Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

12 / 28
久しぶりの更新。
あとがきにドライブの軽い感想書いてます。


SONG8 砂ノ城

 

 

「………」

 

 

重い空気が辺りを包んでいた。

今から城に乗り込もうと準備を整えている一同。

時計は夜の時間を指し示している。テトラは両親を失ったショックからか、しばらく泣き止む事は無かったが、今は落ち着いたのか夏美に抱きしめられながら虚空を睨んでいる。

悲しみの先にある感情は憎悪。テトラの胸に秘めているソレを感じ取ったか、向かいに居たミライは悲しげな表情を浮かべた。

 

 

「……優しさを、失わないでくれ」

 

「え?」

 

「あ! す、すいませんっ! 俺の尊敬する人が言っていた言葉で――」

 

「そうですか。良い言葉ですね。続きはあるんですか?」

 

「あ、はい、えっと――」

 

 

語るミライ。

 

 

「優しさを失わないでくれ。弱い者を労わり、お互いを助け、どこの国の人とも友達になろうとする気持ちを忘れないでくれ――」

 

 

そこで彼は言葉を一瞬詰まらせる。

 

 

「例え、その気持ちが何百回裏切られようとも」

 

 

目を細めるテトラ。

幼いながらにミライが何を言いたいのか察した様だ。むしろこの状況が彼女に成長を与えているのか。

とは言えど、表情は重いままだが。簡単に割り切れるわけが無い。それにあくまでもミライは部外者だ、

 

 

「リンネを、アイツを許せって言うの?」

 

「………」

 

「アイツは――ッ! パパとママを殺したんだ! 絶対に許せない! 私が! 絶対私がこの手で殺してやる!!」

 

「て、テトラちゃん!」

 

 

バッと立ち上がるテトラ、夏美は彼女を落ち着けようとするが、テトラは目に涙を溜めてミライを睨んでいた。

一方でミライはジッとテトラを見る。泣きそうになりながら震えている彼女を見ていた。

 

 

「少し違うんです」

 

「ッ?」

 

「今は、聞いてもらえないかもしれない。けれど、分かってほしい」

 

 

ミライが言いたいのは、ずっとリンネを恨み続ける人生をテトラに歩んでほしくは無いと言う事だ。

ミライは憎悪や殺意を漠然とではあるが感じ取れる『力』がある。今、テトラは果てしない憎悪を覚えているのは間違いない。それは最早彼女を支配する程の。

無理もない、両親を殺されたのだから。それはミライにも分かる話だ。分かるが、それでも、彼女には一秒でも早く考え方を変えてほしかった。

復讐心を抱く事が間違いだとは思わないが、復讐の道に生きるには相応の苦しみがまた待っている。彼女はその茨の道を歩むべきなのか? ミライには疑問が残った。

 

 

「テトラちゃん。俺には分かります。このままじゃ君は、救われない」

 

「ッ!」

 

 

リンネ王女を殺したとしても、次の憎悪が湧き上がる。

何故ならば彼女の両親を殺したのはリンネではないからだ。シスターの話では王女が派遣した暗殺部隊に両親は殺されたらしい。

だとすればテトラは次にその暗殺部隊への憎悪を募らせる事になる。次々にシフトしていく憎悪の連鎖、そこに終わりはあるのか?

最後には、手を汚した自分への想いに苛まれるのではないのか?

 

 

「それに俺たちがやるのはリンネ王女の説得です。殺害じゃありません」

 

「でもっ! でも殺すってさっき言ってた……!」

 

「それは最悪の場合です。ですよね? 翼さん」

 

 

頷く翼。ミライは思う。

もしもリンネを殺したとしたら、きっと今のテトラの様な者が現れる筈。

何故か? 決まっている。リンネは人間だからだ。

 

 

「テトラちゃん。どうか分かってほしいんです」

 

 

復讐をするなとは言えない。けれど、その復讐の方法を今一度よく考えてほしいと。

憎悪のままにリンネを殺すのでは、僅かな安息しか齎されない。ミライが望むのはテトラの救済だ。その為には、どうか別の方法を探してほしいと。

リンネ王女の独裁を終わらせ、彼女に今までやって来たことの重さを分かって貰う。それが一番ではないのか、ミライはそう思う。ただ殺すだけでは、何も変わらない筈だ。

 

 

「………」

 

 

テトラは拳を握り締めてグッと歯を食いしばる。

彼女もミライの言う事が正しいのかとも思ってしまったのだろう。

加えて皆がリンネを殺すまでいかない事等分かっている。しかし割り切れない想いという物もある事は確かなのだ。

だから何も言えなかった。分かったとも、分からないとも言わず、ただ唇を噛んで俯くだけ。

それでもミライはいつか分かってくれると思い、彼もまたそれからテトラに言葉を投げる事は無かった。

少しだけではあるが空気は軽くなる。夏美はこの際だと気になっている事をミライに聞いてみる事に。それは彼の事情だ、何がどうなって今に至っているのか?

ミライもその質問を拒むことは無く、ちょっとした昔話を。

 

 

「ウルトラマンは俺の世界ではテレビで放送されていたヒーローの名前なんです」

 

 

夏美の世界でも仮面ライダーはテレビのキャラクター、つまりフィクションの存在だった。

お互いその部分は共通しているらしい、そしてもう一つ、空想上だと思い込んでいたキャラクターが実在し、その力を手に入れた事も。

 

 

「ある日、俺の町に影法師と言う存在が現れました」

 

 

闇の衣を纏った影法師は語る。

この世には数多の並行世界、パラレルワールドが存在し、次元を隔てて多くのウルトラマンが存在しているのだと。

ミライは信じられなかった、ずっとテレビで見ていたヒーローが実在していたなどと。

しかし影法師はまだ覚醒していないウルトラマンを排除するべく、ミライの世界に10体の侵略怪獣を送り込んだと。

 

 

「そしてその言葉通り、俺の住んでいた町に巨大な化け物が現れました」

 

 

町は壊され、世界は絶望で覆われる。ミライもまた死を覚悟したと。

しかしその時、ミライ達の前に希望が、ウルトラマンが現れた。

 

 

「それが、メビウスでした」

 

 

影法師を追って次元を超えたメビウスは化け物と戦闘を開始した。

もう駄目だと思った時に現れた希望、あの時の感動は今も覚えているとミライは目を輝かせる。

しかし同時に彼の表情がすぐに暗くなった。それは、そこで彼が大きなミスを犯してしまったからだ。

ミライは崩壊する町の中で、一人の少女が瓦礫に足を取られているのを発見する。あの時は正直怖かったが、何より、彼はウルトラマンを見てきた。

その正義は胸に刻まれている。結果、ミライは少女を見捨てる事ができずに助けようと奮闘した。

 

 

「それが怪獣に見つかってしまって」

 

 

一体目の怪獣、『魔杖』はこのままではメビウスに負ける事を察していた。

結果、近くにいたミライたちを人質に取ったのだ。

そして――

 

 

「メビウスは……カラータイマーを砕かれてしまいました」

 

 

カラータイマーと言うのは簡単に言えばウルトラマンの急所である。

そこを砕かれた者は死んでしまうと言うのはミライも知っていた。メビウスが死ぬのは自分のせいだ、ミライは強い後悔と申し訳なさを胸に宿す。

メビウスはミライの気持ちを察したのか、人間態になってミライに気にするなといってくれた。

そして自分のもう一つの名前も、『ミライ』なのだと語った。しかしカラータイマーを砕かれたのは事実、メビウスは瀕死である事には変わりなかった。

ミライは祈った、無駄かもしれないと思いながらも、奇跡が起きるのを。

 

 

「その時でした」

 

 

光が巻き起こり、ミライの前に一人の女の子が現れたと。

白いワンピースと帽子、そして赤い靴、彼女はミライにメビウスを救う方法が一つだけあると語る。

それは、メビウスをミライの体に宿す事だった。

 

 

「俺はその提案を受けました」

 

 

彼がこうなったのは自分の責任だ。絶対にメビウスの死なせる訳にはいかなかった。

こうしてミライとメビウスは合体。メビウス本人の魂と意識は仮死状態となり、ミライの意思で力は自由に使う事ができた。

つまり、ミライはメビウスを受け継ぎ、今の今まで戦ってきたのだと。

 

 

「ウルトラマンは本当にカッコいいんです」

 

 

彼らはウルトラの星にある光の国に住んでいる。

つまり宇宙人、別の種族だ。なのに遠い地球の人間を守ってくれる。

ミライは思うのだ。言い方はおかしいが、ウルトラマンに守ってもらう価値のある生き方をしたいと。清く正しく生きていきたいと。

胸を張りたいんだ。人は、価値のある存在なのだと。

 

 

「甘い、考えかもしれませんが」

 

「そんな事。素敵だと思います」

 

「あはは、どうもありがとうございます」

 

 

ミライは笑い、視線をテトラに向けた。

 

 

「だからテトラちゃんにも笑っていてほしい」

 

「………」

 

「苦しい時はいつか終わる。悲しい時は過ぎる。その先には、希望(ひかり)がある」

 

 

戦う中で、多くの宇宙人が言った。

人は愚かだ。人は醜い。人は傷つけあう馬鹿な種族だと。ミライはそうじゃないと口を大にして、胸を張って言いたんだ。

リンネを止めなければならない。そしてその先に行うのは死と言う終わりを与える事ではない。諭すと言う裁きだ。

悲しみの連鎖は終わらせなければならない、それは死ではなく言葉で、行動で、心で。

 

 

「リンネ王女は――」

 

「!」

 

 

テトラは少し声を震わせながらも、視線をしっかりとミライに合わせた。

 

 

「リンネ王女は大嫌い」

 

「ッ」

 

「だけど……っ! だ、だから、私はリンネ王女みたいになるのは止めとく」

 

「!」

 

「殺すのは、止める! 皆も、止めよう……ね?」

 

「テトラちゃん!」

 

 

笑顔に変わるミライ。翼達も笑みを浮かべてサムズアップでテトラに返事を返した。

分かってくれてよかった。ミライは安心したように笑い、テトラの頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

 

 

「皆、行くぞ!」

 

「「「「おう!」」」」

 

 

ユウスケの声に椿、咲夜、真志、鏡治は声をそろえて応える。

彼らが見上げるのは大きな城。衰退していく国の中で大きくそびえるソレは、何とも皮肉な姿に見えた。

立てた作戦は一つ。それは単純明快、真正面からの突破である。多くの兵が控えているだろう城へ突撃するのは安直かと思われるかもしれない。

しかしソルジャーのメモリを使用したとして実力はたかが知れていた。それにこの景色、中世の城ならばトラップがあったとしてもライダーの力を持っていれば突破できるだろうと踏んだのだ。

まだ理由はある。それは一番の障害である筈の大ショッカーがリンネ側と敵対している事だ。

もちろんマスクルスの一件だけでそう決め付けるのは早計かもしれない。しかし少なくともマスクルスがリンネ側を攻撃したことは事実。

なんの為にあんな行動を取ったのか、真正面から突っ込めば分かるかもしれない。つまり大ショッカーが本当にリンネ側にとって敵なのか、それとも今回はコチラ側を止めてくるのか、だ。

 

ただ一応不測の事態が起きる可能性もある。

結果、何グループかに分けてアタックを行う事にした。

第一陣の五人が突っ込むのを他のメンバーは後方から確認、ピンチや優勢時に変身を行い一気に畳み掛けると言うもの。

肩を並べ一列に歩くユウスケ達は、それぞれのベルトを構え、ポーズを取りながら歩いて行く。既に薫は銃に変身しユウスケのベルトへ、どうやら準備は万全の様だ。

 

 

「変身!」『ターンアップ』

 

「変身」

 

「変身!」

 

「変身ッ!」『HENSHIN』

 

「変身」『ターンアップ』

 

 

正面右からブレイド、龍騎、クウガ、ガタック、カリスの並びで一同はさらに足を進めていく。

正門前の長い石畳の道を歩く五人のライダー、近くの高台や後方では他の仲間たちが状況を確認している。

特に後方にある草陰ではミライ、夏美、翼、アキラ、そしてついて来たいと申し出たテトラが食い入る様に見張っていた。

 

 

「――ッ」

 

 

ゴクリと喉を鳴らすミライ。

これはあくまでも第一段階でしかない。この突入はあくまでも女王と話がしたいが為。

この方法はあくまでも賭けだ。そもそも現状、今のままではまともに話を聞いてくれない。だからこそ見せ付ける、自分達には力があると。

そして絶対話を聞かざるを得ない状況を作らなければならない。その先にある話し合いでちゃんとリンネ王女を諭さなければならないのだ。

さて、そうしていると予想通り門が開き、中から兵士達が飛び出してきた。昨日河原で戦った者なのか? それとも別の者なのか? 詳細は不明だが、それなりの人数が槍を構えて問答無用と言った様子でライダー達へ襲い掛かっていく。

一方でそれぞれ武器を持ち、突っ込んでいくクウガ達。やはりソルジャーのメモリでは今のクウガ達を止められない。バッタバッタと次々に彼らは兵士をねじ伏せて正門へと近づいていく。

 

 

「………」

 

 

それを見ていた翼は何度目か分からない強烈な違和感を覚える。

ガイアメモリには下級とは言え超人的な力が手に入るアイテムだ。今はライダーの力の前になす術もない様だが、それでも通常の戦場ならばかなりの力になる筈。

つまりソルジャーはちゃんとしたメモリだと言う事だ。そうなると例外なく、副作用が存在するのではないか?

ゼノン達から聞いたガイアメモリの副作用は大きく分けて三つ。

一つ目は食欲の消失、何を食べても美味しいとは思えなくなる。もう一つは性欲の消失。子を残す機能が消滅し(正確には種が)、異性に対する興味も減少する。

そして最後は睡眠欲の消失。眠ろうと思えば眠れるが、眠いと言う感覚は消え去る。

人間の三大欲求を封じてまで手に入れる異形の力、それがガイアメモリと言う事だ。その割には多くの兵士が使用している様に感じる。覚悟を決めての事なのか、それとも無理矢理使用させられているのか。そもそも大量のソルジャーメモリをリンネ側は一体どこで――?

 

 

「!」

 

 

兵士達の動きに変化が起こった。彼らは道を空ける様に移動、どうやらこのまま抗っても無駄な抵抗だと察した様だ。

その代わり、無駄ではない力がクウガたちの前にやって来る。

 

 

「護衛兵か!」

 

「閃光のレオンって言ったっけ……?」

 

 

正門から歩いてくるのは一度アギトとガタックが戦ったレオンだ。黄色の髪を揺らしてコチラを睨んでいる。

彼の実力はよく知っているつもりだ。身構えるガタック、さらにレオンの隣にはもう一人男が歩いているではないか。

かなりの長身で、紫の長髪を一つに結んでおり、右手には鞘に納まった長い刀を持っている。

テトラは女王直属の護衛兵は三人だと言っていた。レオン、アグミ、そして彼だと言う事か。案の定、クウガの背中にテトラの声がぶつかっていく。

 

 

「無幻のガークよ! 剣の使い手って聞いたわ!」

 

「くぁー、閃光(せんこう)絶影(ぜつえい)ときて無幻(むげん)かよ。厨二か! 咲夜さん、俺にも何か二つ名付けてくれ!」

 

「……キモオタの椿」

 

「んんんん! 酷すぎィ!」

 

 

もういい! ブレイドは近くにいた兵士を切り伏せると、剣を構えなおしてレオンとガークを目指して走り出す。

彼は知っているのだ、こう言う場合は雑魚よりも頭を取る事で早々に決着をつける事ができると。

一方で冷静な目で向ってくるブレイドを見ているレオンとガーク、二人に焦りは無い。

 

 

「愚かなる意思が多数、反逆の意を持ちて王城に牙を向く。預言者の言ったとおりだな」

 

「虫唾が走る。つくづく気に入らない奴等だ」

 

 

懐からガイアメモリを取り出す二人。

ガークは『ソード』のメモリを自らの刀に刺し、レオンは『ファイター』のメモリを手袋に押し当てた。

すると二人の容姿は変わらぬまでも、それぞれの武器はメモリの恩恵を受けて強化される。

 

 

「そういう事か!」

 

 

合点がいくと翼。広場で戦った際、

レオンもガークも強化された部分は手袋と刀だけ、見た目は変わってはいない。

しかし以前戦った際は現在の姿のレオンだった。つまりメモリを発動していたと言う事、だからあれだけのスペックがあったのか。

武器を強化すればどうやら見た目に変化は無くとも防御力も上がるらしい。

油断はできない。翼はすぐにブレイドに気をつける様叫ぶが――

 

 

「―――」

 

 

遅かった様だ。

シュパァアンと音がして、瞬間ブレイドの体からは大量の火花が。

 

 

「ぐはッ!」

 

「椿!」

 

 

そして、いつの間にかブレイドの背後にはガークの姿があった。

彼の刀はソードのメモリによって、美しい日本刀に姿を変えていた。

長髪を風に揺らしながら、彼は鞘から引き抜いた刃を見せびらかす様に構えた。

居合い切り。そのスピードは、ブレイドに斬られたと自覚させる前にダメージを与える程。

 

 

「フッ、取るに足らぬ」

 

「ッ! 馬鹿にしやがって!」

 

 

立ち上がりながらラウザーを展開するブレイド。

彼はその中からマッハとスラッシュのカードを抜き取ると、素早くコンボを発動させる。

音速で相手を切り裂くソニックスラッシュ、地面を蹴ると一気にガークの眼前まで迫った。

しかしガキンと言う音、見れば超高速になったブレイドの一撃にガークはしっかりと自分の刀を合わせているところだった。

 

 

「ッ! お前!」

 

「未知なる力かと思えば、何の事は無いな」

 

 

睨み合い、ギリギリと競り合いが続く。

ガークはスピードもパワーも申し分ない、ブレイドは腕が震えるのを感じた。

このまま競り合いが続けば、不利なのがどちらなのか察した様だ。強い、見た目は変わっていないが、武器がここまでスペックを上げるものなのか。

 

 

「ぐあぁ!」

 

 

その時ブレイドの背に衝撃が。見れば背後で兵士が突きをブレイドに打ち込んでいるところだった。

痛みが力を弱め、直後ガークの刀がブレイラウザーを弾いて彼の肩から真下を切り裂いた。

 

 

「ぐぅぅ!」

 

「愚かな。敵は一人ではないぞ」

 

 

バランスを崩し膝を付くブレイド、しかし直後彼の背後にいた兵士が火花を散らして吹き飛び、同時にブレイドの肩に激しい衝撃が。

呻き声を上げてそのまま倒れるブレイド、何が起こった変わらない彼の為に説明すると、どうやらブレイドの肩を蹴って飛び上がった者がいる様だ。

 

 

「その言葉、そのまま返そう」

 

「!」

 

 

ブレイドを踏み台にして飛び上がったカリスは瞬時武器から矢を発射。

当然ガークは刀でそれを弾いたがそれは囮、着地したカリスはアローその物の刃でガークの胴を切り裂いた。

容赦のない一撃だが、ガークからは特に出血等は見られない。とは言えダメージは負っている様で、少し苦い顔をしながら笑みを浮かべる。

 

 

「ほう……! 少しはやるか」

 

「当然だ。ほら椿、いつまで寝ている。さっさと起きろ」

 

「お前ぇが踏んだからだろ! もっと優しく助けなさいよ!」

 

 

とは言えコレで二対一、状況は有利か? そうは思ったが、直後カリスの体から大きな火花が上がる。

ギョッとしたのも束の間、すぐにブレイドの胴体にも同じ火花が上がり、二人は仲良く後方へ倒れる事に。

なんだ? 二人が見たのはニヤリと笑うガーク。そしてすぐに近くで戦っていた仲間達からも同様の火花があがった。

 

 

「何がどうなって……!」

 

 

そこでカリスは自分達が目指す城のバルコニーが一つに銃を構えているアグミの姿を発見する。

二丁拳銃を連結させ、スナイパーライフルに変形させた彼女は、次々と狙撃を行いブレイド達にダメージを与えていった。

 

 

「面倒臭せぇ! グァア!」

 

 

おまけに怯んだ所に飛んでくるガークの刀や兵士の槍。

飛び道具を持っている者はアグミを狙おうとするが、例えばカードを装填する者ならばカードを装填しようとしたところをアグミが先に狙撃する形で止めてくる。

凄まじいスピードで行われる状況把握能力と精度がブレないエイム力、ブレイド達は門から離れる形でどんどんと後退していく。

 

 

「………」

 

 

一方門の前で先程からずっと動かず立っていたレオンが舌打ちを零す。

彼は冷静に状況を把握していた。しかし内心は激しい怒りの炎が燃え上がっている。

この世界は王女が全て、それ以外は全て悪だ。今、目の前にはその王女を脅かす存在が蔓延っている。

イライラする、虫唾が走る。何故この様な事態が起こっている? 危険因子は全て排除しなければならないが、物事の始まりには全て等しく理由と言うものが存在している。

その理由、思い出せば簡単だ、始まりは処刑を邪魔されたところから始まった。

そう、コチラを草陰にて見ているあの女の処刑。

 

 

「―――」

 

 

レオンは地面を蹴った。

すると光が迸り、彼は光速とも言えるスピードでブレイド達を通り抜けると、草陰に身を隠していたテトラを目指した。

驚き、目を見開く彼女を既に眼前に捉えたレオン。彼は拳を握り絞め、一瞬で彼女の顔面を砕こうと試みる。

よく分からないが、彼女が反逆者と関わっているのは間違いない事だ。疑わしきは罰せよ、そしてその罰は死だ、レオンは何の迷いも無く彼女を殺そうと拳を振るった。

 

 

「!」

 

 

しかし衝撃、レオンの腕が赤い手に掴まれたかと思えば、直後彼は投げ飛ばされて地面を滑っている所だった。

再び舌打ち交じりに彼が立ち上がると、目の前にはテトラを守るようにして立つ戦士が。

そう、メビウスだ。夏美や翼が反応する前にミライは変身、レオンを投げ飛ばしたと言う流れである。

にらみ合う両者、思わずメビウスは一歩足を後ろへ下げてしまう。それはレオンから感じる殺意の奔流、ただの人間、それも少年が出せる負のエネルギーではない。

何が彼をそこまでさせるのか。メビウスにはまるで理解が出来なかった。

 

 

『どうして、こんな独裁を続けるんですか! 他人を、他人の命を何だと思っているんだ!』

 

 

メビウスの状態では喋る事はできない。

だが代わりに相手に直接言葉を投げかけるテレパシーが仕える為、会話は問題なく行われた。

 

 

「お前が何者なのかは知らないが、大きな勘違いをしているな」

 

『ッ?』

 

「独裁ではない。正しき政治だ、それは紛れも無い正義なんだ」

 

 

国民は自分の納得できない事が起こればその責任と不満を上層に擦り付けたがる。

ただしい正義を理解しようとせず、まるで自分に権利と力がある様な口ぶりである。

だが勘違いしてはいけないとレオンは説いた。国は正義だ、王は絶対だ、それに歯向かう事は許されはしない。

他の国がどうであろうと関係ない、彼らは今この黄の国で生きている。それが彼らの運命、それが彼らの宿命、それに逆らう事は許されはしない。

 

 

「人は勘違いしている。平等や対等など、所詮は弱者が思いついた強者への抵抗でしかない」

 

 

家畜と同じだ。人間は皆が同じ存在ではない。

きちんとした優劣が存在し、搾取される側と搾取されない側が明確に確立されていく。

テトラがそうだとレオンは言う。そして自分達は当然搾取する側だ。自分達の為に彼らが生きる、それはそう決められた当たり前のことなのだ。

しかしそれを人は認めない、なぜか? 頭が悪いからだ。自分が何の為に存在しているのか、自分が何者なのか理解していない。

 

 

『貴方は、間違っています!』

 

「そこがもう間違っている。なぜなら我々に間違いは存在しないからだ。もういい、この話は無駄だ。理解できない奴は永遠に理解できないだろうからな」

 

 

さっさと死ね、レオンは再び地面を蹴ってメビウスに飛び蹴りを仕掛けた。

腕を交差させその蹴りを受け止めるメビウス、ココで戦っては後ろにいるテトラを守りきれるか分からない。

彼は隙を見てレオンの肩を掴むと飛翔、持ち前の飛行能力でレオンと共に戦いの舞台を離す事に。

 

 

「クッ! 離せ!!」

 

『俺は、貴方を止めます!』

 

 

離れ、小さくなっていくメビウスを見つめ夏美達は息を呑んだ。

一旦状況確認、見ればやはりアグミの狙撃に苦しんでいるクウガ達、兵士の攻撃も加わり、龍騎やブレイドはカードを手に取る暇も無い。

ガークに関しては、今はガタックがクロックアップで注意を引きつけている所、今ならばストームフォームや天鬼の銃でアグミを攻撃すれば状況はコチラ側が有利になるか。

頷きあう翼達、ココはアギトとアキラが戦場に加わろうと言う作戦を素早く構築した。

 

 

 

 

 

 

 

だが、まさにその時だった。

 

 

「あーッははははははははは!!」

 

 

甲高い笑い声が聞こえた。それは誰も耳にも等しく。音は脳を貫き、一同の思考を一瞬ジャックする。

笑う事は楽しいと言う事なのか、それは分からない、ただ一つ分かる事があるのならばそれは兵士達が文字通りぶっ飛んだと言う事だ。

見えたのは黄色に光る球体、それらが次々と空から落ちてきて地面に着弾。爆風で兵士達が次々と舞い上がり、直後ボトボトと重力に従い落ちていく。

そして爆発、耐久力の値がゼロになったからドーパントの鎧が砕けて中からは人が射出される様に、排出される様に転がっていく。

助けが来たのか? 一瞬鈍る思考がそんな答えを出した。それは聞こえた笑い声がクウガ達にとっては聞き覚えがあるものだったからに他ならない。

 

 

『ウフフフ! アハハハ! クハッ! イヒヒヒヒヒ!!』

 

 

しかし、次の光景は一同が全く理解できないものだった。

光弾の第二陣が飛んでくる。それらは次々に倒れた兵士達、つまり人間に戻った彼らたちの心臓部分に直撃していった。

 

 

「ごぁぁ!」「がぁあああ!」「うぐぁあッッ!」

 

 

悲鳴が、うめき声が聞こえる。光弾は正確に胸、心臓に着弾し、ご丁寧に体をも貫通していく。

次々に胸に風穴を開けた兵士達が出来上がり、当然それは彼らの『死』を保障している光景だった。

 

 

「え?」

 

 

夏美の思考が完全に停止する。

変身をしようと構えを取っていた翼も、そのままで停止すると言う間抜けな姿になっていた。

しかし無理も無い。つい先程まで乱闘が起こっていた場所には、今は静寂が。誰もが黙り、バルコニーにいたアグミもぽかんと口を開けている。

あっと言う間に、死体の山が出来ていた。

 

 

「『フハハハハハァ! ヒャハハハハハハハ!!』」

 

 

その沈黙を切り裂いたのは狂った様に流れる笑い声。そして第三陣の光弾達がどこからとも無く飛来してくる。

兵士達は理解した、アレは自分達を殺す物なのだと。だから叫び、走り出す、三大欲求は失ったかもしれないが恐怖心はまだ己の中に。

クウガ達を放置して敵に背を向けながら散り散りに走るソルジャードーパント達。だが青と黄色の弾丸はまるで意思を持った様に動き回り標的を捉えて逃がさない。

次々に捉えられる兵士達、人間が排出され、それでも彼らは助かろうと逃げ回る。だが無駄、だが駄目、光弾は執拗に彼らを追い掛け回すと心臓を捉えて即死させていった。

 

 

「ひッ! ひぃぃいぃ!」

 

 

しかし中には逃げ延びた者もいる様で、彼らは涙や鼻水を垂れ流しながら、鎧を脱ぎ捨て走り出す。

生きたい、死にたくない、生命であるならば当然だろうて。

しかし音、誰しもに等しく聞こえる電子音。

 

 

『アタックライド』『ブラスト!』

 

 

今度はマゼンダ色の光弾が飛来し、逃げ惑う生身の兵士達に直撃していった。

それも心臓を撃ち抜くという生易しい物ではなく、頭を捉え、そのまま吹き飛ばすと言う衝撃的な光景だった。

頭部を失った兵士達はそのままフラフラと二、三歩移動した後にバタリと倒れ、もう以後はピクリとも動かなかった。

 

 

「あぶないなぁ」

 

 

無表情で身を隠すアグミ、光弾は彼女がいたバルコニーにも飛んできた。

彼女は素早く奥に引っ込み事なきを得たが、彼女が立っていたバルコニーは粉々に粉砕され、今は地面に瓦礫となって落ちている。

一方で光弾を切り裂き無傷のガーク、彼は目の前に広がる無数の死体を見て鼻を鳴らした。

もちろん彼の中に亡くなった者に対する悲しみは無い、むしろ少しは面白そうな者が来てくれたという安堵感。

そして相変わらず呆然と立ち尽くすクウガ達、そんな彼らの耳に、今度はエンジン音が。

ドゥルン。ギュルルン。そんな音を立てて城の横にあった高台の丘から姿を見せる者が。この中世風の世界に不釣合いな音を出せる者など限られている。

そして先程聞こえた声、電子音、一同の予想は的中する事に。

 

 

「司……!」

 

 

クウガが見た視線の先にはマシンディケイダーに搭乗しているディケイドがいた。

それだけじゃない、彼の隣にはカブトエクステンダーと凱火、それぞれには例外なくカブトと響鬼が乗っている。

加えて空に浮かぶハードタービュラーには当然ルナトリガーになっているダブルが見えた。

離れ離れになった者達との再会はアッサリと。しかし一同の間にある感情は決して再会を喜び合う物ではない。むしろそれはドロドロとした濁り、淀んでいた感情。

無理も無い、彼らが見下ろすのは無数の死体。それは紛れも無く、彼らが殺して生まれたものなのだから。

 

 

「お前ら……! 誰だ――ッ!?」

 

 

龍騎がそう呟く。そうだ、その言葉がこの状況を全てを説明していた。

目の前にいるのは確かに自分達が知っている仮面ライダー。しかし彼らが行った攻撃は、全く理解できないもの。

 

 

「俺は仮面ライダーディケイド。聖司だ。忘れたのか? 真志」

 

「……ッ!」

 

 

少しトーンは低めではあるが、声は紛れも無く彼らと共に戦ってきた司のそれだ。

確かに聞き間違える筈は無い。ではなんだ? この状況は彼が自分の意思で起こしたものだと言うのか?

 

 

「………」

 

 

ガークは一旦刀を納めて後ろに下がる。よく分からない状況になってしまった。

アグミも壊れたバルコニーの隙間から顔をチラリと覗かせて首をかしげている。現れたのは敵? それとも味方なのか。

嫌な沈黙が辺りには流れている。誰も何も言えない。しかしそこで呻き声、どうやらなんとか攻撃を逃れた兵士がいた様だ。

しかし爆風に巻き込まれたのか足は怪我をしている、出血が酷い、早く治療をしなければ――

 

 

「あぎゃ」

 

 

間抜けな声が零れる。

しかし状況はそんな穏やかなものではない、動くのを確認したディケイドがライドブッカーの銃口を向けると容赦なく引き金を引いた。

弾丸は兵士の後頭部に命中すると、彼はそのまま倒れて動かなくなった。

それを見て一同の脳に電流が走る。信じられない、信じられないが見た物は紛れもない真実。

 

 

「お前、本気なのか――ッ!?」

 

 

クウガが一歩前に身を乗り出す。

薫はショックで何も言えない様だったが、クウガ(ユウスケ)はなんとか言葉を搾り出す。

彼と司は親友だった、だからこそこの今が信じられない。これは夢か? 幻なのか? 彼は一刻も早くその答えを知りたかった。

こんな筈は無い、これは何かの間違いだ、早くこの全身に張り付く嫌な緊張と不安を消してくれ。

クウガは切にそう願うが、返って来た言葉は随分と淡々としていた。

 

 

「そいつ等は邪魔だ、だから消す。当然の事だろう」

 

「なッ!!」

 

 

それはあまりにも当然に放たれた言葉。

兵士はディケイド達にとって邪魔な存在、だから消す、当然の事だと。

 

 

「それに邪魔なのは、お前らもだ」

 

 

哀れで、愚かで、どうしようもなく気の毒だ。

ドッと冷たい声でディケイドはうろたえる仲間達を見ていた。

 

 

「そこにあるのは現実であり、真実であり――」

 

「まったくの虚像ともいえるわ!」

 

 

空中から声。ダブルがメモリを抜き取ると変身解除と認識され、二つの光が言葉を放ちながら移動する。

光はそれぞれ響鬼とカブトの隣で具現、右端にはフルーラ、左端にはゼノンが立ち、彼らはジットリとした目で呆気に取られているクウガ達を見てニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「――また、それらのいずれでも無いと言えるだろう」

 

「壊れいく世界は、世界以外も壊れている物よ」

 

 

これから壊れるんだ。もう無くなる物なんて真実でもなんでもない。

どうせ壊れる、どうせ無くなる。だったらもう要らないんだよ、自己の証明なんて。

そうだ、壊れる、ならばこいつ等は虚構。破壊の未来に実態など存在しない!

 

 

「終わるんだよ、何もかも」

 

 

ゼノン達はいつもの衣装とは違い、今日は何故か黒を貴重としたダークなもの。

ブラッドレッドと黒を基調としたドレスを着たフルーラ。ダークブルーと黒のスーツを着たゼノン。

雰囲気もどこかいつもより気取っていると言うか、より一層演技が掛かっている様だ。

そしてそれと同じくダークな雰囲気が強調されていた。声のトーンをずっと下げて震わせる様に話す事で威圧感を増しているのか。

ついでに言えばゼノン達はそれぞれ、ダブルのサイドに対応する側の目に眼帯をしているのも特徴的だった。

ゼノンは左、フルーラは右の目に黒の眼帯。そこにはダブルのマークが刻まれている。

 

 

「お、お前らは何を言ってるんだ? 自分が何をしてるのか分かってるのか!?」

 

「お前らこそ、自分が何をしてるのか分かってるのか?」

 

「!?」

 

 

変身を解除する音が聞こえる。

黒とマゼンダのジャケット、それは彼が変身するディケイドのカラーリング。

その証拠にジャケットの背にはディケイドの顔を模したマークが輝いている。彼の紋章とも言えるソレ。それを纏っているのは紛れも無い、聖司その人であった。

 

 

「つ、司……!」

 

「おやおや、ディケイド様の迫力に圧倒されて声も出ないのかい?」

 

「全員糞間抜けな顔だ事! んふふ!」

 

 

ゼノンとフルーラは言う。

ディケイド『様』と。少なくとも自分たちの知っているゼノンならばそんな事は言わない筈。

では彼らは一体――? やはり偽物なのか? 一同の混乱はより深く、より激しく。

 

 

「与えられた役割は破壊。そしてお前らは邪魔な障害」

 

「――ッ」

 

 

さらに変身を解除する音が二つ聞こえる。

司の両隣に現れる二人の少年。彼等もまた司と同じく禍々しい服装に身を包んでいた。

一人は黒い服の上に血の様な赤と紫の着物を着ている。一人は赤黒いコートに身を包む。

そして二人もまた司と同じく服の背には己の紋章を背負っていた。

普段の彼等のノリであったなら凄い格好だと笑って終わったのだろうが、状況が状況の為に全く笑えない。バイクから降りて並び立つ五人。

 

 

「我夢……ッ! 双護!!」

 

 

彼らは左からゼノン、我夢、司、双護、フルーラの順に並び立ち一同を見下していた。

ゼノン達ならばともかく、五人は全員まるでゴミを見る様な眼で今まで一緒に旅をしていたメンバーを、仲間を、友を見ていた。

そしてその近くには彼らが生み出した死体が転がっている。

そう、死体。彼等が殺したんだ。

 

 

「我夢君……なんで――?」

 

「双護……!?」

 

 

戸惑った様に我夢を見るアキラ。ガタックも呆然とした様子で双護を見ている。

特に我夢に言える事だが、普段の彼ならば後ろめたい事をしていたのならば目を逸らしたりと雰囲気で分かりそうなものだが、今の彼は冷静に、かつ何か怒りの様な感情を込めてジットリと言い放つ。

目が据わっている、そこには欠片とて優しさが感じられなかった。

 

 

「この世界は偽りと悪意で満ちてます。壊すしかないんですよ、全て」

 

 

力説する我夢。どうしようも無く可哀想な世界ではないか。

それを救うには、やはり壊すしかないのだと。全てを無にすれば、悲しみなんて感じられなくなるだろう?

それは救済だ、破壊が救いを齎すのだと。

 

 

「破壊と創造は表裏一体だ、故に俺たちは与えられた役割を果たすだけ」

 

 

腕を組み、無表情の双護。彼は一体何を考えているのか?

 

 

「幻想は真実を曇らせるノイズでしかない。取り払うべきなんだよねぇ」

 

「愛を守るために壊す! 信じる為に壊す! 悲しいわね!!」

 

 

フルーラとゼノンの笑みに釣られる様にして、双護と我夢もまた歪な笑みを浮かべて世界を見下す。

どうせこんな世界はもう終わる。何故ならば、自分達が終わらせるからだ。

唯一司だけは笑みではなく睨みを。つまり、憎悪に近い感情を表情に乗せていた。

 

 

「さあ! ディケイド様!!」

 

「合図をどうぞ!」

 

 

ゼノンとフルーラに言われて中心にいた司は一歩前に出る。

手に構えるのはディケイドライバー。彼は低く、冷たく言い放つ。

 

 

「潰す」『カメンライド』

 

 

アイテムを構えたのは司だけではない。

他の四人もそれぞれの変身アイテムを構えた。

音角を指で鳴らす我夢、カブトゼクターを構える双護、ヒートとトリガーのメモリを構えるゼノン達。彼等は一勢に、その言葉を叫ぶ。

 

 

「変身!」

 

「変身」『HENSHIN』

 

「「変身!!」」『ヒート・トリガー!』

 

 

そして――

 

 

「変身」『ディケイド!』

 

 

紫炎の炎が我夢を包み、直後翻すように腕を振るうとその炎の中から響鬼が姿を見せる。

六角形の光が双護を覆うと、彼の姿はマスクドフォームに。赤と青の球体が交じり合うとそれが人の形を形成し、光がはじけるとヒートトリガーに変身したダブルがそれぞれ現れる。

そして最後に、黒い素体にプレートが突き刺さっていき、マゼンダの色素が全身に回るディケイドが。

変身を完了させた五人は早速アクションを起こした。音撃棒を構える響鬼、クナイガンを構えたカブト、トリガーマグナムを向けるダブル、ライドーブッカーの銃口を向けるディケイド。

彼等は何の躊躇もせず、一番近かったクウガ達に向けて引き金を引いた。それぞれの飛び道具が一勢に彼等へ飛来していく。

 

 

「ぐあぁああぁッ!!」

 

「うぉおお!」

 

 

転がっている死体を吹き飛ばす程の爆発が起こる。

その中央に巻き込まれたクウガ達、当然ダメージは大きく、それが彼等に冷静さを取り戻させてくれた。

と言うのも簡単な話し。分かったのだ、今の一撃で、彼等が本気で自分達に攻撃を仕掛けてきた事が。

 

 

「キャストオフ」『Cast Off』

 

「!」

 

 

爆煙でディケイド達の姿が見えなくなるが、カブトの声とキャストオフを告げる電子音は聞こえた。

カブトがマスクドフォームからライダーフォームになる意味、それは今まで共に戦ってきた仲間ならばよく分かると言うもの。

だが分かった所で対処が出来るのかと言う話である。ブレイドは先程マッハのカードをカードコンボの初めに使ってしまった為に手元には存在しない。龍騎は何とか脳を叱咤し、アクセルベントのカードを引き抜くが――

瞬間、龍騎の体は宙に舞い上がっていた。

 

 

「がはっ!」

 

 

一瞬だけ見えたのはカブトの残像。

クロックアップを発動した彼は爆煙を切り裂きながら一同の中を駆けぬけて次々に攻撃を仕掛けていく。

しかし武器がぶつかり合う音、見ればカブトのクナイガンを受け止める二対のカリバーが伸びていた。

それを持っているのはガタック、同じくクロックアップを発動しており、青い刃がカブトの進行を完全に阻む。

 

 

「双護! お前本気なのか!? ああそうだ、何考えてんだよ!!」

 

「俺は世界を見ている。お前はどうだ? 今自分が何の為に立っているのか、考えた事があるか?」

 

「ッ、意味分からねぇ! どういう事だよ!」

 

「世界は常に真実を写してきた。ならば、世界が常に正しいのか? 俺達が見ている物は本当に真の物なのか?」

 

 

クウガ達の周りを駆ける赤と青の閃光、それらは各地で激しくぶつかり合い、次々に火花を散らしていった。

その中でカブトは説く、世界の事を。しかしガタックには彼が何を言いたいのかが分からない。

どうして自分達を攻撃するのか? それを必死に聞いてはみるもののカブトからの答えは有耶無耶なものだった。

 

 

「理解しろ、鏡治、お前はどこにいる?」

 

「ぐッ!」

 

 

そして戦闘もまたガタックには不利なものだった。

彼はまだカブトを全力で攻撃できない。以前戦った時にはそれだけの決意と想いがあった。

しかし今は混乱が脳を支配している。ガタックの中にある躊躇、それが彼の動きを鈍らせ、隙を作ってしまう。

カブトの回し蹴りがガタックの手を打ち、衝撃でカリバーを地面に落としてしまったのはそれが原因だろう。彼はすぐに武器を拾おうとするが手の甲に衝撃、それはクナイガンの銃弾であった。

 

 

「ガッ!」

 

 

動きが止まったガタックの腹部にカブトの思い拳が抉り込む。

衝撃で背中を丸めると、そこへ肘打ち、さらに顎を打つアッパーで強制的に直立させると、カブトの回し蹴りがガタックの頬を打つ。

 

 

「ぐぁあ!」

 

 

きりもみ状に回転しながら地面に倒れるガタック、カブトは倒れた彼の胴体を思い切り踏みつける。

そして気だるそうにしながらも指は引き金を引いたままで停止する。クナイガンからは連続で銃弾が放たれ、それが次々とガタックの身を削っていった。

いくら高速で動けても動きを封じられれば意味が無い。

さて、これで一番厄介なガタックはカブトが封じてくれている。ならば動かぬ道理は無い、ディケイドは高台から飛び降りるとライドブッカーを剣に変えてクウガ達を目指した。

 

 

「ッ! 駄目だ、やるぞ!」

 

 

意味が分からないのは今も同じだ。しかしどうやら向こうは本気らしい。

話し合いも難しいか、クウガ達は一箇所に固まると前から歩いてくるディケイドと戦う事を決意する。

何故敵意をむき出しにされているのかは分からないが、人質を捕られている、もしくは洗脳されている。最悪敵が化けている可能性があるからだ。

 

 

「我夢、手を出すなよ」

 

「はい、分かりました」

 

「ゼノン達はあれを止めておけ」

 

「了解ですよディケイド様!」『ウフフ! おっけーよ破壊者さまぁ!』

 

 

顎で対象を指し示すディケイド、するとダブルが再びルナトリガーにチェンジ、今度はマキシマムドライブを発動して引き金を引く。

先程とは比べ物にならない大きさの青と黄色の光弾が放たれ、それらは一直線に翼達の下へ飛来する。一瞬ヒヤリとするが、光弾は翼達の手前で停止する。

だが、問題なのは四方を光弾に囲まれている事。夏美とアキラと翼はテトラを庇う様に立つがそれでも周囲にある光弾達が一勢に着弾すれば守りきれる自信は無い。

さらにそこでダブルの言葉が。

 

 

「君達、変身しようとしたらその時点でアウトだからね」

 

「!」

 

『ウフフフ! かよわい女の子を守りきれるかしらぁ?』

 

「そうだねフルーラ。クハハ! 君達次第でテトラちゃんがステーキになっちゃうよ」

 

 

息を呑む夏美。

本気だった、いつものふざけた様子に聞こえるかもしれないが、ダブルの仮面の下からはどす黒い感情が流れ出ている様だ。

テトラもどうしていいか分からずうろたえている。まさか彼等が人質を取るとは――

とにかくコレで夏美達は動けなくなった。ディケイドは鼻を鳴らすと、歩行スピードを速める。

 

 

「司! 本当に戦うつもりなのか!」

 

「ああ、そのつもりだ」

 

「チッ! なんだか知らねぇけどさっさと正気に戻りやがれ!」

 

 

走り出す龍騎、続いてブレイドとカリスも武器を構えてディケイドの方へ向う。

こうなってしまっては多少荒療治にはなるが気絶させて大人しくさせるしかないだろうと。多少流れは悪いが四対一ならばと。

だが気づいているだろうか、ディケイドは既に一枚のカードをヒラヒラと手で弄んでいる事に。彼はタイミングを見て好機と見たか、そのカードをバックルに放り投げて発動させた。

 

 

『ファイナルフォームライド』

 

「!」

 

『ブブブブレイド!』

 

「何ッ!? って、うぉぉお!?」

 

「グァッ!」

 

 

ギュォォンと言う音がしたかと思えば、ブレイドの体が強制的に変形。

ブレイドブレードになって回転し、前方にいた龍騎の背中を切り裂くとディケイドの手に納まった。

 

 

「ハァアッ!」

 

 

ディケイドは大きく踏み込むとブレードを思い切り突き出した。

巨大な剣のリーチは空白の間を全て埋め、一気に龍騎とディケイドの距離を補っていく。

急ブレーキをかけるクウガとカリス。しかしダメージに怯み動きを止めた龍騎はもう逃げられなかった。

彼の胸を突く剣先、その衝撃に龍騎は呻き声を上げて吹き飛んでいく。クウガとカリスの前を走っていた彼は、一瞬で二人の後ろに倒れる事態へ。

 

 

「おい椿!」

 

『いや! 悪い! 動けねぇんだよコレ!』

 

「……!」

 

 

ゾッとした。改めて思う、ディケイドを敵に回すと言う行為。

クウガや龍騎ならば自分の意思で動く事ができるが、ブレイドは完全に一武器となる。

もちろん以前ならば元に戻りたいと自分の意思で思えばそうなったが、それはそういう風にできるとディケイドが許しを出したからだ。

今は違う。ディケイドが完全にブレイドを支配し、彼の行動を完全に封殺したのだ。そればかりではなく自分の武器に変えてしまった。

ディケイドは鼻を鳴らすと、巨大な剣を持ってクウガ達の方へ距離を詰める。

 

 

「!」

 

 

ブォンと風を切る音が頭上で聞こえる。

何とか地面を転がる事でブレードを回避したカリスとクウガ、左右に分かれる事で狙いを分散させようとした二人。

カリスは弓をディケイドに向け、間髪入れずに光の矢を発射する。

しかし、それをしっかりと見ていたディケイド、彼は裏拳で矢を粉砕すると、再びブレードを大きく回して二人を狙った。

クウガはインファイター、ブレードの長いリーチを振り回されては思う様に動けない。さらに巨大な見た目とは違いディケイドは軽々とブレードを振り回してくる。

 

 

「ユウスケ! 私に任せろ!」

 

 

一度バックステップで距離を取るカリス、彼女は一枚のカードを取り出し素早く発動させる。

カード名『バイオ』、彼女が矢をかざすとディケイドが立っていた地面の真下からバラの蔓が出現、素早くディケイドの足を絡め取ると、そのまま一気に体の方へと侵食していく。

 

 

「……面倒な事を」

 

「少しそのままにしていろ! 司!!」

 

 

力を込めるディケイドだがカリスもまた同じ程の力を込めて彼の動きを封じた。

だが感じる抵抗感は凄まじい、どうやら余裕は無いようだ。カリスは今の内にとクウガ達に叫ぶ。

カリスの、咲夜の悲痛な叫びで覚悟を決めたか、クウガは数歩後ろに下がった後に両手を広げ、そして構えを取った。

同時に地面を殴り立ち上がった龍騎、彼もストライクベントを発動してドラグレッダーを呼び寄せる。

 

 

「司! 悪く思うなよ!」

 

「後で手当てくらいはしてやるさ!」

 

 

ドラグクローを構え、自身の周りにドラグレッダーを旋回させる龍騎、昇竜突破を発動しようと言うのだ。

同じくして走りだしたクウガ、彼の右足に炎が宿り、それが地面を蹴る毎に小さく発火していく。

 

 

「………」

 

 

しかしディケイドに焦りは無い。

むしろ呆れた様にため息をつくと、彼は気だるそうに首を回した後、ギラリとカリスを睨んだ。

 

 

「ッ!」

 

 

ジットリと背中に張り付く殺意。

なんだ? 嫌な予感がする。全身が逆立つ様な感覚。するとけたたましいエンジン音が聞こえ、先程までディケイド達が立っていた場所からマシンディケイダーが飛び出してきた。

 

 

「なッ!」

 

 

一気に最高速に到達して飛び上がったバイクは、放物線を描いてカリスの方へと向っていく。

エンジン音を上げながら迫るバイク、まるでそれは獲物に跳びかかる獣の如く。

カリスがそれを視覚した時には、既にマシンディケイダーは眼前にまで迫っていた。

バイオに抵抗するディケイドが放った抵抗感がカリスの腕に伝わり、それが彼女の思考を鈍らせたのだろう。結果、カリスの反応が遅れ、彼女の体にバイクが直撃する。

 

 

「ガ――ッ!」

 

 

一瞬カリスの頭の中が真っ白になる。

自分の名を呼ぶクウガ達の声も耳鳴りが酷くて聞こえない。

カリスの鎧を纏っていても衝撃と痛みは凄まじい、平衡感覚を失うほど無茶苦茶に転がり、彼女はしばらく地面を滑っていった。

彼女達は忘れていた。ディケイドには今現在バイクがある。そしてマシンディケイダーにはディケイドの脳波で自動走行が可能だ。つまり彼を守る忠実な兵士とも変わるのだ。

さて、そうなると彼女が発動していたカードの効果が薄れてしまう。ディケイドは簡単に自身を縛っていたバラの蔓を振り払うと、ライドブッカーから一枚のカードを抜き取った。

 

 

「グッ!」

 

 

変な動きをさせてはマズイ。

一瞬動きが止まったクウガと龍騎ではあるが、再びディケイドに攻撃を、と。

しかしそこでディケイドは素早くブレードを前に出した。それで防御するつもりか? 一瞬二人はそう思ったが、事態はそんな簡単な話ではない。

 

 

「いいのか? ユウスケ、真志」

 

「――ッ?」

 

「俺は椿を盾にしているんだ。意味が、分かるよな?」

 

「!」

 

 

そう、ブレイドブレードはあくまでもブレイドなのだ。

それを盾にしてダメージを防げば、当然変身している彼にもダメージは通る。

ブレードは巨大だ、それだけ当たり判定があり、ディケイドの剣捌きならば確実に身を守ってくれるだろう。

 

 

『き、汚いぞ司! お前……マジか!?』

 

「うるせぇよ。これは戦いだ、汚いもクソもあるか」『カメンライド・ファイズ!』

 

 

赤いフォトンブラッドが身を駆け、ディケイドはファイズの姿に。

さらに彼はもう一枚のカードを素早くライドさせる。アタックライド・オートバジン。

ファイズの紋章がマシンディケイダーを通過すると、バイクの姿がオートバジンに変身。バトルモードに変形すると彼はガトリングをクウガ達に向けて乱射する。

 

 

「グッ! グァアアアァ!!」

 

 

悲鳴を上げながら全身から火花を散らしていく龍騎とクウガ、彼等の中には仲間を攻撃できない躊躇がある。

甘い、甘すぎる。ディケイドは呆れた様に首を振って鼻を鳴らす。これは戦い、生きるか死ぬか、それを履き違えるから――

 

 

「お前らは死ぬんだよ」『ファイナルアタックライド』『ブブブブレイド!』

 

 

ブレードの剣先を天へ掲げるディケイド。すると落雷がブレードへ直撃、帯電する剣を今度は地面へ突き刺した。

すると広範囲に電気ショックが散開、クウガ達三人に等しく凄まじい衝撃が襲い掛かる。

 

 

「グアァアアァァアアァ!!」

 

「がッ! カハ――ッ!」

 

「きゃああああああああ!!」

 

 

三人の悲鳴をディケイドは地面に刺し立てたブレードに持たれながら聞いていた。

そのまま数秒ほど経った時、彼は飽きたのか次のカードを取り出してバックルへ装填する。

カメンライド・カブト、当然彼はクロックアップを次いで使用、超高速の世界に足を踏み入れて攻撃を開始する。

狙うのは龍騎、ディケイドには知識がある。だからだろうか? 彼は執拗に龍騎の腹部をライドブッカーで切りつけていった。

連続で往復するように駆け抜けていく赤い閃光、龍騎はデッキを狙われる重さを理解している。

だから必死に抵抗はしようと試みるが、凄まじい電撃の中ではまともに意識を保つのでさえ難しい。

カリスはカードを使う事を忘れるほど、クウガはフォームチェンジを行う事を忘れるほど、意識は全て痛みと衝撃に侵食されていく。

 

 

「もう止めてください! 司くん!!」

 

 

夏美の声は震え、上ずっていた。

何故仲間想いだった彼が、何故正義に燃えていた彼がこんな事をするのか全く理解できない。

そして何よりも心が痛かった。夏美には仲間達と笑い合っていた司の笑顔が簡単に思い出せる。

 

 

「こんなの! 私が知ってる司くんじゃありません!!」

 

 

その言葉を聞いた時、ディケイドの雰囲気が明らかに変わった。

仮面に隠している素顔がどう言うものなのか、容易に想像が出来る程。

あまりにも黒い感情。事実今の彼の表情は歪んでいた。明確な怒り、憎悪、殺意に。

 

 

「何が分かる」

 

「え?」

 

「今のお前に、俺の何が分かるんだ」

 

「つ、司君……?」

 

 

ディケイドはそれはそれは冷たい声で言い放った。

そしてクロックアップを解除すると、地面に突き刺さっていたブレードを引き抜く。

相変わらず帯電しているソレ、クウガ達は電撃の檻から開放された様だが、相変わらずブレードには凄まじい電気の力が宿っていた。

ちなみにこのエネルギーは全てブレイドが負担している。つまり今のブレイドは自分が望まぬとも力を解放し続けている状態なのだ。

そしてディケイドは自らのファイナルアタックライドを発動。金色に光る10枚のカードが彼と龍騎を繋いだ。

 

 

「……え?」

 

 

龍騎の目の前に広がるディケイドの紋章。

思考が鈍る。それは電撃のダメージがまだ身に残っているからであり、何より彼もまた心のどこかで思っていた。仲間が、司がそんな事をする訳がないと。

しかしディケイドは走り出す。大剣を構え、迷う事の無いスピードでカードをくぐり抜けていく。一枚通過する毎にディケイドの破壊のエネルギーがブレードに宿り、一同が呆然とした視線を向けている中で、ディケイドは最後のカードを突き破る。

 

 

「真志」

 

「つ……か…さ」

 

「死ね」

 

 

ふと、龍騎は後ろを見る。

そこにはディケイドの背中があった。

輝きが消えていくブレードを持っていた彼は、ゆっくりとその剣先を地面に下ろす。

呼吸が荒くなる。前の景色がよく、見えない。なんだか腹が熱い。龍騎は巨大な線が刻まれている腹部を押さえながらヨロヨロと歩きながらディケイドの肩に手を伸ばす。

 

 

「嘘……だよな? コレ、オレが見てる、馬鹿な、夢……」

 

 

龍騎はそっとディケイドの肩に手を触れる。

ディケイドは、その手を難なく振り払った。

 

 

「夢じゃない。真志、お前は死ぬんだよ」

 

「―――」

 

「さっさと失せろ」

 

 

龍騎に刻まれた光の線は、ディケイドとブレイドの力を合わせて放たれた必殺技、ディケイドエッジが確かに命中した事を意味していた。

エネルギーが体から溢れていく。龍騎は光を撒き散らしながらゆっくりと倒れた。

そしてエネルギーが暴走。彼は光につつまれ、直後ディケイドの背後にて大爆発を起こした。

 

 

「え?」

 

 

誰もがポツリと、無意識に言葉を呟いた。

爆発した龍騎、爆炎はすぐに晴れたがそこにはもう無しか残っていなかった。

しいて言うのであれば粉々に砕けている龍騎のデッキが印象的である。

静寂が場を包んだ。その中で唯一聞こえているのはダブルがクスクスと笑う声のみ。

 

 

「まず一人」

 

 

そしてディケイドはブレイドブレードを投げ捨てる様に放った。

使い終わった道具はもう要らない。彼はやっと人間態に戻れたブレイドを睨んでいた。

 

 

「え? あれ? なん、だ……コレ? え?」

 

 

へたり込んだブレイドはウロウロと何度も周囲を確認して混乱していた。

何が起こった? どうなっている? あれ? ん? 今はどういう状況なんだ? ブレイドは何度も何度もぶつ切れの言葉を放つ。

 

 

「簡単だ椿、俺がお前を使って真志を殺したんだよ」『カメンライド・リュウキ!』

 

「え? な、なんで? あれ? お前、誰だっけ? え?」

 

 

龍騎に変身したディケイドはブレイドに『あるカード』をヒラヒラと見せつける。

それは紛れも無く、仮面ライダー龍騎が使うカードであった。先程カブトになって龍騎(真志)に攻撃した際、執拗にデッキを狙っていたのはデッキを破壊しようとしたのではなく、彼のデッキからカードを抜き取っていたからだ。

つまりディケイドは龍騎からカードを盗んでいたのだ。

 

 

「龍騎シリーズのカードは他人が発動しても、効果が現れるのはカードの所有者であるライダーだ」

 

「え? カード? え? あれ?」

 

「これは龍騎の本編でも説明が入っている。龍騎がゾルダのカードを使ったが、効果が現れたのはゾルダ本人だった」

 

 

もちろんそんな説明は誰も聞いていない。

誰しもの思考は完全に停止していた。それは遠目で状況を観察していたガークとアグミも同じだろう。彼等の行動はそれほどまでに衝撃的だった。

 

 

「だが俺にはその制約は効かない。なぜか? 決まっている。俺が破壊者だからだ」

 

 

ディケイドはルールを破壊する力を持っている。

アンデッドを殺せるのも、ミラーワールドに入れるのも、全ては破壊の力が適応しているからに他ならない。

何の為にディケイドが変身する龍騎にバイザーがついていると思っている。

ディケイドはそう語ると、真志のカードをディケイドリュウキのドラグバイザーに装填した。

 

 

『アドベント』

 

 

すると、それは何の問題も無く発動された。

ディケイドの物として。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

空間が割れ、そこからドラグレッダーが姿を見せる。

彼は咆哮を上げながらディケイドの周りを旋回し、そしてその牙をブレイドに見せて威嚇の意を示す。

そう、主人を失った無双龍はカードの力によってディケイドの僕となった。ディケイドは再び鼻を鳴らすと、またも盗んだカードをドラグバイザーに装填する。

 

 

「お前の話は面白かったぜ、椿」『ファイナルベント』

 

 

お礼に一つ自分も面白い話を聞かせてやるとディケイドは言った。

彼は両手を前に突き出した後に激しく旋回させ、直後腰を落として曲げた手を前に出し、もう一方の手は肩の上に持っていく。

 

 

「龍騎の必殺技、ドラゴンライダーキックは本編では一度も外していない。意味が分かるか? 椿」

 

 

そして地面を思い切り蹴って跳躍、ドラグレッダーを伴いながらディケイドは空高く舞い上がった。

ブレイドはゆっくりと立ち上がり彼を見上げる。司とはよく馬鹿な話をして盛り上がった。

下らないけれど、面白かった。

 

 

「ヤアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

ドラグレッダーが咆哮と共に火炎を発射、それがディケイドの体に纏わりつき、ロケットの様な爆発的な加速力と攻撃力を与える。

その先にいたブレイドは何もできずに直立するだけ。そんな彼へ、ディケイドが放つドラゴンライダーキックが命中した。

 

 

「あ――」

 

 

凄まじい衝撃、瞬間ブレイドの体が炎に包まれ遥か後方へ吹き飛んでいった。

そして彼が地面に墜落した時、凄まじい爆発が起きてブレイドの体は粉々に砕け散った。

一方でゆっくりと立ち上がるディケイド、彼は言葉の真意をブレイドへ、椿へ告げる。

 

 

「ドラゴンライダーキックは相手を必ず殺す技なんだよ。安心したよ、お前は俺の期待を裏切ってくれなくて」

 

 

ああ、もう聞こえていないか。

だってブレイドは死んだんだから。

ディケイドは地面に落ちていたブレイドの複眼の欠片を拾い上げると、すぐに適当な場所へ投げ捨てた。

 

 

「これで、二人目だ」

 

「……椿?」

 

 

フラフラと歩き、複眼の破片を拾い上げたカリスからは既に覇気が消え去っていた。

いつもは凛としていた彼女が今はもう完全なる抜け殻である。

もちろんそれは彼女だけではない、ディケイドを知っている仲間達は既に全員彼女と同じ心持であった事だろう。

 

 

「クハッ! ヒハハハ! ヒャハハハハ! こいつ等マジ……! ヒヒハハハ!!」

 

『お、面白いわねゼノン! お腹がよじれちゃう! クヒヒヒ!! 良い表情だわ! 間抜けなお顔! ウフフフフ!!』

 

 

それを見てゲラゲラと笑うダブル。

この世の終わりが如く表情を浮かべている夏美達とは随分とした対比である。

その中で一つ変化が起きた。それはカリスが変身を解除したのだ。誰もが停止した時間の中で、彼女は声を震わせながら涙を一筋零す。

珍しいものだ、彼女の泣いている姿は。ディケイドは淡々とそう呟いた。その声色には彼女に対する一切の興味が感じられないが。

 

 

「な、なぁ司。嘘なんだろう? 全部冗談なんだろう?」

 

「は?」

 

 

相変わらず震える声で咲夜は引きつった笑みを浮かべていた。

 

 

「つ、椿も真志も、消えた。姿が見えない。本当はどこか違う場所に送ったんだろう?」

 

「……何言ってんだ、お前」

 

「だって……! 椿が、今、いない! 真志もいなくなって! お前達がおかしくなって――ッ!」

 

 

ドスッと、音が聞こえた。咲夜はゆっくりと目線を下に送る。

すると彼女の左胸に、正確には胸の中央辺りに深々とライドブッカーが突き刺さっていた。

いや、刺さっていたとは少し御幣がある。正確には剣が彼女の体を貫通していた。

 

 

「少し黙ってろ」

 

「――ァ」

 

 

ゴポッと咲夜の口から血が溢れる。

じんわりと彼女の胸に広がっていく赤黒いシミ、彼女の顔色も白に近い美しい肌色から不健康な青白い物へ。

 

 

「素直になれよ咲夜。椿が死んで寂しくなったんだろ? 教えて欲しいんだろ? 椿がどうなったのか」

 

「ん――ッ!」

 

「答えは死だ。世界は残酷だな。つくづくそう思うよ」

 

 

咲夜の目が虚ろな物へ。

ディケイドが剣を引き抜くと、彼女は糸が切れた人形の様に地面へ倒れた。

そしてもう彼女はピクリとも動かなかった。何故? どうして? 決まっている。心臓を貫かれた人間が生きている訳が無い。

つまり、咲夜は死んだのだ。

 

 

「これで三人だ。死体は残ってるぞ。コレでもまだ冗談だとかつまらない事を聞かせてくれるのか?」

 

 

ディケイドは呆けている夏美たちに向って強く訴える。

これは現実なのだと。夢でもなければ幻でもない。全てが現実、仮面ライダーディケイド、聖司は自らの意思で真志を殺した。椿を殺した。咲夜を殺した。

 

 

「お前らは世界に喰われてる。下らない思い出を幻想として認識し、下らない記憶に救いを求めている」

 

 

今まで一緒に旅をして来た。それはそうだ、事実なのだから。

だがそれがどうした? その記憶があるから今が嘘になる理由等は存在しない。

過去は過去、今は今だ、そして自分達がいる世界がそれを示した。夏美たちの世界が縛られた狭い物ならば――

 

 

「俺が世界を変えてやる」

 

「―――」

 

 

その時、ブチリと何かが切れる音が聞こえた。

彼は、焦燥の叫びを上げて走り出す。

 

 

「司ァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

クウガはかつての友の名を叫びながら我武者羅に走り出した。

理解だ、彼は理解している。もう目の前にいるのは友ではない、友『だった者』だ。

今の彼は紛れも無い――、悪魔。

 

 

「………」

 

 

クウガの体に電流が迸る。

その身の色が不安定に変わっていく。赤から黒へ点滅、たまに青や紫、緑も混じっていく。

彼の心がクウガのアマダムに呼応しているのだろう。それだけではなく先程受けたブレイドブレードが放った電撃を吸収していた様だ。

雷の力と胸を渦巻く感情が彼に爆発的な進化を与えている様だ。とは言えその進化に彼の肉体と精神が追いついていない。

 

 

「仲間の死で覚醒か、随分ヒロイックだな。萎えるよ、つくづく」

 

 

もう飽きたと指を鳴らすディケイド。

するとダブルが夏美達に向けていたトリガーマグナムを、走ってきたクウガの方へと向ける。

すると夏美たちを取り巻いていたトリガーフルバーストの弾丸が一勢に移動、次々にクウガに着弾していき彼の足を鈍らせる。

 

 

「グアァァアアァアア!」

 

『ユウスケ! タイタンフォームに!』

 

「ァァアアアッ! ズァアア!!」

 

『ユウスケ! 聞いてるの!?』

 

 

薫はそこでクウガの複眼が赤から黒にゆっくりと点滅しているのを発見する。

同じくして咆哮を上げるクウガ、どうやら彼女の声は届いていないようだ。

理性の喪失、強大なエネルギーを身に宿した者の末路か。

 

 

「我夢」

 

「分かりました」

 

 

飛び上がり一回転、響鬼はディケイドの前方に着地すると鬼火を発射、迫るクウガを紫炎の業火で包み込む。

炎に包まれ、苦痛の声を上げながらクウガは地面を転がった。ディケイドは次に双護の名を呼んでみせる。

するとカブトは既に気絶しているガタックを思い切り蹴り飛ばすと、三つのボタンをタッチしていく。

 

 

『ONE』『TWO』『THREE』

 

「うっ! ぁぁあ……!」

 

 

何とか炎をかき消し立ち上がったクウガ、しかしもう遅い。

カブトはゼクターの角を弾き、地面を蹴って飛び上がった。

 

 

「ライダーキック!」『RIDER KICK』

 

 

空中を一回転すると、彼は光を纏う飛び蹴りでクウガの背を打った。

苦痛の叫びを上げて吹き飛ぶクウガ、空中で変身が解除され、ユウスケは地面に叩きつけられる。

一方で彼から離れ地面を滑る銃(薫)、彼女は人間体に戻るとユウスケを庇う様に抱きしめた。そして自分達を囲むディケイドたちを睨みつける。

けれどもその目からは次々と涙が。当然だ、彼女とてどうしてこんな事になってしまったのか見当もつかない。

 

 

「双護……! 我夢! 司!! どうして! なんで!!」

 

 

ボロボロと涙を零しながら訴える薫。

それに釣られたのか、夏美とアキラも同じ様に涙を流して相変わらずその場に立ち尽くしている。

しかし、それをディケイド達は愚かの極みと一蹴する。こんなに簡単に砕ける精神力で何故今まで生き残れたのか不思議で仕方ない。

 

 

「まだ言ってるのか、アホかお前らは」

 

「――ッ!」

 

 

カブトの言葉にショックで言葉を失う薫。

まだどこかで彼女はカブト達が正気に戻ってくれる事を期待していたのだろう。

だが彼女は大きく勘違いしている。彼等は初めから正気なのだから。

 

 

「薫先輩、僕達の目的は簡単です」

 

 

両手を広げる響鬼、彼が指し示したのはこの世界だ。

 

 

「いらないんですよ、こんな世界」

 

 

その声色からは普段の我夢の優しさなど欠片とて感じられなかった。

ただ冷たく、ただ重く、深い殺意が篭っている。

世界は不要、だから壊す。当たり前の話だ。

 

 

「何を言って……」

 

「我夢の言う通りだ。俺達は世界を壊す。そしてお前達は邪魔なんだよ」

 

 

だから壊す。いらないんだ、もう夏美たちも。

 

 

「友達……じゃないの?」

 

 

何とかして薫が紡いだ言葉。しかしそれさえもディケイド達は一蹴した。

 

 

「確かに、俺達は友人だった。だが俺はその友人を殺そうと言うんだ。何かおかしな点はあるか?」

 

「―――」

 

 

ディケイドは剣を構え、刃をなぞる。

次は薫か? 気を失っているユウスケか? どちらでもいい。どうせ二人とも殺すからだ。

剣を振り上げたディケイド、するとその瞬間、彼の足元に大きな火花が散った。

 

 

「……!」

 

 

一同の視線が其方に集中する。

そこには、メビウスとキバ、ファム、ファイズとデルタがコチラを唖然としながら見つめている所だった。

レオンを連れて行ったメビウスはそこでキバ達の加勢もあってかレオンを退ける事には成功した。

しかし騒ぎは収まっておらず、それを心配して様子を見に来てみればコレだ。ディケイド達がいた事、咲夜の死体が転がっている事、ユウスケと薫がディケイド達に囲まれている事。

 

 

「なにこれ……」

 

 

思わずデルタが呟いた。

取り合えず反射的に剣を振りかざしていたディケイドを止める為に威嚇射撃を行ったが、そもそも何故威嚇射撃を行わなければならないのか。

 

 

『ファイナルフォームライド・カカカカブト!』

 

 

その答えは、電子音で返って来た。

 

 

『ファイナルフォームライド・キキキキバ!』

 

「まずい! 皆! 今すぐ逃げ――」

 

『ONE』『ALL・Clock Up』

 

 

ディケイドがデュアルゼクターにある一番目のボタンを蹴り押し、オールクロックアップが使用される。

カブトデュアルゼクターの効果の一つ、カブトが指定した相手にクロックアップを与えると言う物だ。

しかしそれを理解したとてどうなる? それを止められるスピードを持つ者が一体どれだけいると言うのか。

唯一希望のあるファイズはまだ状況が分かっていない、そんな彼にディケイド達を何とかしろと言うのはあまりにも酷な話。

まあ尤も、もっと直接的な不幸を背負った女が一人いるのだが。

 

 

「え……? あれ?」

 

『ファイナルアタックライド』『キキキキバ!』

 

 

電子音が終わった頃には丁度クロックアップが解除され、時間は元の流れを取り戻していた。

とは言え、夏美たちにとっては一瞬にも満たない時間であった事だろう。

まあ尤も、起こった変化は一瞬と言う時間では語りつくせぬ程に多いのだが。

一番の変化はやはりキバの姿がライダーのそれからキバアローに変わりディケイドの手に収まっていた事か。

そして彼が放った矢が、ファムの体を貫通していた事も変化の一つだろう。

 

 

「え? あれ? う……そ? マジ……っ?」

 

 

ファムの腹部を貫く巨大な弓矢、純白の鎧にはおびただしい量の赤い血が滴っている。

フラつきながら漏れる彼女の掠れた声を聞き、ディケイドは淡々と呟いた。

 

 

「四人目だ」

 

「――あ」

 

 

倒れたファム、彼女の体が光り輝き、直後爆発した。

跡形も無く消し飛んだ彼女を見て、ディケイドは何の興味も無しと言った素振りでキバアローを投げ捨てる。

ライダー体となって地面を転がるキバ、彼はそこでやっと状況を理解した。

たとえそれが歪なものであっても、今自分がファムを殺した感覚が残っているから。

 

 

「逃げろッッ!!」

 

 

翼は叫んだ。腹の底から、声が掠れる程の音量で叫んだ。

このままでは本当に全滅する。本当に仲間達がディケイドに殺されてしまう。

何があったのかは分からない、だが一つだけ確実に言える事があるならもうディケイド達は敵になったと言う事だ。

しかし一方で自分達は彼等を攻撃できない。何故? 決まっている。ついこの間までは大切な仲間だった、一緒に笑い合う仲だったじゃないか。

割り切れない、だが向こうは割り切っている。この戦い、コチラ側に勝利は無い。

だから今できる事は逃げる事だ。撤退する事、それ以外に自分達に残された希望は無かった。

 

 

「ただこの場から離れる事を考えるんだ! じゃないと、死ぬぞ!!」

 

 

翼は素早くアギト(ストームフォーム)に変身すると自分の近くにいた夏美とテトラの肩を持って飛翔する。

他の仲間に関してはもう信じるしかない。とにかくアギトは守れる者を守る判断と取った様だ。

司の変貌ぶりに大きなショックを受けている夏美と、戦う力の無いテトラをアギトは最優先で保護する事に。彼は嵐の力を解放してディケイド達から離れていく。

 

 

「クッ!」『Complete』『Start Up』

 

 

ファイズもただならぬ気配を感じたか、アクセルフォームに変身するとデルタとキバの手を引いて一気にディケイド達から離れる様に駆けていく。

それを見て舌打ちを零すダブル、面倒な事をしてくれたと不満げだった。大人しくこの場に残って殺されれば良い物を。

あっと言う間に、この場には倒れているユウスケと彼を庇っている薫。そして呆然と立ち尽くすアキラとメビウスが残っていた。

後者のメビウスに至っては先程から倒れている咲夜の死体と、先程ファムが爆死した部分をジッと見ていた。

心が鈍る。けれども彼はグッと拳を握り締めていた。

 

 

「どうしますディケイド様。追いますか?」

 

『リボルギャリーを使えばアギトくらいには追いつけそうだわ』

 

「……お前はどう思う、カラス」

 

 

カラス、その言葉を口にするとディケイドの肩の上に黒い球体が浮かび上がった。

球体には小さな翼がついており、さらには言葉も放つ様だ。

カラスの声はデネブに似ていて、だから薫とアキラの目からは自然にまたも涙が流れ出ていく。

思い出してしまった、皆がいて、皆笑っていて、楽しかったあの日々が。

 

 

『今は捨て置いても構わないだろう。我々にはカナリアを見つけると言う第一目的がある』

 

「それもそうだな。だがまず、ユウスケと薫は殺す」

 

 

再び剣を振り上げたディケイド。

だがその時、強く握っていた拳をメビウスは振り払う。そして叫び声を上げ、彼は地面を蹴った。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「!」

 

 

飛翔するメビウス。彼は飛行スピードを拳に乗せて、そのままの勢いでストレートパンチをディケイドの顔面に打ち込んだ。

体が浮き上がり、ディケイドは地面と並行になりながら後方へと吹き飛んでいった。

城から離れる様に地面を転がるディケイド、それを見ていたガークとアグミはアイコンタクトを取ると一旦城へと帰っていく。

どうやら面倒な事になったらしい、さっぱり分からないが、自分達が関わらなくとも勝手に自滅してくれそうだと。

そして一方で石畳をガリガリと削りながらディケイドは近くの広場にてようやく動きを止めた。凄まじいパンチ力だ、彼は小さく笑いながらムクリと体を起こす。どうやらダメージを負っていても、ディケイドにとってはまだまだ余裕がある様だ。彼は砂埃を払いながら、目の前に降り立った光の戦士を睨んだ。

 

 

「おいゼノン、フルーラ! アイツは何なんだ?」

 

「ああ、何かウルトラマンって奴らしいですよ。ウルトラマンメビウス、よく分からないけど強いと思うな」

 

『宇宙人らしいわよ! 怪しいわね! 危険電波でも受信してるのかしら! ぴぴぴぴぴー! きゃは!』

 

 

ディケイドを追って様子を見に来たダブルとカブト、その視線を受けながらメビウスは変身を解除する。

ミライは鬼気迫る表情でディケイドを睨んでいた。そんな彼の想いを感じ取ったか、ディケイドもまた変身を解除して司に。

王城前広場、噴水を挟んで二人は視線をぶつけ合う。

 

 

「貴方が、司なんですよね……ッ!」

 

「ああ。それが?」

 

「――して……!」

 

「?」

 

「どうして友達をッ! 仲間だったんでしょうッ!?」

 

 

ミライの怒号が司の耳を貫く。ミライは夏美から司の事を聞いていた。

彼の事を話す夏美はとても嬉しそうだったのも覚えている。仮面ライダーが好きで、正義を信じている彼に、ミライは尊敬と親近感を覚えた。

彼となら良い友達になれるかもしれない。そう、思ったのに。

 

 

「……ッ」

 

 

ミライの拳に再び力が入る。彼もまた唖然としてしまい、みすみす目の前でファムを死なせてしまった。

その後悔、その悲しみ、彼は正義を信じていた。だからこそ同じ道を歩んでいただろう司に対する複雑な思いが爆発しそうだった。

 

 

「貴方は、正義のヒーローでは無かったんですかッ!!」

 

「―――はは、ハハハハハハ!!」

 

 

先程の冷たい雰囲気とは違い、今のディケイドはゲラゲラとしばらく声を上げて笑っていた。

正義のヒーロー、その言葉がどうやらアンテナに引っかかったらしい。

彼はひとしきり笑った後、再び声のトーンを下げて剣先をミライへ向ける。

 

 

「その通りだミライ。俺は正義に憧れ、己の正義を目指した」

 

 

それは過去も今も何一つ変わっちゃいないと司は言った。

正義を目指す心は今も己の中にある。

では一つ聞きたい、正義とは何だ?

 

 

「俺の正義に、夏美達は要らない」

 

「!」

 

「同じ事を何度も言わせるな。あいつ等はもう要らない、だから消す。それだけだ、それ以外の理由も背景も無い」

 

「本気で言ってるんですか! 友達が要らないなんて!」

 

「ああ、本気だ。あいつ等が生きる価値と世界はココに無い」

 

 

歩んできた世界は確かに真実だった。

しかしその世界が壊れれば絆は無くなる。そうだ、世界は壊れた。

だから今更友達だとか仲間だとか正義だとか、過去のそれを振りかざす事に意味は無い。

 

 

「今を見ろ、今の世界を胸に刻め! だがその世界もどうせ壊れる」

 

「そんな――」

 

「言わば、あいつ等を殺す事もまた、俺の正義だ」

 

「そんな馬鹿な!!」

 

「そもそも、初めから絆なんて無いんだよ!」

 

 

一番初めからだ。

彼等が勝手に仲間意識を抱いていた為。クソみたいなお友達ごっこだとディケイドは切り捨てた。

何か仲間だ、何が友達だ、何が正義だ。

 

 

「反吐が出る」

 

 

ディケイドライバーを展開する司、懐から取り出したディケイドのカードをミライに見せ付ける様にして彼は翻した。

駄目なのか、分かり合えないのか、ミライは苦悶の表情を浮かべながらメビウスブレスを召喚した。

にらみ合う両者、歩んだ道は同じはずだったのに、どこで歯車は狂ってしまったのか。

 

 

「俺は破壊者ディケイド」『カメンライド』

 

「ッ!」

 

「この腐った世界を破壊する! 変身!」『ディケイド!』

 

「メェビウースッッ!!」

 

 

クリスタルサークルを回転させ腕を天に突き上げるミライ。

一方で司の周りには9人のライダーの紋章が出現し、直後それが各ライダーの残像を作り上げる。

残像は司と言う一点に収束、すると彼の姿がバトルスーツに覆われる。

光に包まれるミライ、スーツの頭部に次々とプレートが刺さっていく司。

 

 

『司、貴方がコレ以上人を傷つけるなら、俺が止めます!』

 

 

光が晴れ、姿を現す"ウルトラマン"メビウス。

 

 

「来い、スーパーだかウルトラだか知らねぇが、俺がぶっ壊してやる」

 

全身にマゼンダの色素が巡り、変身が完了する"仮面ライダー"ディケイド。

二人は同時に地面を蹴って走り出していた。そして同時にジャンプ、噴水の真上でメビウスは右腕を、ディケイドは左腕を突き出した。

空中で二人の拳がお互いに直撃。片方には輝く希望の力が、もう片方にはどす黒く光る破壊の力が宿っている。

それが何より皮肉な対比に見えた。

 





☆エピナビ☆

・ディケイドリュウキ

カメンライドを使用した場合、ディケイドは他のライダーに変身できるんだ!
ベルト以外は見た目は完全にコピーしており、龍騎に変身した場合はドラグバイザーも付属されている。
この作品では龍騎系ライダーのカード(アドベントカード)は全てこのバイザーで使う事ができるぞ。そうした場合ディケイドの効果と見なされるんだ。
彼はこれで龍騎のアドベントやファイナルベントを使い、ブレイドを倒したぞ。


………

もうすぐゴーストが始まると言う事で緊急更新です。
いや本当に最近コッチもあっちも更新が遅くて申し訳ない。スランプとかでは無いのですが色々バタバタしてまして。

ドライブ終わりましたね。正直最初は可も無く不可も無くって感じだったんですけど、後半の盛り上がりは二期の中でもトップクラスなんじゃないでしょうか。
四号等で仲間が死ぬ等のシリアスな面もみせて、珍しく恋愛が前面に押し出されたり、敵にも強い魅力があったり等々。
まあ玩具関係はちょっと微妙だったかなと思ったんですが、お話は好きですね。タイプトライドロン初登場の話が一番好きです。

ただ一つかなり大きな不満があるんですが、コレ別にドライブだけじゃないけど最近ライダーの挿入歌が流れることが少ない+流れても音量が小さかったり場面が適当だったり。そういうのはちょっと残念ですね。アギトや龍騎みたくほぼ毎回使って欲しいものです。

次はゴーストですか。事前情報はかなり良い感じですね。見た目もアメコミっぽくて結構好きです。

はい、まあそんな感じです。
次ももしかしたらちょっと間が空いてしまうかもしれませんが、どうかご了承ください。ではでは
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。