無敵幼女   作:噴火湾太郎

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無敵な幼女が大暴れするお話を書きたいです。



第一話

タリウス・リフ・デティウスは相手を追い詰めた。

逃げるはトーロク王国ダラト公息女、ユーコ。

きらびやかながらも実用性を伴っているに違いない見事な甲冑は、ウマへの負担が抑えられているのだろう。よくぞこの長丁場を逃げおおせた。

しかし、眼前に山道を控え、相手もこちらもウマはへとへと。これ以上進むことは困難で、追いかけっこは終了。

年端もゆかぬ少女に刃を向けるのは気が引けるがこれも戦争だ。

殺すつもりはない。公爵令嬢ともなれば捕虜としての価値は大きいのだ。

今回は初の大隊長任務、先ほどの戦闘で少なくない同胞を失った以上、せめてそれくらいの褒美はあってしかるべき。

 

間もなく、公爵令嬢はウマを降りた。

(・・・おや?)

(噂の公女にしては身の丈が・・・?)

下馬姿を見ると、中身がちんちくりんで見るからに鎧の寸が余っている。

タリウスは下馬し、念のため抜刀して近寄る。

そしてまた念のため呼びかける。

「ダラト公ご息女、ユーコ殿下にお間違いないか」

「ゾーキ村、カキの子、モモです」

(違ったよ。影武者かよ・・・しかも子供じゃないか。ユーコ公女は人格者と聞いていたが・・・)

その影武者(?)は10歳くらいの子供であるように見えた。

公爵令嬢を捕虜にできると思ったら影武者だったことで自分の手柄が急落したことにがっかりした。また、勇気はあるが粗野でなく、真面目で公平だが優しも持ち合わせていると、良い噂ばかり聞いていたユーコ公女が小さな子供を影武者に据えたことで、そのイメージが崩れ去り、タリウスの気持ちはいっぺんに落ち込んだ。萎えた。

すると相手が叫んだ。

「お見事な戦装束、ご身分のあるお方とお見受けいたす。応えよ!」

「は?」

「応えよ!」

自分が名乗っていなかったことを思い出したタリウスは、慌てて返答する。共和国の名門氏族(貴族)として相手が雑兵であっても礼を失するわけにはいかないのだ。

「私はタリウス・リフ・デティウス。セナート共和国、第二軍団第三大隊長である!」

「大隊長・・・では、生きて捕らえれば、大きな手柄になりますか」

モモとやらの身にまとう鎧兜はおそらく公女が逃走するために預かった本物に違いない。

とすれば、影武者といえども、捕らえられるならば、せめて名のある武将でなければ恥となるのかもしれない。

(トーロク王国貴族ならばそう考えるのかな・・・後で勉強しなおそう)

少なくとも、共和国軍大隊長に捕らわれるなら不名誉ではあるまい。

「ご安心召されよ、粗略には扱わぬ」

元より、影武者であろうが、捕虜を不当に扱うつもりはないタリウスである。

しかし、モモの回答は好戦的なものだった。

「高貴なご身分と承った、お覚悟召されよ」

(会話がかみ合ってないような?)

モモと名乗った影武者は腰に帯びた剣を抜かず戦闘態勢(ファイティングポーズ)をとる。

(敵わないと知りながら・・・無抵抗で捕らわれることを恥じるのか? トーロクにそんな慣習あったかな・・・?)

構えた相手からの気迫は本物のように伝わっているような気がする。

(本気で戦うつもりではあるまいな)

「怪我をさせたくはないのだが?」

「あい分かった。こちらも生きて捕らえたいゆえ、善処する」

「それは、貴殿が小官をとらえるという意味か」

「・・・そうだが?」

身の丈190セルのタリウスに対し、モモと名乗る影武者は150セルにも満たないように見える。

結果はどうであれ一騎打ちの形を取りたいという意図が見えた。

(戦場でもそうなのかよ)

 

名門氏族(貴族)のタリウスは郎党、関係者等多くの利益関係者と付き合って生きてきた。

そこには、現実、実情に則しない儀礼的な、意味の分からない慣習があり、タリウスはそれが嫌いだった。

だが、戦場は違った。

直接に命のやり取りがある現場では、身分がどうとか礼儀がどうとかは言っていられない。

現実的に、効率的に事が進んでいった。そうしなければ死ぬのだ。

共和国を1000年支えてきた現場主義である。

そして、大隊長としてはともかく、タリウス自身、今回が初陣ではない。

死と隣り合わせの世界を知ったつもりのタリウスである。

これまで、戦場では世俗的なおためごかしはないものと思っていたのだが。

()()()()()()()かよ。これやらないと向こうが納得できないってことか?)

(結果は見えているのに危険を冒して形だけでも一騎打ちで負けた、という体裁をとらねばならない? 馬鹿馬鹿しい!)

だが相手はやる気のようだ。

(ダメージを与えて良いのかどうか・・・)

悩ましい一瞬であったが、先に動いたのはモモだった。

 

(は? え?)

公爵令嬢の鎧が消えた。

タリウスに油断したつもりはなかった。

モモを注視し、いかなる動きも逃さぬつもりではあったが。

その息遣いを間近に感じ、

(まさか)

我が身の懐に入り込まれたことを自覚し、下腹部に圧力を感じた。

(ベルトを掴まれた!?)

と同時に景色が回転した!

「ぐはっ」

背中からの衝撃で、投げられた、地面に叩きつけられた、ということを理性で感知するが、そのダメージは知性を阻害した。

肺の空気を一気に排出し、痛みも相まって悶絶し、その場でのたうちまわった。

反撃するどころか、自分が今どういう態勢なのかを把握することもできない。

 

「げほっ、げほっ」

呼吸の乱れと身体のダメージから現実に引き戻されるまで、どれほどかかっただろうか。

「死んでませんか?」

「大丈夫ですか?」

しばらくして、モモから声をかけられた。

「だ・・・だいじょうぶ・・・」

「そうですか、よかった」

心底安心したような声音であった。

タリウスが悶絶状態から立ち直り、顔を上げると、モモは言った。

「あなたは今から私の捕虜です」

 




お楽しみいただけるよう頑張ります。
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