転生したら追放系主人公の姉でした~やることが多すぎる〜 作:パンプジン
ドアノブを回し、扉を開ける。隙間から覗くと部屋は薄暗く、足の踏み場も無いぐらい書き殴られた紙が散乱していた。不釣り合いな天蓋つきのベッドには布団の丘ができていた。
「フィリップ、窓を開けて空気を入れ替えて。そしたら誰でもいいからメイドに替えのシーツを持ってこさせなさい」
「はい!」
返事とともにフィリップは床の紙を踏まないように歩き、窓を開け、日光が部屋に差し込む。では、呼んできます!といって部屋から出ていった。
私はベルトを撫で、聖言を唱える。
《神の従僕たるものよ、力を貸し与えたまえ》
赤ん坊に純白の羽が生えた天使が現れる。にこにこと私の言葉を待っていた。
「床に散らばる紙を一箇所にまとめて、壁や床に書かれてるやつも紙に書出して欲しい。この部屋にある文字は処分しちゃダメ。あとはいい感じに綺麗にして欲しい。よろしくお願いします。」
そういうと天使は頷き、体を光の粒子にして分割し動き始めた。
天使が大丈夫そうなのを確認し、私は布団の丘に向き合った。
「クエビー、起きているかしら?」
呼びかけると、モゾモゾと布団から顔を出す。
「なんだよあんた……だれ?」
「貴方の姉のサンデマムよ。ずっと聖山で修行していたからはじめましてね」
「初めましての姉様が、俺になんのよう」
「我らが王が、貴方を私に預けてくださったの。さあ、起きなさい。姉弟会議をしましょう」
そう言ってメイドを呼び、お茶と軽食を用意させる。
流石王城で出されるお茶だ。紅茶だし、雑味もない。軽食も果物で、久しぶりに食べる作られた果物は甘くみずみずしい。
小腹も満たしたし、会議を始めよう。
「第一回、姉弟会議を始めます。フィリップ、文字は書けますか?」
「一応……、書けます」
「よろしい。ならば書記を頼みます。とても重要な役割よ、会議で出た議題や話題を文字に起こしてまとめてちょうだい。クエビー、紙とペンは?」
行儀悪くズルズルと紅茶をすすっているクエビーは面倒くさそうに棚を指さす。
それを見たメイドが棚を漁り、紙とペンをフィリップに渡した。フィリップは短く礼を言い、メイドは深深と頭を下げた。
「その議事録はできるだけ残します。とりあえず、1番上に大きく第一回姉弟会議と書いて……」
「なあ姉ちゃんよ。姉弟会議っつーのは何度か開く予定なんか?」
「ええ、そうよ」
クエビーの質問に答えると、貸せといってフィリップから紙を奪い何かを書き始める。
何行か書き、その紙をフィリップに返す。
「おらよ。とりあえずこのとおりに書けば、まあ悪くはなんねぇだろうよ」
横から紙を覗くと。そこには議事録のテンプレートのように項目が書かれていた。
「わかりやすくていいわね、凄いわ」
「ありがとうございます、兄様」
「何も型があった方がいいだろ。褒めるようなもんじゃねぇよ」
はえー賢い。流石は八百万の知恵。口頭で説明するよりわかりやすい。
褒められなれていないのか、じとりと睨まれるが無視する。
「では、あらためて。第一回姉弟会議を始めます。進行は私、サンデマムがさせていただきます。書記はフィリップ、名誉顧問はクエビーです」
「わぁー!」
「名誉顧問ってなんだよ……」
ノリだぞ。という言葉は飲み込み、話を続ける。
「自己紹介から行きましょう。私はサンデマム。神に仕えている身ですので、家名などは返上しておりますので、ただのサンデマムです。若輩ながら聖人の末席を頂いております」
小さくお辞儀をすれば、フィリップが拍手をしてくれる。
こういうのは年齢順だと思うので、クエビーを見ると、ため息を吐かれた。
「クエビー・アザンシ・ミデリア。第四側室のイナミの子にして王位継承権第七位。巷じゃ気狂いで有名らしいぜ」
そう言ってクエビーは紅茶を飲む。
次はフィリップだと見れば、大きく頷いてくれた。
「フィリップ・ミデリアです!母上はアリアと言います!特技は乗馬で、趣味でお花を育てています!ギフトは……」
「もういいわ。ギフトなんざ興味ねえし、他人にいちいち晒すもんじゃねえ」
懸命に自己紹介していたが、ギフトのところで泣きそうに口ごもるフィリップを可哀想に思ったのか、クエビーは厳しい言葉で口を挟んだ。王族なのに口悪すぎんか?私がこんな言い方したら教育係にバチ切れされたぞ。
「クエビー、言葉が厳しすぎるわ。もう少し柔らかい言葉を使いなさい」
「へいへい。悪いなフィリップ、気をつけるわ」
「いえ、大丈夫です……」
二人とも素直で嬉しい。人間素直が一番!
「とりあえず、何から始めたらいいのかしら……?」
「とにかく根回しじゃねぇか?教会とかに連絡しなきゃいけねぇだろ」
「教会関係は整理してあるからどうにかなるわ。あとはルプス公にも私から手紙を出さないと……」
「そもそも今日中に城から出なきゃいけないのですか?」
今日の屋根すらない可能性が出てきた。
私はいい。王都の教会でお世話になる予定だったし、そもそも城に部屋は無いしね。
「城にいるのも居心地が悪いでしょうし、一緒に教会に行きますか?」
「良いのですか!?」
「教会には私から連絡しておきます。クエビーもおいでなさい」
「あー、わかった行く」
「では、荷物をまとめてちょうだい。十一時の鐘が鳴る頃にこの部屋に集合し、出発します」
弟達にあれこれと必要なことを説明して、一旦解散する事になった。
私は足早に部屋から出てある人に逢いに行く。
ミデリア王国の第一王子にして、その歳でよく逃げ出す父の代わりに執務を行っている我が愛する兄に。