Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫 作:ホシボシ
青の国の王城。
その王座の間にて戦士達が集結していた。皆、目にはそれぞれの感情が浮かんでいる。
ある者は決意、ある者は迷い、ある者は怒り、それぞれの感情を胸にしてこれから始まる戦争についての計画を進めていた。
「全てはリンネ王女を殺す。頭を潰せば、あの国は終わりよ」
メイは銀色の剣を鞘に収め、遥かに見える黄の国を睨みつけた。
王座の間には以前よりも人が増えている。それはミライ、みゆき、あかね、なお、そしてカナリアである。翼と合流した一同は青の国に協力する事を決めた。
テトラやハクア達は別室で休んでもらい、一同はこれからの事を話す事となった。
とは言え何も難しい話では無い。黄の国に攻め込み、大ショッカーとリンネを倒すのだ。
「エノメナに関してはミライ君に頼めるかい?」
「はい。なんとかやってみます」
巨大化は今もできる気はしない。
しかしだからと言って戦いは戦いだ。諦める事は死に繋がる。
「夏美、大丈夫かな……?」
「大丈夫だよ薫ちゃん。きっと夏美ちゃんも黄の国に来る」
翼はそこまでしか語らなかったが、もちろんそれはイコールで、司も姿を見せるだろうと言う事だ。
今、その名を口にするのはあまりにも酷であろうて。しかし疑問はまだ多い。レイジは腕を組んで鼻を鳴らした。
ウルトラマン、プリキュア、仮面ライダー、ガンダム、随分とまあバリエーションに富んだ面々ではないか。
「でも、なんでオレ達がココに集まったのか、それは分かるのかよ?」
「それは……」
分からない。翼達の視線はカナリアに移る。
『遥か昔から、他世界と言う概念はこの世界にもあったわ』
なんらかの影響や偶然で世界間の壁が狂い、それが歪みとなって時空間の繋がりをおかしくしたのではないかとカナリアは考察を行った。
つまりは完全なる偶然、今はそれを喜ぶべきだ。これだけの『力』があれば、大ショッカーに太刀打ちはできるだろう。
「……オレ、トンネルにぶち込まれる時に助けてって聞こえたんだけどよ」
助けて、ガンダム。そんな言葉が聞こえてきたとレイジは言った。
それは他のメンバーも同じだ。それぞれがそれぞれの戦士の名を呼ばれ、助けを求められたと。
だからこそ彼等はココにいる。あの声は一体……?
「子供の様にも聞こえましたが……?」
「うん。たぶん男の子だったかも」
『……ごめんなさい、そこまでは私もまだ分からない』
最も事情に詳しいカナリアも分からないと言うのだから仕方ない。カナリアはこの世界の神のような物だと言う。
破壊を齎すカラス、再生を齎すカナリア、今までは均衡を保ってきたが、ある日からカラスが世界を終わらせるようになったと言う。
『私は、彼が恐ろしい』
「カラスは世界を終わらせて何がしたいんでしょうか?」
『そう、何も無い。何も無い筈なのに終わらせようとする。だから恐ろしいのです』
カナリアはもう一度口にした。カラスが恐ろしいと。
『悲しいのに、苦しいのに、辛いのに、何故終わらせ様とするの? カラス……』
しばらく沈黙が辺りを包む。
司がカナリアを探していたのは、おそらくカラスがカナリアを消す為だと言う。
対になる存在はやはり互いの力を弱めるらしく、カラスの目的にカナリアがいては邪魔なのだろう。
「メイ様、終わりました」
すると青の兵士が王座の間に。どうやら出撃の準備が整った様だ。
青の国から黄の国までは言うてそれほど離れていない。夕方前には着くだろう。
メイは窓を開き外に出る。眼下には多くの兵士が槍を構えて立っていた。
「皆、聞いてくれ! 私達は永き時を闇の中で過ごしていた」
恐怖を知っているのに目を背けてきた。
それは唯一、心の中にあった光が甘さを生んでいたからだ。しかし今、光は消え失せ、真の暗黒が世界を包もうとしている。
それを切り開くのは、それを切り裂くのは、反逆と言う極光ではないだろうか。
「今、再び世界に光を齎すために! 皆、その心の中にある剣を持てッ!」
メイは鞘から剣を抜くと、刃の先を天に掲げた。
「黄の国を落とす! 勝利は我らが手に!!」
メイの声を聞き雄叫びを上げる兵士達。その叫び声を室内にいた誰もが複雑そうな表情で聞いていた。
この先の勝利に、何が待っている? 戦いの勝利を予想し喜べるには、あまりにも多くの物を失い過ぎた。
「黄の国に、攻め込む……!?」
『ああ、だから君達も力を貸して欲しい』
「そ、それは……良いですけど、何があったんですか?」
『ごめん、詳しくは言えなんだ。どうか察して欲しい』
翼が連絡を取ったのは拓真だった。
友里と亘と共に黄の国に残った三人は、今日も今日とてルルカの小屋に置いてもらっていた。
ルルカは一応リンネ達の教師であった筈だが、朝から昼を過ぎた今もずっと小屋にいる。
それが彼女の扱いを表しているものであり、拓真達からしてみれば助かるのだが複雑な話である。
翼は多くは語れないと言う。拓真はそれが司がらみの何かだと察した。司の弟である亘には聞かせたくない話があるのだろう。
例えば夏美が死んだか、それは分からないが、拓真は了解して話を続ける事に。
「あの……」
『うん?』
「リンネ王女は、どうするんですか?」
『……この国の、世界のやり方に、私は従おうと思っている』
「それはつまり、死、と言う……?」
『彼女は、あまりにも多くの物を、命を奪いすぎた。どうなるかは分からないけれど、少なくとも今の段階では私は何とも言えない』
「わかり、ました……」
電話を切る拓真。
拓真側の話しか聞こえなかった友里と亘ではあるが、今から戦争が始まる事は分かった。
となると当然この国は炎で包まれるのだろう。それにカナリアも見つかったとの事、ならばココに留まる理由は無いか。
「あの……、ルルカさん。ココを出ませんか?」
目線を下にして、拓真は椅子に座っていたルルカに一つ提案を。
ルルカは優しい人だ。戦争に巻き込まれるのはあまりにも気の毒である。
仮面ライダーが三人もいるのだ。ルルカを一人を守りつつ国を出るくらいはできるだろう。
ルルカは青の国に守護してもらい、それで――
「いえ、私はココに残ります」
「………」
拓真は目を逸らしていた。
色々あった、司がはみゆきと戦い、ミークを殺し、青の国で戦争の準備が整えられている間、拓真達はずっとルルカと一緒に居た。
当然それだけ話をしていると言う事だ。どんな話を彼等はしたのだろうか? それは今、語られるべき物ではない。しかし拓真にとってはその会話で得た感情は確かなものであった。そして知る事もできた、ルルカの事を。
だからこそ彼女がその選択をする事は分かりきっていた。
「ココに残って、何になる!?」
納得できないのか、理解できないのか、亘は声を荒げた。
しかしルルカは微笑を浮かべたまま、落ち着いた表情で答えを返す。
とても今から戦争が始まる場所に残るとは思えない。もちろんそれは、それだけの理由があったからだ。自分の命よりも大切な価値がまだこの黄の国にはあると。
「私は、リンネ王女達を、愛しているんです」
「貴女をこんな所にずっと閉じ込めておく様な奴らを!?」
「ええ。そうですよ」
「ッ」
即答だった。亘は何も言えず、ただ引き下がる事しかできなかった。
尤も、ルルカとて何も感じていない訳が無い。紅茶をゆっくりと飲み、窓の外を見る。
「ごめんなさい、一つ、お願いがあるんです」
「?」
「一人に……していただけませんか?」
「!」
ココには誰も来ない。
ロギー達も城の中、見つかる可能性は無いだろう。拓真達も嫌とは言えず、複雑な表情で頷くと小屋を出て行く事に。
ルルカはただ、申し訳ないと謝るしかできなかった。出て行く拓真達、閉まる扉、静寂が小屋を包む。
「………」
しかし、ルルカには聞こえていた。
揺らめく蝋燭の火、その向こうに、笑顔の『彼女』がいた。
『あたし、貴女が入れてくれる紅茶が大好き!!』
笑顔が、ふと、零れた。
静かな部屋だった。ルルカ以外には誰もいない、誰も来ない部屋。
ルルカは椅子から立ち上がると自らの意思で小屋の扉を開いて外に出て行った。
歩く、歩く、歩く、目指すのは『彼女』の部屋だ。
「なぁに? 突然。勝手に部屋から出ないでよ」
「ごめんなさい、リンネ。貴女と少しお話がしたくて」
「なに? また勉強?」
「いえ、そうではなくて……」
「じゃあ何?」
「………」
ルルカは笑みを浮かべていた。優しい笑みだった。
「また、誰かを殺したんですか?」
「あぁ、ミークの事? なんかアッサリよね。気持ち良いほど」
ルルカとて、何故戦争が起こるのかを考えない訳ではない。なんとか調和を保っていた国が争い合う。それはそれだけの理由があったからであろう。だからミークが死んだ事を聞いてもルルカは冷静だった。
冷静に、平然としてリンネに声をかける。
「謝りませんか?」
「は?」
「貴女のやった事は、いけない事ですよ?」
「うるさいわね、いいじゃない、別に」
「何故? いけません、人の命を奪っては」
「馬鹿ね、貴女」
「え?」
さも当然の様に、リンネはベッドの上に座り込んで答えた。
「この世における正しい事は、このあたしがする事よ」
「………」
「さ、もう話は終わりね! 小屋に戻りなさい。あたしコレから皆とトランプするの!」
良心の定義。人には心がある。だからこそ、一方の常識が他者の常識とは限らない。
それは善悪の定義についても言える事だ。大衆が悪と認識したものも、神が正義と認めればそれは果たしてどちらになるのか。
ルルカは、笑みを崩さなかった。
「あの……」
「まだなにかあるの? 勉強はイヤよ!」
「ええ、あの、もし良かったら私も混ぜてくれませんか?」
「あー、そーねー。イヤ。だって、貴女といたら勉強の事思っちゃうもの」
「そう、ですか……」
「小屋にいなさい」
「じゃあ、最後に、コレは覚えてますか?」
「ん?」
「昔、貴女と色々な場所に行きましたね。山にピクニックとか、あとはそう! 私の紅茶を貴方は美味しいと言ってくれました!」
「は? あー、忘れたわ」
「……え?」
つまらなさそうに話を聞いていたリンネ。最早どうでも良い情報なのだろう。
爪をいじりながら適当に答えた。そもそもコレは本当のことだ。リンネにはもう、ルルカとの思い出など何も残っていなかった。
「あ、でもこれなら覚えてるかも」
「ッ、何をです?」
「悪いと思ってるの。ほら、あたしさ、勉強の事でイライラして貴女の両親を処刑したでしょ?」
「それは」
ルルカの表情から笑みが消えた。反対に、リンネは笑顔だった。
「腕の一本くらいで勘弁してあげるべきだったわ」
「………」
「じゃ、もうおしまい。出て行って。用件があるときはコッチから声をかけるから」
「……はい」
ルルカはリンネの部屋を出ると、小さく笑みを浮かべたまま歩き出した。
目指すのは小屋ではなく城の上だ。階段を上り、ルルカはバルコニーに出ると景色を見つめる。
風が吹いた、まもなく夕日が空に輝く。もう少しだ、もう少しできっとこの国は。
「―――」
空に笑顔が見えた。だからルルカは手を伸ばした。
あの日に、帰れる気がしたから。
「報告があります」
「なんだ?」
使用人室ではレオン、アグミ、ガークが紅茶を飲んでいた。
そこに現れる兵士、淡々と説明を。
「ルルカ様が死体で発見されました。状況から見て、高所から転落した物と思われます」
「そうか、死体を片付けておいてくれ」
「分かりました」
頭を下げて部屋を出て行く兵士。レオンは再び紅茶に手を伸ばす。
全く動揺が無い。レオンにとってもルルカは教師であった筈だが、何の感情も感じられなかった。
悲しみもなければ怒りや焦燥もない。ただ当たり前の様に報告を聞いて淡々と処理を命じた。それはレオンだけではない、アグミやガークも同じだった。
「先生、死んじゃったんだ、残念だねー」
「自殺か。哀れな女だったな」
「そもそも――」
レオンは砂糖を噛む。何もおかしい話ではない。
「ルルカはもう、既に死んでいた」
「?」
「彼女は過去しか見ていなかった。過去に縋って生きていた」
しかし過去は過去だ。時間は時間、進むのだ。人は変わるし、世界も変わる。
同じなんてありえない。それに適応できず、ルルカは過去ばかりを見ていた。
それは逃げだ、一種の現実逃避にしか過ぎない。その現実に再び目を向ければルルカが壊れる事は容易に想像できた。
結局の所、ルルカはリンネを見ていなかった。ただ輝かしい幸福を見ていただけだ。だから死んだ、過去に取り残された反動に耐えられなかったのだろう。
「我々とは反対だな」
「まさにその通りだ」
ガークの言葉にレオンは自虐的な笑みを浮かべる。
過去しか無かったルルカと、過去の無い自分達。前者が死んで後者が生きているとは何とも皮肉に感じる。
しかし過去の価値は所詮たかが知れている。大切なのはこれからの世界だろうに。
「なんだか普通に逃げられたね」
「そうだね、まあ、良い事だよ」
「………」
小屋を出た拓真達。
ロギーたちに見つからないかとヒヤヒヤしていたが、本当に誰にも会わずに城の外に出られた。
正確には兵士に見つかったのだがダッシュで逃げた為に追いつかれる事は無かった。
とは言え城の近くに居ては危険だ、三人はなるべく城から離れ、人気の無い林を見つけて、適当に転がっていた木の上に座る。
「はぁ、疲れたね」
友里は俯いてぐったりと表情を暗いものにする。
歩き疲れたのもあるが、一番は心の疲労が酷い。仕方ない話だ、理解できるのか、亘は立ち上がると一度大きく伸びを行う。
ポケットの中には財布があった。所持金は、まあまあ。
「ココに来るまでにジュース売ってましたよね? ボク、買ってきますよ」
「え、でも悪いよ」
「気にしない気にしない。二人はゆっくりしててください。戻ってきたら電話するんで、そん時に手伝ってくれればオーケーっす」
亘は手を上げると歩いて、道中にあった飲み物を売っている屋台に向った。
亘も一人で色々と考えたいのだろう。兄が変わり、親友が変わってしまったんだ。
その変化の影響は他のメンバーよりも大きい筈。アキラも、きっと、もう――。
あとはそう、気を遣ってくれたのかもしれない。友里はその好意に甘える為、拓真の肩に頭を乗せた。
「疲れたね、拓真」
「……うん」
拓真は慌てない。ただ疲労した様子で友里を見つめ、笑いかけた。
友里は遠くを見つめたまま頬を染め、より自分の体が拓真の体に密着するように近づいていく。
「ねえ」
「ん?」
「しよっか?」
「え!?」
拓真の腕にしがみつく友里、拓真も意味が分からぬ訳ではないのか、頬を染めて視線を逸らした。
「ど、どういう事?」
「そりゃ――ッ! 凄い方か、控えめな方か、とか……」
「だ、大胆だね。友里ちゃん」
「馬鹿! だって、怖い……」
拓真と友里の表情が曇る。友里だって何も雰囲気に流されて言っている訳じゃない。
自分達の生が、命が脆く儚い物だと気づいたからだ。殺しても死なないと思っていた椿だって死んだ。
ある意味で彼の死がより一層死を感じさせる物になった。だから、思うのだ、これから戦いが始まる。その向こうに自分達の生はあるのかと。
だからこそ、成し遂げられる想いは、成し遂げておきたい。
「あたし、拓真が好きだよ。でも好きだから怖いの」
「……うん」
「このまま逃げちゃったら駄目かな。駄目だよね……、皆頑張ってるもんね」
「うん」
拓真は友里を抱きしめると、向かい合い、その目を見た。
戸惑う友里を無視して、拓真は自分の唇を彼女の唇に押し当てる。
三秒ほど経った後だろうか、拓真は気恥ずかしそうに唇を離した。
「あ……えっと」
「もう! 自分からしてきたくせに、何ヘタレてんのさ」
友里は拓真の肩を軽く小突くと、意地悪な笑みを浮かべて拓真にしがみついた。
「ねえ、この先はどうする?」
「止めておくよ。なんだか、逃げるみたいな気がして」
「そっか、ちょっと残念」
もしもこの先に進んでしまったら、本当に死ぬみたいじゃないか。
拓真の悲しい笑みに、友里も同じ様な表情を浮べた。フラグはなるべく立てない方がいい。
ゲームが好きな友里なら分かる話だ。恐怖の中で愛し合う、なるほど確かに死ぬ間際の行為だ。
「じゃあさ、一つお願い」
「うん?」
「実はさ、昨日、不安で眠れなかったんだよね」
ルルカの小屋は言うて敵陣の中、不安で一睡もできなかったのは仕方ない。
拓真や亘も眠った時間は二時間もあれば良いほどであろう。友里は眠っておらず、どうやらそろそろ限界のようだ。
「膝、貸してくれる?」
「うん。いいよ」
「さんきゅ、拓真」
友里はニヤリと笑うと一気に横になって拓真の膝を枕に寝転ぶ。
「あー、落ち着く」
「戦いが始まったら、起こすから、それまでは大丈夫だよ」
「うん。ありがと」
目を閉じる友里。そのままスヤスヤとリズムの良い寝息をたてるまでにはそう時間は掛からなかった。
拓真は友里の頭を優しく撫でると、静かな林の中でゆっくりと息を吐く。見えるのは木々、その先に視えるのは――
『死を見るのは止めておけ。ロクな事にならない』
「!」
声が聞こえた。人の言葉だった。
だが前に現れたのは人とは全く姿が異なる存在だった。言葉を失う拓真。
彼の前に現れたのは灰色の身体をした一匹の『狼』であった。それもただの狼ではない。
灰色の体は鎧、赤いラインが体中に入っており、金属できた全身は神々しくもある。
狼は人の言葉を話し、黄色い目で拓真を睨む。
「貴方は……」
『俺か? 俺の名は、グレイヴォルク』
狼の体には見たところ金色の大鷲は無い。大ショッカーではない? しかしこの世界の存在とも思えなかった。
何者か? 拓真が尋ねると、グレイヴォルクは自らの事を『世界』と称する。
「世界?」
『そうだ、俺もまた一つの概念』
何故彼が拓真の前に現れたのか、それは警告を行う為だ。
先程の通りだが、グレイヴォルクはココに死の匂いを感じてやって来た。そして今、拓真の目には死が映っている。
『死ぬ為に生きる事ほど、虚しい物はない』
「………」
刺さる物があるのか、拓真は何も言えず俯くだけだった。
「僕は今、
生きる為の渇望が無い。生命にしがみつく欲望が無い。
もちろん友里とずっと一緒にいたいのは本当だ。拓真は彼女を愛している。
しかし、仲間達を愛していたのも本当だったんだ。愛のベクトルは違えど、拓真にとっては本当に価値のある絆だった。
それが音を立てて壊れていく。その先に、拓真が望む世界はあるのだろうか?
「僕は、何の為に生きているんだ……」
友を守れず、止める為の想いさえ湧き上がらない。傷つき、苦しみ、失った果てに何を望めばいいのか?
友里を守る事か? いや、それは友里の為だ。自分為とは言いがたい。
『ならばお前は最早、死人と同じだな。生きている意味が無い』
「かもしれない」
『俺は多くの命の始まりと終わりを見てきた。だからこそ警告に来た。お前の命は、今、あまりに輝きを失っている』
「それは、いけない事なのかな?」
『全てはお前が決める事だ。価値も、先も。だが俺はあえて言おう』
「ッ?」
『せめて生きろ。何の為に力を手にした。死ぬ為か?』
お前は神では無いが、人でもない。
それは意味のある事か? 価値のある事か? お前は何になりたいのか?
分からない。当然だ、知っているのはこの世でただ一人、お前と言う人間だけだ。
『何の為に生まれてきた。犬養拓真』
そこでグレイヴォルクは地面を蹴った。
木の上に乗り、飛び移り、あっという間に拓真の前から姿を消した。
一体何者なんだ? 自分の名前を知っていた事に加え、力を手にしている事も知っていた。
それにあの赤いラインは、ファイズに通ずる物がある。関係があるのか? 分からない。分からないが、分かった事もある。
それは拓真が今、迷っている事だ。
「………」
何の為に生きているのか……、いや違うな。何の為に生きてきたのか。何の為に生きたのか。
そして力を手にした意味、価値、想い。拓真はもう一度友里の頭を撫で、虚空を見つめた。
視えるのは悲しみだ。仲間が死んだ事、ショックを受けない訳が無い。
だったらどうする? 悲しんで終わるのか? それこそグレイヴォルクが言っていた通り、生きている意味が無い。
「………」
友里の寝息が聞こえる中、拓真はただジッと木々の先を見つめ、考える。
考えて考えて考えた先に答えが出る訳では無いが、それでも拓真は考えた。
力、価値、命、仮面ライダー。そしてファイズ。モブキャラ、名前の無い人々の一人であった自分が特別になった意味とは?
そして、携帯が鳴る。
「亘くん」
『あ! すいません、今大丈夫ですか?』
「うん、良いよ」
『来ました! 予想以上に早かったです! 青色の兵士達がいっぱいコッチに向ってます!』
「……分かった。合流しようよ」
『了解!』
拓真はファイズフォンを閉じると友里の肩を揺する。
ゆっくりと目を開ける友里、彼女は目を擦りながら笑みを浮かべていた。どうやら夢を見ていたらしい。
楽しい夢だ、司や我夢、双護も居てみんな笑っている。そんな楽しい夢だ。
「夢、なんだね」
「うん。もう戻れない」
仕方ない事だ。それが戦いと言うものだ。
拓真としては司が操られていようが操られていまいが、どうでも良かった。
ただ現実こそが注目する点であり、今こそが真実であった。この国で戦いが始まり、この国には大ショッカーが存在している。それだけだ。
しばらくすると亘が駆け足で戻ってきた。向かい合う三人、友里と亘はこれから始まる戦いに不安げな表情を浮べている。
その中で無表情の拓真。彼は一つ提案を。
「今から戦争が始まる。亘くん、友里ちゃん、一つお願いがあるんだけど良い?」
「え? うん、別に良いけど」
「何かあるんですか? 何でも言ってください」
「じゃあ、言うけど――」
拓真は二人の目を見て言った。
「僕と一緒に、死のう」
「青の国の兵士が見えます」
「あぁ、そう、予言どおりね」
トランプを投げ捨て、リンネは窓の外から地平線の向こうに揺らめく青を見た。
預言者は既にこの光景をリンネに伝えていた。遠まわしな言い方であったが、内容が青の国が攻撃を仕掛けてくるとは予想が出来た。
しかしリンネは焦らない。王座の間にて待機するのは直属の護衛兵とロギーと、その仲間。扇を広げてリンネは涼しげな表情で迫る殺意を見ていた。
「もう何かさ、面倒じゃない?」
国とか、戦争とか、そう言うのはもう面倒でしかない。
だって勝つのはどちらか決まり切っているだろう。それにもう命すら鬱陶しい。
この世界は全て思い通りになるべきだ。それでいい、それを邪魔する物は全て無くしてしまえばいい。
「それでお前は、幸せなのか?」
ロギーは葉巻を吹かしながら笑っていた。リンネもまた、ニヤリと笑みを浮かべたまま死を口にした。
「幸せよ。だから消してよ、あいつ等」
「もちろんです。全ては、王女の為に」
ガイアメモリを使用してそれぞれの武器を強化するレオン、アグミ、ガーク。
しかしその中でロギー一家は次々と退出していく。首を傾げるリンネ、残ったのはロギーと右腕のファイアだけであった。
「悪いな姫さん。止めとくわ」
「何?」
ギラリと光るレオンの瞳。その眼光を受けながらもロギーは笑みを崩さなかった。
彼等だって分かっていた筈だろう。何もこのまま楽しい楽しいおままごとが続く訳がないと。
力の裏にはいつだって野望が渦巻いていた。それはもちろん、この世、この世界とて例外じゃない。
「そろそろ夢から覚める時間だぜ、お姫さん。なぁ? ファイア」
「全くだなロギー。イカれたパーティは、オレ達だけで楽しむとしよう」
「!」
メキメキと音を立てて変わっていくロギーとファイアの姿。
アリカポネと、赤いコートの男・ファイアは、イカと火炎放射機を融合して生まれた怪人『イカファイア』に変身を完了させる。
さらにアリカポネが指を鳴らすと天井を突き破ってトゲアリ獣人が姿を見せる。
「ちょ、ちょっとどう言う事!」
リンネは初めて見せるだろう焦りの表情でアリカポネを睨んだ。
化け物であると言う事も怯むが、何より裏切りの理由が全く分からない。
この世界においてもはや残っている勢力は黄の国だけ。そこを裏切ると言う意味がリンネには理解できなかった。
裏切ってどうなる? 権力を手に入れるつもりなのか? 意味が分からない。
「いずれにせよ、王女への冒涜には変わりない」
レオンはリンネを庇う様に前に立ちアリカポネを睨む。
しかし笑えるとアリカポネは一蹴。そもそもレオン達の武器はロギー達が与えたものだ。飼い犬に手を噛まれる可能性を考えない訳が無い。
「お前ら、本当に俺に勝てるとでも思ってるのかよ」
相変わらず葉巻を咥えながらアリカポネは呆れた様に笑っていた。
正直、レオン達も常にロギー達が裏切る可能性は考えていた。
しかしまさかこのタイミングだとは思っていなかった。これからまさに青の国との戦いが始まろうと言う時。
「青の国に寝返るか」
「いや、違う。俺っち達はフリーだからな」
「何? どういう意味だ?」
ガークは訝しげな視線でアリカポネを睨んだ。
異形とは言え元はマフィア、王族でもないロギーが黄の国と青の国を支配できるとでも思っているのだろうか?
カイの場合はリンネを殺せばいいだけだろうが、国民がアリカポネ達に従うとは思えない。
「今までと同じだ。恐怖によって世界は支配される」
「青の国と黄の国を滅ぼすつもりか」
「その通りだ。正確にはちょっとばかし違うが……ま、いいだろ」
とにかく今はもうアリカポネ達にとってリンネは邪魔だ。
死んでいただくのが一番だろう。いまだに怯んでいるリンネを狙う様にしてアリカポネはステッキの先、マシンガンの銃口を向ける。
もちろんレオン達もリンネを守る為に前に立つ。そしてアリカポネが引き金に指を掛けた時だった。
「!!」
視界が、紅に染まる。
四方に展開していくポインター。イカファイアが呆気に取られている中、アリカポネはすぐに状況に対応を示す。
彼は自身の回りに次々と展開されるポインター、その出現した順をしっかりと記憶していた。
そして一番初めに出現したポインターに向って手を伸ばす。すると直後衝撃が。手に掴むのは――
「ぐッ!」
「ハッ、ヒーロー様は遅れて登場ってか……!」
アクセルフォームのファイズがそこにはいた。
高速移動での奇襲、まさか防がれるとは思っていなかっただけにショックは大きい。
それに何より感じる力の差、アリカポネはファイズの足をしっかりと掴んでいる。コレでは動く事ができず、せっかく多く展開したポインターも全てが無駄になる訳だ。
ファイズもなんとかアリカポネを貫こうとするが、どれだけ力を込めようともクリムゾンスマッシュが進行する気配は無い。
そうしている間に10秒が経過、ファイズは基本形態に戻り、アリカポネは掴んだ脚を振るいファイズを投げ飛ばす。地面を転がるファイズは声を荒げながらリンネを見る。
「何をしてるんだ! 早く逃げろ!!」
「ッ! え、ええ」
「行きましょう王女」
レオンは戸惑うリンネの手を引くと隠し扉から王座の間を飛び出していく。
アグミとガークも追従、王座の間にはアリカポネ達とファイズが残される。
舌打ちを行いリンネを追おうとするアリカポネだが、地面が爆発、後ろに下がると銃を構えたデルタとキバが正面通路から進入してくる。
「おいおい。お前ら本気かよ? リンネを守るとか狂ってんのか? あんなヤツ、そもそも守る価値なんざねーだろうが」
「確かに、彼女は命を悪戯に奪った。それは許されない行為だ」
しかしファイズは、拓真は分かっていた。そもそもリンネがどうであれ大ショッカーが絡めばロクな事は起こらない。
大ショッカーがリンネに何かを吹き込み、より多くの血を流させた事は明らかだ。そうでないにせよ、この世界の問題はこの世界に生きる者達が決めるべきだ。
「僕はこの力を手に入れた時、人を守る為に使うと決めた」
だからココに来た。
大ショッカーがこのままリンネの下に仕え続ける事はありえないと決め付けた。
リンネがどんな人間であれ、大ショッカーが彼女を利用し、そして命を奪おうとしているのならば自分はそれを止めるだけだ。
仮面ライダーの力は悪を倒す為にあると、拓真は思っている。
「だから僕は、お前達の邪魔をする」
「残念だぜ。ま、でもそれはコッチにも言える事だろ」
ステッキをファイズに向け、口から煙を吹きだすアリカポネ。
「お前らは目障りなんだよ、仮面ライダー」
どす黒い感情が篭った声だった。ロギーもまた理解している。
いや、今改めて教えられたとでも言えばいいのか。大ショッカーと仮面ライダー、互いに潰し合う事が宿命付けられている様だ。
分かり合えない。それでいい、それがルールだ。ならば従おう、存在はぶつかり合うが何も力は同じとは限らないのだから。
「来い! リッガー!」
「!」
「ジャマーフィールド、展開!!」
ステッキを掲げるアリカポネ。
すると大地が揺れ、王城の離れ、つまりルルカが使っていた小屋が崩壊していく。
地に走る亀裂、そして赤い目が姿を見せる。
「グワァァァァァァン!!」
咆哮と共に頭部が地面から突き破る。姿を見せたのはエノメナ程ではないが巨大な怪獣であった。
大きく見ても8メートル程はあろうか? 四足で歩行するタイプのトカゲの様な怪獣であった。
メカニズム怪獣リッガー、その名の通り生物的な見た目だがその正体は機械で出来たロボット怪獣である。
リッガーはアリカポネのステッキにあるマイクから命令を受信。赤い目を光らせ、頭部にある妨害電波発生装置からジャマーフィールドを展開する。
リッガーを中心として円形状に広がるフィールド、すると当然ファイズ達もまたその範囲に足を踏み入れる事に。
するとファイズギアから火花が散っていく。それだけでなく、デルタギアやキバットバットからも火花が散り、直後小規模の爆発を起こす。
「グッ!」
「きゃあ!」
「うわッ!」
三人のベルトがはじけ飛び変身が解除される。
ファイズギアやデルタギアからは煙が上がり、キバットは目を回して気絶している。
どうやらアリカポネが呼び出したリッガーは、ファイズ達の変身を妨害する電波を発生させられるらしい。
「ファイズ、デルタ、キバ、お前らのデータはリッガーに搭載済みだ」
「ッ、どうしてファイズの事を……!」
「これから死ぬヤツに教える訳ねーだろ。変身できないテメェらに何ができる。また化け物に変わって逃げるか? 無理だね、逃がさない。次は確実にぶっ殺す」
歯を食いしばり後ろに下がる拓真達。アリカポネもステッキの銃口を向けて一歩一歩前に出て行く。
「馬鹿な奴らだ。前回の戦いで力の差は感じてただろうが」
「だからって、お前が人を殺すのを見過ごす訳には行かない」
「そうだな。まさに馬鹿なヤツだ」
「「!!」」
エンジン音。すると王座の背後上方にあるステンドグラスがはじけ飛んだ。
姿を見せるのは壁を突き破って王座の間に進入してくるディケイド、カブト、響鬼、ダブル。それぞれのバイクに乗って着地すると、素早く状況を確認。
リンネがいない事を悟ると、ディケイドは小さなため息を。
「お前……」
アリカポネは帽子を下げて後退していく。
さて、このまま拓真達に攻撃を仕掛けても良いが、そうなるとディケイド達とも戦闘になるのか。
一方のディケイドも鼻を鳴らし、足を伸ばしてバイクから降りる。
「失せろ大ショッカー。ブチ殺すぞ」
「クハハ、言ってくれるぜ。クソガキが」
しかしアリカポネは言葉を止める。戦うのは良いが、もちろんそれはメリットとデメリットを内包している。
言わば賭けの様な物だ。当然の話であるが戦いには生と死が付いて来る。その当たり前の事が、やや都合が悪い。
「チッ! 仕方ねぇ。引くぞファイア、トゲアリ!」
「ムカつく野郎だぜ。次に会ったら炭にしてやる」
「ギヒヒヒヒ!!」
アリカポネは葉巻を投げ捨てると視線とステッキはディケイドに向けたまま王座の間を出て行く。
ファイアとトゲアリ獣人もまたアリカポネに続く形で王座の間から姿を消した。これで静寂が訪れる。
もちろん、そんな訳は無く。薄ら笑いを浮べるダブル達を背に、ディケイドはライドブッカーを構えて拓真達に距離を詰めていく。
「よぉ、拓真、友里、そして我が弟よ! 会いたかったぜぇ」
「司くん……」
「早速だが、死んでくれ」『アタックライド・スラッシュ!』
走り出すディケイド。
ライドブッカーを剣に変え、殺意を仮面の裏に宿す。
一方拓真はファイズギアを握り締めたまま立ち尽くす。アリカポネが引いた事でリッガーも移動したのか、ジャマーフィールドは無い。
つまり拓真達は再び変身が可能と言う事だ。さてどうする? ファイズになるか、それともオルフェノクになるか、はたまた逃げ出すのか。
「オラァァ!!」
剣を振り上げ、ディケイドは雄叫びと共に振り下ろした。
拓真は、動かない。その目でジッとディケイドを見つめるだけだった。
「ぐッッ!!」
「……ほう?」
刃が拓真の左肩に進入し、そのまま一気に胸の部分まで進行していく。
そこで止まる刃、同時に拓真の口からは垂れる様にして赤い血液が流れ出した。
なんと拓真が取った行動はノーガードである。まさか寸ででディケイドが剣を止めてくれるとでも思ったのだろうか?
だとすれば随分間抜けな話だ、ディケイドは思わず声を出して笑う。現に今、ライドブッカーは拓真の体に深く深く切り入っているじゃないか。
「何故変身しない? お前、馬鹿か?」
「司くん、そんなの、決まってるだろ……!」
拓真は手でライドブッカーを掴み、ディケイドを睨み付ける。
拓真とて馬鹿ではないのだ。もうディケイドを言葉で何とかできるとは思っていなかった。
だが、それを分かっていて変身しなかったのだ。オルフェノクにも、ファイズにも。
そしてそれは友里と亘も同じだった。双方拓真の背後でしっかりと拓真が切られているのを見ている。しかし動かなかった。二人ともがジッと、拓真とディケイドを見ている。
「僕らは……! 目指した――ッ!」
特別クラスの誰もが目指した筈だ。拓真も、友里も、亘も。
それだけじゃないユウスケや薫、翼達、死んでいった椿達だって目指していた筈だ。
何の為に戦って来た? 多くの世界を救い、多くの敵を倒した。何の為に? 決まっている。
「僕達の力は……! 人を傷つける為に、手にした――ッ、訳じゃ……無いだろッ!!」
口から血が溢れた。拓真は咳き込み、俯いて体を震わせる。
しかし剣を握る力は強くなっていき、ディケイドを睨む眼光もまたより鋭くなっていく。
思わずその目はディケイドを怯ませる程であった。ディケイドは舌打ちを零し、拓真の腹部を蹴り、剣を引き抜いた。
血を撒き散らし、傷口を押さえながら拓真は後退していく。一方ディケイドはライドブッカーを銃に変え、金色のカードをバックルに放り投げる。
「偉そうな事言ってんじゃねーよ、クソが!」『ファイナルアタックライド』『ディディディディケイド!』
ホログラムカードがディケイドと友里を繋ぐ。銃口が光り、友里は唇を噛んで拳を握った。
しかしデルタギアを構える素振りは見せない。友里もまた、拓真の想いに同調したからだ。
「このまま黙って死ぬか? 友里。それとも足掻くか?」
「……戦ってどうするの? 仮面ライダーの力は、こんな事に使う為に手に入れた訳じゃないでしょ?」
「ハァ……、ウゼェ」
友里たちを焦らせる様にライドブッカーを振るうディケイド。しかし反応は無い。
これから友里が死のうとしているのに拓真も亘も、当の友里も変身する気配は無かった。ディケイドは呆れた様に嘲笑し、カウントダウンを始める。
10、9、8、進むカウント。しかし誰も動かない。そしてタイムリミットが。
「ゼロ。死ね、友里」
引き金を引くディケイド。
ライドブッカーから光弾が発射され、データカードを通過する毎に巨大化していく。一枚、二枚、数は全部で五枚。
そして一枚目を通過した時、友里は笑顔を浮かべて拓真の方を見ていた。
「拓真、愛してる!」
「うん。僕もだよ……! 友里ちゃん」
安心して欲しい。もうすぐ、そっちに行くから。
「……ゼノン、コレで何人だ?」
「えーっと、確か7人目じゃない? 椿、咲夜、真志、美歩、アキラ、鏡治と来てさ。まあ鏡治はちょっと例外だけども」
「フッ、上々だぜ」
友里は蒸発した。
文字通り強化されたライドブッカーの一撃、ディメンションシュートを受けて塵となった。
消し飛び破壊され消滅した身体の中、唯一残った両足だけが凄惨な景色を演出している。
「どうだ? 見ろ、友里は死んだぞ。これでもまだつまらない意地を張ってくれるのか?」『ファイナルアタックライド』『ディディディディケイド!』
次は剣を構えるディケイド。カードの先には亘がいた。亘は拳を握り締め歯を食いしばっている。
「次はお前だ亘。戦う事を放棄した臆病者、がっかりだな。俺の弟とは思えない」
「臆病者……?」
それは恐怖ではない、怒りからだ。
「兄さん! まだ分からねぇのかよッ!!」
「なんだよ、うるせぇな」
「拓真さんがどんな気持ちでッッ! なんで変身しないのか!!」
拓真は言った。『僕と一緒に、死のう』と。
悪戯に命を捨てようと言う訳じゃない。あの言葉には続きがあった。
それは――、"僕と一緒に死んでみよう"。
『人間として、そして――』
「兄さん! 拓真さんは、仮面ライダーなんだよ!!」
仮面ライダーの力は人を守る為に。人を傷つける為に戦ってはいない。
苦しみを生む為に戦ってはいけない。ディケイドは仲間だ、友達だった、だから拓真は覚悟を決めた。
「この力は、仮面ライダーの力は、正義じゃねーのかよッッ!!」
「知るか、自由に使わせろ!」
「司! お前はもう仮面ライダーじゃない! ただの怪人だッ!!」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れェエッッ!!」
ディケイドは剣を振るった。上から、下に。
多くは語らない。しかし強化されて光り輝く剣は亘を『二つ』にした。
それを見たダブルはニヤリと笑い、たった一言で感想を。
「おそろいだね、キバ」
せめてもの手向けだ、キバはトリガーマグナムの引き金を引くと炎弾を発射。気絶していたキバットバットを打ち抜き破壊する。
弟を切り殺したディケイドはそのまま剣についた血をふるい落とし、今度は剣先を拓真に向ける。
既に出血量は酷く、拓真はへたり込み、虚ろな目でディケイドを見ていた。呼吸も細く、既に結末は見えていた。
「クソみたいな最期だな拓真。泣きたくなるよ……!」
「いや――、僕は、この行為には大きな意味があったと……思ってる、けど」
もう司達を止める事は、拓真の中で死以外には無かった。
もしかしたらもっとあるのかもしれない。しかし少なくとも拓真には思いつかなかった。
だから拓真の中で司を止める事は司を死ぬ気で止める事。殺してしまう答えもあるのかも。
拓真は拒んだ。ファイズの力は命を奪う為にあってはならない。
「僕は、そう、思うから……」
「笑わせんな。死ね」
ディケイドは興味が無いと言葉を一蹴し、剣を拓真の心臓に突き入れる。
刃が体を貫通し、血を吐く拓真。青い炎が彼の体を包み、直後拓真は灰となって消滅した。
奇しくも同じ時、友里の残った足も同じ様に灰となり消滅する。これで面倒な障害はいなくなった。
ディケイドはもう既に切り替えたのか、これからの事を決める事に。城は揺れている。外には兵士の雄叫びと、民の悲鳴が。どうやら青の国の兵が到着し、戦闘を開始した様だ。
「どうするディケイド、ボク等もパーティに参加させてもらうかい?」
「そうだな――」
しかしそこで機械音。ブースターの音が響き、ディケイド達があけた穴からもう一人侵入者が現れる。
白い身体の機械人形、ビギニングガンダムであった。勢い余ったのか王座を破壊し着地するビギニング。
周りを見れば血の痕、そして亘の死体が見える。
「……ピンクの身体、緑の目、お前がディケイドか」
「ピンクじゃねぇ、マゼンダだ。ん? マゼンタ? まあどっちでも良いか」
「そいつは、お前が殺したのか」
「ん? ああ、亘か? そうだ、俺がぶっ壊した」
「仲間じゃ……! ダチじゃねぇのかよ!」
「違う。弟だ」
その言葉がスイッチだった。
ビギニングは背中にあったビームサーベルを一本抜き取るとブーストで一気にディケイドの眼前に迫る。
激しい火花が散り、ディケイドの剣とビギニングの剣がぶつかり合う。
「誰だ? お前」
「ビギニングガンダム、レイジだ! お前をぶっ飛ばしに来た!!」
「ガンダム……? ハッ、面白い! やれるモンならやって見ろ!!」
ディケイドは素早く指示を。響鬼にはココに残る様に言い、カブトとダブルにはリンネを追えとの事だった。
そして剣を絡み合わせるディケイドとビギニング。全力を込めて剣を振るい、互いは王座の間を転がっていく。
「ねえレオン……」
「はい」
「大丈夫、よね?」
「はい、もちろんです」
「そ、そっか……」
隠し通路を抜けた先、城の外に出ようとするレオン達。
しかし道の先にあった中庭では、既に赤い剣士が立っていた。
「!」
「隠し通路、使用人の中でも知っている者は限られているわ」
「なッ!」
「でも、そんな父も殺された。訳の分からない理由で」
メイは風を受けてマントを靡かせていた。幼い時、父から聞かされていた隠し通路。
そこをリンネが使う事を見越し、ココで待ち伏せしていた。
メイは激しい眼光でリンネを睨みつけているが、その瞳には確かな殺意が込められている。
しかしそんなメイを抑える様に手を伸ばしたのはユウスケだった。メイの右隣にはユウスケと薫、左隣には翼が立っていた。
「もう止めてくれ、リンネ! ココで降参すれば命は奪わないってメイさんも言っている!」
「ハァ!? なによ! あたしに命令するの!!」
ユウスケが差し出した
確かに状況は五分五分ではある、しかし自責の念は全く無い様だった。ユウスケは悔しげな表情で拳を握り締める。
どれだけの命が亡くなったと思っている。今も各地で戦いが起こっている。誰のせいで? それはあまりにも分かりきった答えでは無いか。
「大人しく降伏しなさいリンネ。全ての罪を償うの」
「うるさい! あたしは罪を犯してはいない!! アグミッッ!!」
「ほーい」
銃を乱射しながら前に出るアグミ。しかし彼女が動いたと同時にユウスケ達も変身。
クウガはタイタンフォームに変わり、アギトとメイを守る。
「止めろ! これ以上戦って何になる!!」
「王女を守れる。さ、お嬢さん、早くお逃げなさい」
起伏の無いアグミの声をスイッチに、リンネ達は走り去る。
追おうとするメイ達を阻む様にアグミは移動し、ガンのガイアメモリで強化した銃を発砲した。
風を切り裂き飛来する弾丸、しかしそれはクウガの掌が受け止めた。
「アグミ! アンタはなんで……!」
「決まってるでしょ、王女は大切な人だから」
「ッ、理解できない」
メイは断言する。リンネは屑だ。自らの欲望で他者を傷つけ、罪悪感の欠片も見せない。
そんな人間が大切? メイには全く持って理解できない話だった。
だが考え見ればアグミもまたヒットマンとしてリンネに歯向かう人間を何人も撃ち殺していると聞く。
ある種それは当然の事なのか、類は友を、惹かれあう運命なのだ。
「所詮、屑の仲間は屑」
「酷い、怒った」
銃を構えるアグミ。同時にクウガは前に出る。
ダラダラと戦いを続けるつもりはなかった。確かにアグミは強い、多彩な銃弾、多彩な射撃、それらは脅威以外の何者でもない。
しかし既に能力が知っている相手、クウガ達は事前に作戦を立ててきた。
まずはストームフォームに変わるアギト。ハルバードを振り回し暴風を発生させる。
「うぅ」
大地を踏み締めるアグミ。
並みの人間ならば吹き飛ばされる程の風力ではあるが、やはりガイアメモリの強化の恩恵を受けているのだろう。
しかし所詮は武器を強化させただけの話、本人が『ドーパント』になっている訳では無い。それがアグミ達の最大の弱点なのだ。
「超変身!!」
電撃を纏い飛び上がるクウガ。変わるのは金の装飾が加わったドラゴンフォームだった。
コレが強化形態、ライジングドラゴン。ドラゴンロッドは両端に金のブレードが追加。ロッドから矛に変化する。
スピードやジャンプ力はより上昇し、何よりも固有能力エアスライドが強化される。
空中でもう一度好きな方向にジャンプができる物だが、ライジングになった事でさらにもう一段階跳躍が可能になる。
クウガはアグミの方へジャンプ、アグミは銃でクウガを撃ち落そうとするがアギトが発生させた風に妨害されて中々標準が合わない。
だがさらにクウガはエアスライドで跳躍、全く別方向に金色の軌跡を描きながら移動する。なんとかエイムを合わせて銃弾を発射するアグミ、しかしクウガはドラゴンロッドを振るって銃弾を弾き飛ばす。
「う……」
背後に回ったクウガに銃を合わせるアグミ。
しかしクウガはさらに跳躍、なんと真下にジャンプする事で一気に地面に着地する。
まずい、振り向きながら銃を突き出すアグミ。しかしそれこそがクウガの狙いだった。
「超変身!」
銃を掴むクウガ、その色が緑に変わる。
そして光が迸り、アグミの銃がペガサスボウガンへ変わった。
「え……、うそ」
「アグミ、おれの勝ちだ」
「う」
アグミやガークの弱点、それは所詮本体は武器である事だ。
そしてクウガの特殊能力は相手の武器であろうが自分の武器に変えてしまう事である。
その数に制限はない。アグミが持っていた二つの銃はクウガの力によってペガサスボウガンに変わった。つまりアグミは武器を失ったのだ。
「ありがとうユウスケ、翼。アグミを拘束するわ」
「ッ」
メイは軽蔑した目でアグミを見る。
アグミは無表情だ。何を考えているか分からない。それはきっと罪の意識に関してもそうなんだろう。
殺しすぎたんだ、だからもうココロがなくなってしまった。
「からっぽなのよ、貴女は」
「!」
だが意外にも、その時アグミの表情に感情が戻った。
メイの言葉がスイッチになったのかアグミは腕を振るうと裾から小型の銃を取り出した。
中世の世界にも見えるが、物を作ると言う技術に関してはクウガ達の世界よりも遥かに進化しているらしい。
リボルバータイプの小銃。しかし強化はされていない。クウガ達には利くとは思えなかった。
「諦めろアグミ、お前はもう終わりだ!」
「違う!」
「!」
「私はからっぽじゃない!!」
「ッ! まさか!」
察知したアギトは風を発生させてアグミの手から銃を吹き飛ばそうとする。
しかしそれよりも早くアグミは自分のこめかみに銃を押し当てた。
「やめ――ッ!」
クウガが手を伸ばす。しかしアグミに迷いは無かった。
破裂音がする。そしてアグミの頭から赤い血液が噴き出た。倒れるアグミは、どこか笑っている様にも見えた。
何故だ!? クウガとアギトには理解できない話である。しかしメイは目を閉じ、思いを募らせる。
アグミはリンネの護衛兵として生きてきた。つまりそれが生きる理由であり、生を許された証であった。役割があるからこそ生きられる。その役割が無くなったから死ぬ。
ああ、なんて愚かな子。その行為こそが空っぽであると言っている様な物なのに。
「クソ! おれはこんな事をする為にライダーになった訳じゃないのに!」
壁を殴りつけるクウガ。しかし止まって入られない。コレは一戦闘であるが、今は戦争が始まったのだ。
既に多くの兵士が町中で交戦している。混乱が世界を包み、一刻も早く戦いを終わらせるにはリンネを捕らえなければならない。
一方でリンネ達は走っていた。正直、シナリオとしては良くない流れであった。裏切りのタイミングを見間違えた。
しかし対処は出来る、レオンは冷静だった。そもそもでロギー達が来た時から警戒はしていた。
黄の国に関しては諦めればいい、大切なのはリンネの命だ。コレが守れるのならば国くらいは差し出そう。
「どこ行くのレオン」
「船を使います。一旦この国から離れましょう」
「え、でも――」
「いいから、着いて来て」
誰にも知られていない港と島がある。そこにつければ何とかなるだろう。レオンは冷静だった。
しかし、そんな彼等の前に灰色のオーロラが。
「やあやあ、絶景かな絶景かな!」
「既に始まっている様ですね! ヒヒヒヒ!!」
オーロラの向こうから姿を見せたのは四人の男女だった。
アシンメトリーの髪型、切れ長の目、常に吊り上げた唇。
飛針、またの名を『暇人・
その隣では顔の上半分をピエロの仮面で覆い隠している少年、『道化師』が。
「アタシはさっさと帰りたいんだけど」
「そう言うな、定期会は悪いイベントじゃない。信頼度を上げるいい機会さ」
白い髪に赤い瞳、ハクアにも似た少女、『花屋』。
そして最後に茶色い髪に整った顔立ちの少年、『奇術師・
彼はシルバーのトランクケースを持っており、キョロキョロと辺りを観察、すぐにリンネ達に気づいた。
「なあアンタ、教えてくれないか? 今この世界は何で争ってる?」
「コイツ……、ガーク」
「ああ、任せろ」
ただならぬ気配を察知してレオンはリンネの手を引いて走り出した。
問いかけには答えず、代わりにガークが刀を構えて前に出る。逃げるレオンとリンネ、百瀬は二人を目で追うだけで特に追いかけようと言う素振りは見せなかった。
一方で腕を組み目を細める花屋、注目するのはガークが持っている刀だ。
「あれって……」
「ええ、普通の刀ではありませんね」
指を鳴らす道化師。すると地面から二体、灰色の化け物が出現した。
ピエロを模したクラウンオルフェノク。笑い声を上げ、ナイフを構えて走り出した。
ガークも今まで幾度と無く敵を切ったもの。自身に向ってくるクラウン達の殺意を感じ取った様だ。
「フッ!」
「お!」
一瞬だった。ガークは範囲に入ったオルフェノクを一瞬で真っ二つにしてみせる。
居合い切り、真横に振るった刀はクラウンオルフェノクを上と下に分け、直後爆散させる。
これには思わず口笛を吹いて賞賛を向ける飛針や道化師。
しかしこれで分かった。ガークは人間ではない。飛針、道化師、花屋は一勢にアイコンタクトを百瀬に送る。
「ま、確かに試すには丁度良いか」
トランクを地面に落とす百瀬。蹴るように足でトランクを開くと、手を前に出した。
手に持ったのは一本のベルトだった。そう、多くのツールがついたギア。百瀬はそれを装着すると、手に携帯を持つ。カラーリングは黄色と紫。スライド式の携帯電話だった。
「悪いが、お前でテストさせてもらう」『9』『1』『3』『Standing by』
コードを打ち込み携帯を閉じる百瀬。待機音が鳴り響く中、彼はガークを睨みながら携帯を構えた。
「変身」
そして携帯をベルトにセットする。
すると再び電子音。
『Complete』
黄色いラインが百瀬の体を巡り、光が彼を包むと、その姿が別の物に変わる。
それはまさにファイズやデルタと同様のデザインであった。それもその筈、モデルはその二人なのだから。
「どうですか? 感想は」
「なるほど、悪くない」
その名はカイザ。ネクタイを締める様に首を触り、
手を何度か握り締めたり開いたり、異質な空気にガークも刀を構えて一歩後ろに下がった。
「貴様、ヤツらの仲間か」
「ヤツら? オレは誰の仲間でもない。ただ力を試したくてね」
カイザは拳を握り締めると地面を蹴った。殺意の波動、ガークもまた走り出して刀を抜刀する。
散る火花と走る衝撃、カイザは腕を盾に刃を受け止め、直後回し蹴りでガークの胴を狙う。
しかしガークもまた腕を盾に蹴りを防御、双方は蹴りの衝撃とダメージで僅かに距離を空ける。
「なる、ほど……! やはりただの人間ではないか」
「チッ、固い物だ」
地面を摩る両者。手加減は無用と悟ったか、次にカイザはベルトにあるクロス状の武器に手を伸ばす。
カイザブレイガン、モチーフになったギリシャ文字である
後ろにあるレバーを引くと電子音『Burst Mode』と共にフォトンブラッドで形成された弾が装填される。
引き金を引くカイザ。黄色い弾丸が風を切り裂きガークの眼前に迫る。しかしそこで閃光が走る。
ガークが振るった刀が光弾を切り裂き、驚くカイザを前に一気に距離を詰めた。
「うぉッ!」
刀を紙一重で回避するカイザ。
カイザフォンにあったミッションメモリを抜き取り、それをブレイガンにセット、するとREADYの音声と共に光の剣が伸びる。
カイザブレイガンは銃と剣を合わせた武器だったのだ。カイザはブレイガンを逆手に持つとガークが振るう刀に合わせる様に剣を突き出していく。
が、しかし、刀を愛用としてきたガークと所詮一武器として扱ってきたカイザ、勝敗は明白であった。ガークの一太刀がブレイガンを弾き飛ばし、カイザの装甲を切り裂く。
「ぐあぁぁ!」
火花を上げながら地面を転がるカイザ。
背後には笑い声のBGMが響いていた。飛針や道化師はカイザがやられているのが面白いらしく、それを見て花屋はヤレヤレと首を振っている。
共通するのはどちらも焦りが無いと言う点だ。それがガークにとっては不快感を募らせる。
だから黙らせる。ガークは刀にエネルギーを纏わせ、一度帯刀、そして抜刀する事で強力な鎌鼬を発生させた。
飛針達に飛来する斬撃、それは問題なく着弾して爆発を起こしてみせる。
「!」
しかし煙の中、飛針の笑い声が消える事は無かった。
それはそうだ、彼等もまた異形。煙が散るとそこには四体のオルフェノクが。
飛針はフライングフィッシュオルフェノク、道化師はエキセタムオルフェノク、花屋はローズオルフェノクへと変わりガークの一撃を防いでみせた。
「チッ、化け物が……!」
目を細めるガーク。しかしその言葉に反論を示したのは意外にもカイザであった。
彼もまたその正体は異形、タイガーオルフェノク。しかし故に思う所もある。
「人間は誰しもが化け物になる資格を持っている。オレも、当然アンタも」
いや、既に化け物かもしれない。カイザは首を触りエキセタムの名を呼ぶ。
初戦闘で負けると言う事ほど間抜けな物は無い。とは言えこのまま戦っていても戦況は不利、何かないだろうかと。
「あります。腕についているメモリを」
「ッ、ああ。これか」
カイザの左腕には腕時計型のツールがあり、そこにあるメモリをカイザは抜き取り、ベルトにセットする。
するとCompleteの音声と共にカイザの胸部アーマーが吹き飛んだ。同時にカイザのカラーリングが黒と銀を基調とした物に変化。
複眼は黄色掛かったオレンジに変わった。
「ブレイクフォームです。気をつけて、アーマーのロストで胸部コアがむき出しになっています。防御力は低下していますので……」
「なるほど、だったら早く決めないとな」『Start Up』
腕時計ツール、ブレイクウォッチを起動させるカイザ。
するとカイザの複眼が発光、胸部からむき出しになったコアも激しい光を放つ。
時計のディスプレイにはカウントが。10秒間の絶対攻撃が開始される。ファイズアクセルが超高速ならばカイザブレイクは圧倒的なパワー。
「フッ!」
「何!? ぐあぁああッ!!」
ブレイガンの引き金を引くカイザ。
するとどうだ? 銃口から離れたのは先程の光弾ではなく、巨大な光の球体、それはまさに太陽、それはまさに銃ではなくバズーカーの砲弾。
巨大な光球はガークの手前で地面に着弾、大きく地面を破壊し、地形を大きく変える爆発を起こす。
地面が抉れ、土片と共に吹き飛んでいくガーク。一方カイザは地面を蹴った。
脚力も通常時より遥かにパワーアップしており、一気に空を飛んだカイザはガークの手前に着地すると武器である刀を奪い取った。
そして力を込めると、刀は見事粉々に破壊される。
「なッッ!!」
「オレ勝ちだな、色男」『Reformation』
光が損壊部分を満たし、カイザは基本形態に。
そして手には粉々になったガークの刀が。メモリも破壊され、小規模の爆発が起こりガークは完全にただの人間に戻る。
「ッ、ガイアメモリか! 何故こんな一端の世界の人間が持っている!?」
「聞き出そうか」
ボウガンを出現させ、膝をつくガークに迫るフライングフィッシュ。しかしその時だった、ガークは懐から一本のナイフを取り出し、眼光を光らせる。
一瞬それで戦うのかと思われたが、ガークは躊躇無くその刃で自らの首をかき切った。
「なッ!!」
「これが掟だ。敗北は死、リンネ様の足は引っ張れぬ」
「お前……」
噴水の様に散る血を見ながらガークはニヤリと笑った。
これでようやく、理由が出来た。リンネを愛していたのは本当だ。だがしかし愛を語るにはあまりにも血に塗れすぎた。
それはまさに道具と何も変わらない、結局、既にガークは死んでいたのだ。だがこれで終わる。光も闇も、全て解けて無くなる。
「代わりは、いくらでもいるんだろう?」
声にならない声でガークは口にする。音は無い。既に意識は混濁し、闇の中へと沈んでいく。
何も見えない、何も聞こえない。ガークの時間はゼロになり、彼は地面に仰向けに倒れた。ただとめどなく流れ出る血は、今も尚。
「嘘だろ……!」
百瀬は若干の罪悪感を覚えた。どうやらガークは敗北=即、死と言うプログラムが自らの脳に刻まれていたらしい。
だがしかしすぐに割り切る。それはそうだ、どうせこの国にいる以上ガークは遅かれ早かれ滅びる運命にあった。
つまりガークはどの道死ぬ運命にあったと言う事だ。
「皮肉なものだな。人間を目指すオレ達が、人間の脆さを目の当たりにするとは」
しかし他のメンバーには響いていないようだ。暇そうに欠伸を行う花屋、飛針と道化師は相変わらずケラケラと笑っている。
どうやらカイザの力にテンションが上がっているらしい。それになんだ、飛針は思うのだ。
「どんなヤツだろうと死ぬ時は死ぬ。結局運命なんだよ、全部」
「かもしれないな。さあ、なら見届けようじゃないか」
この世界の終わりを。
百瀬達が見る世界、そこに点々と灰色のオーロラが浮かび上がっているのが見えた。
☆エピナビ☆
・仮面ライダーカイザ
仮面ライダーファイズに登場する所謂二号ライダーだ。
この作品では大ショッカーを裏切り人間に戻ろうとするオルフェノクの少年、百瀬が変身するぞ。
装備は原作と変わらないけれど、一つオリジナルがあるよ。それがブレイクウォッチだ。
これを使うとカイザはブレイクフォームに変身。10秒間だけ圧倒的なパワーで活動ができる!
ちなみにカイザを演じた役者さんは、ウルトラマンメビウスにも38話ゲストキャラとして登場しているぞ。
その際のギャップに驚いた人も多いんじゃないかな!
………
ブレイクフォームの元ネタはファンが作ったコラ画像です。
カイザは色々な人から愛されてますね。村上氏と井上氏の写真は何時見ても笑っちゃう。