Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

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読者どの!
拙僧の書くスピードと新ライダー達の登場スピードが噛み合っておりませんぞ。
申し訳ありませんぞ! でもやっぱりゴースト達が出るとしてもオリジナルキャラになりそうですぞ!
15話、はじまりますぞ!


SONG15 友情よサヨウナラ

 

 

悲鳴が聞こえる。

各地で爆発が起こり、今はもう青の兵士も黄の兵士も混じって逃げ惑っていた。

その中を蠢く黒、大ショッカー戦闘員が特徴的な声を上げながら動き回る。

武器は素手か小型のナイフ、戦闘能力も大人の男よりも僅かに上程度しか無いが、それでも数が加われば話は変わる。

逃げ惑う人々を押さえつけ、ナイフで一突き、ただの人間にはそれだけで致命傷となる。

 

そして戦闘員は戦闘員。

本命の怪人達は各地に出現し、この世界を破壊しようと試みる。

青の国、緑の国、黄の国、安全な場所などどこにも無い。世界は恐怖で覆い尽くされるのだ。

定期会、大ショッカーは世界を終わらせる事でもその力を強化できる。故にこうして定期的に一つの世界を集団で狙い、確実に終わらせようとする。

黄の国では数々の怪人が暴れ周り、ロギー達の仲間もまたそれに合わせる様に姿を見せた。

 

 

「吹き飛べぇえッ!!」

 

 

爆発が起こり建物や人が崩れ落ちていく。四散する肉体を踏みにじり進行するのは大きな戦車であった。

先程の怪獣、リッガー程はあるだろうか? ハッチから身を乗り出しているのは大ショッカー怪人アルマジーグ。逃げ惑う人々の背を見ながら進撃を続けていた。

一方別の場所では巨大な砂の渦に多くの人々が飲み込まれている。その砂の中心でアリジゴクロイドは顔を覗かせる。

 

 

「クカカカ! 感じるぜぃ、圧倒的な恐怖、絶望! 心地が良いねぇ」

 

 

もがき苦しむ人々は必死に砂の中から這い上がろうと手を伸ばす。

しかし無駄、徐々に体は砂に沈み、人々の悲鳴さえも砂塵が飲み込んでいく。肺が砂を満たし、恐怖はより高まっていく。

 

 

「ギャアアアアアアアアア!!」

 

「ヒィィィッ!」

 

 

別の場所で逃げ惑う人々には共通する特徴があった。

それは片腕が無かったり、耳が片方無かったり、中には足が無くて這いずり回っている者もいる。

しかし走れば走る程無くなるパーツは増え、最終的にはその体に多くの線が走りバラバラになっていく。

 

それを行ったのはカマキロイド。

彼女はあえて人間体になり、飛び散る鮮血を露出の多さゆえに晒された肌で受け止める。

新鮮な血を浴びる事は彼女にとって美しくなる手段なのだろう。頬に散った血を舐め取り、カマキロイドはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「フフフ、イヤだねぇ。逃げても無駄なのに」

 

 

その通りだ。かろうじて逃げ延びた人々の上に散布する霧。

それを浴びた者達は次々に融解していく。せめてもの救いは融解スピードが速い事か。

皮膚が焼け爛れ激しい熱を感じれば最期、後は一気に肉が溶け臓器がグズグズになり骨へと変わる。

 

 

「シュシュシュ!」

 

 

カニロイド。強力な酸を発射し人々を無に還していく。

この僅かな時間で一体どれだけの人間が死んだのだろうか? 何人? いや何十人? いやそれも違う。

まもなく、何百人以上の人が死ぬ。

 

 

「素晴らしいですわ。いつ聴いてもこの音は魂に響く」

 

 

丘からその地獄を見下ろすのは一見すれば怪人とは思えない程可愛らしい姿の少女だった。

黒い髪、控えめな髪飾り、リボンのついたワンピース。ニーソから見える素足は多くの男性の心を魅了しそうだ。

彼女の名はクルス。右には部下のチェーンソーリザード、左にはシザースジャガーが立ち構えている。

一方クルスに微笑みかけるのはマヤ、どうやら大ショッカーを裏切っている様なのだが、それを悟られては死が待っている。完全なポーカーフェイスを浮べて腕を組んでいる。

 

 

「悪いわね、クルス。わざわざ来てもらって」

 

「いえ! マヤ様のお役に立てて私光栄です!」

 

 

目を輝かせるクルス。マヤは笑顔の裏でため息をついていた。

面倒な娘。何も知らないのはある意味、愚かな人間と同じなのか。

まあもちろんとマヤもこの先にある景色など想像も付かない。破滅か理想か、ましてや滅び。それはある種背徳的な快楽をマヤに与え、妖艶な笑みが自然に零れた。

 

 

「一体何が起こっているんだ……!」

 

 

王城前のカイはその混乱を見つめ汗を浮かべている。

本当にリンネを倒せば終わるのか? カイの周りにいたメビウスやハッピーたちも圧倒的な恐怖に心が折られそうだった。

次々に迫る黄の兵やショッカー戦闘員をなぎ払うが、闇が晴れる感覚は無い。誰を守ればいい? 誰を助ければ良い? そのジレンマが苦痛となって心を刺した。

 

 

 

 

そんな悲鳴も苦痛も知らない男達は、ただひたすらに剣を打ち付け合っていた。

 

 

「グッ!」

 

「ウガッ!」

 

 

同時に地面に叩きつけられたディケイドとビギニングガンダム。

ビギニングは盾を構えていた為衝撃は少ない。だがしかし問題はそこではない。

盾は不要と悟ったか、レイジは盾を振るって内蔵されていた筒のような物を三本上に飛ばし、直後盾を投げ捨てた。

 

 

「ユウスケに会ったぜ! お前の事を心配してた!」

 

 

三つの筒をライフルで撃ちぬくビギニング。

荒々しい性格のレイジだがその操縦スキルは相当繊細な物。

空中に旋回した三つの筒はライフルの衝撃を受けてディケイドの元へ飛来。その途中で発光、サーベルを生やして武器と変わる。

地面に落ちているサーベルは一本、どうやらビギニングの最大の特徴はビームサーベルの量らしい。両肩に三本ずつ、さらに盾に三本。計9本の剣がビギニングにある。

 

 

「何を心配する事がある? 俺は俺だ、変身!」『カメンライド』『デンオウ!』

 

 

ディケイドの前に現れる赤い装甲。それは飛来してきた三本のブレードを弾くと地面に落とす。

そしてディケイドに装着される装甲、その姿は電王ソードフォームへと変身を果たす。

 

 

「ユウスケは何も理解していない。ただ甘く、愚かな男だ」『アタックライド』『デンガッシャー!』

 

「それが親友にかける言葉かよ!」

 

「すべては過去だ。零れ落ちる砂を誰も止められない。未来は確定された真実だ。俺がいまココにいる事こそが未来の証であり、過去の否定にも繋がる」

 

 

右手にはライドブッカー、左手にはデンガッシャー、ディケイドは二つの剣を振るうと威嚇の意を示す。

 

 

「俺は過去に、興味が無い」

 

 

だがそれは全く効果が無い。ビギニングはライフルを腰に戻すと、その手をグッと握り締める。

 

 

「るせぇよ! つうかお前――ッ、何冷静に喋ってんだ……!」

 

「は?」

 

 

話を振ってきたのは其方の方だと言うのにおかしな話だ。

ディケイドはつい間抜けな声を出してしまった。

一方肩にある柄を二本掴んで引き抜くビギニング、二刀流となってディケイドの方へと飛行する。カッと目が光った、それはレイジの想いに呼応しているからだ。

 

 

「テメェは今、弟を殺したんだろうがァアアア!!」

 

「グッ!」

 

「何でそんな冷静なんだよッッ!」

 

 

ビギニングの衝突を受け止めるディケイド。

四本の刃が絡み合い、ディケイドの顔面とビギニングの顔面がぶつかり合い、脳に衝撃がビリビリと伝わってくる。

双方全力を込め剣を押し付けあう為に、バチバチと火花が常に散っていた。

 

ビギニングの力が伝わる。レイジの想いが伝わる。

成る程、見ず知らずの亘の為に怒り、ユウスケの肩を持つ、それがレイジと言う男であると。

中々真っ直ぐな性格の様だ、しかしそれだけディケイドの不快感も上がる。

 

 

「だったらまずは一つ聞かせろ!」

 

 

競り合いに勝ったのはディケイドだった。

大きく振るった剣がビギニングの腕を打ち、ビームサーベルを手から吹き飛ばすと上の方へ打ち上げた。

ディケイドはそのまま踏み込み剣を振り払い、ビギニングは回避のために後ろへ下がっていく。剣が装甲に触れるか触れないかの紙一重、この緊迫した状況下で二人は会話を続ける。

 

 

「レイジ、お前の正義は何だ!?」

 

「正義だと!?」

 

「ああそうだ! 俺には成すべき目的、目指すべき正義がある!」

 

 

その為には亘が邪魔だった。実の弟を殺す事も厭わない程の目的、目指すべき道がある。

 

 

「それに家族なんざ、戦いの前では――、戦争の前では意味を成さない!」

 

 

極論、兄弟など血が繋がっているだけだ。

所詮同じ女の股から生まれただけだ。そんな物で絶対の信頼と絆を約束するなど馬鹿げている話ではないか。

ならば家族は皆仲良くするべきなのか? どんな事があっても共に戦うべきなのか?

笑わせるなとディケイドは叫ぶ。つまりの所、人の絆とは時間や思いに左右されるものだ。

家族とは過ごす時間が長いからこそ親しみや共感を覚えるもの、だから協力し合うのだ。

 

 

「家族の絆、仲間の絆! 俺にはそれらを全て超える想いが湧き上がった!」

 

「それがお前の言う正義か!」

 

「そうだ! だから教えろ! お前はどんな正義を持つ!!」

 

 

会話中ではあるがディケイドは本気で剣を振るっていた。

本気でビギニングを破壊するつもりで剣を突き出していた。

たとえ会話の途中でビギニングが死のうとも構わない。これはある意味独り言なのだから。

しかしビギニングは食い下がる。回避の中で、まだその瞳は光っていた。

 

 

「ゴチャゴチャ面倒な事を語るつもりはねぇ!」

 

「!」

 

 

ビギニングはそこでビームバルカンを発射。

ディケイドは予想外の攻撃に対応できず、全身から火花を上げて動きを止めた。

その隙に手を下に伸ばすビギニング、そこにはなんと先ほどディケイドが電王になった際に弾き飛ばしたビームサーベルの柄が落ちていたのだ。

ビギニングはしっかりとサーベルの行方を目で追っていたのだ。

 

 

「オレは好きなヤツの味方をして、嫌いなヤツをぶっ飛ばす!!」

 

 

拾い上げたサーベルを振るう。

それはディケイドの剣をすり抜ける様にして命中。

胴体から熱い火花が散った。呻くディケイド、さらにビギニングは素早くライフルを抜いて銃口をディケイドの脇腹に押し当てる。

ゼロ距離射撃。衝撃に後退していくディケイドと、ブーストでピッタリと張り付いていくビギニング。

ああ何と皮肉なものかとビギニングは――、レイジは思う。ガンプラバトルは遊びだった、誰も傷つかないからこそ熱くなれた。

しかし今は怒りの炎で熱くなっている。こんな馬鹿な戦いは一刻も早く終わらせなければならない。

 

 

「ぐッ!」

 

 

壁に激突し、石レンガの壁にめり込むディケイド。

もらった、ビギニングはライフルをディケイドの眉間に向ける。

 

 

「!」

 

 

しかしエンジン音。

危険を察知したビギニングは瞬間的な判断力で後ろに跳ぶ決断を取った。

それは正解、何故ならば押し出されている間にディケイドは遠隔操作でマシンディケイダーを自身の背後に来る様に操作した。

結果壁を破壊して飛んでくるバイク、つい先ほどまでビギニングが立っていた場所にタイヤが通る。

 

石の破片と共に着地するマシンディケイダー。

ディケイドはバックルを開きつつ搭乗、カードを放り投げつつハンドルを掴みエンジンを吹かす。

タイヤがキュルキュルとその場で高速回転。直後ウィリー走行でロケットスタート。

 

 

「殺す!」『フォームライド』『デンオウ・ガン!』

 

 

紫の装甲が付与。同時にデンガッシャーもガンモードに変わる。

ライドブッカーは銃に変わり、ディケイドはハンドルから手を離して二丁拳銃をありったけに乱射する。

前方にいたビギニングはビームバルカンで応戦。双方の連弾がぶつかり合い、激しい破裂音をかき鳴らす。

 

 

「チィイ!」

 

 

マシンディケイダーが迫り、ビギニングは横に転がる事で突進を回避して見せた。

しかしディケイドは素早く銃を腰につけるとハンドルを思い切りきって高速旋回、タイヤの痕が王座の間に刻まれ、煙を上げる。

そして再びウィリーで発進。ビギニングをひき殺そうと複眼を光らせた。

 

だがしかし二度も同じ手を喰らう程ビギニングは弱くは無い。既にパターンは見切った。

手に持っていたライフルを戻し、一本のビームサーベルを投げ捨てると、もう一方の肩にあった三本のビームサーベルを抜き取る。

これで9本全てを使う事になるが、最後の三本の使い方はこれまた奇抜であった。

指と指の間に剣の柄を挟む事で、三本のサーベルを同時に持ったのだ。それはまさに光の爪、ビギニングは立ち構え、ゆっくりと腰を落として神経を集中させる。

 

 

「叩き落してやるぜ、ディケイド!」

 

「ハッ! できるかな、お前に!!」

 

 

アクセルグリップを回して速度を上げるディケイド。

距離は近づき、双方今がまさに好機とも呼べる位置にまで距離は詰まる。

そこで同時にアクションを起こす二人、まずディケイドは車体を倒し、滑る様に地面を移動する。

摩擦からか軌跡には火花が散り、これで剣を回避できるだろうと思っていたのだろう。

 

――が、甘い。

ビギニングもまた飛んでいたのだ。正確には浮遊とでも言えばいいか、剣を構えたまま上昇。

すくい上げるようにして剣を振るう事で縦方向は全てビギニングのものになる。当然ディケイドがどれだけ姿勢を低くしても剣の範囲には入っている。

 

 

「甘い!!」

 

「何!?」

 

 

しかしディケイドは大きく身を乗り出してバイクの上に移動、車体を蹴って何と上空高く飛び上がった。

そして距離はゼロに。上からディケイド、ビギニング、マシンディケイダーとなった位置。

ビギニングが剣を振るいマシンディケイダーに剣が接触しようと言うところでディケイドは真下に銃を乱射、ビギニングの装甲に激しい衝撃を与える。

 

 

「ぐッッ!!」

 

 

中にいたレイジに伝わる衝撃。

だからなのか動きが止まってしまう。

そうしている間にバイクはビギニングの真下を通り抜け、ディケイドはビギニングを飛び越える様にして再びバイクに乗り込む。

そして車体を押し上げて元に戻すと、ディケイドはシートの上で仰向けになり腕を伸ばした。

背後にいるビギニングへ向けて再び二つの銃を連射。なんとか振り返るものの、全身を打つ弾丸に苦痛の声をあげるビギニング。

 

 

「ついて来い、レイジ」

 

「――ッの野郎!!」

 

 

王座の間を飛び出し廊下を走るディケイド。ビギニングもブーストで飛び上がるとマシンディケイダーを追いかける。

右手には爪の様に構えた三本のビームサーベル、左手にはビームライフルを構え、それを連射する。

しかしディケイドも器用にビームを避けながら加速、中庭に続く通路にやって来た。

長い直進通路。逃がすわけには行かない。加速するビギニング、一方ディケイドはカードを構えて我夢を呼ぶ。

 

 

「出番だ我夢!」『ファイナルフォームライド』『ヒヒヒヒビキ!』

 

 

戦闘には参加していなかったが王座の間にいた響鬼はヒビキアカネタカに変身。

甲高い鳥の鳴き声を上げるとディケイドを追いかける。

 

 

「!」

 

 

背後から気配を感じて振り返るビギニング。するとそこには風を切り裂き飛来する巨大な赤い鳥が。

 

 

「うおッッ!?」

 

『司先輩、僕はどうすれば?』

 

「ヤツを潰せ!」

 

『分かりました!』

 

 

ビギニングに纏わりつく様に嘴や爪で攻撃を仕掛ける響鬼。

ビギニングも広く動ける中庭に出て上空高くで響鬼ともみ合う。巨大な体のヒビキアカネタカ、ビギニングはライフルやサーベルを用いて何とか張り合っていた。

それだけではなく隙を見てディケイドの方へライフルを発射、そこまでできる余裕と周りを見る能力、侮るのは危険だとディケイドに教えてくれる。

 

 

「フッ!」

 

 

首を動かす事でディケイドは紙一重でライフルの弾丸を避けた。

プラス、ココでディケイドはカードを使用。ファイナルアタックライド・ヒビキ。

響鬼の全身を赤い炎が包み、それだけスペックを上昇させる。パワーとスピードが上がり、響鬼の突進をビギニングは受ける事に。

 

 

「汚ぇぞ司! タイマンで戦え!!」

 

「何を勘違いしているレイジ。コレは戦争だ。ただの戦いじゃないんだよ」『アタックライド』『マシンディケイダー!』

 

 

灰色のオーロラがディケイドの姿を包むと、直後、ビギニングの背後にオーロラが出現、そこから飛び出す様にディケイドが姿を見せた。

世界がスローモーションになる。ビギニングの横を通っていくディケイド、その手にはデンガッシャーがあり、銃口がビギニングの目に映る。

だからレイジもビギニングの腕を操作して、合わせる様にビームライフルをディケイドの方に向けた。

重なり合う視線、交差する銃口。

 

 

「レイジ、俺も同じだ――」

 

 

発砲。

ディケイドの弾丸はビギニングのライフルを持つ手に当たり、ビギニングの弾丸はディケイドのデンガッシャーを持つ手に当たった。

火花が散り、煙が手に上がる。衝撃から武器を落とす両者。しかし既にディケイドはもう一方の手にあったライドブッカーの銃口を向けていた。

 

 

「俺もまた、気に入らない者は全て破壊する」

 

 

故に、ある種、レイジと司の想いは共通している。

正義、それは戦う理由だ。誰の味方をし、誰を排除するのか、ディケイドには明確なビジョンがある。

そしてその上で司はある一つの思いを掲げている。だからこそ司は思うのだ。戦いにおいて最も必要なのは力だ。

が、しかし、力だけでは勝てない。それは獣と同じだから。人は心がある。何かを考える、何かを想う事ができる。

それが力を与え、勝利への執着を生ませるのだ。ディケイドにはそれがある。断言してもいい。

 

 

「俺は、お前には負けない」

 

「グッッ!!」

 

 

ディケイドが撃った弾丸がビギニングの顔面に命中する。

火花が視界を隠し、衝撃はより強くレイジのいるコックピットへ流れていく。

そしてディケイドは金色のカードを発動する。ファイナルアタックライド・ディケイド。

響鬼はその両足でビギニングの肩をガッチリと掴むと変形を開始、ヒビキオンゲキコとなり地面に墜落する。

 

 

「ぐぁ! 動け――ッ! 動けねぇ!!」

 

「俺の、俺達の想いは全てを超える」『ファイナルアタックライド』

 

 

バイクのシートを蹴って上空高く飛び上がるディケイド。眼下にて磔にされているビギニングに向けてエネルギーチャージを開始する。

紫色の力がライドブッカーに収束、大きな光の球体となっていく。降下していくディケイド、ビギニングとの距離が近く、近く、近くなっていく。

 

 

「俺の正義は、不滅だ」『デデデデンオウ!』

 

 

引き金を引いた。放たれるワイルドショット。

紫電迸るエネルギーが眼下を照らす。言葉は要らない、響鬼はオンゲキコから通常時の響鬼に戻ると、地面を転がりビギニングから離れる。

そして着弾。動きを止めたビギニングに命中する弾丸、爆発を起こし、装甲が弾け飛んでレイジは現実世界に引きずり出される。

 

 

「ガハッ! ぐッッ!!」

 

 

超過ダメージに耐えられなかったのか、ビギニングガンダムのプラモデルは粉砕されると破片を撒き散らしながら地面に落ちる。

一方で地面を転がるレイジ、呼吸を荒げ、ディケイドを睨み付ける。

 

 

「テメェ……!」

 

「レイジ、お前は強い。だがしかし俺の正義は超えられない」

 

 

そこで軽快な音が。ディケイドはケータッチを取り出すと通話のボタンをタップする。

するとダブルの声が。別行動をしていた彼等が何かを見つけたらしい。

 

 

『ディケイド様、ちょっと……急いだほうがいいかも』

 

「分かった。我夢、行くぞ」

 

「はい」

 

 

再び響鬼はヒビキアカネタカへ。

ディケイドは響鬼の足を掴むとそのまま空に舞い上がり、レイジから離れていく。

立ち上がり踏み込むレイジだが、当然彼に空を飛ぶ術は無い。ビギニングは破壊されており、修復するにしても道具が無い今は何もできない。

 

 

「クソッ!!」

 

 

石を蹴るレイジ。悔しげな彼の表情を見る者は誰もいない。

いや、しいて言うのであれば響鬼が密かに放っておいたディスクアニマルだけだろうか?

透明化し、レイジを背後から見つめる瑠璃狼。しようと思えば今すぐレイジの首に噛み付き、絶命させる事もできるのかもしれない。

しかし、それはしない。何故か? それは響鬼だけが知っている事。

 

 

 

 

 

 

「――ッ!」

 

 

メイ、クウガ、アギトはリンネ王女を追おうと走り出したのだが、三人は今現在、立ち止まっている。

城に続く並木道、そこから灰色のオーロラが出現し、三体の異形が姿を見せたのだ。

丁度その三体と鉢合わせになる形となり、動きが止まったわけである。問題は現れた異形が明らかに『力』を放出していると言う事だ。

 

 

「フム、どこかで会ったか?」

 

 

トカゲを人型にした様な怪人、トカゲロン。その右隣には西部劇のガンマンを思わせる怪人、バットオルフェノクが。

そして左隣には文字通りハサミムシを人型にした、ハサミムシ怪人が。

トカゲロンはクウガとアギトの姿を見て唸り声を上げる。どこか記憶の隅に二人の姿があった様な。

しかしクウガとアギトからしてみれば何の話か分からない。しかし一つ分かる事があるのならば、目の前に現れたのは敵だと言う事だ。

 

 

「気のせいだろ、覚えてないぜこんな奴ら」

 

 

気だるそうに首を回すバット。しかし出会った者は出会った者だ。

クウガとアギトの敵意を感じ、トカゲロンは鼻を鳴らす。部下の二人に命令を出して下がらせると、クウガとアギトに向かって手招きを。

 

 

「来い、相手をしてやる」

 

「ッ、メイさん。下がってて!」

 

「え、ええ……!」

 

 

異形の力を感じて後ろに下がるメイ。

一方で有無を言わさずクウガとアギトは走り出した。拳を握り締め跳躍、トカゲロンに向けて二つの拳が迫る。

 

 

「「!」」

 

 

しかし衝撃。突き出した拳はトカゲロンに届く前にピタリと止まる。

それだけでなく衝撃に弾き飛ばされるクウガとアギト、二人はすぐに立ち上がるが、今のはいったい?

正解は、トカゲロンの右手にあった球体、バリア破壊ボールであった。

結界を発生させる事ができる装置は、トカゲロンの意思一つでクウガとアギトの攻撃を遮断するシールドを発生させる事ができるのだ。

 

 

「ムンッ!!」

 

「ッ! こ、これは!!」

 

 

巨大なドーム状の結界がトカゲロンとクウガ、アギトを閉じ込める。

そこでトカゲロンは持っていたボールを上空に投げ、直後みずからも飛び上がった。

 

 

「必殺シュートッ!!」

 

 

トカゲロンの右足が発光しエネルギーを纏う。

その足で繰り出された蹴りによって、同じくエネルギーを纏いながら飛んでいくボール。

すさまじいスピードで飛来する弾丸に、なんとかクウガ達は反応して左右それぞれに回避を行う。

しかし直後、過ぎ去ったボールはドーム状の結界に命中して反射、その際の軌道もトカゲロンが設定できるのか、クウガの方にボールが飛んでいく。

 

 

「グガァア!」

 

 

反応が遅れたのか背中でボールを受けるクウガ。

すさまじい衝撃に内臓や骨がグシャグシャになる感覚を覚える。呼吸が止まり、直後前方に転がっていく。

アギトはすぐにクウガを助けようとするものの、既にトカゲロンが眼前に迫っているところだった。

体を捻らせ、巨大な尾をふるってアギトに接近戦をしかけていく。アギトとて拳をふるって尾をはじくと、直後は蹴りで反撃を狙う。

だがそこへ同じく腕が迫りブロック、どうやらトカゲロンも接近戦には慣れているらしい。

 

均衡する肉弾戦。

しかしアギトは忘れている。トカゲロンの武器は拳でも尾でもなく、バリア破壊ボールなのだ。

トカゲロンの斜め後ろにちょうど迫ったボール。それを確認すると、トカゲロンは紅い目を光らせてレーザーを発射する。

細長い閃光がアギトの肩に命中し、動きを鈍らせる。その隙にトカゲロンは両足を揃えて地面を蹴った。

 

 

「爆裂シュート!!」

 

「ぐわぁああああ!!」

 

 

オーバーヘッドキックにより放たれたのは紅蓮に光るボール。

それはアギトの足元に直撃すると、直後大爆発を起こす。

ドームの中に広がる爆炎、それは当然倒れているクウガと、その腰についていた薫にもダメージを与える。

 

 

「みんなっ!」

 

 

ドームの外で息を呑むメイ。トカゲロンは自分の周りにバリアを発生させ爆風を防いでいた。

一方で爆風に吹き飛ばされ宙を舞うアギト。ドーム状の結界に背が当たると、そこに貼り付けられ、動きが止まった。

トカゲロンは手を前に出し、大ショッカーのマークと同じ形をした結界を形成させる。

そこで丁度足元に転がってきたボールを見つめ、思い切り大地を踏みしめる。

 

 

「炸裂シュート!!」

 

 

トカゲロンが紋章にボールを当てると紋章が粉々に砕け散り、その破片が弾丸となってアギトの前身に突き刺さっていく。

全身から火花が散り、地面に倒れるアギト、うめき声を上げて動かなくなった。

 

 

「兄貴!」

 

「お前も終わりだ! 必殺シュート!」

 

 

手を伸ばすクウガだが、まだダメージと衝撃で立ち上がることができない。

その背に叩き込まれたバリア破壊ボール。クラッシャーから吐血し、クウガは再びうめき声をもらす。

しかしまだ終わらない。クウガに命中してバウンドしたボール、そこへトカゲロンは再び足を重ねる。

 

 

「ワンッ!」

 

 

再び蹴られたボールは、とうぜん再びクウガの背に。

 

 

「ツーッ!」

 

 

さらにバウンドしたボールを蹴り飛ばし、またクウガに命中させる。

あまりのダメージでクウガは地面にめり込む形になった。そして当然、再びバウンドするボール。トカゲロンの右足に再びエネルギーが宿る。

 

 

「スリーッ!!」

 

「がぁぁああぁあッッ!!」

 

 

三発目でトカゲロンは丁度地面に着地。

一方で変身が解除されたクウガ。ユウスケは大量の血を吐き出し、体は完全に地面に埋まっている。

 

 

「どうした! コレで終わりか? 俺はまだ全くダメージを受けていないぞ!」

 

「――ッ」

 

 

甘かった。アギトは立ち上がろうとするものの、まだ体の中に衝撃が走っている。

まさかココまでレベルが違っているとは。あまりにも大きすぎる力の差、このままでは確実に負ける。

そして負けるとは――、死を意味する事であり、それはアギトにも分からぬ話ではない。

まだ仲間にはメイもいる。そして敵にはトカゲロンの両隣に控える者もいる。アギトにはもう迷っている暇は無かった。

 

 

「!」

 

 

アギトは全身を叱咤し立ち上がると、ベルトの方に手をかざす。

するとアギトのベルトが変化。オルタリングが赤と紫を基調とした物に変わる。そして直後、アギトの体を紅蓮の炎が包み込んだ。

 

 

「ゴォォオオオォォオォオォオオオッッ!!」

 

 

知的で常識があるのが翼という人間だ。しかして今、アギトの口から放たれた言葉は獣の鳴き声のソレである。

アギトのクラッシャーが開き、そこから放たれる絶叫が周囲の結界を破壊していく。

崩れ落ちるバリアの破片の中で、トカゲロンはアギト・バーニングフォームと睨み合っている。

 

 

「グルルルルルルル!!」

 

「なんと――、愚かな! 理性の欠片も残っていない。まさに獣か!」

 

 

トカゲロンはアギトの周りにバリアを張って動きを封じようと試みる。

しかし前傾姿勢となったアギトは迷わず前進。自身の行く手を阻むバリアをなんの事は無く破壊してみせる。

これがアギトの力なのだ。バーニングフォームは自らの行動を縛る存在や概念を破壊する事ができる。

バリアも例外ではなく、アギトは拳に炎を宿して一気にトカゲロンへ距離を詰めていった。

 

唸り声を上げ、アギトは立ち構えるトカゲロンのわき腹にボディーブローを打ち込んだ。

黒煙を上げながら地面を擦って後ろへ下がるトカゲロン。しかし、バーニングの拳を受けたにもかかわらず、僅かに鼻を鳴らす程度に終わった。

 

 

「なるほど、力はある。力はあるが――」

 

 

所詮、それだけだ。トカゲロンは殴られた部分を払うと、地面に転がっていたバリア破壊ボールを蹴り上げて手に取る。

するとボールについているバリア発生装置の突起の一つが開閉、その中には一本のメモリがあり、トカゲロンはそれを取り出した。

 

 

「ショッカーの科学力の前では、もはやお前の強さは旧時代、取り残された産物でしかない」『ベロクロン!』

 

 

ガイアメモリを首筋に差し込むトカゲロン。

するとその全身に赤い突起物が出現し、トカゲロンの姿が別形態へと変化していく。

皮膚はデコボコしたものになり、鼻先には金色の角が。

 

トカゲロン・フォルムベロクロン。

トカゲロンが両手を広げると、全身にあった赤い突起からミサイルが発射された。

アギトの視界を覆いつくす程のミサイルは、次々に着弾していき大爆発を巻き起こす。

 

 

「翼さん!」

 

「ッ、駄目! 薫ちゃん、無理よ!」

 

 

薫は武器から人間体に戻ると、アギトの方へ駆け寄ろうと足を踏み出す。

しかしそれをとめるのはメイだ。彼女は薫の腕をつかんで爆風の衝撃に飲み込まれない位置に逆走していく。

不安そうな表情の薫だが、メイも既に理解していた。この状況、自分たちに勝利はないと。

 

 

「ゴガァアア! ギガガガァアッッ!!」

 

 

バーニングフォームでも無効化できない障害は『攻撃』以外に他ならない。

拘束技ならばまだしも、攻撃による『怯み』は受け入れるしかない。次々に命中していくミサイルは完全にアギトの動きを封じ込めた。

アギトも回避行動に移ればいいのだが、翼はバーニングフォームの力の衝動を抑える精神力が無い。

故に攻撃行動のみを優先させようとする思考が、回避という選択肢を消してしまう。故に完全に泥沼に嵌った状況だった。

 

そしてミサイル攻撃がいったん中断されると、そこには黒煙を上げてボロボロになったアギトが。

バーニングフォームは時間経過と共に、肉体が崩壊してしまうデメリットがある。亀裂は既に全身に広がっており、お世辞にも良い状況とはいえなかった。

 

 

「兄貴……ッ!」

 

 

ユウスケは尚も血を吐き出しながら、何とか力を入れて立ち上がった。

しかしトカゲロンは一発ミサイルをユウスケの前に着弾させ、問答無用でユウスケを吹き飛ばす。

一方再びボールからメモリを取り出すと、それを起動させる。

 

 

「弱すぎる。守れるだけの強さ、ましてや意思がない!」『ブラックキング!』

 

 

再びトカゲロンの姿が変化する。

体の色が黒に変わり、頭や腕からは湾曲した金色の角が生えてきた。トカゲロン・フォルムブラックキング。

トカゲロンは走り出すと、太くなった腕でヨロけているアギトの胴に渾身のストレートを打ち込んだ。

薫の悲鳴が聞こえる。アギトは肉体の破片をばら撒きながら後方へ吹き飛んでいく。

ああ、ああ、ああ。察するメイと薫。事実、アギトはすぐに立ち上がるものの、右腕が砕けて存在していなかった。

 

 

「ギッ! ガガッ! グッ!」

 

 

一歩前に出るアギトだが、左足が砕け散り、アギトは地面に倒れた。

限界がやってきたのだ。それでもアギトは変身を解除しない。解除できない。その意思が、強さが無いからだ。

 

 

「ゴッ! ゴゴッ!」

 

 

あるのはただ闘志のみ。目の前にいるトカゲロンを殺そうとする意思に操られ、アギトはただひたすら前に出て行く。

なんて愚かな。肉体の崩壊は次々と起こり、ついには両足が無くなった。それでも腕の力のみで前進していくアギト。

仮にトカゲロンの下にたどり着いたとして、どう攻撃するつもりなのだろうか?

 

 

「そうだ。醜すぎるぜ、先生よ」

 

「ゴオォォ――ッ!」

 

 

だから、終わらせてやるのが一番だろう。

優しさだ。そう、これは恩返しだ。今まで色々な事を教えてくれた恩返し。

であるならば、ディケイドのやった事は間違いなどではない。突如、空から飛来したディケイドはライドブッカーの剣先をアギトの脳天に突き入れた。

剣はアギトを貫通し、顎から剣先を突き出す形になる。既に肉体が限界を迎えていたアギトは脆く、ディケイドも驚くほどあっさりと剣が突き刺さった。

 

 

「これで10人目」

 

 

アギトは死んだ。肉体は崩壊していき、剣に刺さったのは首だけ。

ディケイドはそれを適当に投げ捨てると、目の前にいるトカゲロン達を睨みつける。

上空にはヒビキアカネタカ、ハードタービュラー、エクスモードとなったカブトエクステンダーが浮遊しており、同じく目の前にいる敵を睨みつけている。

 

 

「貴様……、何者だ」

 

「俺はディケイド。破壊者だ」

 

 

一触即発――、まさにその時だった。

 

 

「翼さんッッ!! うあぁッ! あぁあぁぁあああ!!」

 

 

薫はメイの制止を振り切ると、涙を流し頭だけになったアギトを抱えて泣きじゃくる。

軽いパニックを起こしているのか、たまに笑い出したり、悲鳴をあげたり、見ているだけで痛々しい姿であった。

同じく倒れながらも兄の死を確認したユウスケ、彼はただ呆然と虚空を見ており、涙を流すだけだった。

 

 

「……チッ、削がれたな」

 

 

舌打ちを放つトカゲロン。このまま戦ってもいいが薫がうるさ過ぎる。

黙らせるのが一番だが、トカゲロンは女子供を無駄に殺すことを嫌う。結果、ココは撤退を選んだようだ。

後ろ跳ぶとオーロラを出現させ、バットオルフェノク達もろとも完全に消滅する。

一方で口笛をふくディケイド。これは好都合だ。ライドブッカーの刃をなぞると、視線を薫へと向ける。

 

 

「安心しろ薫。すぐにお前も同じ場所へ送ってやる」

 

「止めろッッ! 止めてくれ司ァアア!!」

 

 

そこで事態をようやく飲み込んだのか、ユウスケが悲鳴を上げて薫の前に出た。

体がボロボロなのか、再び吐血しながら崩れ落ちるユウスケ。一方でそんなユウスケを見ながらもまだヘラヘラ笑いながら泣いている薫。

どうやら壊れてしまったようだ。アギトの首を抱えながら怯え、震えて。悲しい生き物だ、ディケイドはかつての友の姿をそう言い捨てる。

 

 

「ユウスケ、まだ俺に友情を感じているんなら、そのまま黙って殺されてくれ」

 

「分かった! 分かったから! 頼むから薫は逃がしてくれ!」

 

「断る。薫も殺す。それは絶対だ!」

 

「頼む、お願いだ司! どうして、どうして駄目なんだよ!!」

 

 

駄目だ、話が通じない、ユウスケは歯を食いしばると薫を抱え起こすとディケイドたちから逃げだそうと地面を蹴る。

追いかけようとするディケイドだが、その時、メイが剣を構えて前に立った。

 

 

「なんのつもりだ? 女」

 

「こちらの台詞よ。貴方が司ね。ユウスケから話は聞いているわ」

 

「あ、そう。だったら話は早いな。どけ」

 

「断るわ」

 

 

剣を構えるメイだが、その額には汗が滲んでいる。

当然か、メイとてディケイド達に勝てるなどとは欠片も思っていない。しかしそれでも目の前で仲間が殺されそうになるのは耐えられない。

 

 

「ご立派な正義感だな。だが、お前も所詮、何も視えていない凡人だ」

 

「え?」

 

「俺達はもはや、お前のいるステージには立っていない」

 

 

メイの体に衝撃が走ったかと思うと、その体がはるか後方へ吹き飛んでいく。

ダメージは無い。が、しかし、黄色く発光するネットがメイの体を完全に拘束していた。

ディケイドの背後上空にて銃を構えていたダブル、メモリガジェット・スパイダーショックと、ルナの力を合わせた光のネットでメイを拘束し、吹き飛ばした。

メイはすぐに剣でネットを切り裂こうとするが、ネットの強度はそれなりで、もがくだけで状況は変わらなかった。

 

その間に悲鳴が聞こえる。

クロックアップでユウスケたちの前に回りこんだカブトが二人を引き剥がしたのだ。

投げ飛ばされ、地面を転がるユウスケ、一方の薫はカブトに背を蹴られてディケイドの方へ強制的に移動させられる。

途中、アギトの首を落とす薫。地面に落ちたアギトの首は粉々に砕け散り、完全にその存在を消滅させた。

そして、前のめりに移動する薫の前にはディケイドが。

 

 

「司ッ! 止めてくれ! 頼むから止めてくれ!」

 

「薫――」

 

「なんでもするから! もう二度とお前たちの前には現れないから薫だけは――ッッ」

 

「終わりだ」

 

 

ディケイドの剣が薫の心臓を貫いた。

赤く広がっていく染みを見てユウスケはこの世の終わりにでも立ち会った表情に変わる。

無理もないか、ずっと一緒だった幼馴染が目の前で殺されたのだ。それに兄だって死んだ。他の友も死んだ。だとすればこれからユウスケは何のために戦えばいいのか。

 

 

「カハ――ッ」

 

 

薫の口から大量の血液が溢れる。

ディケイドは薫の腹部を蹴り飛ばすと、剣を引き抜き、血を手でなぞった。

ヨロヨロと後退していき、仰向けに倒れる薫。駆け寄るユウスケに、ゆっくりと手を伸ばす。

 

 

「ごめんね、ユウスケ……」

 

 

血が溢れているせいか、言葉がうまく話せない。

 

 

「薫! しっかりしろよ! おい! やめろ! 目を閉じちゃ駄目だ!」

 

「ごめん……ね」

 

 

体の色々な器官が機能を停止していくのが分かる。

だからせめて、残っている手で――、薫はソッとユウスケの頬に触れた。

だがしかし、そこまでだった。薫は一瞬だけの微笑を浮かべると、その目から光が消えた。そして手を落とすと、呼吸を止めて動かなくなった。

 

 

「次はお前だユウスケ。終わらせてやるぜ」

 

「―――ァ」

 

「ッ!」

 

 

その時、黒い稲妻がユウスケの体を駆け巡った。

なんだ? ディケイドたちが一瞬動きを止めると、直後――、ユウスケの腰にアークルが出現する。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

両手を広げて天を仰ぐユウスケ。

その絶叫に呼応する様にアークルが発光し、クウガの鎧が与えられる。しかし今回は少し違っていた。というのも、ユウスケを包み込んだのは黒い鎧。

アメイジングマイティ。いや、しかしその瞳がすぐに闇の色に変わる。そして再び絶叫。するとクウガの体が更なる変化を遂げる。

 

 

「司ァアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「ッ、アルティメットか!」

 

「ァアァアアァッ! グゥゥウアァアァアア!!」

 

 

頭を抑えてフラフラとその場を歩き回るクウガ。

その姿は禍々しく変わっており、ディケイドには一つ該当する姿が思い浮かんだ。

クウガ、アルティメットフォーム。真っ黒の瞳がディケイドたちを捉え、クウガはうめき声を上げながら手を伸ばす。

 

 

「ぐぁあああ!」

 

 

するとディケイドの体が爆発する様に炎を上げる。

すぐに地面を転がり炎をかき消すディケイド。ダブルたちも危険と判断したのか、それぞれクウガを囲むように立って構える。

 

 

「気をつけろ、パイロキネシスだ! 回避しようなんて考えるな!」

 

「目に入っただけで殺せる力か。まさに化け物だね」『ヒート・ジョーカー!』

 

「プットオン!」『Put On』

 

「響鬼、紅!」

 

 

叫びながら腕を振るうクウガ。すると周りにいたダブルたちもまた炎に包まれた。

しかし炎を操るヒートジョーカー、同じく響鬼紅には通用しない攻撃だ。

二人はすぐに炎のエネルギーを吸収すると自分の力に変えてみせる。

カブトもまたマスクドフォームの厚い装甲が炎を遮断しているのか、耐えられている様だった。

内部から燃やされていればアウトだったが、どうやら現在、クウガは表面から物体を燃やすようだ。

 

 

「響鬼!」「分かりました!」

 

 

ダブルと響鬼は挟み込むようにクウガへ拳と音撃棒を当てようと走り出す。

しかしいざ攻撃が届くと言う所でクウガの姿が文字通り消失した。

何だこれは? 二人がそう思ったときには、お互いの攻撃が肩に当たり、二人は地面に倒れる。

 

 

「どこに――ッって、ゼノンくん! 横だ!」

 

「何ッ! うわああ!」『ぎゃひ!!』

 

 

ダブルの真横に突然出現したクウガは両腕をダブルの胴体に叩き込んだ。

封印の紋章が浮かび上がり、直後真横に吹き飛んでいくダブル。地面を二度程バウンドしながら苦痛に声を漏らす。

 

 

「テレポートか……!」

 

 

それを突き止めたのも束の間、既にクウガは瞬間移動で響鬼の背後を取っていた。

するとクウガの肩にあった棘が巨大化、その針先を突き出すようにショルダータックルを繰り出す。

なんとか反射的に地面を転がり回避した響鬼だが、針がわき腹を掠めると、その部分を抉り削る。

肉や骨が破壊されうめき声を上げる響鬼。しかし紅の自己修復機能が働き、損傷した臓器や肉をすぐさま元通りにしていく。

とはいえ、油断はできない。カブトはキャストオフを使用するとすぐさまクロックアップによる高速攻撃を仕掛けようと試みた。

 

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

アギト同じく獣のような咆哮をクウガは上げた。

するとすさまじい衝撃がカブトを押さえつける様にのしかかり、その動きを完全にスローにさせる。

辺りを動き回っていたカブトはもはや通常スピード、クウガは足に炎を宿すと、容赦の無いハイキックをカブトの心臓に打ち込もうと――。

 

 

「グッ! プットオン!!」『Put On』

 

 

なんとか蹴りが着弾する部分だけ装甲を戻して蹴りの威力を軽減する。

それでもアルティメットフォームの一撃はカブトを一気に後方へ吹き飛ばすと、小さな爆発がおきて砂煙の中にカブトを隠していく。

 

 

「ハァアア!」

 

 

しかしその中を突き進む響鬼。音撃棒をたたきつけ、炎を音撃鼓を展開する。

 

 

「グッ! ガァアア!」

 

「ゼノン君、双護先輩! 今です!」

 

 

音撃棒を振りかざす響鬼。音撃鼓が展開している状態ではクウガは動けない。

ダブルは一気に立ち上がるとヒートのメモリをスロットに入れて叩きつける。

 

 

「骨まで炭に変えてやる!」『ヒート! マキシマムドライブ!』

 

 

ダブルが拳を天に突き上げると激しい熱が体を走り、ダブルを中心に小規模の爆発が起こる。

そして真っ赤な炎が体を包み込んだ。ダブルはその状態で腕をクロスさせて走り出す。

 

 

「『ブレイジングヒート!!』」

 

「灼熱真紅の型!!」

 

「ライダーキック!」『RIDER KICK』

 

 

砂煙の中からカブトも必殺技を発動させて飛び出してくる。

しかしいざ三つの力がクウガに届く所で再びすさまじい抵抗感。

響鬼の音撃棒が、ダブルの体が、カブトの足があと少しでクウガに届く所でせき止められ、直後クウガが腕を振るうとすさまじい衝撃が襲い掛かり三人は吹き飛ばされる。

 

 

「ガハッ! な、なんで――ッ!」

 

「グッ、凄まじい力だな……!」

 

「サイコキネシスか! 厄介だよディケイド」

 

「問題はない」

 

 

沈黙を保っていたが、ライドブッカーを構えて走り出すディケイド、同じく走り出したクウガとぶつかり合い、激しい肉弾戦を開始する。

拳が、蹴りが、ディケイドを容赦なく粉々にしようと迫る。しかし怯まないディケイド。

まっすぐにその目でクウガの動きを読み、ライドブッカーを使ってパンチやキックをいなしていく。

 

確かにアルティメットフォームは強い。強すぎる。

しかし理性を失った状態ではその力を完全に引き出す事はできない。

対してディケイドの心には激しく燃える信念と言う炎が一つ。

殺す――、確実に殺す。ディケイドはクウガのラリアットを姿勢を低くして交わすと、ケータッチを取り外して起動させる。

 

 

「ユウスケ」『クウガ』『アギト』『リュウキ』『ファイズ』

 

「ヅガァアァアザァァアアッァアァアァアァアッッ!!」

 

「愚かだな。もはやお前はクウガではなく、ただの化け物だ」『ブレイド』『ヒビキ』『カブト』

 

 

わき腹を蹴り飛ばし、ディケイドはクウガと距離をとる。

 

 

「究極か、面白い。だが俺は――」『デンオウ』『キバ』

 

 

ボタンをタッチし終えると、ディケイドはケータッチをバックルの部分に装填する。

 

 

「既に、究極を超えている!」『ファイナルカメンライド・ディケイド!』

 

 

カードがめくれる音が響き、ディケイドのカラーリングやデザインが変わっていく。

コンプリートフォーム。ディケイドとクウガの視線がぶつかり合い、無言の競り合いが続く。

言葉はいらなかった、双方、目に宿すのは殺意。拳を握り締めたクウガ、それを解き放つ様なアクションを取ると、ディケイドの体が炎に包まれた。

パイロキネシス、しかしディケイドは怯まない、纏わりついた炎を振り払うアクションを取ると、本当に炎が吹き飛び、かき消された。

 

 

「ナ……ゼ――ッ、ミンナヲ……コロシ――ッッ!!」

 

「俺が望んだ破壊だ。全て、今も、これからも」『クウガ!』『カメンライド』

 

 

ピロリロリロリン――、と軽快な電子音が鳴り、ディケイドの胸にあるカードたちがいっせいに捲れて、絵柄を変えていく。

 

 

「俺達は、それを――、目指したんだ」『アルティメット』

 

 

ディケイドの隣にクウガと同じく、アルティメットフォームが現れる。

唯一違う点があるとすれば、ユウスケが変身したものとは違い、目が赤いという点だ。

ディケイドはさらにカードを発動。そして前に手をかざす。

 

 

「ヤアアアアアアア!!」『ファイナルアタックライド』『ククククウガ!』

 

「グアァァアアァアアアアッッ!!」

 

 

手を前に出すディケイドと、その動きにシンクロするアルティメットフォーム。

二人が発動するのは当然パイロキネシス。クウガも同じ技で抵抗を示すが、ディケイドのものは二人分なのだ。

つまり火力が違う。すぐに大爆発がクウガの体を包み、悲鳴が炎の中から聞こえた。

 

 

「お前は今、俺の姿を見ていない。俺という存在の憎悪に飲まれ、理性を失い――」

 

「グガッ! ガハッ!」

 

 

動きを止めたクウガの下に走るディケイド。怯んでいるクウガの体に容赦なくライドブッカーをつきたてていく。

コンプリートオームは常時スラッシュとブラストを発動している状態になっており、剣の威力は凄まじい。

血を撒き散らしながら交代していくクウガ、反撃をしようと試みるが、ディケイドの攻撃により体内エネルギーが暴走し、理性の歯止めが利かなくなる。

今自分が何をしているのか、今のクウガにはもはやそれも分からない。

 

 

「ユウスケェエエエエエ!!」

 

 

ふと、ディケイドもまた抑えていた感情を解き放つ様にかつての親友の名を叫んだ。

そこにはあったのはやはり怒りと殺意、そしてその想いと共に放たれた拳がクウガの頬を捉え、後ろのほうに押し出していく。

 

 

『リュウキ!』『カメンライド・サバイブ』

 

 

そこでディケイドはケータッチを操作、龍騎サバイブをクウガの背後に召喚する。ディケイドは剣を前に突き出すアクションを。

当然クウガとは距離が離れているため、ディケイドの突きは空振りに終わるが、一方で同じ動きをした龍騎サバイブが持っていたドラグバイザーツバイの刃はクウガの背に突き刺さった。

動きが止まったのを確認すると、ディケイドはファイナルアタックライドのカードを発動、自らは無数のホログラムカードと共に空へ舞い上がる。

 

 

「消えて無くなれェエエエエエエッッ!!」『ディディディディケイド!!』

 

 

通常よりも覆いデータカードを通り抜ける強化ディメンションキック。ディケイドは飛び蹴りをクウガのアークルに命中させると、龍騎サバイブの幻影と共に吹き飛ばしていく。

しかし地面を擦っていく中で再び激しい放電がクウガから発生する。黒い稲妻はより激しく迸り、周囲の地形を破壊しながらより激しさを増していく。

 

 

「これは……!」

 

 

デンデンセンサーを構えたダブルはアッと声を上げる。

どうやら、穏やかな展開とはいかないらしい。現にクウガは立ち上がり――、正確には立ち上がったというよりも強制的に立たされたといった方がいいのか。

首はダランと下にさげており、肩は斜めに上がり、まるで操り人形のような。

 

 

「ゼノン、何が起こっている」

 

「マズイね……、エネルギーの暴走だ。このままだと体内に蓄積されたエネルギーが暴発して破裂するよ」

 

「するとどうなる?」

 

「分かってるだろディケイド。クウガの爆発だ、少なくとも黄の国は吹き飛ぶだろうね」

 

「チッ、面倒な! カラス!」

 

 

ディケイドの肩に現れる黒い球体。

 

 

「ファイナルフォームライドはどうだ?」

 

『微妙だねディケイド。しかし、このままと言う訳にもいくまい』

 

「確かにな……」

 

 

するとディケイドの肩に触れる手が。

見れば、それはカブトだった。暴走し浮遊していくクウガを哀れみの目で見つめている。

もう時間が無い。ディケイドは少しだけ首を動かし、同じくクウガを見た。そしてカードを取り出す。

 

 

「――殺れぇッ! 双護!!」『ファイナルフォームライド』『カカカカブト!』

 

 

カブトの体がKデュアルゼクターへと変わる。

さらにファイナルアタックライドによって巨大な角の先に光が灯る。カブトはクロックアップを発動するとその角でクウガを捉え、ディケイドたちから離れる様に猛スピードで飛行していく。

 

 

「ガアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

暴走し、パイロキネシスを無差別に発動するクウガ。

周囲の建物や、国を俳諧していたショッカー戦闘員が吹き飛んでいくのが見える。そして当然、気づけばカブトの体も炎に包まれていた。

しかしそれでもカブトはスピードを緩めない。クウガもまた超高速の世界ではまともに物を考えることもできなかった。

ましてや、クウガは既に死んでいると言ってもいい。理性はなく、意思もまた深淵に沈んでいる。

 

 

「終わりだ、ユウスケ」

 

 

カブトがふと――、呟く。

気づけば周りは大海原だった。見渡す限りの海、遥か遠くの地平線では争いあう国同士が見える。

そして、カブトはクウガを開放した。既にエネルギー暴走のせいか、クウガの体はところどころ風船の様に晴れ上がっており、原型をとどめてはいなかった。

ふと、稲妻が走る。カブトは変身を解除して双護に戻ると、ゆっくりと海へ落ちていく。

世界が、スローモーションに見えた。落ちたクウガが発光する。双護はそれを見て、ニヤリと、終わりを悟る。

 

 

「さらばだ――、友よ」

 

 

爆発が起こった。光が双護を包むと、彼は一瞬で蒸発するように消し飛んだ。

まばゆい光が、世界を包み込んだ。

 

 

「カブト、そしてクウガの死亡を確認したよディケイド」

 

「そうか……、分かった」

 

 

ディケイドは通常フォームに戻ると、周囲を確認する。

そこにはへたり込むメイが見えた。

 

 

「これで……、満足なの?」

 

「お前はまだ分かっていないのか。これは満足の一言で済む話じゃない。終わりは無いんだ」

 

 

すると爆発の音が聞こえる。

ディケイドが視線移すと、そこにはコチラに向かってくるショッカーの軍団が。

 

 

「先輩、ココは僕が抑えておきます」

 

「そう……か。ならば頼むぞ、我夢」

 

「はい。お気をつけて」

 

「行くぞゼノン、フルーラ」

 

「オーケー、ディケイド様」『了解よぅ、ディケイド様』

 

 

二台のバイクが響鬼を置いて駆け抜けていく。

一方で音撃棒を構えた響鬼。押し寄せるショッカー戦闘員を次々に火炎弾で蹴散らしながら前進していく。

さらに隙あれば音撃鼓を押し当て、音撃の衝撃波で周囲をまとめて吹き飛ばしていく。

もはや戦闘員ごときでは響鬼の相手にはならない。

戦闘員ごときでは、だが。

 

 

「!」

 

 

手まり歌が聞こえた。

 

 

「――♪」

 

 

悲しげなリズムの歌は、ある種の不気味さをかもし出している。

それだけではなく、歌っている者の姿を見て響鬼の動きが止まった。

あの姿は――、そう、記憶にあった。そしてそれは歌を歌っている女も同じなのか、ついていた鞠を抱えると、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「まさか、こんな所で会えるとは思ってなかった」

 

「お前は、確か――」

 

「忘れたのか? いやいや悲しいねぇい。あたしはずっと覚えていたのに」

 

 

ヒトツミ。響鬼とは因縁のある関係であった。

茶色のショートカットに綺麗な着物。見た目は可愛らしいが、当然大ショッカーに所属していると言う事は――、だ。

 

 

「へえ、なかなか洗練された殺意だ。それに、血の匂いもする。ボウヤ、さては誰か殺したね」

 

「お前には関係ない。選ばせてやるよ、消えるか、それともココで死ぬか」

 

「くふふふ! 言うようになったね。うーん、でも、前の良さが消えてるなぁ」

 

 

可愛い純朴な我夢が好きだったのだが、人とは変わってしまう生き物だ、それはヒトツミもよく分かっていた。

残念だ。そしてそうなると、一種の萎えが生まれてしまう。

 

 

「この血の匂い、嗅いだ事があるね……」

 

「!」

 

 

気づけば一瞬でヒトツミは響鬼の背後を取っていた。

すぐに振り返る響鬼だが、そこにヒトツミの姿は無い。

ふと、真横を見ると、ヒトツミの笑顔がそこにはあった。

 

 

「これは――、アキラだな。おいおい、どういう事だいボウヤ? なんでアキラの血が――?」

 

「黙れ!」

 

 

音撃棒を振るう響鬼だがヒトツミの姿は捉えられない。

すると優しく肩に触れる手、ヒトツミはまたも響鬼の背後を取っていた。まるで亡霊の様に軽やかに移動するヒトツミに、響鬼は微かな焦りを覚える。

 

 

「おかしいねえ、破瓜にしては血の量が多すぎる。さてはお前――」

 

 

ヒトツミは人差し指で響鬼の背中をなぞった。

不気味で気持ちが悪い感触に強烈な不快感が襲い掛かる。

 

 

「お前、アキラを殺したな」

 

「!」

 

 

ヒトツミの舌が響鬼の首筋をなぞったかと思えば、ヒトツミの姿が化け物に変わった。

可愛らしい少女から銀の鎧を纏った化け物に、声もまた少女のものから、完全に男性の様に低いものへ変わる。

刹那、強烈な熱が響鬼の首に走った。やられた、響鬼は首を押さえて地面に倒れる。一方で租借音を響かせるヒトツミ。

響鬼の首の一部をまるまま抉り取り、血の滴る肉を味わっている。

 

 

「まさか――、鬼の装甲をこんな簡単に!」

 

「そう、顎の力は自信があって――、ね」

 

 

租借のスピードがピタリと止まった。ヒトツミは顎を押さえ、その場に停止する。

 

 

「………」

 

「ガハッ! ぐっ!! ゴホッ!」

 

 

大量に出血する首を抑えて地面を這う響鬼。紅には先ほど変身してしまったため、しばらく再使用はできない。

最悪だ、変身も解除され、我夢は血を撒き散らしながらヒトツミから逃げるために距離をとる。

 

 

「死ねない……! まだ、僕は――ッ!」

 

「ボウヤ」

 

「ッ!」

 

 

ふと、目の前にヒトツミがいた。

我夢は血走った目でヒトツミを睨みながら吐血する。

赤い血がルージュの様に、我夢の唇を彩る。青白い肌、本当に少女の様だ、ヒトツミはそこで我夢の頬を撫でて額にキスをする。

 

 

「何か、言いたい事はある?」

 

「死ね、屑が――ッ!」

 

 

首から大量の血を流しながら、我夢はニヤリと笑った。

その目にはヒトツミでさえ感心するほどの殺意がある。

だが、所詮、それはヒトツミの知っている最大の殺気ではない。怯えは欠片とて無かった。

 

 

「フフフ、可愛い子」

 

 

そして、もちろんこれは愛情のキスであり、同時に挨拶でもある。

 

 

「いただきます」

 

 

ボリッ! ガリッ! グギュッ! グチュ、グチャ、ガリリッ!

肉を断つ音、骨を砕く音、皮を剥ぐ音が聞こえる。

我夢は、あっという間に肉塊に変わった。ヒトツミは血にまみれた口をぬぐうと、ゆっくりと辺りを見回す。

 

 

「……なるほどね」

 

 

何かを納得し、彼女はきびすを返した。

そしてまた人間体に戻ると、鞠をつきながら歌をうたう。

 

 

 





☆エピナビ☆


・ガンダムビルドファイターズ


2013年10月7日から、2014年3月31日まで放送されたガンダムシリーズの一つだ!
戦争や軍事が関わってきた従来のシリーズとは違い、プラモデルを操作して戦うために人が死なないライトな作風になっているぞ。
さらにプラモデルという事で今までのシリーズに登場した機体や、それをアレンジした機体が登場する、ディケイドやメビウスと同じく、一種のお祭り作品なんだ。

ガンプラを作る才能がありながらも操作する才能が無かった主人公イオリ・セイが天才的なバトルセンスを持つレイジと組み、様々な強敵たちと戦うストーリーになっているぞ。
この作品ではレイジ達はガンプラバトルで実際に戦えるシステムを手に入れたぞ。誰も死なないと言うコンセプトから離れている事にレイジは苦しんでいるようだ。
今回、彼はディケイドに負けてしまったが、もしもこれがセイの作ったガンプラだったら、どうなっていたかは分からないね。


………

知っておりましたかな読者どの、ポケモンの新作が発表されましたぞ。
実は拙僧、ポケモンの二次創作も少し手を出しておりましたぞ。
ただアイディアが膨らみすぎてよく分からなくなって書くのを止めましたぞ!
よく分からない理由ですぞ! 

バトライドウォー楽しいですぞ! 昭和ライダーは本当にカッコよろしいですな!
でもバグりまくりですぞ! 明日はガンダムブレイカーですぞ! 楽しみですぞ!
おなりは好きですぞ! 次回もよろしくですぞ!
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