Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

10 / 28
前回までの仮面ライダーEpisode FULL・BLASTは――。

大ショッカーと戦う為に世界を移動していた司たちは、ある日正体不明のブラックホール、『時空の歪み』に巻き込まれてしまう。
世界と世界を隔てる壁を容赦なく壊し、人間を引き込んでいく歪みに仲間達はバラバラに。

丁度『旧友』に会いに行っていた野上(のがみ)良太郎(りょうたろう)とハナもまた歪みの影響で拠点の学校に戻る事ができず見知らぬ世界で途方に暮れていた。
しかし良太郎は過去に一度この世界を訪れていた。彼は以前一緒にイマジンを倒した少年、野原(のはら)しんのすけと出会う事に。
さらに同じく歪みに巻き込まれた仮面ライダーフォーゼ、零月(れいげつ)結弦(ゆづる)(通称・博士)と城ヶ咲(じょうがさき)優子(ゆうこ)と(通称・助手)と再会を果たす。
同じくして、しんのすけの世界に現れた大ショッカー、魔化魍・和織(わおり)墨姫(すみひめ)

世界の破壊を企む大ショッカー、世界の破壊を阻止する仮面ライダー。
戦闘になる両陣営。しんのすけも仮面ライダーしん王となって見事に和織達を追い払う事に成功。

その直後、再び時空の歪みが発生、良太郎たちの下へ黄瀬(きせ)やよいと言う少女と、キャンディと言う謎の生き物が降って来た。どうやらしんのすけの世界は特に歪みの影響を受けやすい世界らしい。
友人と待ち合わせをしていたらココに来てしまったと言うやよい達。何やら大切な物まで無くしてしまったとか。
その後ライダーの世界とリンクする時空警察に所属するリング・スノーストームも仲間に加わり、一同はとにかくと世界を破壊しようとしている和織達を追う事に。


一方、和織達が逃げた先の公園には時空の歪みによって強制的にしんのすけの世界に送られた男女が二人。
少女の名は青柳(あおやぎ)美月(みつき)、少年の名はヤサカ・マオ、二人は自分達が異世界に送られた事も分からぬまま、大ショッカーの姿を目にしてしまう。
ショッカー怪人カマキリ男、和織、墨姫は世界の破壊を開始。美月達は人々を避難させる中でフォーゼ達と出会う。
フォーゼは二人に素質を見出しマオにバースドライバー、美月にメテオドライバーを与え、変身させるのだった。




SONG6 チガウ色

 

運命(さだめ)の星が、邪悪を穿つ!」

 

 

ビシッと敵を指さすメテオ。カマキリ男は舌打ちを行い戦闘員達を彼女へ向かわせる事に。

しかし戦闘員が立ち上がった様に、電王もまた唸り声を上げて立ち上がる。彼の起立を合図にして再び動き出す時間、それは戦いの時だ。

まず地面を蹴ったのは強化型達。彼らは一勢にメテオを引き裂こうと爪を向ける。しかしメテオはしっかりと彼らの動きを見ていた、一番最初に自分へ到着するだろう戦闘員へ凄まじいスピードでのハイキックを命中させる。男性型だった為、反応しても避ける事はできず、メテオの足が顔にめり込む勢いを見せる。

 

 

「いいぞぉ、上出来だ巨乳くん! メテオは近距離特化! 繊細で頭脳派の僕にはどうにも勝手が悪かったが君なら使いこなせるだろう! やはり栄養や知性が全て胸に吸収されているのか――」

 

 

乱戦を抜けてメテオがダッシュで走ってきたかと思えば、飛び膝がフォーゼの顔面に入る。

ゴリュ! と、硬い頭部部分のパワースーツをめり込ませて。

 

 

「ぎゃあああああああ!! 顔が、僕の顔がぁああああ!!」

 

「私は巨乳ちゃんじゃなくて美月! あ・お・や・ぎ・み・つ・き!!」

 

 

馬鹿にされるのは頭に来るとメテオは鼻を鳴らした。

どうやらメテオの中身、美月と言う少女は相当気の強い性格の様だ。

だからってわざわざ戦闘中に離脱して攻撃を仕掛けなくても良いのでは、とは思うが。

 

 

「――ッ」

 

 

そこでメテオは回転するようにして裏拳を。

後ろから襲いかかろうとしてきた女性型の爪を弾いた。

だが周りには無数の戦闘員、すぐに囲まれる訳だが、メテオに焦りの感情は無い。

インファイトを主とするメテオだが、こういった状況を想定して博士はいくつかの武装をメテオに装備させている。

それこそが彼女の右腕に装備されている腕輪、"メテオギャラクシー"だ。指紋認証システムを搭載したソレは、先ほど電王がボコボコにされている間に美月の指紋を登録設定させてもらった。おかげで急遽変身した彼女にも問題なく使えると言う訳だ。

メテオは襲い掛かる戦闘員達よりも先にギャラクシーの中にある一つのレバーを上げる。すると電子音、攻撃の準備が始まった。

 

 

『サタァーン!』『レディ?』

 

 

タタタタ! タタタタ! ジャジャン!

リズムのいい電子音が流れ、すぐに彼女はギャラクシー先端部分にあるパネルを指で押した。

パネルを介し、指紋認証が行われる。もちろん設定してあるので、問題なく認証されて技が発動される事に。

 

 

『オケェーイッ!』『サタァーン!』

 

 

すると右手に土星状のエネルギーオーラが出現。

メテオは大地を踏みしめ、そのまま右手を振るう。

すると土星の輪が文字通り分離、高速回転するカッターとなり、襲い掛かる戦闘員の装甲を削りに向かっていく。

 

 

「「「!!」」」

 

 

弾ける火花と倒れる戦闘員。

強化型は耐久がある為に撃破とまではいかなかったが、大きなダメージを与える事ができた様だ。

土星の輪は高速で回転、風を切り裂く円形ノコギリとなって縦横無尽に飛び回っていく。

その中で改めて状況を確認する電王、どうにも女性型がいる戦闘員とは戦いにくい、ココは吹き飛ばされた和織かカマキリ男に狙いを定めるか。

そう彼が思ったとき、体の中から彼を呼ぶ声が。

 

 

『先輩ぃ、たまには僕にもやらせてよ』

 

「あぁ?」

 

 

いつもはそれなりに広い良太郎の部屋でのんびりできていたが、今は狭い狭い良太郎の体の中、ウラタロスも外の空気が吸いたいらしい。

モモタロスはもちろん断るつもりだったが、なんだか戦いにくい女性がいると言う点もあってか、少し気持ちが萎えているのも確か。

メテオもメテオで目立ってきたし、なんだかよく分からない状況が展開している様だし、オンリーワンでナンバーワンなステージとは言いがたい。

結果、渋々ではあったがモモタロスは判断を良太郎に委ねる事に。

 

 

『ウラタロス、いい案があるの?』

 

『別に特には、ね。まあでも今の先輩よりは動けるかも』

 

「けッ! 勝手にしろぃ!」『ROD・FORM』

 

 

結局折れたモモタロス、彼はとっとと自分でボタンを押して良太郎の中へと引っ込んでいく。

交代して良太郎に憑依するのはウラタロス、彼の形態に変更する為に電王のアーマーが一度分離、ウラタロスのオーラに合わせた形を形成する。

ストレイダーと呼ばれる角状の装備、二つの複眼、青色の装甲が印象的なロッドフォームだ。

 

 

「あぁ、やっと広いところに出られた」

 

「………」

 

 

電王の変化に気づいたか、墨姫は二つの銃の引き金に手をかけ連射を開始する。

しかし青の力によって霧を発生させる電王、姿を隠して地面を転がる事で墨姫の銃弾を回避してみせる。

 

 

「ハァア!!」

 

「ッ!」

 

 

さらにその眼くらましに乗じ、ゼロガッシャーを逆手にして飛び掛るゼロノス。

先ほどの公園の戦いでも墨姫を足止めしていたのが彼女だ。

二丁拳銃と大剣では一見して拳銃の方が有利に思えるが、装甲を纏うゼロノスにはやや威力が心もとない。

防御力を無効化できる黒い蜘蛛の巣を張れればいいのだが、それよりも先に彼女は距離を詰めてくる。

さらに言ってしまえばゼロガッシャーを変形させれば彼女も飛び道具には対応できると言うのが鬱陶しい所である。

 

 

「フッ!」

 

「「「!!」」」

 

 

そうこうしていると霧が一気に晴れ、中からデンガッシャーロッドモードを構えた電王が飛び出してくる。

彼が真っ先に向かったのはメテオの所、彼は地面を転がり一気に戦闘員達に囲まれているメテオへと距離を詰め、そのままロッドを振り回して戦闘員を攻撃していく。

舞い散る火花、男性型はパワーこそあるが攻撃の動きが単調なのは変わっていない。相手の攻撃を受け流し、カウンターを主とするロッドフォームには相性が悪いと言う物だ。

電王は相手の攻撃を流し、そして生まれた隙に容赦なくロッドを突き入れる。さらに回避によって、相手の攻撃が他の戦闘員に当たる様に立ち振る舞う。

 

 

「大丈夫? お嬢さん」

 

「え? え、ええ……」

 

 

メテオを抱きかかえる様に守る電王。

助けられるのはありがたいが、なんだか下心のような物を感じるのは気のせいだろうか? いぶかしげに仮面の下で表情を変える美月。

 

 

『あたってますよー、こいつはエロガメですよー』

 

「ちょっと先輩! 変な事言うの止めてくれないかな!」

 

 

そう言いつつメテオを解放し再び視線を敵に合わせた電王。

ロッドフォームの特殊能力であるオーララインが発動され、彼のフリーエネルギーで形成された糸がロッド先端に装備された。

そのまま電王がロッドと言う竿を振るえば、糸が暴れまわり鞭の如く戦闘員達にぶつかって動きを怯ませる。

さらに糸が命中した際に針もまた出現し、それが女性型二体にしっかりと刺さっていた。

地面を思い切り蹴って飛び上がる電王、それに合わせる様にして女性型二体も強制的に地面から足が離れて宙を舞う。

デンリール、オーラで形成した糸で相手を吊り上げるロッドフォームの得意技だ。

 

 

「もっと綺麗な魚を釣りたかったけどね」

 

 

電王はロッドを振るって戦闘員を地面に叩き付けた。

素早い動きだろうが、倒れてしまえばコチラの物だ。

電王は起き上がろうとする戦闘員を許すまいと何度も執拗にロッドの突きを浴びせていく。

 

 

『い、意外と女の人でも容赦ないんだね』

 

 

ちょっと意外だったと良太郎。思い切り顔を蹴ってもいるじゃないか。

 

 

「冗談言わないでよ良太郎。僕は女性には誰よりも優しいよ」

 

『え?』

 

「これは女性の形をしたマネキン。ましてや人でもないからね」

 

 

言わばルアー、疑似餌だとウラタロスは説明する。

どんなに魚の姿を真似ても所詮は作り物、近くで見れば本物ではないと分かってしまうもの。

この戦闘員達も同じだと電王は、ウラタロスは説いた。

 

顔は皆同じ、髪の毛は人間のソレとは素材が違う。

さらに呼吸はしていなさそうだし、肌の色もおそらく地色なのだろう。

そもそもこれは良太郎達もゼノンから教えられた事だが、戦闘員とは人間と言う訳ではなく、ショッカー怪人の力から形成されただけの存在。

人の形をしていると言うだけで、性別は無いし中身や器官も人間とは全く違う。何より心が、感情が全く感じられない。

それじゃあ嘘と言う物を、人の感情をよく理解しているウラタロスには通用しない話である。

 

 

「つまりアイツは女の子じゃない、僕が遠慮する理由は無いんだよね」

 

『へぇ!』

 

「ま、そういう事だから!」

 

 

電王はある程度女性型にダメージを与えると、止めを刺さずに走り出す。

雑魚は強化されても言うて知れている程度。問題はその雑魚を生み出している心臓(コア)だ、それを破壊すれば力の結晶体である戦闘員は消えうせる。

 

 

「つまりお前だよ!」

 

「く――ッ!」

 

 

地面を転がる電王、頭上に通り過ぎる鎌を鎖鎌、電王は転がりながらもロッドの先端を突き出しておりカマキリ男の腹部を付いた。

火花を散らしながら地面を転がるカマキリ男と立ち上がる電王、その対比、その対峙。

 

 

「お前、僕に釣られてみる?」

 

「グッ!」

 

「千の偽り万の嘘――」

 

 

チラリと電王は辺りを見回してみる。そして肩を小さく落とした。

 

 

「なんて事も理解できなそうな。君達には嘘をつく必要も無いみたいだね」

 

「おのれ大ショッカーに逆らう愚か者めぇええッッ!」

 

 

鎖鎌とロッドがぶつかり合い火花を散らす。電王はそのまま移動を開始して一同から距離を空ける。

一方で舞台は乱戦状態の広場に。刀を構えるのは和織、彼は強化型を狙っていたバース、つまりマオに向かって距離を詰める。

所詮はただの力を得ただけのガキ、身体能力は上がっても戦闘におけるセンスは全く無いと踏んでいたのだが――

 

 

「おっと!」

 

「ッ!」

 

 

バースバスターを盾に彼は和織の刀を遮断する。

目を見開く和織、少なくとも素人に見える速さではなかった筈だ。

仮にも己の持ち味は速さだと本人とて自負している。その剣閃をバースはしっかりと受け止めたのだ。

確かにルートは単調、上から振り上げた刀を下に振り下ろしただけ。まぐれか? 和織は一度後ろに下がり、すぐにまた跳び出す様に刀を振るう。

右から左、と見せかけて斜めに振った刀。

しかし――

 

 

「何……!?」

 

「甘いですよ!」

 

 

刀に硬い物が当たる感覚。

和織が見たのは再びバースバスターで刀を受け止めているバースの姿だった。

バースには戦闘センスを上げる力もあるのか? いや、違うのか、和織は刹那の時に回想を。

そう言えばヒトツミが何となく言っていた言葉に次元がどうのこうのと言うのがあった様な。

 

 

電王(コイツ)らがいるって事は……)

 

 

まさかこのガキ、普通のガキじゃないのか。

和織がそう思ったときには彼の胴にバースバスターの銃弾が撃ち込まれていた。舌打ちをしながら後退していく和織、見ればあのメテオになっている女も或いは――。

それだけじゃない。あの仮面ライダーになった子供、遠くのほうでコチラを見ている少女と変な羊、どれもこれも引っかかる。

 

 

(面倒だな。俺の直感が面倒だと告げているぜコレは)

 

 

とりあえず――、面倒事に巻き込まれる前に面倒な奴らを減らすか。

和織の目が据わった。瞬間吹きすさぶ烈風、強力な風圧がバースを問答無用で吹き飛ばしていく。

そしてはじけ飛ぶ風。するとそこには先程の和織とは容姿が変わった男が立っていた。きている着物は同じだが、その肉体はとてもではないが『人』とは言いがたい。

カマキリと(イタチ)を融合させた様な姿。それが彼の本当の姿だと言う事なのだろう。

 

 

「お兄さんね、昔は鎌鼬って言われてたのさ」

 

 

両手に刀を持った和織、さらに風が巻き起こり、彼の周りを浮遊する六本の刀。

計八本の刀を持った和織がニヤリと笑みを浮かべて一同を睨む。

アレはヤバそうだ、フォーゼは直感でそう感じてバースを飛び越えて走り出す。

狙うは和織、フォーゼはロケットスイッチを装填して発動させると、一気に距離を詰めてロケットパンチを繰り出した。

だが――ッ!

 

 

「!!」

 

「絶対の嵐は絶対の防壁」

 

 

刀でロケットモジュールを受け止める和織。

それだけの力があると? いや、違う、コレは強力な逆風を集中させることでフォーゼの勢いを殺しているのだ。

 

 

「踊れ、刀牙の乱気流!!」

 

「ぐぉおお!!」

 

 

和織が刀を振るうと周りの刀も連動して縦横無尽に空間を駆ける。

風に、刀に揉まれて吹き飛んでいくフォーゼ。

それだけではなく刀達は独りでに飛行、しん王やメテオ、倒れているバースにも一撃を与えていく。

呻き声を上げて動きを止める一同。そこを見て和織は目を光らせる。

 

 

「戦闘員!」

 

「ッ! きゃあ!」

 

 

強化型達はこのチャンスを物にできるだけのスペックはもっている。

フラつくメテオに幾重の線が、強化型の爪の残光が刻まれる。

メテオは反撃にと蹴りを繰り出すが、強化型はそれを受け止めると体を旋回させてメテオを地面に倒した。

 

 

「墨姫ちゃんも本気!」

 

「……面倒」

 

「いいから! "ゲーム"を仕掛けるから!」

 

「………」

 

 

刀の一本が墨姫ともみ合っていたゼロノスの肩を刺す。

火花を散らし呻き声を上げるゼロノス、動きが鈍った、墨姫は小さくため息をつくと旋回しながら銃弾を放つ。

ゼロノスの体に命中していく黒き弾丸、それは着弾と同時に墨でできた蜘蛛の巣の様に展開していく。

その間に手を天に上げる墨姫、黒い蜘蛛の巣が彼女の体を覆い、それが弾けると彼女もまた違う容姿に。

和織程人らしさは剥奪されていないが、皮膚の色は完全に青白く。そして顔や皮膚には墨で書いた様な模様が。

さらに頭部には文字通り蜘蛛を模した帽子、そして背中からは四本の細長い棒のような物が。それは脚、蜘蛛の、細長い、人間の形をした両手両足の四本に加わる『脚』。

彼女の正体は『女郎蜘蛛』、二丁拳銃だけではなく蜘蛛の脚先からも糸が発射されて次々にフォーゼやメテオ達の体を捉える。

強力な重力、体に掛かる負荷、糸を受けたほぼ全員が地面に膝をついて動きを止めた。

 

 

「はぁい、カウントダウン。遊びに参加する人は地面に膝をついて待ちましょうー」

 

 

ニヤリと笑って辺りを見回す和織。

墨姫も跳躍で彼の隣に渡ると辺りを見てため息をついた。

 

 

「この姿……、疲れる」

 

「まあいいじゃないの、はいあと3、2、1――」

 

 

ゼロ、その言葉と共に墨姫の糸が吹き飛ぶが、同時に和織の手には一枚の布が。

彼はそれを投擲、すると布は吸い寄せられる様にしてフォーゼの背中に張り付く。

 

 

「あ? 何だコレ……!」

 

 

立ち上がるフォーゼ。背中に強烈な違和感が。

 

 

「結弦ちゃん、なんかついてるゾ!」

 

「マジかよ……!? 馬鹿とか書いてあるんじゃないだろうな!?」

 

 

背中にピッタリと張り付いた正方形の布。

意味が分からない、気持ち悪い、フォーゼは布を剥がそうと力を込めるが全くビクともしない。

ビッタリ張り付いている布はもはや装甲に融合しているのではないかと言う程だ。

 

 

「お、この四角のピコピコしてる」

 

「な、何!?」

 

 

ピコピコ? フォーゼは何となくだが状況の整理をする上で意味が分かった様な気がする。

和織はゲームを仕掛けると言った。その為に墨姫に協力させた様にも思える。

それは何を? 話を聞くに和織が『ゲーム』とやらを仕掛けるためには特定の人間を地面に伏せていないと駄目らしい。

つまり跪かせる事、その為に墨姫がアシストを行い、結果的には自分達は彼の言う条件を満たしたのだろう。

今、和織が仕掛けたゲームが始まっているという事。投げた布、アレが何なのかは知らないが確実に和織に対して有利に事が運ぶアイテムの筈。

そしてピコピコ。フォーゼも視界の隅にそれがあった。ピコピコとはつまり、点滅だ。その周期は時間と共に速くなり――

 

 

「チッ!」

 

「おぉ!?」

 

 

フォーゼは意味を察し、しん王から距離を空ける。

すると直後彼の背中にあった布が爆発。彼の背に衝撃とダメージが襲い掛かる。

 

 

「グッ!」

 

 

だいたい想像通りのダメージがフォーゼに襲い掛かる。

爆発範囲は狭い、余程密着しない限りは布が張り付いた相手にしか痛みと衝撃は襲ってこないだろう。

イラつく、苦痛に拳を握り締めるフォーゼと、対照的に聞こえるのは和織の笑い声。

 

 

「ほら、もう一枚」

 

 

彼が投げるのは布。何の事は無い正方形の布。

だがしかし、その正体は布状の爆弾である。和織が投擲した布は独りでに紙飛行機に姿を変えてフォーゼに向かっていく。

 

 

「撃ち落とす!」【ルァーンチャァ/オン】

 

 

複数のミサイルが布をロックオンして飛んでいく。

ミサイルは順調に着弾、しかしその爆煙の中から布が飛び出してきた。

なんだと? 叫ぶフォーゼの体に張り付く布、点滅が開始する。

 

 

「ああ、クソ! 取れん!」

 

 

貼り付けられた布、それは密着と言うよりはやはり融合している様に思えた。

慌てるしん王、彼も手伝うとフォーゼに触れるが――

その時だ、布が文字通り消え去り、しん王の腹部に現れる。

 

 

「オラの方にくっついた!?」

 

「――ッ!」

 

 

なるほど、そういう事か!

フォーゼは全てを理解する。彼は驚くしん王の肩を持つ、つまり『触れた』。すると再び布はフォーゼの腹部に張り付く。

どうやらこの布状の爆弾は接触を合図に人から人へと移り変わるらしい。つまりこの状態で敵に触れれば。

フォーゼは舌打ちと共に猛ダッシュ、一気に和織の所を目指す。

 

 

「あぁ、気づいたね」

 

「こんなモンいるか! お前に返すわ!」

 

 

殴りかかろうとするフォーゼだが和織は突風を発生させフォーゼの進行を阻む。

風の圧は確かな物、フォーゼの力をもってしても足を取られてスピードが緩まってしまう。

そうしていると和織の刀が飛来、フォーゼの体を傷つけ、さらに進行スピードを緩めてしまう。

こうなるとどうしようもない。時間が来てフォーゼの腹部が爆発、彼は再び呻き声を上げて地面に倒れた。

 

 

「ははは! コレがお兄さんのゲーム、"ハンカチ落し"さ。楽しいだろぅ?」

 

 

魔化魍の童子はその固有能力で自身が展開するゲームに相手を参加させる事ができる。

ゲームは特定の条件下における攻撃能力を持っている。今回のハンカチ落しは爆弾を移し合う条件のようだ。

爆弾は触れさえすれば相手に移るが、和織は強力な風を、墨姫は遠距離攻撃での接近の拒絶を持ち合わせている。

面倒な事だ。和織は既に次のハンカチをフォーゼに打ち込んだ。

 

 

「ほら! どうする? 誰かに移すか?」

 

「うん、そうする! 助手、変身しろ! お前痛いの好きだったよな!」

 

「一言も言ってねぇわンナ事! 絶対ヤダ! 鬼かお前は!!」

 

 

等と口ではふざけ合っては見るものの、爆発してみればそのダメージで洒落にならないのではないかと思い始める。

一発の威力は大きくは無いが決して軽いと言うわけでもない。それを受け続ければどうなるか、想像は容易い。

さらに辺りを飛び回る和織の刃。それは今も尚優秀なアシストとして役に立っている。

メテオの肩を打つ刃、怯む彼女へ強化型の重い蹴りが打ち込まれた。彼女を助けようとするバースも飛び回る刃をバスターで撃ってみるが、刀は破壊されず、やや軌道を変えるだけですぐに体勢を立て直して飛びまわっていく。

なんとかしなければ――、とは思うのだが相手にペースを掴まれた以上、取り戻すのはやや難しいか?

 

 

「こんの!」

 

 

ゼロノスは大剣を逆手に構えて刀の乱舞をかいくぐって行くが、視界外から飛んでくる女性型の飛び蹴りに怯まされ、そこを墨姫の弾丸が捉え怯ませる。

 

 

「きゃぁあ!」

 

「無駄……全部、今回は私達の勝ち」

 

「そう、そういう事」

 

 

敵に近づけない! フォーゼ達は完全防戦一方状態に。

せめて強化型戦闘員だけでも何とかできればいいのだが、それなりに耐久力がある以上大技を使うしかない。

かと言って墨姫や和織がそれを許すとも――。

 

 

「だ、大丈夫なんですか……?」

 

 

一方離れた所ではやよい達が状況を確認していた。

誰から見てもコチラの劣勢。助手もまた爪を噛んで唸り声を上げていた。

プロトバースに変身して助けに向かってもいいのだが、正直どうにかできる気がしない。

特にあの空中を飛び交う刀、高速で移動する攻撃ビットの様な物だ。あれがある以上コチラはどうしても動きを制限されてしまう。

耐久力もそれなりに存在しており、先程バースが銃弾を当てていたが破壊はされなかった。

そうなると他のツールでの破壊が優先されるが、かと言って跳びまわる刀を破壊する事はドリルやクレーンでは少し心もとない。

かと言って高威力のブレストキャノンは発動までにタイムラグがある。小さい刀ならば回避は余裕だろう。遠距離から狙ったとしても確実に気づかれる。

そうなると攻撃の手がコチラに回る可能性だってあるのだ。迂闊な行動は取れない。そもそも特殊ツールがあるのはバースだけであってプロトバースは装備が揃っていない。

 

 

「優子ちゃん。どうすればいいんだ?」

 

 

デネブも劣勢の状況を理解しているらしい。動くに動けぬ状況に悔しそうな素振りを見せる。

 

 

「んー、あの動き回る刀を破壊できれば良いんです。良いんですーん……が」

 

 

そこが難しい。高威力かつ高速の攻撃は誰も持っていない所。

 

 

「高速で、高威力……」

 

 

ポツリと、助手の言った言葉を復唱するやよい。

彼女の肩に乗ってアワアワと震えているキャンディとは対照的に、何か含みのある焦りの表情だった。

そうだ、焦りだった。恐怖ではなく焦りである。

 

 

「何か活路が――って、お?」

 

 

その時、アストロスイッチカバンが反応を示す。

なんだったか、助手はすぐに情報の確認を。すると捜索に出していたフードロイドが戻ってきたと。

そう言えばそうだったと助手。フードロイドにはある物を探しに行って貰っていたんだ。

するとすぐにフードロイドたちが視界に入ってきた。バガミールが抱えているのは紛れも無くコンパクト、やよいはそれを見てハッと表情を変える。

 

 

「――す」

 

「え?」

 

「わたし、お役に立てる――! かも!!」

 

「お、おぉ!?」

 

 

コンパクトを受け取り、大きく前のめりになって鼻を鳴らすやよい。その気迫に思わず助手は目を丸くする。

ちなみにコンパクトは彼女が時空の歪みから落ちてきた際に転がって行ってしまったらしい。

丸い形状のソレはコロコロとしばらく道を進んでいき、一人の女の子が拾って、取り合えず持ち帰ったとか。

するとバガミール達がやってきて、フードロイド達は女の子からコンパクトを半ば強引に奪う形で持ち去った。

その女の子が今は自宅で怒りに震えながらウサギのぬいぐるみを殴りつけているのは知る人だけが知る話なのだが――、まあ今はおいておこう。

とにかく、やよいが落としたコンパクトは無事に彼女の手に戻ったと言う訳だ。

 

しかし探していた大事なコンパクトが見つかったは良いものの、それが今の状況を変えられるとは思えない。

だが少なくともやよいに恐れは無く、それ故に説得力があるのも事実だった。助手はその事に首を傾げる。

現にやよいは先程までとは全く違い、自信に満ちた表情をしているではないか。

ソレほどまでにコンパクト一つで変わる物なのか? 見た所確かに装飾は派手だが、所詮化粧道具、

そもそも、彼女程の年齢の女の子が化粧をするとも思えないのだが?

 

 

「いくよキャンディ!」

 

「やよい! 頑張るクル!」

 

 

やよいはコンパクトを開く。

確認する助手、なにやら普通のコンパクトとは内部構造が大きく違っている様だ。

やよいは左手にコンパクトを持つと、右手に黄色いリボンの様なブローチを持って立ち構えた。

彼女はブローチをコンパクトの内部にセット、すると化粧道具からは絶対にありえない音が聞こえてくる。

 

 

『READY?』

 

 

電子音。

そう、化粧道具から電子音。ありえる訳が無い。それで助手はやよいが『どちら側』の人間なのかを理解した。

黄瀬やよいと言う少女はただ怯え、巻き込まれ、恐怖するだけの『側』じゃない。

だからこそココまで付いてこられた。

 

 

「!」

 

 

一同も聞きなれぬ電子音に気づいたか。その発信源であるやよいに注目が集まる。

その中で彼女は少し気圧されながらも、眼は真っ直ぐに敵を睨んでそのコンパクト、"スマイルパクト"を天に掲げた。

 

 

「プリキュア! スマイルチャージ!!」『GO!』

 

「ッ!?」

 

 

突如パクトから激しい放電が巻き起こる。

迸る黄色の稲妻、瞬間、パクトからパフが出現した。パクトは腰に移動、やよいはパフを右手に持ったままその場で手拍子を。

パンパン、パパパパンとリズムの良い音が。手を叩く際にさらに放電が巻き起こる。身にまとわり付いた電撃、すると彼女の服が全く違う物へと変化していく。

黄色を基調としたファンシーなドレス。踏ん張るように体を縮めたやよい、するとポン! と言うファンシーな音と共に彼女の髪型が変化。内巻きから、まるでバナナの様に外に広がるポニーテールへ。

 

 

『GO! GO! Let's Go PEACE!』

 

 

はじけ飛ぶ雷撃。

その中から面影は残せど、やよいとは違うやよいが現れた。

それはまさにフォーゼ達が行う変身と全く同じではないか。

 

 

「ピカピカぴかりん!」

 

 

両手を複数回広げ、彼女は笑みを。

 

 

「じゃんけんポン!」

 

 

一同の視界にチョキのポーズが広がる。

この状況で唐突なじゃんけん、もちろん反応できる者等――

 

 

「えへー、負けちゃったー」

 

「………」

 

 

まあ、唯一五歳児だけが反応できた訳だが。

とにかくと、だ。呆気に取られている一同を前にチョキのポーズを取ったやよい。

どうやらコレが前口上と言うのか、気合を入れる為の決め台詞らしい。

最後に彼女は黄瀬やよいではなく、今の姿の名を一同に告げる。

 

 

「キュアピース!」

 

「「「………」」」

 

 

な、なんじゃそりゃ。

思わずフォーゼと和織は戦い合っている事を忘れて彼女に視線を奪われる。

ただの女の子かと思っていたらなんだか魔法少女のような姿に変身したではないか。

まさかアレも仮面ライダーってヤツなのか? 和織は一瞬そう考えてしまうが、まさかそんな筈はと首を振る。

そもそも仮面をつけていないし、云々。だが彼女が変身したのは事実、この世界に元々存在している戦士なのか――。

それとも、彼女もまた"時空の歪みによって訪れた者"なのか、だ。

後者だった場合は引き寄せられたという事になる、それは舞台に必要なアクターとして選ばれたと言う事なのか?

何にせよ、面倒な存在である事には変わりない。和織は攻撃対象に彼女も入れ、殺意を解放する。

 

 

「お嬢ちゃん、悪いけど吹っ飛んでよ!」

 

 

ハンカチをピースに落とす和織。彼女の腹部に爆弾がピッタリと張り付いた。

だがその時、ピースの体に再び黄色い電撃が纏わり付く。刹那、彼女の姿が発光したかと思うと、文字通り消失する。

 

 

「!?」

 

 

かと思えば、空中に浮遊していた和織の刀が全て破壊された。

一瞬、そうだ、まさにそれは一瞬の出来事だった。

 

 

「馬鹿な!!」

 

 

目を見開く和織。刀達は帯電しながら粉々に粉砕される。

と言う事はだ、和織がそれを理解したとき、彼の脇腹に絶大な衝撃が走る。

見ればピースの肘打ちが深く抉りこんでいる所だった。

 

 

「ガハッ!」

 

 

さらに電撃の衝撃もプラス。

和織は大きく吹き飛びながら事態の混乱に表情を歪める。

予想はしていたが身体能力の上昇がピースにはついて来た様だ。少なくとも受けた肘のダメージは人間の女の子が出せる威力ではない。

はっきり言ってフォーゼの拳とほぼほぼ互角であろう。

おまけになんだあのスピードは。風の壁を振り切り、高速で移動する刀を全て一瞬の内に破壊する速度はまさに閃光ではないか。

 

 

「しま――ッ! ぐはぁあッ!」

 

 

さらに肘が入ったことでハンカチがピースから和織に移動。吹き飛び地面を転がる途中で爆発の追加ダメージが。

一方で墨姫はすぐに銃口をピースに向けて引き金を引く。しかしピースはバク転で距離を取っている所。

それでも尚彼女を狙おうとした墨姫のサイドにゼロガッシャーの銃弾が命中する。

 

 

「グッ!」

 

「貴方の相手はわたし!」

 

 

和織の刀が無くなった事で大分動きやすくなったか、ゼロノスが一気に距離を詰めて墨姫に切りかかった。

そう、ココが好機、助手もプロトバースに変身すると一気に銃を乱射して全身していく。

さらに距離を空けたピースは再びブローチを取り出すと、腰にあったパクトに象を模したブローチをセットした。

 

 

『Let's Go! ZO・U!』

 

 

すると電子音。なにより一同の視線を再び奪ったのは、光と共に現れる象だった。

そう、象。エレファントと言う奴である。空中から突如現れた象は広場に着地、独特の鳴き声を上げて象はその大きな鼻を振るって強化型戦闘員達をなぎ倒していく。

 

 

「ぞ、象!?」

 

「………」【レーェイダーァ/オン】

 

 

レーダーモジュールを展開してすぐにピースをサーチするフォーゼ。

すると様々な情報が伝わってくる。和織も感じた事であろうが、身体能力が明らかに上昇している。

生身に見えるが防御力や攻撃力はフォーゼのソレと大差は無い。スマイルパクトで変身し、さらに力が込められたブローチ、『キュアデコル』は様々な効果を発揮できる。今使ったのはゾウデコル、パクトに読み込ませる事で今の様に幻の象を出現させる事ができるのだ。

象は幻と言っても実体があり、ピースの意思である程度は操る事ができると言ったところ。

さらに先程、体が光ったのも彼女が任意で発動した能力。覚醒、とでも言えばいいか、体に電気を纏わせる事で一定時間ではあるが文字通り電光石火、疾風迅雷のスピードで動ける様だ。肉弾戦においても帯電している状態であるため、それだけダメージも上昇する。

雷の扱いに関しては相当のスペシャリストと見た。

 

 

「なるほど、凄いな」

 

 

唸るフォーゼ。

他世界と言う存在を知った時からいずれこうなる事は分かっていた。

たまたま知り合う連中が仮面ライダーと言う存在に関連付く物ばかりだったが、全くの関わり無い戦士もまたいるだろうと思っていた。

彼女がそうだ。フォーゼはますます他世界の可能性に感心せざるを得ない。同時に彼女が白ならば、対になる『黒』もあるのかと思ってしまう。

 

 

「ぞーうさん、ぞ~さん、おー鼻が――」

 

 

象の上で『象さん』を強調しながらダンスを踊っているしん王。

そのふざけた姿とは対照的に象は尚その巨体で戦闘員を吹き飛ばしていく。

生まれる余裕、体勢を立て直したメテオは鼻を鳴らしてメテオギャラクシーに指を添える。

 

 

『ジュピルァー!』『レディ?』

 

 

走り出すメテオ。

女性型の攻撃を弾き、その胴体に――

 

 

『オケェーイッ!』『ジュピルァー』

 

 

木星、ジュピターを模したエネルギーがメテオの手に宿り、彼女はそのままの勢いで女性型を殴りつける。

特筆するべきは威力と衝撃、文字通り女性型の腰が砕け散り、さらにメテオは姿勢を低めてメテオギャラクシーに指を。

 

 

『マァーズ』『レディ?』『オケェーイッ!』『マァーズ!』

 

 

もう一体には火星を模したエネルギーを纏った拳が。

顔面に炎の塊を叩き込まれた女性型は後方へ吹き飛びながら炎を纏って爆散した。

すぐに男性型がメテオを狙うが、そこで彼の体に火花が。見ればバースがプロトバースと共にバスターを乱射している。

動きが怯んだところを見てメダルを大量投入していく両者。

 

 

「いきやしょう! マオくん!」

 

「了解です!」

 

 

ダブルブレストキャノンが発射、赤い閃光が男性型を捉えて消滅させる。

強化型が全てやられた事を確認して和織は怒りに拳を震わせていた。流れは完全に向こう側についたではないか。

その事が、そして何よりもそうなってしまったと言う『事実』が気に入らない。

 

 

「ムカツクんだよお前らァアア!!」

 

 

両手に持った刀を構えて走り出す和織、対抗するのはフォーゼだ。

彼はエレキスイッチを装填、発動、エレキステイツとなり専用武器、ビリーザロッドを刀にぶつけていく。

迸る電撃、和織の手に痺れが残り、それが動きを鈍らせてフォーゼでも彼のスピードに追いつく事ができる。

 

 

「奇遇だな。僕もお前らの事がマックスで嫌いだ」

 

「そりゃあ嬉しいね、お兄さんもお前らが嫌いだよ!」

 

 

戦闘センスはやや和織が上を行くか、彼の蹴りがフォーゼの腹部を捉える。

呻き、後ずさる彼に和織が剣を振るって真空波をぶつけてみせる。体から火花を散らして地面を転がるフォーゼに追撃を行おうとする和織、その前に一人の少女が。

 

 

「もう止めてください! どうしてこんな事をするんですか!」

 

 

泣きそうになりながら両手を広げるピースを、和織は鼻で笑う。

 

 

「お嬢ちゃん、人間は好きかい?」

 

「え……?」

 

「俺は嫌いだよ。ああ、大嫌いだ」

 

 

だから殺す。

何も全てとは言わない。しかし嫌いなヤツは殺す。そしてこの世には嫌いな人間が多数だ。

ましてやどうでもいい人間も死んでも良い。だからこの世界を壊すと言う行為も厭わない。

きっとこの世界にも自分が好きになる人間はいるのだろう。だがしかしそれを知る前に破壊してしまえばどうでもいい。

 

 

「いいかいお嬢ちゃん。一つ覚えておいたほうが良いよ――」

 

「ッ」

 

「簡単な事なんだよ。コレはね、凄く、簡単なんだ」

 

 

嫌いだから殺す。それはいけない事? そんなの知ったことじゃない。

少なくとも自分は悪いとは思わない。ココは法治国家、だったら誰が裁く? 人? でもそれは人が人を裁く世界の上に成り立つ関係。

 

 

「俺は上位種、魔化魍。人間なんかと一緒にされちゃあ困るわけ」

 

 

だから簡単。今から自分達はこの世界を壊す。

人も、動物も、草木も、全てが消え去る。それが滅ぶと言う物だ。それが破壊と言う物だ。

壊れれば全てが無くなる、全てがいなくなる、存在そのものがゼロになる。和織はそんな事どうでもいい、でもそれをもしもピースが止めたいのなら――

 

 

「俺を倒す以外に、道は無い」

 

「……だったら、倒すから!」

 

 

構えるピース。

彼女が姿勢を低めたかと思うと、風を切り裂いて帯電する手刀、和織が刀をクロスさせてそのチョップを真っ向から受け止めた。

なるほど、やはり凄まじい力、放置は危険か。

 

 

「吹っ飛べ!」

 

「きゃあ!」

 

 

和織を中心に強力な突風が巻き起こりピースを吹き飛ばす。

刀は破壊されたが身を取り巻く暴風の鎧は突破できない。そうだ、多少流れは移ってしまったが、コチラの勝利は揺るぎ無い。

 

 

「この勝負は俺が――!」

 

 

ブスリ。

 

 

「―――」

 

 

違和感。和織は白目を剥いて停止することに。強烈な違和感を感じる。

どこに? それはもう一つだ。和織はゆっくりと背後を振り返り、下の方を確認する。

するとそこにはガッツリ『穴』に入っている指が。

 

 

「ほうほう、この感触は病みつきになりますな」

 

「ほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

またコレかよ! 和織は叫びながら尻を押さえて上空に吹き飛んでいく。

見ればいつの間にか背後を取っていたしん王が指を突き立てていたではないか。しかし何故? 暴風の鎧はどうなった?

和織はその答えを知る事は無いだろうが、他人から見ればふざけているかもしれないしん王ではあるが、彼は立派な仮面ライダーだ。

その与えられた鎧は彼のスペックを著しく上昇させ、暴風の中を突き進むだけの力を彼に与えていたのだ。本人はそれを意図している事は無いだろうが、スペックはスペック、和織の風を耐えられる身体能力を持っていただけの話しなのだ。

 

 

「ああ! くそッ! もういや! あの子嫌い! ぶっ殺す!!」

 

 

涙目になりながら和織は両手の刀にありったけの風を纏わせる。

大技が来る、フォーゼはエレキスイッチを外してロッドへと装填。

広場に鳴り響くリミットブレイクの音声、しかしあの絶大な和織のエネルギーに真っ向からぶつかって勝てる物か?

通常では無理、それはフォーゼにとって考えずとも分かる事だった。しかし今のこの条件下ならば――、と!

 

 

「ミスピース、僕のロッドにありったけの電撃を撃ってくれないか?」

 

「ッ、うん! 分かった!」

 

 

頷くピース、すると彼女のパクトが光り輝き、黄色のエネルギーを放出する。

ピースはその名に因んだのか、右手でチョキの構え(ピースサイン)を取って腕を伸ばす。

 

 

「プリキュア――ッ!」

 

 

すると青空を切り裂いて落雷が彼女へ直撃。

 

 

「ひゃ!」

 

 

どうやら自身が呼んだ落雷ではあるが、衝撃は感じるようで驚いた表情に変わるピース。

しかしすぐに彼女は真面目な表情に変わり雷撃を纏ったまま高速回転を行う。

回転するたびに膨れ上がる電力、そして彼女は両手をチョキにして一気に電気を解き放った。

 

 

「ピースサンダー!!」

 

「ッ!」

 

 

彼女の必殺技は和織ではなくフォーゼのビリーザロッドへ。

彼は考えた、自分一人の力では和織には勝てないと。気合がどうのこうのと言う精神論は嫌いだ、だから勝てぬ勝負は極力しないのがスタイル。

しかしそれでもフォーゼが逃げないのは勝てるプランがあるからだ。

エレキステイツは当然雷属性、そしてピースもまた雷の力を主としている。その二つの電撃のエネルギーを合わせれば或いはと。

パワー任せの戦い方は苦手だが、ある程度テクニックのある動きは自信はあった。フォーゼは暴れる電撃のエネルギーをビリーザロッドに集中させ、安定化させていく。

 

 

「消えろ――ッッ!」

 

 

和織が放つのは十字状の巨大な鎌鼬。

風のエネルギーがフォーゼを切り裂こうと飛来する。ビリビリとした空気、殺意にもまれた暴風は確かに強大だ。

しかしフォーゼの焦りは無い。既にそのビジョンは視えているのだから。

 

 

「お前がな!」

 

「何ッ!」

 

「ライダー100億ボルトシュートッッ!!」

 

 

思い切りロッドを振るうフォーゼ。すると同じくして巨大な雷の斬撃が発射された。

飛び道具を持っていたとは予想外の和織、さらにその大きさにも彼は驚きの声を上げる。

ピースの雷を受けて巨大化したエネルギーはまさに文字通り三日月と言ってもいい。斬撃は鎌鼬に直撃すると、僅かな競り合いの後に、風を吹き飛ばして切り抜いていく。

 

 

「う、嘘だろ!? ぐああああああああッ!!」

 

 

瞬時、巨大な三日月は和織を切り抜けると空の彼方に消えていく。

一方で和織に刻まれるのは、黄色に発光する帯電せし残痕。

フォーゼはその瞳に勝利を、和織は敗北を映した事だろう。彼は悔しそうに舌打ちを零すと、頭を掻き毟る。

 

 

「こんな訳の分からない奴らに俺が負けるのか――ッ!」

 

 

魔化魍にとって死は死に非ず。

しかしその死は紛れも無いリアル。死はイコールにして敗北、『今回』は紛れも無い負けなのだ。

 

 

「ちっくしょぉおおおおッッ!!」

 

 

爆発。

和織は爆炎の中に消えると、完全にその姿を消失させた。

その様子にやや目の大きさを変える墨姫。彼女は目の前で大剣を振るうゼロノスをにらみつけた。

 

 

「よくも……和織を」

 

「貴女も終わりよ!」『FULL CHARGE』

 

 

ゼロガッシャーにカードを装填してエネルギーを集中させる。

ゼロノスは大剣を持ち、踏み込むと体を旋回、そのままハンマー投げの要領で大剣を投擲する。

ハナの怪力も合わさって凄まじいスピードで飛んでいく刃。墨姫は目を細めると黒い蜘蛛の巣を盾の様に張り巡らせる。

その糸は大剣の勢いを完全に殺し、彼女の眼前でしっかりと停止して見せた。

 

 

「……残念」

 

「そうかしら」『メテオ! リミットブレイク!』

 

「え――?」

 

 

視界の隅に青い光。墨姫が後ろを振り向くと、そこには青い流星が。

 

 

「しま……った」

 

 

やられた。それを思った時、墨姫はメテオの飛び蹴りを受けて空中を舞っている所だった。

ゼロノスに気を取られている間にメテオが止めを刺す。当然か、敵は一人ではない、基本的な事を墨姫は忘れてしまっていた。

彼女は無表情で地面に倒れると、ゆっくりと体を起こした。体の中にあるエネルギーが暴走していく。

コレはもう駄目か、彼女は小さくため息をつくとフラつきながらゼロノスを指差す。

 

 

「一つ……教えてあげる」

 

「ッ?」

 

「たぶん、これは、きっと……はじまり」

 

「はじまり?」

 

「そう。いつか、分かると思う。たぶん……きっと」

 

 

がんばって。その言葉を残すと墨姫は地面に倒れ爆発した。

始まり、それが何を意味しているのか分からない。しかし何となくハナにも話しは理解できたものだ。

何かが起ころうとしているが、それは向こう側もまだ理解できていない所なのか。

 

 

「ぐぉおお!」

 

「ふぅん」

 

 

一方で広場から離れた電王とカマキリ男。

アスレチックが並ぶ場所で二人は戦う事に。

カマキリ男は鎖鎌を構えて電王の首を狙うが、彼はロッドを巧みに操りカマキリ男の手から鎌を落とさせる。

 

 

「ぐっ!」

 

「ねえ知ってる? あの歪みの先に何があるのか」

 

「歪み? 何を言っている!」

 

「あれ?」

 

 

一応カマを掛けてみたがやはり何も知らないのか、電王はフムと唸ると少し考え事を。

他世界を繋ぐ壁は非常に強固だとゼノンたちは言っていた筈だ。だからこそ自分達は今まで交わる事が無かった。

しかし今、それが壊れている状態、それは偶然なのか必然なのか、それを少し知りたかったがどうやらこの場では何も情報は得られないらしい。

 

 

「さっさと決めようか、良太郎」『うん、気をつけて!』

 

「ナメるなよッッ!」

 

 

カマキリ男は鎖鎌を拾い上げると、それを投擲、アスレチックにひっかけて一気に上層へ移動する。

そして跳躍、高い位置から鎌を振り上げて一気にソレを電王の方へと振り下ろした。

一瞬にして行われた移動と攻撃、電王は対処する暇も無く、脳天に鎌の一撃を受けてしまう。

捉えた。深々と鎌を抉りこませるカマキリ男。しかしそこでガクンと落ちた腕、見れば捉えた筈の攻撃が空を切っていた。

青の力によるカウンター攻撃、水で構成された分身をカマキリ男は攻撃したと言う事。崩れ落ちる水の塊、そして本体は背後でロッドを握る手に力を込めていた。

 

 

「ハァッ!」

 

「ゴォオ!」

 

 

払いがカマキリ男の体を打ち、彼は大きく後方へ吹き飛ばされる。

鉄棒に着地して遊具を粉砕しながら倒れるカマキリ男。しかしコレで安心してはいけない。

地に伏せる彼の体には糸、それを確認したとき、彼は宙に舞い上がったところだった。

 

 

「よっと!」

 

「なんだコレは!」

 

 

デンリール。

ロッドフォームの真価とでも言えば良いのか。

釣られ、離れたところから一気に引き戻されたカマキリ男、そのがら空きの胴体に電王は強烈な突きを打ち込んで見せた。

 

 

「ぐわぁあ!」

 

 

再び吹き飛ぶカマキリ男。

だがまだ糸は繋がったまま、つまりそれは先程と全く同じ状況になると言う事だ。

引き戻されるカマキリ男と吹き飛ばす電王、その流れがあと二回続いた後、やっと糸が切れてカマキリ男は解放される事に。

 

 

「ギェギェ! あ、ありえぬ!」

 

 

大ショッカーのプライドが乱れる。

無茶苦茶に鎖鎌を振るうカマキリ男だが、電王は的確にロッドを振るいルートを確保すると、すっと身を低くして前転、瞬時ロッドを低位置で払い、脚を取る。

倒れたカマキリ男へ突きの追撃。どこに転がろうともロッドのリーチがあれば追撃は容易だった。

抵抗にと放った鎖鎌も、ロッドで絡め取られ武器を奪われてしまう。そして鼻を鳴らして電王は一旦バックステップで距離を取る。

 

 

「さあ、終わりにしようか」『FULL CHARGE』

 

 

ヨロヨロと立ち上がるカマキリ男を睨みながら、電王はエネルギーが満たされたロッドをなぞり、狙いを定める。

 

 

「ハァアッ!」

 

「ッッ!!」

 

 

風を一直線に引き裂きながらロッドの先端がカマキリ男の腹部ど真ん中に侵入。

突き進むロッドと広がっていく六角形のエネルギー。青い結界、オーラキャストが敵の動きを封殺する。

呻くカマキリ男、まさか大ショッカーたる自身がこの様な場所で――、と。

一方地面を蹴る電王。高く飛び上がった彼は足を突き出し、美しい飛び蹴りの姿勢をとった。

 

 

「デェァアアッッ!」

 

「ぐぁああああああああ!!」

 

 

相手を捕らえた結界ごと相手を蹴り飛ばすデンライダーキックが炸裂。

青き破片を撒き散らしながらカマキリ男は手足をバタつかせて吹き飛んでいく。

遊具の頂点に倒れた彼はそのまま下に落下、地面に打ち付けられて苦痛に声を上げながら何とか立ち上がる。

 

 

「お、おのれッ! こんな事が――ッッ! ひッ! ひあぁああ!!」

 

 

しかしすぐにエネルギーを撒き散らしながら転倒。

そのまま爆発を起こし、断末魔を上げながら消滅する。

大きく息を吐いて落ち着く電王、とりあえず倒せたのは良いが、特に欲する情報は得られなかった。

もしかしたら何か学校に戻れる手がかりがあるのではないかと思ったのだが、どうにも上手くはいかないか。

ゼノン達『眼』が何とかしてくれれば良いが、向こうも何か巻き込まれていそうな気がしてならないし。

 

 

『とにかく戻ろうか、皆が心配だよ』

 

「そうだね、そうしようか」

 

 

その言葉を口にした時だった。

 

 

「!?」『!?』

 

 

凄まじい地鳴りと振動が。

何だろうか? 良い予感はしない、良太郎とウラタロスは頷き合うとすぐに広場に戻っていくのだった。

 

 

「な、な、なんじゃこらこりゃ!」

 

 

助手(プロトバース)の叫び。地鳴りの元は彼女達がいる広場であった。

振動を一同が感じた直後、地面を突き破って巨大な蜘蛛が姿を現した。

墨姫と和織の子、魔化魍ツチグモだ。巨大な蜘蛛は空気を振動させる程の咆哮を上げると、その口から強靭な糸を発射してピースが召喚した象をがんじがらめに。

 

 

「ッ! まだ敵がいたのか!」

 

「危ないしんちゃん!」

 

「おぉ!?」

 

 

驚くフォーゼ。

しん王は何とか象の背中からとび跳ねて脱出できたが、縛られた象は糸の力に引き裂かれ消滅した。

すぐに一同はツチグモに攻撃を仕掛けるが、敵はその攻撃を次々に打ち弾いていく。

それもその筈、今回のツチグモは和織達が特に力を注いで作り上げた強化種、ヨロイツチグモだ。

その名の通り強力な鎧を纏っており、故にバースバスターの弾丸も、ピースの雷も、ゼロノスの銃弾も、メテオの拳圧も全てを弾き飛ばして進撃していく。

 

 

「チッ! 仕方ない!」【ロォケェット】【ドォ・リ・ル】【オン】『LIMIT BREAK』

 

 

ロケットモジュールを使い上空に舞い上がったフォーゼはその勢いを味方につけてドリルを装備した脚でキックを行う。

ライダーロケットドリルキック、文字通りロケットで爆発的な加速と勢いをつけてドリルキックを浴びせると言う中々にエグい技である、が。

 

 

「ッ!」

 

 

ヂュィイインとけたたましい音はするのだ。火花も散る。

しかし進入していくと言う感覚が無かった。力を込めロケットの勢いを強めるフォーゼ、しかしそれでもドリルはガッチリと鎧に阻まれてしまう。

 

 

「う――ッ! ォオオオオ!!」

 

「ギィイイイイイイイイイ!!」

 

「頑張れ博士ーッ! 負けるなー!」

 

 

飛び散る火花のシャワーを見ながら祈るようなポーズを取るプロトバース。

唯一希望がありそうなブレストキャノンは先程フルパワーで撃ってしまった為に再使用は時間を置いてでなければ難しい。

そうなると他のメンバーも高威力の攻撃は期待できない。丁度皆必殺技を撃ってしまった直後、そうなると後は彼に期待するしかないのだ。

 

 

「ギブ!」

 

「は?」

 

「あひィイん!」

 

 

バゴン、と言う音と共にフォーゼが吹き飛ばされていく。

え? え? え? 今応援したばっかりなんですけど。プロトバースの冷たい視線を受けながらフォーゼは地面に墜落。その衝撃に悶えていた。

 

 

「博士ー! 何してんだ! もっと頑張れよ!」

 

「うるせーな! 僕もさっきリミットブレイクしたばかりだろうが!」

 

 

元々体力には自信が無かった男。競り合いと言う物は途中で萎えてしまう性格の様だ。

しかしこうなると本格的にマズイ、一同は顔を見合わせるが全く良い案が想い浮かばなかった。

 

 

「よし、ココは助手が食われている間に逃げるというのは――」

 

「アホかぁ! 絶対嫌ですよ私は!!」

 

「そう、そうか、そうだな。やはり美味そうな方が良いモンな」

 

「って、どうしてキャンディをみるの!」

 

「怖いクルー!」

 

 

わちゃわちゃしているのは良いが敵が待ってくれる訳も無く。

体勢を立て直したツチグモは咆哮を上げ、その尻から糸を発射、体を旋回させる事で鞭の様な糸が一同に襲い掛かる。

 

 

「ぐはッ!」

 

 

巨体からは想像もできないスピードから繰り出された糸と言う攻撃。

もはや糸と言うよりは縄とでも言えば良いか、咄嗟に姿勢を低くしたプロトバースやピース、元々身長が低かったしん王は無事だったか、フォーゼ達残りのメンバーは胴体に一撃を受けて吹き飛ばされていった。

 

 

「みんな!」

 

 

ピースが叫ぶが直後背後に殺気、振り返ればツチグモが牙を向けて眼前に迫って来た。

彼女は慌ててしん王を抱えると跳躍、プロトバースも地面を転がって回避を行う。

怯ませる為にピースは雷撃を、プロトバースは銃弾を放っては見るが、強固な鎧に双方の攻撃は弾かれて硬貨は期待できなかった。

 

 

「ど、どうすれば……!」

 

 

焦る彼女達の向こう側、そこにはダウンしているフォーゼ達が。

その中で丁度バースはベルトに攻撃を受けてしまったのか、変身が解除されながら地面を転がる事に。

バースにはこの公園で出会った少年、マオが変身していた。彼は呻き声を上げながらしばらく地面を擦っていく。

 

 

「いっつ……!」

 

 

帽子を押さえながら立ち上がる彼。

状況は再び劣勢か。彼はふとその時、腰につけていたポーチから『大切な物』が無くなっている事に気づいた。

さらにカバンも衝撃で開いてしまったか、中身の一部が辺りに散乱している。

マズイ、彼はすぐに地面に転がっている、もう一つの魂に手を伸ばす。他人が見ればそれはきっとただの何の変哲も無い玩具に見えただろう。

しかし彼にとってコレは特別な存在、命よりも大切と言っても差し支えないのかも。しかし今は役に立たぬもの、彼はその事に歯を食いしばる。

ああ、『コレ』が使えたらどれだけいいのか、と。

 

 

「え!?」

 

 

だからだろうか、彼の想いに呼応したかの様にして持っていた携帯の様なデバイスが光を放つ。

コレは一体? マオが呆気に取られている間にもう一つの重要な出来事が。

空気が振動、一同が振り返ると空中に大きなブラックホールが出現した。

 

 

「ッ! アレは――」

 

 

丁度戻ってきた電王達もそれを確認。アッと良太郎が声を上げる。

 

 

『時空の歪み!』

 

「この世界でもう四度目くらいだよね!」

 

 

やはりこの世界は歪みの影響が特に出やすい世界なのか。

とにかく問題はアレがどうなるか、と言う事だ。

要するに『入り口』なのか『出口』なのかと言う事、どちらでも状況が良くも悪くもなる可能性がある。

その答えはすぐに出た。振動する空気や空間の重みは感じる。しかし感じる引力は少ない。

と言う事は、アレは出口と言う事だ。ならば次の疑問は簡単、何が出てくるのかと言う事。

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

思わずツチグモも身を包む違和感に動きを止めて警戒する様に吼えている。

そんな中、一同の視線を受けながら飛び出してくる一つの影が。敵か味方か、確認する一同と、一方で何かデバイスを操作しているマオ。

台座の様な物をデバイスに付けて、アプリを起動させている。

 

 

「ッ、イケる!」

 

 

彼は笑みを浮かべて、同時に汗を浮かべていた。どうやら彼自身狙っている事に一抹の不安はあるらしい。

同時に彼もチラリと現れた者を確認する。そして思わず開眼し、大きな声を上げるのだった。

 

 

「――ッ、この世界は」

 

 

当の歪みから飛び出してきた者は状況を素早く確認。

どうやら既に歪みの事は知っていたらしく、その向こうが他世界に繋がっていると言う事も把握していたらしい。

見えたのは複数の戦士と巨大なツチグモ、彼は特にツチグモの背中、そこに刻まれている大ショッカーの紋章が目に付いた。

翼を広げる大鷲の紋章、それを見て彼も何となく流れを理解したようだ。

 

 

「そうか、この世界にも破滅の牙は潜んでいると言う事か」

 

 

三頭身程の体、おそらく大きさは一般的な男性の平均身長の半分程度と言った所かもしれない。

白と黒を基調としたメカメカしい体、けれども緑色の眼には黒目もあり、生物的な印象も受ける。

装備している武装もチラチラと見え、盾や肩には『A』を模した紋章が見えた。特に盾に刻まれている紋章には一角獣のデザインもあしらわれている。

左の背には何やら翼の様に見える装備も見えるが?

 

 

「フッ!」

 

 

現れたロボットの様な者はライフルを手にすると躊躇無く引き金を引く。

会話が無いと言う事は無差別攻撃か、それとも既に戦うべき相手が分かっていると言う事か。

それは分からないが、息を呑んだフォーゼ達が見るのはライトピンクに輝くビームがツチグモに次々と着弾して行く所だった。

 

 

「行け! フィンファンネル!」

 

 

さらに翼の様なパーツが次々と分離し、飛翔、長い板の様なパーツが『コ』の字に変形して攻撃ビットと変わる。

計六機のファンネル達は高速でツチグモの周りを飛び回りながらビームを発射して動きを完全に停止させた。

 

 

「ギガァアア!」

 

 

しかし硬い。

ツチグモは無数に迫るビームの雨に苦痛の声を上げてはいるものの、それは衝撃に苦しんでいるだけでダメージが通っている感覚は薄い。

現れたのは一応味方の筈、フォーゼ達は加勢に入るかどうかを迫られることに。

だが、まさにその時だった。

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

轟音、閃光、青い光が一同の視界に入ったかと思うと上空から巨大な光の柱が降ってきた。

捉えたのはツチグモの体、先程まではいかなる攻撃をも通さぬとばかりであったが、青い光はツチグモの背を捉えると風穴を開けてみせる。

 

 

「―――」

 

 

もはや断末魔を上げる暇も無く爆散するツチグモ。

何が起こったのか全く理解できない一同、とりあえず上空を見てみると、そこには『X』状に輝く光が見えた。

さらによく観察してみると、それは人型のロボットに見える。巨大なキャノン砲を持っているのは――?

 

 

「なんとか、なりましたね」

 

「ッ、その声……! あの糸目の!」

 

 

フォーゼの前に着地する人型のロボット。

正確には、モビルスーツと言えばいいのか。

 

 

「はい、ヤサカ・マオです」

 

「なるほど、お前も結局――、か」

 

 

明らかにライダーとは違う姿にフォーゼはフムと唸り声を。

ピースを見た瞬間からこうなるのではないかと思っていた。その予感が当たったという事だ。

時空の歪みはやはりただ人間を無作為に引き込む訳では無いのか? その疑問が今、強く残った。

話を聞くに、マオははじめ今の姿に変われる機能を持ってはいたものも、使う事ができなかったらしい。

それは単純にシステムが未完成であった事、システムに問題があったからだ。しかしこの世界に来てシステムが完成したのだと。

 

 

「リアルブート・アシムレーション」

 

 

そのシステムで彼は『ある物』を自分の鎧として具現する事ができる。

それが今の彼の姿と言う訳だ、そのある物とは――

 

 

「ワイのガンプラの具現化です」

 

「ガン……プラ?」

 

「え!? 知らんのですか? ガンダムのプラモデルですよ」

 

 

思い出すフォーゼ、以前司は仮面ライダーが自分の世界で一つの作品として存在しているのだと言っていたような気がする。

マオも同じなのかとフォーゼは思った。話を聞くと、彼は『ガンダムX』と言う種類のプラモデルを改造、『ガンダムX魔王』と言う独自のガンプラを作り上げた。

それを使用し、あの姿に変身したという訳だ。

 

 

「あぁ、そう言う事か」

 

 

そもそも、マオはまだ知らないんだとフォーゼは気づく。

自分達は隔てられた存在だ、文化が違うのは当然の事。

そしてそれは常識もまた同じ。フォーゼは集まってきたメンバーの中からピースに視線を移す。

 

 

「そっちは何だったか?」

 

「え?」

 

「その姿の名前さ」

 

「これ? コレはキュアピース。正義の味方、プリキュアだよ!」

 

 

ピースサインを出してドヤ顔のピース。

改めて出てきた単語を整理してみる。ガンダム、プリキュア、少なくともフォーゼには聞いた事も無い単語ばかり。

 

 

「あれ?」

 

 

しかしその言葉に反応する者も。

電王はピクリと両単語に反応、尤も良太郎は全く記憶には無いのだが、ウラタロス達には何やら覚えのある言葉らしい。

 

 

『ぷりきゅあ、プリキュア……デジャブっちゅうヤツかいな、むっちゃ記憶にあるで』

 

『なんだよクマ公お前もか。俺もだ、尤も良い記憶はねーけどな』

 

『ボクも薄っすら覚えてるよ。ガンダムってヤツが特にさー』

 

 

モモタロス達には何か心当たりがある様だ。

どうやら今良太郎の中にいる『六人目』と同じく記憶に無い記憶と言う物が確かにあるらしい。

もしかしたらその中で或いは出会っていたのかもしれない。とにかくと今、この場で一番状況を知っているだろう人物にフォーゼは視線を移す。それは一番最近この世界に現れた者を、だ。

 

 

「どうなっているんだ、僕はもうサッパリだぞ」

 

「引力さ、強靭で強大な」

 

 

先程マオが変身した姿に似た、三頭身の男(?)。

人間には見えないが――?

 

 

「紹介が遅れたな。俺はν(ニュー)ガンダムだ」

 

「ッ! マジですか!」

 

 

驚くマオ。

同じガンダムと言う括りがあっても、どうやら両者は違う世界の存在らしい。

それはフォーゼ達にも言える事だ。電王と彼が違う世界に生きる様に、彼らも同じなのだろう。

フォーゼは軽くマオと美月に他世界の事についての説明を。彼らも今が今だ、多少の戸惑いはあったが、他世界の存在をあっさりと信じた。

どうやらマオも美月も別世界と言うものには元々関わりがあったらしい、だからこそ疑う事は無かったと。

 

 

「じゃあ、SDガンダムが実在してた言う事ですか!? くぁー! たまらん!」

 

「俺からしてみれば君の魔王の等身に違和感があるもんだが……、まあ世界は広いからな」

 

 

ガンダム。

マオの世界で放映されている人気のテレビアニメの名前だ。簡単に言えばロボットアニメである。

ガンダムを初めとして様々なモビルスーツ、モビルアーマー等が登場し、仮面ライダーの様にシリーズ化されているのも特徴的だ。

仮面ライダーがフィギュアになっている様に、ガンダムもまたアニメが人気を得ると同時にグッズ展開がなされていく。

その中の一つが、ガンダムのプラモデル、通称ガンプラだ。マオの世界ではガンプラを組めば、作ったガンプラを操作して遊ぶ事ができるらしく、社会現象にまで上り詰めたとか。

 

 

「リアルブートアシムレーションはガンプラバトルをどこでもできるシステムの延長として企画されたモンなんです」

 

 

マオの友人が製作し、テストプレイをマオにも頼んだのだが、いくつかの不具合が見つかってしまい形にする事はできなかった。

しかし現在、その機能が使える様になっていたと言う。それだけじゃない、リアルブート(現実に具現)させたガンプラで攻撃までできた始末。

元々そういう機能があるかもしれないという事でお蔵入りになったのだが、まさか本当にガンプラを操作して現実世界で操作できるとは彼も思っていなかった様だ。

サイズはマオの身長よりもやや高くなる程度だが、先程放った魔王の得意技であるサテライトキャノンの威力は見た通りだ。あの威力を持つ事、助かりはしたが今は少し怖くもある。

 

 

「おそらく世界を移動した際の衝撃でいくつかのシステムに干渉が加わった、と見るのが一番かもしれんな」

 

 

そうνガンダムは語る。

彼はマオの世界にも存在している、もっと言えばリアルな構造のガンダムをデフォルメ化して可愛らしさを強調させたSDガンダムと言う種類に属する存在だ。

νガンダムはシリーズ最初のガンダムに乗ったアムロレイが後に乗る機体である。目の前にいるのはそのSD化、と言う単純な話では無いらしい。

今ココにいる彼はアムロは関係無い。正真正銘、νガンダムと言う一つの独立した存在だ。ガンダムプラネットと言う星で暮らしていたのだが、ある日時空の歪みに巻き込まれてフォーゼ達の様な状態に至ると言う事だった。結局彼も状況の全てを知っている訳では無いが、それでも予想できている点はあるのかもと。

 

 

「そうだな。色で世界を例えるならば――」

 

 

電王の世界が赤ならばフォーゼは朱色、マオの世界が青色ならばνガンダムがいた世界は水色。

限りなく近い色が近接しており、遠き色は交わる事も無かったろう。

しかし現に今、自分達は交わっている。全く違う色を持つ自分達が一同に会している。

 

 

「おそらくは、強大な黒があるんじゃぁ無いかと俺は思っている」

 

「強大な、黒……」

 

 

色の中で最も強いとされている『黒』。

自分達が集まったのは対抗する事を望まれているからではないのか。

様々な色が交じり合えば黒に近くなる。つまり対抗できうる存在となるわけだ。

彼らは様々な修羅場を潜って来た者達だ。その中には別の次元に、別の世界に渡ったこともあるだろう。

しかしココまで全く違う、確立されていた存在に出会う事は無かった。

 

仮面ライダー、ガンダム、プリキュア。

νガンダム曰くまだ違う『色』を持った存在の波長を感じるという。

きっとこれから自分達はその存在と出会うのだろう。もしかしたらもう出会っているのかもしれない。

それは何故か? 答えは、一つだ。

 

 

「力を合わせる為だと俺は思っている」

 

「力を……ね」

 

 

大きくため息をついて肩を落とすフォーゼ。

 

 

「あんまり大事になるのは避けたかったが……」

 

 

そこで変身を解除していた助手が一言。

 

 

「博士、それ、大事になるフラグですよーん」

 

「……確かに!」

 

 

確実に面倒な事になりますわ。

フォーゼは割り切って、今後の事を彼らと話し合う事に。

そして舞台は、別の世界にいる夏美達に移る。強大な黒の波長、彼女達には理解できるのであろうか?

 

 

 




☆エピナビ☆

・ガンダム(シリーズ)

1949年に放送された機動戦士ガンダムから始まった歴史的なシリーズだ。
日本のロボットアニメの歴史を大きく変えた、とも言われていて社会現象にもなったぞ。
単純な勧善懲悪ではなく、敵味方と深い人間ドラマを交えた作り。数々の魅力的なキャラクターや名言、特徴的なキャラクターや機体が特徴だ。

『Z』『ZZ』『V』『G』『W』『X』『∀』『SEED』等々、一部だけでもシリーズや作品数はとても多く、今もシリーズは続いているんだ。
グッズ展開も多く、ゲームやコミック等々。特にプラモデルは『ガンプラ』という専用の名前までつけられている、ガンダムならではのアイテムだ。
この作品では、ヤサカ・マオが登場するシリーズが関わってくるよ。

ちなみに仮面ライダー、ガンダム、ウルトラマンは非常に深い関わりを持っているんだ。
今までも共に協力して、何度も世界を救ってきたぞ!


………


はい、久しぶりです。
久しぶりすぎて申し訳ないです。正直作者自身かなり久々なんで、前書きに簡単な今までの流れを記載させてもらいました。
理由の一つにPCくんの調子がどうにもよろしくありません。長文をコピペすると高確率でフリーズします。

というわけでの次回更新も間が開いてしまうかもしれませんが、どうぞ気長に待って貰えればなと……!

ではでは
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。