生して二度目の人生。ミデリア王国という国に第一王女にして王位継承権第二位というバカみたいな地位に生まれてしまったため、そこそこの贅沢と不自由を満喫していたが、久しぶりに最悪な場面に遭遇してしまった。
それは
ギフトは誰かがやらかさなければ王族とそれに連なる貴族たちのみに発現する。下から二番目の弟、第六王子のフィリップのギフトの発表の場は今年一番の盛り上がりを見せていた。
王妃の子だし、とても優秀と私の耳に届くほどだからね。みんな期待していたよ。
使用者のギフトを血を用いて書き出す万年筆型の
《飴》
書き出された文字を見て、その場にいた全員の思考が止まった。
飴? あの砂糖菓子の?
どんな反応をすればいいのかわからず、静寂が支配していた中。ただ一人座っていた男の言葉が響く。
「飴? いらんな。そこのお前、その砂糖菓子を山にでも捨ててこい。」
王族の長にして、ミデリア王国の頂点。そして
私はフィリップを庇うように近衛兵の前に出る。
「お待ちください我らが王。 末席ではありますが、聖人の席をいただく者として見過ごすことはできません。私にフィリップ殿下をお任せください」
あぁ、何やってんの私!!この人、自分の子どもでも容赦ないのになんで逆らってんの?!でもでも、フィリップまだ10歳よ??半分だけど血繋がってる弟だよ??まだちっちゃいチビちゃんよ?しかも目の前でやられちゃ、無理だよ庇うよ!!偉大なる我らが太陽にして大いなる神よ、毎日祈ってるんだからお助け〜!!!
内心汗ダラダラ流しながらも、紙に祈りながら顔には出さず父を睨む。こういう場にはお母さん達出さないよねこの人、自分の子供を追放すると妻達が黙ってないってわかってるんだよクソが。
「サンデマムか、久しぶりだな。良い、砂糖菓子は好きにしろ」
聖人という国教のお偉い立場のおかげか娘だからかわからないが、あっけなく私の言葉を受け入れた。
もうフィリップには興味が無いようで、父はしっしと追い払う動作をした。
まだ呆然としてるフィリップの背中を軽く叩き、再起動させる。
いろんな感情が渦巻いている潤んだ瞳が私に向けられた。
「行きますよフィリップ」
そう言ってフィリップの背中を押して、逃げるようにこの場から去ろうとするが、思い出したかのように父が言葉を投げかけてきた。
「あぁ、サンデマム。聖人の地位についたのだ、褒美をやろう。ルプス公爵領をお前にやる。ルプス叔父上はこの場に出ることすらできぬほどでな、継ぐ子もいない。よく働いてもらったからな、隠居してゆっくりさせてやれ。それとあの気狂いもいらぬ。開かぬ本などあっても意味がない、お前が持っていけ」
最後の最後でヤバい事を簡単に押し付けるんじゃねぇ!!お前お前お前そんな簡単に公爵の地位を奪ったりあげたりするな!!マジで?私土地持ちになるの?こういうのやだから教会に行ったの!!でも逆らえないんだよね!!私の命とか諸々が死ぬぅ!!
ミデリア国王は暴君である、妻達以外の身内に対して。気に食わなければ容赦なく首を飛ばそうとしてくるが、逆鱗に触れなければ名君主であり、民草達にはそこそこの人気がある。というか、この人の信者がめちゃくちゃ有能だからってのもある。イカれてるやろ、さっさと知らんところで死んで欲しいが、第一王子の兄が使い物になるまで生きて欲しい気持ちもある。関わることがなければあんまり実害がないのだ。逆鱗に触れれば、自分の周りの命が消えた後に消されるが。
てか、これからどうしよう。聖人修行も終わっているし、ゆっくり巡礼の旅に出ようとしていたので教会の縛りはあんまりないけど、大司教様には伝えなきゃだし、ルプス叔父様にも連絡して……、土地の契約……、あそこにも……あっちにも……
やらなきゃいけない事を考えながら、父に頭を下げてフィリップを連れて早足で王城の廊下を歩く。
転びそうになったフィリップを見て、私は止まる。あぁ、やってしまった。
「ごめんなさい、フィリップ。早かったわね」
「いえ、サンデマムお姉様。僕が遅いから……」
「なら、お互い様ね。ねえフィリップ、あなたの頭を撫でてもいいかしら?」
自分の足先を見ているフィリップは小さく頷く。その可愛い小さな頭を優しく撫でた。
「大丈夫よフィリップ。あなたが思い描いていた将来にならないかもしれないけど、幸せな未来になるよう大いなる神に誓いましょう。だから一緒に頑張りましょう」
そういうとフィリップは私に抱きついてくる。小さな体を抱きしめて、落ち着くように体をさすってあげる。なんでもよく吸収する麻の法衣だ、存分に使って欲しい。
といってもここは人が通る廊下。王族が涙を見せるのはあまり良くないので、フィリップを抱き上げて目的地へ歩く。
泣き止んだフィリップが降ろしてくれと言ったので降ろしてあげる。
「すみません姉様、お洋服がびちょびちょになっちゃった」
「いいのよ、私はそのための法衣だと思ってるから。気になるなら、ほら」
腰に巻かれた聖人の証であるベルトに触れる。
《清めよ》
そう唱えると、法衣は乾き洗濯仕立てのように綺麗になる。
「これは
「わぁすごい!……魔法とは違うのですか?」
「うーん。私は詳しくは無いけど、違うとは聞いたわ。知り合いの魔法師がいうには、聖言はまさに神の御業と言っていたから違うんじゃないかしら。こういうのは今から会うクエビーの方が詳しいででしょうから、気になるなら聞いてみなさい。体調が良ければ答えてくれるでしょう」
そういうと、フィリップはなんとも言えない顔をする。父に開かぬ本と呼ばれた弟は、フィリップの知識欲を満たすことは難しいだろう。
クエビーはその身に合わないギフトのせいで気が狂ったと聞く。私はその頃には聖山で修行中だったから、兄からの手紙でしかわからないが、普通の子供だったのに、ある時気が狂ったように意味のわからぬ言葉で喚き散らし、紙だけでは足りず部屋中を文字だらけにするほど何かを書いていた
らしい。そのないような誰も理解出来なかったが、ギフトであろうと思われ、調べることになった。
《八百万の知恵》
それがクエビーのギフトだった。
幼い脳に大量の知恵が流れ込み、脳が破裂しなかっただけ良かったな思うべきか、クソギフトと嘆くべきかはわからない。今は使えるかもしれんと城に閉じ込められているが今日でその慈悲も終わったのだ。
「フィリップ、今のクエビーのことわかる?」
「クエビー兄様ですか? あまり部屋から出ておらず、メイドが清掃のため部屋に入ろうとすると癇癪を起こしておりました。おそらく寝ていることが多いのかも」
「そう、まあ睡眠は大事ね。着いたわ」
フィリップと話しながらクエビーの自室に着いた。前と変わってなくて良かった〜、という安心感と、扉から漏れ出す陰の気が彼の状態を物語っている。
扉をノックする。
「おはようございますクエビー。貴方の姉のサンデマムです。久しぶりにあなたの可愛い顔を見たいわ、開けてちょうだい」
部屋の中からはガサゴソと人の気配がある。一応起きてるようだ。
めんどくせぇな、勝手に開けたろ。
「あけますよクエビー。《神の使いよ、その力の一端を押し下さい》」
聖言を唱えると、ベルトからホコリのような小さな光が出てくる、鍵を開けるように頼むと、吸い込まれるように鍵穴に入りかちゃりと鍵が開く。
サンデマム
人生2回目なので、悔いなきように生きてる。聖人修行という教会の中で一番きつい修行を5年という速さで終わらせた超人。与えられた聖言の量が過去一多い期待の新人。
フィリップ
飴というギフトのせいで追放されかけた優秀なおチビさん、サンデマムの言葉で頑張ろうとしている
クエビー
第四王子、ギフトのせいで頭が狂いそうになってる、流れ込む知識を書き出すことで頭痛は収まる模様。引きこもり中
ルプス王弟殿下
ルプス公爵領の領主、最近具合が悪い