Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

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SONG12 ゼロの笑顔

 

 

「キャストオフ」『Cast Off』

 

 

カブトの装甲がパージされたのを合図に一勢に走り出した三人と三人。

まず一番初めに先頭にいたディケイドとハッピーがぶつかり合う。

 

 

「ハァアアッ!」

 

「くッ!」

 

 

全力を込めて振り下ろされたライドブッカーの刃をハッピーは両手をクロスさせて受け止める。

すると再びディケイドは剣を振り上げ、またも渾身の力で叩き割るようにして刃を振るう。

 

 

「オラァッ! オラオラオラァアア!!」

 

「う――ッ! ぁぅううッ!!」

 

 

本当は一振り目でハッピーの両腕を切断する気だったが、意外と丈夫なものだ。

ディケイドは何度も何度も剣を打ちつけハッピーは地面に膝をつく。乾いた音が響き、ハッピーは大きな呻き声を漏らす。

 

 

「テメェなかなか頑丈だな! なんて名前だ?」

 

「ッ?」

 

「俺は仮面ライダー。仮面ライダーディケイドだ」

 

 

グッと顔を近づけるディケイド。

ハッピーの視界に広がるソレ、仮面の裏の顔は全く分からない。

ディケイドの仮面は怒っている様にも、笑っている様にも見える。背筋に冷たい物を感じながらも

 

「プリキュア――ッ!」

 

「あ?」

 

「スマイル――ッ、プリキュア」

 

 

瞬間、ハッピーはグッと腕に力を込める。

 

 

「キュアハッピィィ――ッ!」

 

「!」

 

 

全力を込めて立ち上がると、その勢いで剣を打ち上げる。

バランスを崩すディケイドの胴に叩き込む回し蹴り、地面を転がる破壊者をハッピーは呼吸を荒げながら睨み付ける。

腕の骨に響く衝撃が凄まじい、ビリビリと麻痺する感覚が気持ち悪かった。

一方、気だるそうに首を回しながらディケイドは立ち上がった。蹴られた脇腹には確かな衝撃と痛みが走っている。

 

 

「なるほど、戦えるだけの力はあるか」

 

 

見ればサニーと響鬼、マーチとカブトはそれぞれ殴りあいながら距離を離していく。

ハッピー達はどちらかと言えばチームワークを中心に敵を倒す戦闘スタイルの為、距離が離されるのは不本意であった。

しかし今はそんな事は言っていられない、ハッピーは真っ直ぐ、迷い無い瞳でディケイドを見る。

夏美との約束がある。ハッピーは怯えている場合ではないのだ。

 

 

「司さん。どうして貴方は戦うの?」

 

「――ッ。何故、戦うかか」

 

 

ディケイドはライドブッカーをなぞると視線を外す。

どこか遠くを見つめ、ディケイドはフムと唸り声を一つ。

友を殺し、弟や従姉妹を殺そうとするその真意はなんなのか。

もちろんその答えはディケイド自身にしか分からぬ事、だからハッピーにもまた教える事は無い、のか?

 

 

「ハッピー、お前は世界を壊したいと思った事はあるか?」

 

「え?」

 

「世界をぶっ壊してやりたいと思った事はあるか?」

 

 

生きとし生きる者を全て無に返してやりたいと思った程の憎悪を抱いた事があるのか?

ディケイドは純粋にハッピーに問いかけた。もちろん答えは分かっている。ハッピーは必ず首を横に振るだろう。それはそうだ、それだけの憎悪を抱く等、中々無い事だ。

 

 

「だが俺はある。それが今だ」

 

 

この世界が何よりも気に入らない。だから消す。存在全てをゼロにする。

それは夏美達を含めてだ。かつての仲間ももう要らない。それは他の仲間達も同じだ、我夢も双護も、そしてゼノンとフルーラも賛同した。

今、ディケイドの世界はディケイド達だけで完成した。そこには一切の異物は要らない。

 

 

「どれだけ非難されても良い。俺はその言葉ごと、全てを葬り去る」

 

「どうして!? どうしてそんな寂しい事――ッ!」

 

「俺は理解を求めてはいない。欲しいのは結果だけだ」

 

 

きっとハッピーは理解できないだろう。

当然だ、ディケイドもまた自分の行動が他人から見れば『おかしい』のだと分かる。

しかしだからどうした? 抱いた大義名分を否定される意味も、理由も無い。

そうしたいと思ったからそうする。幸い、ディケイドにはその力があった。

 

 

「俺はもはや、仮面ライダーではないのかもな」

 

 

かつての仲間を殺し、邪魔な者を殺す。それは憧れていたヒーローの姿ではない。

だがそれでも良いとディケイドは思っている。何故なら、力は力だからだ。かつて自分が抱いた志を自らの手で捻じ曲げようとも、成し遂げたい破壊があった。

 

 

「今の俺は聖司だ。だがそれでいい、ディケイドの力は確かに俺にある」

 

 

あえて、胸を張って言おう。

 

 

「俺は仮面ライダーディケイド。世界の破壊者だ」

 

 

殺す。壊す。全てを破壊する悪魔になろう。

走り出したディケイドは再び剣を振るい、ハッピーを攻撃する。

ハッピーとて多くの戦いを潜り抜けてきた猛者だ。しかしこの感覚は久しぶりだった。本気で自分を殺そうとする洗練された『殺意』を向けられるのは。

 

 

 

 

 

「がぁ!」

 

 

紫炎を纏いながら吹き飛んだサニーは公園のすぐ隣にあった喫茶店のテラス席に直撃する。

お茶を楽しんでいた貴婦人たちは悲鳴を上げながら逃げていく。その中、砕けたティーカップの破片を払いながらサニーは急いで立ち上がった。

前からは音撃棒を構えた響鬼がゆっくりと歩いてくる。生身かと思ったら防御力はあるか、響鬼は感心したように唸り声を上げた。

珍しい、これがプリキュアと言うものか。キラキラとした目は、響鬼にとって目障りでしかない。

 

 

「ある意味、新種の怪人か……。どうやら、お前が僕の倒すべき敵の様ですね!」

 

 

響鬼は鬼火をサニーに命中させた。

一瞬で炭になってくれるかと思っていたら意外や意外、サニーの体には焦げ一つつかず、むしろその表情はまだまだ余裕だった。

それもそうだ、サニーの力は炎、当然その力に対しては絶大な耐性がある。たとえ鬼の炎とは言えどサニーにとっては『熱い』程で済んでいる。

ならばと響鬼が取り出したのは音撃棒。何も言わず、何も語らず容赦なく響鬼はサニーに向けて武器を振るう。

サニーは当然少女だ、それも中学生、見ただけで分かる。本来、それは響鬼としては最も殴れない相手であろう。が、そんな事は関係ないと言わんばかりに響鬼は思い切り音撃棒をサニーの体に打ち付けた。

 

 

「くッ!」

 

 

しかしサニーとてパワーファイター。

しかも肉弾戦をメインとしている身、響鬼の攻撃を完全に見切り、ガードと回避を的確に行っていく。

 

 

「凄いですね、想像以上だ! ますます殺したくなるッッ!!」

 

「そら、どうも――ッ!」

 

 

しかし表情は優れない。夏美の友人であると言う情報がサニーの心に靄をかける。

我夢と戦う、その事実がサニーの動きをどこか鈍らせてしまう。先程の一撃で正気に戻ってくれると期待したが無駄であった。

ならばどうすれば良い? この戦いは響鬼に勝つ事ではなく、響鬼を説得するものなのだから。

 

 

「我夢――ッ! 止めろ! こんな事して何になんねん!!」

 

 

響鬼の蹴りがサニーを押し出し、ガラスを打ち破って二人は店内に入る。

悲鳴をあげながら逃げていくウエイトレスや客たち。その喧騒に打ち勝つ様、響鬼は声を荒げた。

 

 

「黙ってろ屑! 僕達には僕達の信念がある! お前らに理解できる物じゃない!!」

 

 

テーブルや椅子を蹴り飛ばしながら響鬼はサニーと距離を詰める。

一方バックステップでカウンターの向こうに飛び込んだサニー。会話を続ける為、一旦撤退の道を選んだ様だ。

飛び込んだ後は身を低くし、カウンター越しに響鬼へ問いかける。

 

 

「夏美を泣かせてもやる事なんか!」

 

「フッ、夏美先輩? 知った事じゃありませんね」

 

 

音撃棒から炎を飛ばす響鬼。

棚に置いてあったカップやグラス、観葉植物が次々に破壊され、破片がサニーの頭に降りかかった。その不快感に目を細めながらサニーは尚も声を荒げる。

 

 

「夏美は泣いとった! アンタ等が変わって! アンタ等の為に!!」

 

 

響鬼の炎がカウンターを作る木材に引火したのか、サニーの背に激しい熱が伝わってきた。

黒煙が上がっていき、喫茶店の中は薄暗くなっていく。それが響鬼の背負う闇に見えて、サニーは強い焦りと言い様の無い恐怖を覚えた。

 

 

「泣いたからって何になる」

 

「ッ」

 

「どうでもいいんだよ。何度も言わせないでください。アイツはもう仲間じゃない。友達でもない、だから殺す」

 

 

要らなくなった道具は捨てる。

 

 

「当然でしょう?」

 

「チッ!!」

 

 

サニーは立ち上がると地面を蹴って跳躍。

そのまま響鬼に殴りかかり、しばらく肉弾戦を。そして最終的に組み合う二人。

視線がぶつかり合い、今度はサニーが声を荒げた。彼女は絆を尊重する。今の響鬼は見てはいられない。だからサニーは最後のカードを切ることに。

 

 

「それをアキラにも言えるんか!?」

 

「……!」

 

 

夏美の話を聞くに響鬼、我夢はアキラに好意を抱いていた。

その点を心に訴え掛ければ或いは。それがサニーにとって考え付く最大にして最後の説得方法であった。

しかし、響鬼は何の事は無く言い放つ。

 

 

「ええ。それに、アキラさんはもういませんよ」

 

「――は?」

 

「僕が殺しましたから」

 

「え……?」

 

 

刹那、サニーの動きが止まったのを確認した響鬼は音撃棒を思い切り振るいサニーの顔面に強力な一撃を叩き込んだ。

真横に振るった音撃棒、サニーは容赦なく左へ吹き飛んでいく。並べてあった机に直撃すると、机を粉砕してサニーは地面に倒れた。

 

 

「なんで――、好きやったんやろ?」

 

 

倒れたまま、ポツリとサニーが呟く。

震え、消え入りそうな声は響鬼に縋る様だった。

もちろんそんなものは響鬼にとってはどうでも良い話。響鬼は鼻を鳴らすと、どうでも良いといった様子で言い放つ。

 

 

「決まってますよ。アキラさんももう、要らないから」

 

「お前――ッ、マジか」

 

「ハハッ! 確かに酷い男ですね僕は。でも仕方ないじゃないですか、本当に『あんなの』要らないんだから」

 

「あんなの――ッ?」

 

 

サニーはゆっくりと立ち上がると殴られた頬をなぞり、そして口にたまった血を、唾を吐く様に地面へ落す。

そして、拳を握り締めた。

 

 

「うらァア!」

 

「!」

 

 

サニーは手に炎を纏わせて思い切り地面を殴りつけた。

広がる魔法の炎は店を包んでいた炎を塗り潰して消火する。

立ち込めていた黒煙も衝撃で吹き飛んでいき、その中、サニーはジットリとした目で響鬼を睨む。めり込んだ拳を床から引き抜き、ゆらりと立ち上がった。

 

 

「我夢。ウチと腹割って話そうや」

 

「嫌ですよ。本当は、お前に構ってる時間なんて無いんだから」

 

「ああ、そう、まあええわ。ウチももう何か面倒になってきたし」

 

 

だから、一番分かり易い方法で説得すると。

 

 

「アンタが元に戻るまで、ボコボコにしてでも止めたる!」

 

「元に戻る? 馬鹿が、僕は洗脳なんてされてないし、これが元なんですよ」

 

「なら、その腐った根性、ウチがたたき直し足るわッ!!」

 

 

靴の裏を爆発させ、その爆風で一気にサニーは響鬼の眼前にまで迫った。

一瞬の事だった為、反応に遅れた響鬼はその顔面にサニーのストレートを頂く事に。

衝撃、星が散る。しかしすぐに前を見る響鬼、二発目を音撃棒で弾くと、再び肉弾戦に入った。

 

 

「オォォォオオオオッッ!!」

 

「フッ! ハァアアア!!」

 

 

右、左、右右、繰り出されるサニーの拳を響鬼は弾き、カウンターの蹴りを。

しかしサニーは肘でその蹴りを落すと、体を回転させ裏拳を響鬼の脇腹に。

一瞬動きが止まった所でサニーは飛び上がり、アームハンマーを響鬼の右肩に落す。

炎の力が拳が命中した部分が爆発を起こし、響鬼はその衝撃で右手から音撃棒を離し、地面に落した。

 

 

「グッ!」

 

「シュ――ッ!」

 

 

音撃棒を拾おうとする響鬼だが、サニーは既に少し後ろに体を引いて拳を構えていた。

ストレート、いやアッパーか、予見した響鬼は一旦左の音撃棒も離し、両手を使って繰り出されたアッパーを受け止めた。

サニーは力こそ強いが攻撃のルートは単調で読みやすいのが幸いだった。サニーの拳の動きが止まった一瞬、響鬼は右手の甲から鬼爪を生やし、それを掴んでいたサニーの腕に突き立てる。

 

 

「いッッ!!」

 

 

隠し武器に怯んだサニー。

鬼の爪はサニーの防御力を超えていたか、貫通とはいかないものの、それなりに深く腕に突き入っていき、サニーの腕からは血が流れ出た。

しかし驚くべきはその血をサニーは炎に変えた。爆発する様に揺らめく炎に響鬼は怯み、その隙にサニーは響鬼の腹を蹴って怯ませる。

 

 

「グッ!」

 

 

響鬼は掴んでいた腕を離し、サニーはその隙に一旦地面を転がって響鬼から距離を取る。

僅か一瞬の間、すぐに両者は動き出した。地面に落ちた音撃棒を拾い上げる響鬼、腰にあったスマイルパクトを掴むサニー。

 

 

「ブッ殺す!!」

 

 

響鬼は音撃棒から炎の剣を生やした。

烈火剣、二本の炎の剣は物理的なエネルギーを獲得しており、響鬼はサニーを切り裂こうと地面を蹴る。

まずは一振り目、右斜め上から左斜め下に振るわれた炎をサニーはバックステップで回避。だがもう間もなく二振り目が来る。

サニーは素早くキュアデコル、スポーツデコルをセットする。

 

 

「来い!」『Let's Go SPORT!』

 

 

手を伸ばすサニー、光が迸り、どこからとも無く剣道で使用する竹刀が二本飛び出してきた。

それをキャッチするサニー、響鬼としてはそんな物でとは思ったが、すぐにその考えが間違っている事を察する。

何故ならばサニーも響鬼同じく、竹刀に炎を纏わせて炎の剣を作ったのだ。烈火の二刀流、四つの刃が次々と交差する。

どうやら体術だけではなく剣術も達者らしい。赤い斬撃が次々と火花を散らし、机や椅子、オブジェを次々に破壊していく。

木片やレンガの粉がサニーの顔に降りかかり、思わず不快感に目を細める。しかしそれでも、心に点る炎は勢いを増すばかりだ。

 

 

「おんどりゃああああッッ!」

 

「!」

 

 

クロスに切り払った剣が響鬼の烈火剣を弾いた。

しかしその衝撃でサニーの剣も消滅。二人が持つのは竹刀と音撃棒に戻る。

だが怯んでいる響鬼、有利なのはサニーのほうであった。彼女は思い切り脚を前に出し、一気に身を乗り出していく。

 

 

「小手ェエッッ!」

 

「ぐあッ!」

 

 

二本の竹刀が響鬼の腕を打つ。衝撃で音撃棒を地面に落す響鬼。

さらに瞬間サニーも竹刀を離し、腕をクロスに構えてそのまま思い切り響鬼の体にタックルを。

 

 

「ウォオオオオオ!!」

 

「ッ! チィイ!!」

 

 

受け止める響鬼だがサニーは構わず全身。全力を込めて走った。

凄まじい勢いで強制的に後退していく響鬼と炎に包まれ全身を弾丸に変えるサニー。巨大な炎塊はそのまま響鬼を喫茶店の壁に直撃させ、めり込ませてみせる。

響鬼の体がレンガに沈み、サニーは体を旋回させて思い切り地面を踏み蹴った。

 

 

「くらえやッ!」

 

「ガハッッ!!」

 

 

鉄山靠(てつざんこう)。中国武術の技が一つであり、背で思い切り相手打つ。

当然サニーのソレは一般のソレとは威力が比べ物にならない。壁にめり込んだ響鬼はそのまま壁を粉砕して店の外に吹き飛ばされた。

さらに直撃の瞬間爆発が起き、当然それだけダメージと衝撃も凄まじい。響鬼は仰向けに倒れしばらく呻いていたが、その内ぐったりと動かなくなっていく。

気絶したか? サニーは響鬼の様子を確認しようと、自ら空けた穴から身を外に。

 

 

「!?」

 

 

しかし、丁度その時響鬼の体から赤い蒸気が噴出してきた。

なんだ? サニーが脚を止めると、直後響鬼の体が赤い炎に包まれる。

そして、その紅蓮は立ち上がり、炎の中にある瞳をギラリと光らせる。

 

 

「調子に乗るなよ」

 

「ッ!!」

 

「殺す」

 

 

炎が弾けると真っ赤に染まった響鬼が姿を見せる。

強化形態、響鬼紅。サニーは本能でその危険性を察知したか、指を鳴らし炎を出現させるとそれを放り投げた。

炎は問題なく響鬼に直撃、しかし響鬼はのけぞった様子こそあれど構わず歩き出した。

 

 

「くッ!」

 

「響鬼紅の能力は超回復。いかなるダメージを受けても、僕には意味を成さない!!」

 

「!」

 

「分かるか、お前には勝ち目は無いんだよ!!」

 

 

走る響鬼。サニーはグッと歯を食いしばって後ろに下がる。

響鬼の話が本当ならばどうすればいいのか。取りあえずは対抗する為に拳を突き出してみるが、響鬼はそれを簡単に受け止めると、逆にサニーの腹部にカウンターのボディーブローを打ち込んだ。

 

 

「ガハッ!」

 

 

威力が違う。サニーは焦りを感じつつ我武者羅に拳や蹴りを繰り出すが、響鬼はそれを打ち弾きカウンターを次々に叩き込んでいく。

やはりスピードとパワー、基本的な身体能力が上昇している。先ほどとは受け止める拳の重さが桁違いだ。

さらに指を鳴らす響鬼。すると地面を突き破って響鬼のサポートマシン、ディスクアニマル・緑大猿が姿を現す。緑大猿は地面に落ちていた響鬼の音撃棒を拾うと、それを持ち主に向って投げた。

 

 

「分かりますか? コレが力ですよ!」

 

「ぐあぁ!」

 

 

音撃棒を受け取った響鬼は怯むサニーの胴に一撃を打ち込んだ。

すると炎が迸り音撃鼓を形成。サニーの動きを止めるだけでなく、防御力を無視した音撃を容赦なく打ち込んでいく。

響鬼紅は音撃鼓を相手につけずとも攻撃を当てるだけで音撃を相手に打ち込む事もできるのだ。

 

 

「なんやコレッ! 体の中がグチャグチャにされ――ッ! ガハッ!!」

 

 

衝撃が内臓に響く。

骨が張り裂けそうな程軋む。吹き飛ばされたサニーは、先ほどとは逆に喫茶店の壁を破壊し中へ押し込められた。

地面を擦りながらも、すぐに立ち上がろうとした所で血を吐いた。目の前が霞む、衝撃が脳までもを揺らし、サニーの視界がブレる。

 

 

「塵になれッ!」

 

 

響鬼は音撃棒から巨大な火炎弾を発射。

喫茶店めがけ次々と攻撃を放っていく。中にまだ人がいる可能性等考えいない。

いや、もしかしたらそれを踏まえた上で響鬼は次々に火炎弾を喫茶店に放っていった。

直後爆発。喫茶店は炎に包まれ崩壊し、中にいるであろうサニーを瓦礫で押し潰そうとする。

 

 

「ハハハハハハッ! 消し炭になれ、キュアサニー!!」

 

 

轟々と燃え崩れる喫茶店を見つめ、響鬼は笑う。

だがその時であった。炎の中、金色の光が迸ったかと思うと、店を包んでいた炎が吸い込まれる様にして一箇所に収束していく。

 

 

「!」

 

 

それは当然、キュアサニー。紅い炎を吸収した彼女は呼吸を荒げながらも確かに立っていた。

そしてその姿が微妙に変化を遂げている。体の回りにはオレンジ色の光が灯っており、さらに頭にあったティアラとイアリングが金色になり派手になっていた。

ティアラモード。響鬼がそうである様に、サニーもまた強化形態が存在しているのだ。しかし、響鬼は余裕だった。焦りは無い。

 

 

「ハァアア!!」

 

 

サニーが指を鳴らすと響鬼の回りにオレンジ色の光が次々に出現、直後爆発していく。

僅かに呻く響鬼だが何も問題は無い。紅の力によって自己回復能力が極限にまで高まっている状態。

いくらダメージを受けようがものの数秒もあればみるみる痛みや傷は引いていき、響鬼には余裕が生まれる。

 

 

「無駄ですよ。貴女に僕は倒せない」

 

「……ッ」

 

「力のレベルが違う。分かるだろう? 火力が違うんだよ」

 

 

サニーもそれが分かっているのか、悔しげに歯を食いしばる。

しかし、沈黙はしなかった。

 

 

「いや――、違う」

 

「あ?」

 

「ウチは、アンタの力を超えてやる。アンタの力を否定せなアカン!」

 

 

友を殺す為に振るわれる力など。それで強くなったとほざく力など、絶対に否定しなければならなかった。

しかし鼻を鳴らす響鬼。言葉は達者だ、言うだけなら誰にでもできる。

 

 

「ですが悲しい事に、世界は力によって左右される」

 

 

ご立派な志では何も変えられない。

何も変わらない。世界を動かすのは、世界を変えるのは全て力だ。

ゆるぎない意思を左手に、絶対な力を右手に、それらが揃ったとき初めて目の前に勝利のビジョンが見える。

 

 

「お前に理解できるか? お前に視えるか? 僕を倒せるだけの可能性!」

 

「ぐッ!」

 

「だからさぁ、格好つけてんじゃねぇよ! 糞女がァアアア!!」

 

 

憎悪の叫びを上げて走り出す響鬼。サニーは思考が擦り切れる程に考えるが、答えは出なかった。

 

 

 

 

 

 

「ハァアアアアアア!!」

 

 

一方普段ならば公園に訪れる人々が利用する散歩道。

しかし今は雄叫びが聞こえる。脇に流れる小川には不釣合いな激しい戦闘が繰り広げられていたからだ。

地面を蹴ったのはマーチ、髪を靡かせて彼女は左足を突き出した。風の勢いを受けて加速するキック、それはもはや槍だ。長く美しい脚がカブトの眼前に迫る。

手を前に出すカブト。マーチのその突き入れる足を受け止める。しかし凄まじい衝撃、さらにマーチは左足を引いて右脚を突き出す。

連続キック、風の力で空中に浮遊し、マーチは次々にカブトを蹴りで押し出していく。

 

 

「なるほど、良い蹴りだ」

 

「それはどうも!」

 

 

キッとカブトを睨み付けるマーチ。

 

 

「どうしてココまで貴方を強く蹴れるか分かる!?」

 

「知るか」

 

「怒ってるからだ!!」

 

 

両足でカブトの胴を蹴るマーチ。その衝撃で怯むカブトと、反動と風の力を利用してカブトの斜め上に飛翔するマーチ。

手にはスマイルパクトと取り出したキュアデコルが。本来キュアデコルは自由に使えるものではないが、なんとこの世界に来た瞬間、念じれば呼び出せるようになっていた。

その理由は分からないが、今はその特権を使わせてもらうしかないだろう。

 

 

「ハァアアア!!」『Let's Go HO・SI!』

 

 

風が吹きすさぶ。さらにマーチを中心にして星の形をした光のエネルギーが次々に出現していった。

マーチが手をカブトの方へかざすと、浮かんだ緑色の星達は一勢にカブトの方へ飛翔していった。

それは無数の流星、エネルギーの弾丸はショットガンの様に散開してカブトを狙う。

 

 

「クロックアップ」『Clock Up』

 

 

しかしカブトに一切の焦りは無い。ただ淡々とベルト横のスイッチをタッチした。

 

 

「!?」

 

 

カブトの体がジャミングの様にブレる。

するとどうだ、アレだけ飛来していた緑の流星が次々にカブトの身体をすり抜けていくではないか。

カブトの体が大きく揺らめき、そして星達は地面に着弾し爆発していく。

 

 

「どういう――ッ!」

 

 

そこでエンジン音。

マーチが視線を移すと爆発とは別の場所でカブトのバイク、カブトエクステンダーがマーチの方に向って走ってくるのが見えた。

驚くべきはそこにカブトが乗っていると言う事だ。

 

 

「なん――ッ!」

 

 

破裂音。エクステンダーの装甲がパージしてバイクが変形、それをマーチが確認した時だった。

彼女は気づけば地面に背中を打ち、空を見上げていた。

 

 

(え?)

 

 

そして痛み、衝撃、思わず声を上げる。

思考が状況を補足する前に再び全身に鈍い痛みが走った。

なんだ? どういう事だ? マーチが顔を上げようとすると肩に足が乗っているのが見えた。

見上げると、カブトがそこにいた。

 

 

「世界を敵に回してでも俺には守るべきものがある」『Clock Over』

 

「ッ!? ぅぁあッ!」

 

 

グッと足をねじる様にしてマーチの肩を踏みにじる。

思わず苦痛の声も漏れよう。マーチは歯を食いしばり、自分を見下げているカブトを睨んだ。

 

 

「命が惜しければ、今すぐここを立ち去るがいい」

 

「双護さん――ッ、そうはいかないね!」

 

「何?」

 

「アタシは、夏美に約束したんだ!!」

 

 

司を、我夢を、双護を元に戻すと。友と交わした約束は死んでも守る。

それがマーチのプライドだ。マーチが叫ぶと暴風が彼女を中心に発生、それはカブトの体をも浮き上がらせる程の風速であった。

マーチは素早く地面を転がり立ち上がると、風を手に収束させて思い切り振るう。

 

 

「どうして夏美を泣かせる! どうして友達を傷つけるのさ!」

 

 

マーチの手から鎌鼬が発生。風の斬撃は一瞬でカブトの眼前に迫った。

 

 

「言っただろ、守るためだ。俺達には達成するべき目的がある」

 

 

カブトはクナイガンを振るい鎌鼬をかき消す。

 

 

「それは、友達を泣かせてでもする事なの?」

 

「俺に友はいない。しいて言えば、司と我夢だけだ」

 

 

後は利用し、使用されるゼノンとフルーラ。

それ以外は全て敵だとカブトは言い捨てた。当然それは夏美もだ。

これはカブト、響鬼、ダブル、ディケイド、全員の共通する意思である。最早分かり合える道は断たれた。

夏美が涙を流し目の前で命乞いをしようが、過去の仲良し話をしようが関係ない。

 

 

「俺は、立ちはだかるかつての仲間達の眉間を撃ち抜いて、前に進む」

 

「どうしてッ! 理解できないよ! 一緒に話し合って、協力すればいいだろ!」

 

「協力? 馬鹿が。何故役立たず共と組まなければならない」

 

 

歯を食いしばるマーチ。洗脳の可能性を考え、彼女はカブトの――、双護の心に訴える道を選ぶ。

 

 

「双護さん、妹がいるんだろ?」

 

「ああ、いるな」

 

「今のアンタの姿を、胸を張って見せられるの!?」

 

「お前は一つ、勘違いをしている」『Clock Up』

 

 

刹那、カブトの姿が消えた。

カブトは、マーチの背後に立っていた。

 

 

「真由がココにいれば、俺は真由を殺す」

 

「な――ッ!」

 

 

反射だった。視界からカブトが消えて後ろから声がしたものだからマーチはほぼ反射的に回し蹴りを行った。

しかし脚は空を切る。何も捉えられないのは背後に誰もいないからだ。直後衝撃、マーチはそこで、自分が現在きりもみ状に吹き飛んでいる事を自覚する。

 

 

「きゃあ!」

 

 

地面に倒れた所で全身に痛みが走る。それは全身を何度も殴られたからだ。

そしてマーチの視界には赤い残像。気づけばマーチは打ち上げられてた。

気づけばマーチに全身に弾丸が打ち込まれていた。地に落ちるマーチ、痛みは本物だった。しかしそれが逆に脳を冷静にさせてくれる。

そうか、理解した。マーチは自分の周りに再び暴風のシールドを張る。すると止まるカブトの動き。そうか、そういう事か。

 

 

「高速移動――ッ!」

 

「ほう、成る程な。風で俺の動きを止めたか」

 

 

凄まじい風の勢いにカブトはマーチに近づく事ができない。

しかし対応はいくらでもできる。だからカブトは余裕だった、だからマーチの言葉を聞く事もできる。

それに興味があった。現在のマーチ、その眼光の鋭さは思わずカブトの興味を引くほどに怒っている気持ちが伝わってきたから。

 

 

「今、何て言った?」

 

 

真由、それはカブトの妹だと言う事が分かった。

じゃあ何か? カブトは今、家族を殺すと言ったのか?

 

 

「その通りだ。ココに真由がいれば、俺は必ずアイツを殺す」

 

 

カブトはさも当然の様に言い放つ。だから、マーチは拳を握り締めた。

 

 

「――る」

 

「あ?」

 

「絶対に――ッッ!!」

 

 

立ち上がったマーチの手には角ばったハート型のデコルがあった。マーチはそれを叩き込む様にスマイルパクトにセットする。

瞬間、爆発する様に緑色の風が吹いた。ティアラとイアリングが金色の派手な物に変わり、体は緑の光に包まれる。

ティアラモード、凄まじい風がマーチを取り巻き、その中で激しい眼光がカブトを貫いた。

 

 

「絶対に、双護さん、貴方を止める! アタシが絶対に正気に戻す!」

 

 

痛む肩や脇腹を押さえながらもマーチは痛みに屈する事無くカブトを睨む。呼吸を荒げてはいるが、心が死ぬ様子は無かった。

 

 

「正気? 俺は正気だが」

 

「違う。絶対に違うね!」

 

「何?」

 

 

本人が正気だと言っているのに違うとはおかしな話だ。しかしそれでもマーチは今のカブトが普通では無いと決め付ける。

それはそうだ、家族を殺す等と、絶対にありえてはならない話。それを口にするカブトは正常じゃない。

そうだ、異常だ、もしも本当にカブトが本心でそれを口にしているのなら――

 

 

「アタシは認めない! アンタを倒す!!」

 

「ガキが。子供は嫌いだ」

 

「アンタも子供だろ! 家族を殺してでも叶える目的に、価値なんて無い!!」

 

 

マーチは両手を前に突き出す。同じくしてカブトは三度目のクロックアップを発動した。

制限は無いが、一度使用する毎に当然体には負担が掛かる。故に、カブトは終わらせるつもりだった。

スローに変わる世界、マーチの喉をクナイガンで掻っ切ろうと走り――

 

 

「!!」

 

 

そこで気づく。

 

 

「やられた……!」『Clock Over』

 

 

クロックアップを解除したカブト。当然それは理由があっての事だ。

動く必要が無い、正確には素早く動く意味が無いと理解したからだった。

マーチが行った事は凄まじい風を収束したフィールドを作り出す事だったのだ。その範囲内に入っていたカブトの体は宙に浮き上がってしまう。

つまり地に足がついていないと言う事だ。クロックアップには様々な弱点があるが、その一つ、そもそも動けなければ高速で移動できないと言う点を突かれた。

 

 

「ハァアア!!」

 

「チッ!」

 

 

嵐で構成された緑の球体に閉じ込められるカブト。

マーチはその中にいるカブトに飛び蹴りを仕掛けていく。叩き込まれる緑の一閃、カブトの体がきりもみ状に回転するが緑の球体から吹き飛ぶことは無い。

宙に浮き上がったカブトは風の力で抑えられ、浮遊したままマーチの乱舞を受ける事に。

が、しかし、三発程蹴りを受けた時だ。カブトはゼクターの角を触る。

 

 

「プットオン」『Put On』

 

 

どこからともなく風のフィールドを切り裂いて飛来してくる装甲の破片達。

周囲から猛スピードで迫る塊にマーチはハッと表情を変え、なんとか体を捻り、地面に倒れる事で回避を行う。

おかげで装甲群にぶつかる事は無かったが、集中が切れた事と、装甲を纏う事で重量が増えたカブトはその足を再び地面につける事に成功した。

 

 

「ハァ、ハァ!」

 

 

そもそも風のフィールド形成はマーチとしても疲労が募る。

そしてマスクドフォームの前では効果を成さない。であるならばマーチとしては選択肢は一つだった。彼女はニヤリと笑い、再び暴風を発生させる。

 

 

「もう面倒な事を考えるのは止めたッ!」

 

 

マーチはビシッとカブトを指差す。風はより精錬されていき、緑のエネルギーとなってマーチの足に纏わりつく。

 

 

「アタシはいつも、いつでも直球勝負だ!」

 

「キャストオフ!」『Cast Off』

 

 

カブトもマーチの雰囲気を察したか、装甲を地面に落としてライダーフォームへ変わる。

走り出すマーチ、カブトもまた一歩足を前に踏み出す。近づく両者の距離、マーチは地面を蹴って跳躍、体を旋回させて高速回転を行う。

 

 

「カブト! アタシは勝つ!! マーチシュートッッ!!」

 

「消え失せろ」『ONE』『TWO』『THREE』

 

 

それは緑の竜巻。翠のトルネード。

残像を残しつつ激しく回転するマーチの周りに風が収束していく。

唸る乱気流、回転数は尚も上がっていく。一方でゆっくりと歩きながら淡々とボタンを押していくカブト、相変わらず焦りは無い。

しかれどもその身に宿る思いは尚膨れ上がっていく。それはある意味、マーチの想いに応える様にして。

 

 

「インッパクットォオオ!!」

 

「ライダーキック!!」『RIDER KICK』

 

 

緑色に輝くマーチの右脚と、光を纏って振るわれたカブトの右脚。

同時に繰り出した回し蹴り、それは互いにぶつかり合うと、見事なクロスを作ってみせた。

 

 

「ハァアアアアアアアアアアア!!」

 

「ォオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

エネルギーを集中させて放つ回し蹴り、ライダーキック。

風の力を集中させて放つ回し蹴り、マーチシュートインパクト。

衝撃が、風が、大地を抉り地形を変えていく。双方脚が震え、ミシミシと骨が軋む音が耳を刺す。

しかしカブトもマーチも力は緩めない。相手の足が砕けようが、自分の足が砕けようが、ただひたむきに勝利を見る。

空気が、風が震える。競り合う時間は永遠かとも思われたが、勝敗は無慈悲にも訪れる。

 

 

「ぐッ!!」

 

「きゃあ!!」

 

 

カブトが吹き飛ぶ。マーチが吹き飛ぶ。

溢れるエネルギーが衝撃波の爆発を生み出し、双方は吹き飛ばされて地面を転がった。

その中で唯一異なる点と言えばカブトの変身が解除され、地面を滑る中でカブトは双護になった。

勢いを味方に体勢を立て直すマーチ。どうやら勝利は彼女の手に。

 

 

「どうだ、見たか! これが――」

 

 

メキッと、音がした。

 

 

「カハ――ッ」

 

 

視界が一瞬真っ白になった。

脇腹に突き刺さった衝撃、マーチの肺から空気が一気に放出される。

なんだ? マーチが視線を移すと、そこには赤いカブトムシが見えた。

何だコレ。そう思う中、マーチは膝を折って地面にへたり込んだ。一方でカブトムシはマーチの脇腹につきたてた角を抜くと、飛翔する。

どこに? 決まっている。マーチの前、そこに立ち上がった双護の下にだ。

 

 

「ま、まさか……」

 

『悪いなお嬢ちゃん。コイツはこう言う奴なのさ』

 

 

軽い調子でカブトムシがひょうひょうと言い放つ。

そう、立ち上がった双護の表情には余裕があった。

つまり双護は負けてなどいない、地面を転がる中であえて変身を解除したのだ。そしてカブトゼクターを飛ばして油断しているマーチに奇襲を仕掛けた。

 

 

「変身」『HENSHIN』

 

 

カブトは戻ってきたカブトゼクターを手にすると再び変身を。

そしてキャストオフを使用、装甲の破片をへたり込んでいるマーチにぶつけていく。

 

 

「きゃああ!!」

 

 

固い衝撃に吹き飛ばされるマーチ。その中、カブトは歩きながら人差し指で天を指し示す。

 

 

「頂点は常に一人!」

 

「ッッ!」

 

「クロックアップ!」『Clock Up』

 

「きゃああああああ!!」

 

 

浮き上がる程の連撃を受けるマーチ。激しい痛みと衝撃が全身を駆ける。

殴られ、着られ、撃たれ、ありとあらゆる痛みがしばらく続いた後、マーチは地面に叩きつけられた。

一方カブトは近くにあった木の枝の上に座っていた。片足を曲げ、片足を伸ばし、やる気無く呻き声を上げて苦しむマーチを見下す。

 

 

「もう終わりか? キュアマーチ」『Clock Over』

 

「うッ! ぐッッ!!」

 

「諦めろ、お前では俺には追いつけない。俺の目にはお前の背中は映らない」

 

 

しかし、その言葉がマーチのハートに火をつける。

 

 

「それは、どうかな――ッッ!!」

 

 

思い切り地面を殴りつけたマーチ、彼女の光が尚輝きを増し、風はさらに勢いを増してマーチの周りに収束していく。

再び嵐が巻き起こり、カブトが座っていた木にあった葉は全て巻き上げられて辺りに散っていく。

何か大きな技が来る、カブトは相変わらず気だるそうに座っていたが、手はクロックアップを発動できる様に構えていた。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオ!!」

 

「!」

 

 

マーチの叫びと共に風が、嵐が、翠が、マーチが一気に天に巻き上がる。

なんだ? 攻撃かと一瞬カブトは注意を働かせるが、マーチは文字通り天に上がるだけで蹴りや何かを仕掛ける素振りは無い。

 

 

「そこだ!!」

 

 

マーチは手を前に。すると風の力が一気に解き放たれた。

しかしそれがカブトに向うのであればまだしも、風のエネルギーはカブトの頭上を越えて遥か遠くに飛んでいく。

外した? マーチは翠の輝きを失い、ティアラモードが解除されて地面に墜落する。どうやら力のほとんどを使い果たした様だ。

立ち上がるのも難しいのか、地面に叩きつけられた後は地面に倒れ、カブトを見上げる形に。

 

 

「理解に苦しむな。なんの意味も無い行動だ」

 

「――ッ、アタシはいつも直球勝負さ」

 

 

カブトは首を振って木から飛び降りる。そしてクナイガンを構え歩き出した。

目を細めるマーチ。凄まじい殺気を感じて表情を曇らせる。しかしそれ以上にカブトが哀れで仕方なかった。

 

 

「友達、家族、アタシの一番大切なものさ」

 

「下らん、俺にとってはもはや不要の存在だ」

 

「本当? アタシは皆と要ると笑顔になれる。双護さんはどうなのさ?」

 

 

その仮面の裏は、本当に笑っているのか? マーチの言葉にカブトは一瞬足を止めた。

 

 

「聞かせてよ。貴方がやろうとしてる事、その先に笑顔はあるの?」

 

「笑顔だと?」

 

「そう、最高のスマイル……! 世界の希望だよ」

 

 

少し沈黙が流れた。一瞬視線を逸らし、直後再びマーチを見下すカブト。

全てが終わった後、本当にカブトは満足できるのか? マーチにはそれが分からない。友を、家族を切り捨て、何が残る? 何に満足できる?

 

 

「マーチ、お前は理解していない。コレは戦いであり、俺達の戦争だ」

 

 

志を持ち、それを成し遂げる為には笑顔もいらない。

全てが終わった時、あるのはただ一つ、結果と解放だけだ。憎悪を背負い、力を背負い、それが解き放たれる為に戦う。

カブト達は破壊の為に戦っている。笑顔も、希望も、全ては無になる。だから何もいらない。何も残らない。それで良い、それが良い。

 

 

「俺達は、それを望んだ」

 

「だから、どうして!? 理由くらい教えてくれてもいいじゃないか!」

 

「理由もまたゼロになる」

 

 

分からなくてもいい、先ほどの通り、カブト達は一切の理解を求めてはいない。

誰に何を言われようが目指した世界、目指した破壊のために戦う。それが今カブトがココにたっている理由であり、仲間達を裏切った証明だ。

そして今カブトは倒れるマーチを見下している。コレはどう言う事か? 決まっている、カブトが勝ったと言う事だ。マーチは夏美達、友との約束を守る為に戦った。そしてカブトは己のために戦った。その結果がコレだ、それを理解しろとカブトは語る。

 

 

「俺とお前では、背負う物の重さが違う」

 

「――ッ、分からず屋!」

 

「そろそろ黙れ。お前、目障りだ」

 

 

クナイガンの銃口をマーチの眉間に合わせるカブト。

駄目か? マーチは歯を食いしばって覚悟を決める。そしてカブトが引き金を引くために指を掛けた時――、そう、まさにその時だった。

 

 

「「!!」」

 

 

紅い閃光が迸ったのは。

 

 

「おんどりゃああああああああ!!」

 

「何ッ! ぐッッ!!」

 

 

カブトのマーチの間に光が走ったかと思うと、直後次々に爆発が巻き起こる。

思わず後退していくカブト、そして最大級の爆発が起きたとき、爆炎を振り払う様に一人の少女が姿を見せた。

 

 

「ッ、お前は!!」

 

「ウチの親友に何してくれてんねん。吹っ飛ばしたろか――ッ!」

 

「サニー!!」

 

 

パッと輝くマーチの表情。

それはそうだ、カブトからマーチを守るようにして立ちはだかったのは響鬼と戦っていた筈のキュアサニーだったのだから。息を呑むカブト、どう言う事だ?

 

 

「まさか――ッ、お前、我夢に勝ったのか!」

 

「ま、確かに滅茶苦茶強かったで」

 

 

しかし、と、ニカッとサニーは笑みを浮かべた。

 

 

「コレがウチらの強さや!」

 

「ッ!!」

 

 

サニーが言った『コレ』が何を指しているのか、すぐに理解できた、カブトの脳に電流が走る。

そう、時間を巻き戻そう。視点は響鬼と対峙していたサニーに移る。響鬼紅の回復、サニーにとってはある意味詰みとも思われる状況、しかしサニーは怯まなかった。

 

 

「ウチは、アンタの力を超えてやる。アンタの力を否定せなアカン!」

 

 

友を殺す為に振るわれる力等。それで強くなったとほざく力など、絶対に否定しなければならなかった。

しかし鼻を鳴らす響鬼。言葉は達者だ、言うだけなら誰にでもできる。

 

 

「ですが悲しい事に、世界は力によって左右される」

 

 

ご立派な志では何も変えられない。何も変わらない。世界を動かすのは、世界を変えるのは全て力だ。

ゆるぎない意思を左手に、絶対な力を右手に、それらが揃ったとき初めて目の前に勝利のビジョンが見える。

 

 

「お前に理解できるか? お前に視えるか? 僕を倒せるだけの可能性!」

 

「ぐッ!」

 

「だからさぁ、格好つけてんじゃねぇよ! 糞女がァアアア!!」

 

 

憎悪の叫びを上げて走り出す響鬼。サニーは思考が擦り切れる程に考えるが、答えは出なかった。

しかし、まさにその時だった。サニーの視界にある物が映った。そう、翠の風、そのエネルギーが。だから彼女はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「マーチ、ホンマ最高やで!」

 

「あぁ!?」

 

「ウチの親友は、最高っちゅう話や!!」

 

 

飛び上がったサニーは、その全身で風のエネルギーを受け止めた。

そう、飛び上がったマーチは周囲を確認、サニーを見つけるとそこに自身のエネルギーを送ったのだ。

嵐に包まれたサニーは勝利の笑みを浮かべて響鬼を睨んだ。全身が発火、朱と翠が混じりあい、炎と風のエネルギーが互いの力を増幅させていく。

 

 

「我夢、アンタを倒す方法が一つだけあんで!」

 

「何ッ!」

 

「アンタがすぐ回復するんなら――」

 

 

激しく回転するサニー。すると比例する様にエネルギーは増幅していき、サニーの右手に集中していく。

そして体を伸ばし、サニーは思い切り右手を前に突き出した。拳の先、そこに嵐を纏った巨大な炎の塊が。

響鬼紅は受けたダメージをすぐ回復する。しかしそれはイコールで無敵と言う事ではない。ダメージを無効化する訳でもないのだ。つまり、その点は穴でもあった。

ダメージがすぐ回復するなら――

 

 

「その前に、どデカイ一発ぶち込んだるッッ!!」

 

「グッ! 馬鹿な!!」

 

 

炎を吐く響鬼。

真紅の業火がサニーの止めようと。しかしサニーはその炎さえも吸収し、自分の力に変えて加速する。

マズイ! 響鬼は本能で危険を察知すると、サニーに背を向けて、逃げるため走り出す。

ココで左右に逃げず後方に走るのは響鬼も幾ばくかの焦りを抱いている確かな証拠であった。そして加速するサニーは、ついに響鬼の背を捉える。最大級の火力を纏った渾身の一撃が!

 

 

「ファイヤーシュート!!」

 

「ぐがぁぁああぁああ!!」

 

 

一瞬、全ての時間が止まった。直後世界を揺るがす程の衝撃が響鬼に走る。

海老反りになった彼はロケットの様なスピードで吹き飛び、地面を数回バウンドしながら直後大爆発を起こした。

それは響鬼紅の鎧を打ち砕く衝撃、宙に舞う響鬼は超過ダメージにより変身が解除、我夢になりて地に落ちる。

 

 

「がァあッ! ば、馬鹿な! この僕がこんな――ッ! 負けッッ! ガハッ!」

 

 

吐血する我夢。

信じられないと言った表情でサニーを睨んだ。彼としては信じられない話であろう。

突如サニーの力が膨れ上がったのだから。その実、マーチの力を借りたサニー、それが彼女達のスタイルである。

 

 

「我夢、ウチ等の武器は友情、努力、勝利やで」

 

「ガァァ! テメェエエ!!」

 

 

地面を殴りつける我夢。痛みと衝撃が強すぎて立ち上がれる気がしない。

一方で天使デコルを使用するサニー。オレンジ色の翼が生え、彼女は地面を蹴った。

サニーは分かっている、マーチが力を送ったのはソレ相応の理由があるからだと。

 

 

「分かるやろ、我夢。アンタなら分かる筈や」

 

「クッ!」

 

「ウチ等もアンタも、戦う理由は同じ筈やろ。なのになんでアンタは――」

 

「黙れぇえッ! 僕は壊す、この世界をぶち壊す!! お前達に邪魔はさせない!!」

 

 

我夢は何かに取り付かれたように叫んでいた。その鬼気迫る表情は確かに凄まじい。それは認めよう。

しかし、だからと言ってサニーには理解できなかった。納得も出来なかった。人を傷つける信念など、醜いだけだ。

 

 

「我夢。アンタ今、目ぇ濁ってんで」

 

「!!」

 

 

飛翔するサニー。我夢は悔しげに表情を歪めると再び地面を殴りつけた。

そして時間、場面は戻る。何が起こったのかは分からないが察したカブト、サニーも言うて疲労とダメージが残っている状態。

このまま戦っても良いがカブトも余裕とはいかない状況。指を鳴らし、彼はカブトエクステンダーを呼んだ。そこに飛び乗り、カブトはエンジンを鳴らす。

 

 

「待て! どこ行くねん!」

 

「命拾いしたな」

 

 

エンジン音を轟かせてカブトはサニー達から走り去る。

てっきり戦闘を行う物だと思っていたから、サニーは拍子抜けだと鼻を鳴らした。

だが助かったのは事実か、サニーは倒れているマーチを抱きかかえ、腕を肩に回して支える。

 

 

「ありがとう、助かったよ。来てくれるって信じてたよサニー」

 

「当然や。友達やからな。それに助かったのはウチも同じや」

 

 

照れた様に笑う二人。

事実、マーチが風の力を送ってくれなければサニーは響鬼には勝てなかっただろう。

マーチとしてもあのまま戦っていればカブトに負けると分かっていたからこそ、せめてもの希望にと力をサニーに与えたのだ。

 

 

「強かったね、双護さん達」

 

「せやな。仮面ライダー、か……」

 

 

さて、こうしてはいられない。まだ戦いは終わっていないのだから。

ディケイドと戦っていたハッピーを助ける為、二人は早速足を踏み出した。

しかしマーチには一つ気になる事が。それは先ほど空に舞い上がったとき、見つけたのはサニーだけなのだ。自分達が戦いを開始した広場には誰もいなかった。

 

 

「無事でいて――ッ、ハッピー!」

 

「ハッピーなら大丈夫や。ほら、行くで」

 

 

とは言えサニーとしても不安であった。

我夢、双護、そして最も殺気が凄まじい司。あきらかに普通ではなかった。

今まで戦ってきた敵の中でも三人は異質だ。なるほど、我夢たちの言う通り殺意の中に確かな決意があった。

それは紛れも無く、正しき心が生んだ様な、希望の光があったのだ。

 

 

そんな希望をも、この男は壊そうとしているのだが。

 

 

「ハァア!」

 

「うッ!」

 

 

横に振り払われたライドブッカーをハッピーは地面を転がる事で回避してみせる。

しかしディケイドは彼女を逃がさない。次いで突きを繰り出しハッピーを刺し貫こうと足を進める。

ハッピーもまた立ち上がると後退していき突きを回避していった。公園の広場、ハッピーは後ろに木がある事を確認すると一旦バックステップ、そして木の幹を蹴って三角飛びで勢いを乗せてパンチを繰り出す。

 

 

「フンッ!」

 

 

勢いのある拳をディケイドはライドブッカーの柄頭で弾くと、後退しながらの回し蹴りでハッピーを牽制する。

一方でハッピーも回避を行いながら拳や蹴りを繰り出した。しばらくはパンチや剣の応酬が続き、当たるか当たらないかのラインを二人は歩く。

そして隙を捉えたハッピーのストレートパンチ。しかしディケイドは体を旋回させて腕を絡め取ると、ハッピーの腕を引き自分の下へ引き寄せる。

これが恋人同士ならばこのまま抱き締めようものだがディケイドは違う。ハッピーの肩に柄頭を叩き落し、強制的に膝を付かせる。

 

 

「うァ!」

 

「死ねッ!」

 

 

斜めに振り下ろす剣、ハッピーは反射的にその剣を掴み、止めて見せた。

しかしその時ライドブッカーからカードが排出、ディケイドはそれを掴み取ると素早くバックルを開いてカードを放り投げる。

 

 

『アタックライド』『スラッシュ!』

 

 

ディケイドの剣がマゼンダの光を放った。

するとハッピーに強烈な違和感が襲い掛かる。何故ならば両手にはいまだ剣の感触がある。

しかし目の前にいるディケイドは既に剣を持ち直し、別方向から攻撃を仕掛けようと剣を振りかざしていたのだ。

なんだ? では今自分が持っているのは? ハッピーが横を見るとそこにはスラッシュの効果で創造された刃の幻影が。

 

 

「オラァア!」

 

「キャア!!」

 

 

真横に振るわれた刃がハッピーの肩から横一線を傷つける。

防御力のおかげで衣服に傷は付いていないが、それでも感じたのは切り裂かれる痛みだ。

さらにディケイドは動きが止まったハッピーの鳩尾を容赦なく蹴り、そのまま足に力を込めてハッピーを押し倒した。

 

 

「ぶっ壊れろ!」

 

「!」

 

 

足裏で鳩尾を押さえたままディケイドは剣を思い切り振り上げる。

両手で柄を持ち、剣先を真下にしてハッピーの脳を刺し貫こうと力を込めた。

苦悶の表情を浮べるハッピー、このままでは危険だ。彼女は一瞬の考察の上、答えを導き出す。

体はディケイドに押さえつけられて自由が利かない。しかし動かせる部分は多い、ハッピーはその一つ、右手を前に突き出した。

 

 

「ぐッ!!」

 

 

光を操るハッピーは強力なフラッシュを発動。

ディケイドの目を眩ませ一瞬動きを止めた。その間に左手を突き出し掌から光弾を発射、計三発の光の弾丸はディケイドの顎や肩に命中しハッピーから距離を離す事に。

その間に立ち上がるハッピー、しかし彼女もまた小さな悲鳴を上げた。どうやら怯みながらもディケイドはライドブッカーを銃に変えており、ハッピーの肩や脚を撃った様だ。

双方がよろける中、先にアクションをとったのはディケイドだった。膝を付きながらもバックルを開き、カードを装填する。

 

 

『アタックライド』『マシンディケイダー!』

 

「ッ! うぁッ!!」

 

 

ハッピーの背後に灰色のオーロラが出現、そこからエンジン音を上げてマシンディケイダーが飛び出してきた。

突然の奇襲に反応が遅れたハッピー、なんとか体を旋回させて回避はするものの身体にマシンが掠り、その衝撃できりもみ状に回転した後その場に倒れた。

一方地面を蹴って飛び上がるディケイド。マシンディケイダーに乗り込むと、ターンを決めて走り出した。ハッピーから遠ざかるように。

 

 

「ど、どこ行くの!?」

 

「お前に構ってる時間が惜しい! 俺の狙いはミークだ」

 

「え!?」

 

「殺しに行くんだよ、アイツをな!」

 

 

広場から退散するディケイド。唖然とするハッピーだが、すぐに事態を理解して声を荒げた。

 

 

「だ、駄目ッ! 待って!」

 

「嫌だね!!」

 

 

バイクを走らせハッピーを置いていくディケイド。

しかしはいそうですかと終われる訳が無い。ハッピーはキュアデコル、天使デコルを呼び出すと素早く発動、光の翼を広げてマシンディケイダーを追った。

 

 

「ゼノン! 夏美の場所を教えろ!」

 

 

公園の中を悪路関係なく走っていくディケイド。

木や草、邪魔な物はライドブッカーで切り払い、夏美達を目指す。ケータッチでゼノンに連絡を取り、情報を求めた。

 

 

『メモリガジェットが発見したよ。情報をマシンディケイダーに転送する。自動操縦になるけど、ある程度の操縦は任せたよ』

 

「分かった」

 

『ところで、後ろのヤツは?』

 

「――、ああ。スマイルプリキュアってヤツらしいぞ」

 

 

背後を振り返るディケイド。

マシンディケイダーのスピードについてこられるとは、なかなかキュアデコルと言うのも馬鹿には出来ないと唸る。

 

 

『最近変なのが多いね。ま、頑張ってくださいよ。ディケイド様』

 

 

ケータッチの通話が切れた。

ディケイドはバックルを開くと、背後に銃を向けながらカードを発動する。

 

 

『アタックライド』『ブラスト!!』

 

 

マゼンダの銃弾の群れが一勢にハッピーを撃ち落そうと飛来していく。

縦横無尽に飛び回る光弾ではあるが、ハッピーもまた二本の指を伸ばすとそこから光の鞭を形成。

両手に作った光の線を思い切り振り回して銃弾をかき消していく。

 

 

「面倒なヤツだ」『カメンライド』『カブト!』

 

 

光が迸りディケイドの姿はカブトに。

さらにマシンディケイダーはカブトエクステンダーに変身する。

カブトとくれば発動するカードは一つしか無いだろう。そう、クロックアップ、超高速の世界に足を踏み入れたディケイドはハッピーに一瞥もくれる事無く走り去った。

 

 

「あ……!」

 

 

一蹴で消え去るディケイド。ハッピーの心に大きな焦りが生まれる。

しかし彼女はすぐにハッと表情を変える。ある意味火事場の馬鹿力と言うのか、どうすればいいのか、その答えがすぐに脳裏に過ぎる。

ハッピーは、正確に言えばみゆきはミークの屋敷で風呂を借りていた。その時の湯がカモミールの良い匂いだった。当然それは夏美も入っている訳で。

 

 

「お願い犬デコル!」『Let's Go I・NU!』

 

 

ポン! とファンシーな音がして、ハッピーの身体が犬のコスプレに変わる。

随分とまあ間抜けな姿だが今はそんな事を言ってはいられない。犬デコルで強化されるのは嗅覚、ハッピーは夏美の身体から発生されるカモミールの香りを辿り、空を猛スピードで駆けた。

一方クロックアップを発動したディケイド。当然、夏美の所にたどり着くのは文字通り一瞬であった。

ブレーキ痕が石畳に刻まれ、僅かに抉れた地面からは摩擦熱から煙が上がる。テトラとミークの手を引く夏美は、目の前に現れたディケイドを絶望に染まった目で見ている。

 

 

「司くん……!」

 

「みーつけた」

 

 

幼い時沢山遊んだ、かくれんぼ。

しかし今はドッと冷たい声でディケイドは言い放ち、ディケイドカブトからディケイドに変身を解除する。

地面を擦るライドブッカーの剣先、ディケイドはゆっくりと恐怖を植えつける様に夏美達に近づいていく。

ココは街中、ザワザワと周りの人間は異質な姿のディケイドに奇異の視線を送る。

それが目障りだったか、ディケイドはライドブッカーを乱射、店頭に並べてあった植木鉢や果物がはじけ飛び、町の中には悲鳴が起こる。

 

 

「な、何を――ッ! 止めて司!!」

 

 

ミークは領主、街の人間が傷つくのは耐えられない。

グッと前に出てディケイドを止め様とする。一方で鼻を鳴らすディケイド、攻撃は中断したが、相変わらず殺意を込めた眼差しでミークを見ていた。

 

 

「どうして、私なの……ッ!」

 

 

ディケイドはミークを殺すといった。

それはつまり今までの様に邪魔な者を無差別に殺すのではなく、ミークでなければならないと言う事だ。

しかしディケイドは語らない、ただ剣を持ち、構え、歩く。

だから夏美はミークを庇う様に割り入った。手にはキバーラが。

 

 

「司くん、お願い、止まって……! 止まってよ――ッ!」

 

「黙れ。なんだ? 戦うのか? 俺と」

 

「ミークちゃんは私の友達だから――ッ! だから!!」

 

「だからなんだ? 勘違いするなよ夏美、ミークが死ねば次はお前だ」

 

「!」

 

 

瞬間、やはり夏美の脳裏に強く焼きついた死の記憶が揺り動かされる。

思わずその場に跪いて嗚咽を漏らす。駄目だ、戦えない、死の恐怖が夏美の心を蝕んでいく。

咲夜達の笑顔がフラッシュバックし、直後その笑顔が血に染まる。

 

 

「ちょっと待ってェエエエエエエエエッッ!!」

 

「!!」

 

 

だが空中から叫び声。夏美達が上空に顔を向けると、鬼気迫る表情で墜落してくるハッピーが見えた。

僅かな会話が足止めになってくれたらしい、ハッピーは急いできたのだろう。凄まじい程の汗と呼吸を荒げ、地面に直撃するとすぐに体勢を立て直してディケイドを見た。

 

 

「まに――ッ! あった! ゼェ! ゼェッ!」

 

「クソが! どこまでも邪魔なヤツだ!!」

 

「隠れてて皆! 今、司さんを元に戻すから!!」

 

 

濁点交じりに叫ぶハッピー。ミークは反射的に頷くとへたり込む夏美を支えて建物の陰に隠れる事に。

視線の先では剣を掴んだハッピーが、組み合い、三度激しく睨み合う。正直ハッピーが追いついてくるとは思わなかった。

期待以上の力を持っているらしいが、今は邪魔以外の何者でも無い。

 

 

「邪魔するよ! 友達を殺そうなんて、絶対にしちゃいけない!!」

 

 

話して。ハッピーはディケイドに懇願する。

洗脳されていないのなら何故変わった? 頼む、頼むから話して欲しい。全てをありのまま、どんな事があっても話して欲しい。

きっと夏美はそれを受け入れる筈なのに。

 

 

「どんな時でも助け合うのが友達でしょ!?」

 

「何――ッ?」

 

「夏美ちゃんは信じてる! たとえ変わっちゃっても、友情は変わらないって!」

 

「黙れ!」

 

「黙らない!! 司さんの為にできる事を必死に探してる! 司さんを助ける方法を必死に探してる! だって夏美ちゃんにとって、貴方は大切な人だから!!」

 

 

ハッピーの願いはただ一つだ。彼女も夏美の友達であると思っている。だからこの言葉だけは伝えたい。

 

 

「友達を、悲しませないでッッ! 絶対に泣かせないで!!」

 

「うるせぇえッ! 少し黙ってろ!!」

 

 

ライドブッカーから手を離しハッピーの腹部を思い切り蹴り飛ばすディケイド。

ライドブッカーを掴んだままディケイドから離れていくハッピーだが、ライドブッカーからはカードが射出、ディケイドの手に収まり、発動を許す。

 

 

「変身!」『カメンライド』『ファイズ!』

 

 

フォトンブラッドが全身を駆け、ディケイドの姿はファイズに変わる。

手にはもう一枚のカードが。アタックライド、オートバジン。

マシンディケイダーが機械の戦士に変わり、バジンはブースターで空に舞い上がる。

 

 

「うぁあッ!!」

 

 

ガトリングガンが容赦なくハッピーに降りかかった。

排出された薬莢が地面に落ちる音が響き、ディケイドはその中を走る。

地に落ちたライドブッカーを蹴り上げると手でキャッチし、その勢いでハッピーに切りかかった。

 

 

「ウッ!」

 

 

ハッピーは銃弾の中でも何とか腕をクロスして剣を止める。

しかし乗り出すように踏み出されたディケイドのキックがガードを崩し、がら空きになった胴体へ再びライドブッカーが。

 

 

「きゃあ!」

 

 

痛みに怯み後退するハッピー、しかしそこで衝撃、振り返るとそこには着地していたバジンが。

挟み撃ち、バジンはハッピーの腕を掴んで羽交い絞めにすると動きを封じる。

一応抵抗はしてみるがバジンの力は強く、ハッピーでは振りほどくのが難しい。そうこうしている間に距離を詰めてくるディケイド、まずは斜めに切りかかる。

 

 

「いッ!」

 

「ハァッ! オッラアア!!」

 

「くぁ! きゃあッッ!」

 

 

振り払った後は柄頭でハッピーの頬を殴り、そのまま突きでハッピーの腹部を刺す。

バジンに動きを止めてもらい本人は我武者羅にハッピーを刻む。とてもじゃないがヒーローの戦い方とは思えない。それを見る夏美の中で、司との大切な思い出が汚されていく。

嫌だ、もう止めて、気づけば夏美の瞳からはボロボロと涙が零れていた。そして傷つくハッピーを見ても助けに行けない自分に腹が立つ。

 

 

「止めて――ッ! 司さん、もう、傷つけないで……!」

 

 

ハッピーは苦悶の表情を浮べながらも説いた。それは自分の事ではなく、夏美の事だ。

ディケイドはそれを呼吸を荒げて聞いていた。どうやら彼もまた鬼気迫る勢いがあるらしい。

 

 

「黙れ!!」

 

 

そして叫ぶ。同時に、激しい轟音が重なった。

 

 

「!」

 

 

黒煙が見える。衝撃は振動になって一同の体に伝わってきた。

何が起こったのか、ハッピーは一瞬ディケイドが何かをしたのかと思ったのだが、どうやらディケイドも同じ事を思っていたらしい。

ハッピーが何かをしたのか? いや、そうではない。では一体――?

そして先に答えに至ったのはディケイドの方だった。

 

 

「……成る程、始まったか」

 

「え?」

 

 

始まった。その言葉を象徴する様に一同の耳に悲鳴が聞こえてきた。

思考が鈍る。何か良くない事が起こっている事だけは分かるが、嫌な緊張感が邪魔をしてまともに何かを考える事ができない。

そうしている内に、よく見知った人物が知らない姿でやって来た。

 

 

「み、ミーク様!!」

 

「ッ! 爺や!!」

 

 

ミークの屋敷が近かった事もあってか、血相を変えた執事長の爺やが走ってきた。

しかし息を呑むミーク。無理も無い、今の爺やは見るも無残な姿に変わっていたからだ。

皮膚は焼けただれ、体には紅い棘の様な物が突き刺さっている。一番衝撃だったのは右腕がなかった。

そこまでになりながら爺やが走ったのは、ひとえに忠誠を誓ったミークの為なのか。

 

 

「爺や!!」

 

「お、お逃げください! ここは、この緑の国はもう――ッッ!!」

 

 

ボコンッ! と音がしたかと思えば地面から手が伸びてきて爺やの足を掴む。

直後衝撃、地面から飛び出してきたのは紅い針を纏った体に黒い顔、そして赤い目を持つアリの怪人であった。

トゲアリ獣人。その腰には金色の大鷲が刻まれたベルトがあった。大ショッカーの魔の手は確実にこの緑の国を侵食していっているのだ。

 

 

「た、助けてくれぇええええええ!!」

 

「ヒャハハハハハハハハ!!」

 

 

主君を前に情け無い声を上げる爺や。トゲアリ獣人の鳴き声は男の笑い声に酷似していた。

鳴き声を上げ、トゲアリ獣人はその牙を爺やの首に思い切り突き立てる。肉を断つ音、そして噴水の様に血液が首から噴き出ていく。

 

 

「み、ミィイク様ぁあ! 痛ぇえあぁあぁあッッ!!」

 

「爺やッッ!!」

 

 

片腕を伸ばし助けを求める爺や。

当然ミークは涙を浮べながら彼を助けようと走り出す。しかしすぐに夏美がその手を引いて制止させた。

 

 

「離して夏美!!」

 

「だ、駄目ですミークちゃん!」

 

 

ミークは一般人、このまま怪人の所へ向わせる等絶対にできない。

本当は夏美が変身して助けに向かえばいいのだが、今の夏美にはその選択肢を思いつくだけの力と意思がなかった。

とにかくミークとテトラの無事だけが脳にあったのだ。そうしているとトゲアリ獣人は食事を進めていく。

 

 

「ギハハハハハ!! ヒヒヒヒハハッハア!!」

 

「ひぃぃぃいぃッッ!! 血が溢れッ! 死ぬぅウッ! ぎゃあぁぁああぁ!!」

 

「止めてッッ! お願い止めてぇえッッ!!」

 

 

牙が進む。叫ぶハッピー、頼むから離してくれとバジンに、ディケイドに懇願する。

 

 

「ミークちゃんの大切な人が死んじゃう! お願い離してっっ! 助けに行けない!!」

 

「………」

 

 

その答えはあまりにも淡々と。

 

 

「俺には関係ない」

 

「え……」

 

 

ディケイドの背後で爺やの悲鳴が聞こえる。

しかしディケイドは振り返らなかった。本来真っ先に倒すべき大ショッカーの怪人が後ろにいるのに、ディケイドの視線はハッピーに向いたままだった。

 

 

「本気で言ってるの……?」

 

「ああ。何人死のうが、同じ事だ」

 

「ッ」

 

 

悔しげに歯を食いしばり、思わずハッピーの目からは涙の雫が一筋零れた。

なんて、冷たい。なんて悲しい。

 

 

「―――」

 

 

ブチリと音がした。

あまりにも牙が食い込むものだから、あまりにもトゲアリ獣人の顎の力が強い者だから爺やの首が耐えられなかった。

骨ごと切断される首。ああ、可哀想に。爺やは今まで真面目に生きてきた。ミークを可愛がり、時に叱り、それは全て愛のためだ。

他の人間は爺やの事を立派な執事だと褒め称えた。そんな彼の最期がコレとは、あまりにも虚しい。

 

 

「嫌ァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

引きつり、叫ぶ、ミーク。目を見開いているのは目の前の光景を否定する為だ。

しかし現実は現実。トゲアリ獣人は爺やの首を投げ捨てると、体の方も興味なく投げ捨てた。

そして目に映すのはディケイド達。トゲアリ獣人は叫びを上げて体についていた赤い棘を分離させた。

それは遠隔操作で発射できる攻撃ビット、トゲアリ獣人は容赦なく棘を発射してディケイド達に攻撃を仕掛けた。

 

 

「!」

 

 

しかし針を分離させた時に既にディケイド達はアクションを取っていた。

バジンはハッピーを投げ飛ばすと素早くディケイドの前へ。その鋼の身で棘を受け止め、弾き飛ばす。そしてガトリングで逆にトゲアリ獣人の体を撃った。

 

 

「ヤツの動きを止めておけ」

 

 

ディケイドの命令を受けてバジンはトゲアリ獣人を止める為に動き出す。

一方地面に投げ出されたハッピーに一枚のカードを見せるディケイド。

 

 

「そろそろお前も死ね」『ファイナルアタックライド』『ファファファファイズ!』

 

「――い」

 

「あ?」

 

「許せないッッ!!」

 

 

ディケイドの右脚が光る。そして同じく、立ち上がったハッピーの腰にあるスマイルパクトが激しい光を放った。

今のディケイドが洗脳されているか、されていないか、もはやハッピーには関係ない。

彼は目の前で苦しむ人を、ミークの家族を見殺しにした。その行為はもう許す事はできない。

どんな手を使っても自我を取り戻してみせる。故に、ハッピーはディケイドを明確に傷つける意思を固めたのだ。

 

 

「気合だ気合だ気合だァアアッッ!!」

 

 

肘を曲げて腕を上下に動かし、ハッピーは精神力をスマイルパクトに流し込んでいく。

 

 

「フ――ッ!」

 

「プリキュア! ハッピィィイイッッ!!」

 

 

地面を蹴って飛び上がるディケイド、赤いエネルギーが右足に収束する。

一方ハッピーは両手で大きくハートの形を描く。するとその軌跡で作られた縁を満たす様に光のエネルギーが収束。

ハートの形をした凝縮エネルギーをハッピーは抱え、空中にいるディケイドを睨んだ。

 

 

「ハッ!!」

 

「シャワァアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

ディケイドはポインターを発射、一方で巨大な光のレーザーを放つハッピー。

ポインターはレーザーに当たると展開、ディケイドはそこに飛び蹴りを仕掛ける。

 

 

「ヤァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

クリムゾンスマッシュ。

紅に輝くドリルがハッピーの光をガリガリと削っていく。

 

 

「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」

 

 

双方は叫び声を上げて尚、力を己の技に注ぎ込んでいく。

ハッピーシャワーはより太く、大きく。クリムゾンスマッシュはより回転数を上げて光を切り裂いていく。

その中、桃色の光の中でディケイドは過去を見た。ああ忌々しい、これ程の殺意をもってしてもメビウスには一手届かなかった。

ハッピーもそうなのか? 弱弱しい光を見せておきながら、その内には強大な希望を持ち、俺を飲み込むか?

だとすれば、ああ、なんて。なんて――。なんて、目障りなんだ。なんて眩しいんだ。

だから、いらない。

 

 

「消えろォォオオオオオオオオオッッ!!」

 

「くッ!? あ――ッ!」

 

 

ディケイドの濁った咆哮が力を殺意に染めていく。

より激しく回転していくクリムゾンスマッシュ。

ハッピーは歯を食いしばり何とか抵抗しようと試みるが、膨れ上がったディケイドの力、なにより憎悪がハッピーの心を蝕んでいく。

 

 

「うッ! アぁア――ッ!」

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「きゃあああああ!!」

 

 

それは一瞬だった。

ディケイドのクリムゾンスマッシュがハッピーシャワーを抉り抜き、ディケイドの足裏がハッピーの肩に食い込んだのは。

刹那、ディケイドはハッピーの後ろに着地。紅の光が迸るとハッピーにファイズの紋章が叩き込まれる。

 

 

「ウッ! アァアッ! ガはっ!」

 

 

しかしそこでスマイルパクトが主人の危機を察知したか、ティアラモードが自動発動。

ハッピーから桃色の光が爆発。紅の紋章を消し飛ばすと、なんとかクリムゾンスマッシュを耐え切ってみせる。

しかし受けたダメージは相当なもの、ハッピーはそのまま崩れ落ちてうつ伏せに倒れた。

 

 

「さて、止めと行こうぜッ!」

 

 

振り返り、拳を握り締めるディケイド。

しかし、そこで夏美が叫んだ。夏美が動いた。夏美が走った。

 

 

「お願い! お願いだから元の司くんに戻ってッッ!!」

 

「!」

 

「お願いです! 何でもします! 何でもするからぁあぁッ!」

 

 

弱弱しい叫びだった。

ディケイドが視線を移すと夏美がボロボロと涙を零しながら祈るようなポーズを取っていた。

 

 

「殺さないで――ッ! もう私の友達を傷つけないで! 誰かを傷つけないでください!!」

 

「夏美、お前……」

 

「元の優しい司くんに戻ってッッ!!」

 

「………」

 

 

僅かな沈黙だった。不安そうに見つめるハッピー。

そしてまだ涙を流す夏美。どうしていいか分からずうろたえるテトラ。

呆然と爺やの死体を見つめているミーク。そして遠くではバジンとトゲアリ獣人が戦っており、空には相変わらずいくつもの黒煙、耳を済ませれば誰かの悲鳴や断末魔が聞こえた。

その中の沈黙は一瞬だったろう。しかし永遠にも思えた。

そしてその『無』を破壊したいのは、ディケイドの呻き声であった。

 

 

「うッ! グッッ!!」

 

「!」

 

「がッ! ががぁぁあッッ!!」

 

 

頭を抑え苦しみ出したディケイド。

左へ、右へ、フラフラとよろけながら彼は両手で頭を抑えてその場に倒れた。

 

 

「うぁぁッ! がぁあッ! アァアアアアア!!」

 

 

しばらくゴロゴロと転がり、そして停止。

荒い呼吸の音だけが夏美にも耳に届き、直後、ディケイドはゆっくりと体を起こした。

 

 

「――ッ?」

 

 

辺りを確認するディケイド。

そして、彼はポカンとした様子で口を開く。

 

 

「こ、ココはどこだ?」

 

「!!」

 

 

軽くなった声色。

思わず一歩夏美が前に出る。それに気づいたか、ディケイドもまた立ち上がると一歩前に出た。

 

 

「夏美? お前何で泣いて――」

 

 

はて、と足を止めるディケイド。周囲を素早く確認し、彼は思わず呻き声を上げる。

 

 

「ど、どういう状況だよ、コレ――ッ!」

 

 





☆エピナビ☆


・キュアデコル

みゆき達はスマイルパクトと呼ばれるアイテムで変身するぞ!
でもスマイルパクトにはキュアデコルと呼ばれるアイテムを使用する役割もあるんだ。
キュアデコルは魔法のブローチ。セットしたデコルによって、様々な効果が現れるぞ。
例えば犬デコルなら犬を召喚したり、自身の嗅覚を上げたり。戦いや状況に応じて一つのデコルも色々な能力を発揮するんだ。


………

丁度今、ニコニコ動画の方に毎週日曜から火曜まで仮面ライダーディケイドが無料配信されています。まだ見ていない人や、一度見た人でも、興味があれば是非。
次回の更新は未定なんですが、ちょっと溜めてたネタの中で今更新したほうが良いのかなと思うものが一つあって、もしかしたら次回は本編Episode DECADEの方を更新するかもしれません。
ではでは。
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