Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

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SONG17 チギレタ時間

 

 

「待てーッ! アオイたんを返せーッ!!」

 

「やれやれ、しつこいヤツだなぁ」

 

 

信夫はいつの間にか椿がいなくなっていた事に気づきながらも、足を止める事はできなかった。

仕方ない。全ては嫁のためだ。なんとしても海東からアオイたんのフィギュアを取り返さなくてはいけない。

それにしても――、と信夫は流れる汗をぬぐいながら呼吸を荒げる。なんとかついて行けるが海東の動きはやはり人間のソレではない。

地形を利用して跳んだり登ったりと、人間の力を最大限に引きだすパルクールと呼ばれるスポーツがあるが、海東はもはやレベルを超えている。

 

そして決定的なものが。

海東は追いかけてくる信夫がしつこくなったのか、ディエンドライバーを取り出すと引き金をひいた。

すると銃口からワイヤーが発射され、近くにあったビルの屋上に引っかかる。

 

 

「じゃあねぇ」

 

「あ! ま、待て! 嘘だろ! 漫画かよ!!」

 

 

ワイヤーを引き戻し海東は一気に飛翔。ビルの屋上に足を踏み入れる。

真下を見下すと、悔しそうに歯軋りをしている信夫が見える。やはりこの感覚は気分がいい。

もはや声も届かぬほどに距離は遠い。海東は勝利を確信し、アオイのフィギュアをデータに変えてディエンドライバーの中に収納する。

さて、椿もいた事だし、司にちょっかいでも掛けに行こうか。そんな事を考えながら再び眼下にいるだろう信夫に目を移す海東。

すると、そこには想像もしていなかった光景があった。信夫もまた何かを確信したようで、懐からあるものを取り出したのだ。

それはフィギュア、海東が盗んだアオイと同じキャラクターのもので、信夫はそれを前にかざしたのだ。一見すればただ美少女フィギュアを前に出した痛いオタクであろう。

もちろん、普通ならばの話。信夫が取り出したフィギュアには銃の如くトリガーがついており、信夫はポーズを決めてその引き金を引いた。

 

 

「重妄想!」『ズッキューン!』

 

 

電子音、そして変身音。

赤い光が迸り、漢字の『非』とアルファベットの『A』を組み合わせた紋章が浮かび上がる。

すると、信夫の体にバトルスーツが装備されていくではないか。

 

 

「んなッ!?」

 

 

思わず身を乗り出す海東。

そこに立っていたのは信夫ではなく、全く別の戦士だった。

信夫の特徴的な髪型を模したように頭部のデザインはギザギザで左右非対称。そして変身前と同じく白いマフラーが風に靡いていた。

変身を完了させた信夫は腕をクロスに組んで、直後パンチを繰り出すように両手を交互に前へ出す。

 

 

「怪盗ならピンクバスター推し! アキバレッド!」

 

「はぁ?」

 

「はい! 痛さは強さ!」

 

 

信夫――、今は『アキバレッド』は左手で右足の踵を叩くと、足を戻してその場で一回転。

そのままの勢いで両腕を右に伸ばし、左足で片足立ちになり、右脚はひざを曲げて左の方に。

最後に腕をクロスに組んで、直後両手を広げて天にむけて伸ばす。

 

 

「今は一人だけど、非公認戦隊! アキバレンジャー!」

 

 

名乗りを完了させるとアキバレッドの背後に爆発が起き、その爆風でレッドは跳躍、海東が立っていたビルの屋上にやってくる。

 

 

「おかしいと思ってたんだよ。やい! 今度は何を企んでやがる!!」

 

「………」

 

 

顎に手を当てて沈黙する海東。

先ほどは思わぬ不意打ちを受けたが、おかしな話ではない、どこの世界にも戦う力を持っている人間がいるのは海東とて良く知っている話。

なるほど、この世界もそう。そしてその戦士が信夫なだけだ。

 

 

「面白い、最近暇してたんだ、少し遊んでくれたまえよ」『カメンライド』

 

「ッ! お前、マルシーナの部下じゃないのか――?」

 

「知らないな。僕は僕だ、海東大輝と言う、唯一無二の尊い存在さ」『ディエンド!』

 

 

ディッエーンッッ! と、テンションの高い電子音が変身を告げる。

カードプレートが発射され、それがバトルスーツに包まれたカードに刺さっていき、最後にシアンの色が全身を駆ける。

現れたのは仮面ライダーディエンド。レッドも海東の異常性に気づいたか、構えを取って息を呑む。

 

 

「お前は一体……!」

 

「カッコいいトレジャーハンターさ!」

 

 

体を捻るとディエンドは迷わず銃を発射する。

まずは挨拶の一発、地面に火花が上がり、それが戦いの合図であるとレッドも理解したようだ。

先ほど変身に使ったフィギュアは銃に変わっており、レッドはディエンドの銃弾を交わしながら自らも銃弾を発射する。

 

 

「なるほど、武器に変形するフィギュアか。面白い、それも欲しくなって来た」

 

「そ、そうだ! おいお前! アオイたんのフィギュアを早く返せ!!」

 

「言っただろ、僕はトレジャーハンター。返して欲しくば、奪い返してみなよ」

 

 

ステップを踏むディエンド。

馬鹿にしている様な動きに苛立ったか、レッドは腕を盾に一気に銃撃の雨を突き抜けていく。

そして跳び回し蹴り。しかし紅い閃光は捉えたのは、シアンの残像だった。

 

 

「ほらほら、コッチだよ」

 

「うあぁ!」

 

 

気づけば一瞬でディエンドはレッドの背後に立っていた。

そして裏拳。青い軌跡がレッドの背を打ち、前のめりにヨロける。するとディエンドは既にレッドの前に立っていた。

 

 

「そこだね」「うっ!」「分かるかい?」「ぐはっ!」

 

 

裏に回り裏拳、そして前に回り裏拳。

それを可能にするのはディエンドのスピードだ。明らかに普通に動いてはいない。

それはその筈、ディエンドは自らのベルトにクロックアップのシステムを組み込んでいる。

ディエンドはそれをさらに改良し、脳で念じるだけでスピードを上げる機能を生み出した。

クロックアップを発動した際よりは当然スピードは遅いが、思うだけで発動できる事はなによりの強みであり、体に掛かる負担も少ない。

ヒットアンドアウェイ、これこそがディエンドの持ち味なのだ。

 

 

「どこを見ている!」『アタックライド』『ブラスト!』

 

「のわわあぁぁ!」

 

 

ディケイドよりも豊富なブラスト。

今回は弾を収束させ、螺旋状のエネルギーを発射する。背中から火花を散らしてレッドは一回転。そのまま地面に倒れた。

 

 

「フフフ、相変わらず、僕のセンスにはまいってしまうなぁ」

 

「………」

 

 

パイプの上に座り、足を組むディエンド。

圧倒的な余裕を感じたのか、レッドは拳を握り締めて、直後地面を叩いて勢いよく立ち上がる。

 

 

「やれやれ、そんなにあのお人形さんが欲しいのかい?」

 

「お人形じゃない! アオイたんだ! だいたいアンタ、まさかアオイたんの原作を見ていないなんて言わせないぞ!」

 

「知らないね。僕は基本、アニメはルパンしかみないんだ」

 

 

しかし見くびってもらっては困る。物の価値が分からぬ訳ではない。

ディエンドはアオイの限定フィギュアを出現させると、改めてまじまじと観察してみる。

 

 

「造形が細かいね。目の色塗りもはみ出ていないし、グラデーションも良い。肌の塗りも本物に近いし、水着というのは男性の性的思考を刺激する。まあ典型的な萌えフィギュアだけど、クオリティは高いんじゃないかな?」

 

「いや――、違う!」

 

「ん? 何が違うと言うのかな。僕に聞かせてくれたまえよ」

 

「アオイたんは萌えフィギュアではない! 人生だ!!」

 

「は?」

 

「いや、つか、そもそもこの世に萌えフィギュアなんて物は存在しない! もしも存在すると思っている奴がいたら、ソイツは間違いを犯している!!」

 

「何……ッ! つまりはこの僕が間違っていると?」

 

「その通りだ! いいか、よく聞くがいい! 真の萌えとは、与えられる物でも買う物でもない。掴み取るものだ!」

 

 

レッドは語る。家の前にある自販機が『行ってらっしゃい』と言ってくれたとき、その自販機が不器用ながらも主人の為に尽くすロボ娘に見えてきた。

色々なお茶を出してくれて、んもう可愛いのなんのって。

 

 

「フィギュアは本来、その掴み得た萌えをより具現するための道具なんだ! アオイたんのフィギュアを求める者たちは萌が欲しいんじゃない。アオイたんが欲しいんだ!」

 

 

ディエンドは表面的な事しか見ていない。

そんな男にアオイたんは渡せない。レッドは拳を振り払い、再び地面を蹴った。

しかしディエンドは余裕だ、再びスピードアップを発動してレッドの背後に回りこむ。

だが――。

 

 

「なにっ! ぐああ!」

 

 

ディエンドの胴体から火花が散る。

それはアキバレッドの背中を守る様に現れた、同じく赤色の戦士が銃弾を撃ったからだ。

 

 

「来てくれたか相棒(バンバン)さん!」

 

 

二丁拳銃ディーマグナムを乱射しながら空から現れたのはデカレンジャー、デカレッド。

レッドの背後に降り立ち、銃撃に怯んでいたディエンドにドロップキックを繰り出した。

激しい衝撃がディエンドを襲い、苦痛の声をあげながら地面を転がっていく。

 

 

「ぐっ! 誰だいそれは!」『アタックライド』『サーチ!』

 

「偉大なる公認様だ! 覚悟しろ! 信夫ジャッジメントでお前は極刑なのだ!!」

 

 

成る程と、ディエンドは銃を射撃しながら後ろに下がる。

アキバレッドの隣に現れ銃を撃つデカレッドはいわば幻影、ディエンドのカメンライド同じく召喚された戦士だ。

どうやら能力も似ているわけか、ますます興味がそそられるというものだ。ホルダーからカードを取り出すと、ディエンドはドライバーにセットして引き金を引く。

 

 

「来い!」『カメンライド』『ジースリーエックス!』『シザース!』

 

 

発射されたデータがライダーの形を作り具現する。

走り出したシザース、その手にはストライクベント、シザースピンチが既に装備されており、二人のレッドが放つ銃弾を防ぎながら前進していく。

一方でG3Xはガトリングを構えて乱射。隣にいるディエンドも加勢し、すぐにレッドたちの体から火花が散る。

 

 

「くっ! 頼むデカレッド! 大それた力!!」

 

「何ッ!? ファイナルフォームライドか!」

 

 

地面を転がり一旦銃撃を回避するアキバレッド。

一方、同じく転がった筈のデカレッドが光に包まれたかと思えば一瞬で変形し、巨大な手錠型の武器に変わる。

 

 

「完成! デカワッパー!!」

 

 

レッドは思い切りフルスイングでデカワッパーをシザースに向けて放り投げる。

すると手錠は高速回転しながら飛来、一方の輪の中にシザースを閉じ込め、そのまま回転しながらディエンドのほうを目指す。

 

 

「チッ!」

 

 

巨大な手錠に銃撃を当ててみるものの勢いが全く止まらない。

ディエンドは舌打ちを放つと隣にいたG3Xの首を掴んで自分の前に持ってくる。そして背中を蹴るとディエンドは地面を転がり、場を離れた。

一方で強制的に盾にされたG3Xに手錠が命中。シザース共々データライダー達は拘束されて身動きが止まった。

その隙にレッドは先ほど変身に使った、銃に変形するフィギュア、『モエモエズキューン』を構え、ボタンをタッチする。

 

 

「必殺! 萌えマグナム!」『いくぜーッ!』

 

 

引き金をひくと赤い光弾が発射された。

着弾の僅か前にデカワッパーが消失し、光弾はそのままシザースとG3Xの間で爆発すると、二体のライダーをデータの残骸に変える。

しかし反面、ディエンドは仮面の裏で笑みを浮かべていた。ますます面白くなってきた。考えてもみればコレはかなり『レア』な状況かもしれないからだ。

 

 

「キミ、それは仮面ライダーじゃないね」

 

「貴様、アオイたんだけではなく特撮までにわかか! 当たり前だろ、スーパー戦隊とライダー間違えるヤツなんて普通いないぞ!」

 

「フム、スーパー戦隊か。聞かない名だね」

 

「なにぃ! なんでライダー知っててスーパー戦隊知らないんだよ! 同じニチアサじゃないか!」

 

 

どうやらこの世界にもライダーの存在は確認されているようだが、ディエンドにとってはそんな事どうでも良い。

重要なのは今ハッキリとわかった、目の前にいるアキバレッドが仮面ライダーとは違う存在の戦士だと言う事だ。

こういった者に会う機会はなかなか無い。だとすれば――

 

 

「興味がある。トレジャーハンターの血が騒ぐね」

 

 

ホルダーから取り出したのは観測者から貰った新たなる『力』。

ディエンドはそれをドライバーにセットし、召喚を行う。

 

 

「来たまえ」『カメンライド』『キバ!』

 

 

司たちの担当がゼノンとフルーラならば、海東にもまた担当するディエスとナインと言う『眼』が存在している。

彼らから与えられていたのはクウガからキバまでのカードだった。

今、データがキバの形を作り、ディエンドの前に現れる。

 

 

「?」

 

 

ディエンドライバーにはルールがあり、召喚できるライダーはライオトルーパーが五体まで、他のライダーは三体まで、そしてクウガからキバまでの所謂主役とされているライダーは一体までというのが掟だった。

だからさぞ強力なのだろうと思ってみたが、現れたキバはなんとその場に立ち尽くすだけでピクリとも動かない。

 

 

「おい、ほら、さっさと行きたまえ」

 

 

しかし反応なし。

そうしているとレッドが前から走ってくるのが見える。さらにアキバレッドの頭上を越えて飛び掛ってきた、またも同じ色の戦士が見える。

 

 

「グッジョブだぜボウケンレッド!!」

 

「おい! 動けよ! ちくしょう!!」

 

 

ボウケンジャー、ボウケンレッドは槍状の武器、ボウケンジャベリンを突き出してディエンドを狙う。

仕方なく、相変わらずピクリとも反応しないキバを前に出して盾にする。キバは槍に弾かれ地面を転がったあと、データの残骸となり消滅した。

 

 

「はぁあ!? つ、使えねぇ!」

 

 

珍しく焦りの声を漏らすディエンド。

それはそうだ、期待していたのにいざ使ってみれば全く動かず、さらに一撃食らっただけで消え去るほどの脆さ。

これでは完全に他のライダー達のほうが使えるというもの。一体どういう事だ? 何故こんなクソカードを渡した?

だまされたのか? この様子を見て笑っているのか? ディエンドの中に怒りの感情が湧き上がる。

 

一方でここがチャンスと見たのか、パイプを飛び越えながら一気にアキバレッドが距離を詰める。

同時に光り輝くボウケンレッド、するとその姿が先ほどのデカレッド同じく武器に変わった。

 

 

「ボウケンスコッパー!」

 

 

スコップ型の武器を持つアキバレッド。

スコップと言っても槍の様なもので、武器としての能力は凄まじい。

そしてそれを見たとき、ディエンドの脳に電流が走った。なるほどそう言うことか、ディエンドは地面を転がると再び主人公格のカードをセットし、発射する。

 

 

「そのままでは使い物にならないが――」『カメンライド』『ブレイド!』

 

 

さらにもう一枚。

 

 

「ならば、自分で使えという事か」『ファイナルフォームライド』『ブブブブレイド!』

 

 

音を立てて変形するブレイド。

あっと言う間にディエンドの手にはブレイドブレードが握られる。

そう、つまり、ディエンドに与えられたクウガ~キバのカードはファイナルフォームライド専用という事だ。

大剣を構えたディエンドはそれを振り回し、切りかかってきたレッドと衝突する事に。

激しい衝撃が双方の手をビリビリと刺激する。しかしお互い引くわけにはいかない、次々と巨大な刃を交え、辺りには刃がぶつかり合う音が木霊する。

 

 

「フンッ! やるじゃないか、ただのオタクと思えば、それなりにやる!」

 

「オタクはな! よりよい品質のアイテムを求めてアキバの店を何度もさ迷う! それにコミケの行列に並ぶ脚力を養うために日々訓練を重ねているのだ! って言うかオタクを馬鹿にするんじゃねぇ!」

 

 

気に入らないヤツだ!

レッドは叫ぶとショルダータックルでディエンドを怯ませ、そのままボウケンスコッパーを振るう。

ディエンドの腹部から散る火花。普段から接近戦を得意とするレッドと、メインは遠距離のディエンドではやはり有利と不利はハッキリしているのか――?

 

 

「それにしてもなんてヤツだ! 仮面ライダーをイメージした敵とは!」

 

「僕はその仮面ライダーなんだけどね」

 

「んな訳あるか! 仮面ライダーもスーパー戦隊と同じ、正義の味方だろ! 人のものを取るなよ!!」

 

 

そこで二人の武器が互いに弾かれ宙を舞う。ディエンドはレッドの腹部を蹴ると、その勢いで斜め後ろに飛んだ。

 

 

「正義の定義は僕自身が決める。そう、この僕こそが正義なのだよ」『カメンライド』『リュウキ!』

 

「な、なんてわがままなヤツだ!」

 

「自由と言って頂きたいね。発想が乏しい人間では理解できないだろうが」『ファイナルフォームライド』『リュリュリュリュウキ!』

 

 

リュウキレッダーが吼える。

龍騎やクウガなど、自分の意思で動くタイプのものは全て脳で想像した通りに動くようになり、いわばラジコンの様になるのだ。

リュウキレッダーは猛スピードで突進をしかけ、その巨大な体でレッドを弾き飛ばす。衝撃で体が放り出され、レッドはビルの屋上から落下する事に。

しかしココで再び光が迸り、新たなる戦士が姿を見せた。ドラグレッダーと同じ真紅の龍。そしてその頭に乗っているアキバレッド同じく赤い戦士が。

 

 

「龍星王! 来てくれたのかぁ!! ちょっと小さい気もするけど、まあいいか!」

 

 

嬉しそうなアキバレッドの声。

現れたのはダイレンジャーの一人、リュウレンジャーとその相棒である龍星王だ。

落下しているアキバレッドを助けると、ディエンドの下へ飛翔する。

 

 

「次から次へと!」

 

 

ディエンドは地面を蹴ってリュウキレッダーの背に飛び乗る。

咆哮を上げてぶつかり合う二体の龍。激しく絡み合い、口から赤い炎を出してぶつかり合う。

爆発が巻き起こり、その衝撃で体が浮き上がる感覚。気づけばディエンドもアキバレッドも再び屋上に放り出されていた。

地面を殴り、双方同時に立ち上がる。そしてアクション。

 

 

「おいたが過ぎた様だねぇ」『ファイナルアタックライド』『クロスアタック!』

 

「ダイレンボンバー!」

 

 

リュウキレッダーの口の中が赤く光り、その前に立つディエンドは銃をゆっくりと構え、銃口をレッドに向ける。

ディエンドライバーに収束していく光、それはチャージを意味するものであった。

一方でリュウレンジャーと龍星王は巨大なガントレットアームに変わる。強大化した腕を振るうアキバレッド。

手のひらを開き前に出すと、エネルギーの光球が生まれ、強大化していく。

 

 

「さあ、吹っ飛べ!」

 

「気力ボンバーッ!!」

 

 

ディエンドが引き金を引くと光のレーザーが銃口から放たれた。

そしてそこに合わせる様に口から炎を放つリュウキレッダー。クロスアタックは召喚しているライダーとコンビネーションを繰り出すカードだ。

一方でレッドが構えるダイレンボンバーから巨大なエネルギーの塊が放たれ、炎とぶつかり合う。

力と力は互いに削りあい、その先に向かおうと突き進む。激しく競り合う両者、勝つのはどちらか?

 

――が、それが分かる前に、黄色い閃光が迸った。巨大な三本の線はお互いの攻撃を引き裂くと、互いの威力を弱め、相殺させあう。

なんだ? 攻撃が飛んできた方向に視線を移すと、そこには長い爪を構えた仮面ライダーオーズ、ラトラータコンボが。

その隣には同じくオーズ、シャウタコンボが立っており、手に持っていた鞭を地面に打ちつけた。乾いた音が響き、シャウタは鼻を鳴らした。

 

 

「マリン、タイガか。よく来てくれたね、さすがは僕の手下だ」

 

「手下になった覚えはありませんが、まあいいでしょう。どういう状況ですか、リーダー」

 

「見ての通り、困っていてね。加勢してくれたまえよ」

 

「……わかりましたわ」

 

 

息を呑むレッド。仲間がいたか、と、身構えるが。

瞬間、シャウタが振るった鞭がディエンドの尻を打った。

パチーンッッ! そんな音が耳を貫く。

 

 

「いッッてぇえ!!」

 

 

尻を押さえて跳ね上がるディエンド。

余程の衝撃だったか、しばらく回りを歩き回った上で倒れ、悶えている。

一方で鼻を鳴らすシャウタ、どうやらわざとの様だ。

 

 

「何をするマリンーッ!」

 

「ですから、加勢したんですの。あちらの方に」

 

「違う違う違う! 僕の方、僕の方ッ! 普通分かるだろうさ!?」

 

「お黙りなさい! ミルク一つ買うのに何時間かけてるんですのッッ! 怠惰な私はもうブチギレですわ! ゴミが! ファック! ああイラつくなゴミクズ!! 私は待たされるのが一番嫌いなんですの!!」

 

「お嬢様、お下品でございますよ。抑えましょう、スマイルです」

 

 

舌打ち交じりに変身を解除するシャウタと、同じく変身を解除したラトラーター。

シャウタは青毛の少女マリンに、ラトラーターは執事服の少年タイガに戻る。タイガはマリンに日傘をさしており、二人はそのままレッドの前へやってきた。

 

 

「ウチの馬鹿が申し訳ありませんわ。状況は分かりませんが、どうせ失礼な事をしたんでしょう?」

 

「え? あ、いやぁ……」

 

「お名前は?」

 

「あ、アキバレッド……赤木信夫です、どうも」

 

「信夫さんはもしかすると、リーダーに何かを盗まれたのでは?」

 

「あ、一応アオイたんのフィギュアを――」

 

「返しなさい海東」

 

「イヤだいイヤだい! これは僕んだい! 絶対返さないぞ! コレは僕のだ! 屈しないぞ!」

 

 

マリンはため息をつくと倒れているディエンドの耳の横に顔を持ってくる。

そして小さく呟いた。

 

 

「ココでブツ返して私を待たせた事をチャラにするか。それとも駄々をこねてオクトバニッシュ、ケツの穴にぶち込まれるか、どっちがいい?」

 

「―――」

 

 

それは、一秒あるかないかだった。

ディエンドはアオイのフィギュアをレッドに返すと、変身を解除して無言のまま屋上の隅に体育座りをしていた。

これには被害者であるはずのレッドも汗が浮かぶというもの。可愛らしい顔をしてとんでもない事を言う少女である。

しかしそれだけ苛立っていると言うことか、レッドも変身を解除すると、信夫に戻る。

 

 

「ど、どうもありがとう」

 

「いえ。それよりも本当に申し訳ありませんでしたわ。そうだ、お詫びにお茶でもいかがかしら?」

 

「え!?」

 

 

正直行きたくないというのが本音である。

しかしココで断ったらケツに何かをぶち込まれそうだったので、信夫はつい反射的にうなずいてしまう。

いや、しかし考えてもみれば信夫としてもこのまま話を終わらせるわけにはいかなかった。

海東の力、ディエンドは信夫にとって全く未知の存在、一体なんなのか、確かめる必要があるのかもと。

 

 

「あれ? そういえば何で俺……」

 

 

するとそこで、信夫の携帯が音を立てる。

液晶を見ればそれは見知った名前、信夫はなんの事はなく通話の部分をタップした。

 

 

「おぉ、探してたんだぞ、どこに行ってたんだよ」

 

『そ、そんな事はどうでもいいニャ! それよりのぶにゃん、何してるニャ!!』

 

「え? いや、何って……」

 

『なんで現実世界で変身してるニャ!? どうなってるニャ!』

 

「あ!」

 

『と、とにかく下に降りてくるニャン!』

 

「お、おお……! ちょっと待ってろ!」

 

 

違和感の正体に気づく信夫。そう、アキバレンジャーは現実世界で戦っている訳ではない。

あくまでも妄想の中だけで戦う、それが一つのルールだったのに、先ほどはしっかりとこの現実世界でディエンドと戦っていた。

変身すれば妄想空間に自動で送られるため、てっきり信夫は自分が妄想の中にいると思っていたのだが、変身を解除しても元々いた場所、つまり変身を行った場所にいないと言うのが答えであると。

とにかくとビル中を通って下に戻る一同。信夫は宅配業者で働いているため、なんとかごまかす事はできたが、やはりそれは現実であった。

 

そして信夫たちがビルを出ると、そこには奇抜な格好をした少女が駆け寄ってくる。

黄色い髪で、フリルやリボンが沢山ついたカラフルで可愛らしい服を着ている。

それだけならばまだしも、頭にはネコ耳、それだけではなく手はネコの手を模したグローブ、ネコ足ブーツ、スカートからは尻尾まで。

 

 

「まあお嬢さん、可愛らしい格好ですわね」

 

「お! ありがとニャ! にゃーのこの格好の良さが分かるなんて、お嬢さんも相当なツウなのニャ!」

 

 

ネコ耳の少女はにっこりと笑って、ポケットから名刺を取り出す。

そこには『萌黄ゆめりあ』と書かれている。

 

 

「コスプレとかを中心に活動してますニャ。どうぞよろしくお願いしますニャ」

 

「まあ、小さいのに頑張りますわね」

 

「あ、あー……、一応その人24歳なんで」

 

「え゛ッ!?」

 

 

小柄で、胸も小さいためか、どう見ても中学生くらいなものだが、分からないものだ。

さすがの海東も目を見開いてゆめりあを見ている。一方で当のゆめりあは頬を膨らませるとネコパンチで軽く信夫を小突く。

 

 

「と、歳の事はどうでもいいニャ! それよりどうなってるニャ? 屋上でドッカンバッカンやってるのが見えたのニャ」

 

「あ、ああ。それなんだけど俺も分からない。ハカセはなんて?」

 

「分からないって言ってたニャ。キンキュー事態ニャ! 美月にゃんとも、ルナにゃんとも連絡つかないしぃ」

 

 

顎に手を当てるタイガ。何かを考えているのか、少し沈黙したあと、わざとらしく手を叩いた。

 

 

「どうです? やはり一度、コチラの屋敷に来ませんか?」

 

「え?」

 

「私達は他世界から来ました。その影響が、この世界にも起きていると考えれば、不思議な話ではないでしょう」

 

「他世界? ニャハ! この人イケメンさんなのに厨二病設定ニャ? にゃーは結構そういうの好きだニャ!」

 

「いや、違うぞゆめりあ。本当に他世界かもしれない」

 

「え?」

 

「そもそも、特撮作品では他世界と言う設定は珍しいものじゃない。敵がいる場所が次元を超えた存在であったり、コラボ作品や一部の映画やスペシャルでは別の世界ですと説明されているものもある」

 

 

信夫はゆめりあに今までの事を端的に話した。

ディエンドとの戦闘、そして紛れもなくそれは存在する力であったと。

現に先ほどアキバレッドは妄想の世界ではなく現実の世界で変身する事ができた。

以前にもこういう事はあったらしいが、故に少なくとも、何かこの世界に異変が起こっているのは確実だろう。

 

 

「うへぇ。まさかまた八手三郎に踊らされてるのニャ?」

 

「分からない。まだ情報が少ないからな。分かっているのは仮面ライダーが関わっている事くらいか」

 

 

しかし信夫はディエンドはもちろん、ディエンドが召喚したライダーを知らなかった。

パラレルワールドで些細な情報の誤差があるのは信夫とて理解できる話。海東の世界のライダーと信夫が知っているライダーが違う可能性も大いにある。

 

 

「そもそも俺たちの世界ではライダーはずっと前にシリーズが終了している」

 

「東映チャンネルで見たニャ! いちごー、にごー、ぶいすりー」

 

「ゼクロスが終わった後、シリーズ最終章と銘打ったスピリッツが始まり、放送終了後にシリーズ復活として真、ZO、Jが始まった。その後にリメイク作品としてファースト、ネクスト、サードが始まり、去年幻のシリーズ復活としてダブルがスペシャルで放送されたんだ」

 

「さすがはのぶにゃん! 詳しいニャ!」

 

「特オタだからな。しかし問題は仮に今がコラボ作品だった場合、脚本が誰になるかだ。井●脚本だった場合、ゆめりあ、覚悟しておけよ。さすがの俺たちも命を賭けなけりゃならんかもしれん……!」

 

「ひぃい、だったらにゃーはヤスコにゃんか、米にゃんがいいニャ!!」

 

「あと一応坂●監督だった場合に備え、いつでも太ももは出せる様にしておけよ」

 

「じ、自信はないけど頑張るニャ。ローアングルもばっちしニャ!」

 

 

首を振る海東、なんの話をしているのかサッパリ分からない。

だいたい情報交換なんてする必要があるのか疑問なところだ。

確かに信夫達には大変な事が起こっているのかもしれないが、正直そんな事は海東としてどうでもいいのだ。

わざわざ首を突っ込む必要はない。この世界にあるお宝だけを奪えればそれでいいのに。そんな事をそれとなくタイガに言うと、小さく耳打ちを。

 

 

「分かっていますよリーダー。しかし、コチラ側に全く関係ない話――、ではないかと」

 

「ほう。と言うと?」

 

「これはまだ誰にも言っていませんが、先ほどナイン達から連絡がありました。司達とゼノン達が消息を絶ったそうです」

 

「おやおや、穏やかじゃないねぇ。しかし、先ほど僕は椿を見たのだけれども」

 

「おそらく椿も何らかの理由で学校に呼び戻されたのでは? そこで何かトラブルに巻き込まれたと」

 

「悲しいなあ、運のない連中というのは。しかし確かにゼノン達までもがイレギュラーに巻き込まれるのは珍しい。それ相応の事は起こっているのかな」

 

「それが今回の、仮面ライダー以外の戦士の存在ではありませんか? 話によると、現在、次元の歪みが起きて、世界を繋ぐ壁が非常に不安定になっているとかなんとか」

 

「その歪みに司達は巻き込まれたと?」

 

「そうでしょうね。それにリラが、その歪みに巻き込まれたと思わしき者を連れて来ました。少し話を聞きましたが、その少年に他世界を移動する術はなかった。つまり、意図せず、コチラの世界に来たわけです」

 

「その少年とやらに不思議な力はあるのかな?」

 

「おそらくは。それに彼は、所謂信夫の様に、仮面ライダーにはカテゴライズされない存在であると私は見ています」

 

「なるほど。様々な世界が交差する今であるならば、それだけレア物を手にできるかもしれない訳か」

 

「ええ。それに今、ナルタキから話があるそうです。ですから戻って来いと」

 

「興味をくすぐってくれるね。いいだろう、少し付き合ってあげようか」

 

 

海東はニヤリと笑うと、おとなしくタイガ達の後ろについていった。

 

 

 

 

 

 

 

「だああ! クッソォオ! タイガは何やってんだよ!!」

 

「あーあ、おなかすいたー。もー、遅いのよねぇ」

 

 

海東たちの拠点、マリンの屋敷。

血走った眼で虚空を睨みつけながら赤髪の少女、朱雀は先ほどから激しい貧乏ゆすりを行っている。

ガタガタとゆれるテーブルと椅子。向かいに座っていた巳麗と言う美しい少女もうんざりしたように天井を見つめて足をプラプラさせていた。

 

 

「食事が用意されないくらいでガタガタうるさい奴らだ。コンビニでパンでも買って来ればいいだろうが」

 

「話があるから屋敷から出るなって言われただろうが。それにもう腹へって動けねぇよクソ」

 

「そうそう、それにタイガが作ったのが食べたいのよねー?」

 

「ねー!」

 

 

笑いあう巳麗と朱雀。

メガネをかけた緑髪の少年ディスは大きくため息をついてミキサーのスイッチを入れた。

 

 

「浅ましい連中だ。その点、僕の朝はスムージーかグラノーラ、優雅なものだ」

 

「くぁー、さすが意識がお高い方は違うわねぇ!」

 

「わざわざオレ達の前でミキサーのスイッチ入れるとことか、拘りを感じますなぁ!」

 

「黙れ! スムージー馬鹿にすんなアホども!!」

 

「スムージーは馬鹿にしてないわよ、あんたを馬鹿にしてんのよ」

 

「くそ! イラつく女どもだ! 僕は部屋に戻るぞ! 至福の時間の最中だったからな!」

 

「まーたアイドルDVDかよ。こりねぇなテメェも。世界が変わればお別れだっつうのに」

 

「そうすれば推しが変わって楽しいのさ! だいたい彼女達は天使だ! 頑張ってみんなに夢を与えてる! お淑やかで元気で清楚で! お前らウンコとは違うんだよ!」

 

「また夢を見てからに。あんなの嘘嘘、みんな裏で彼氏とか枕でパコりまくってるって。なんならお姉さんがアンタの股間のマイクで一曲歌ってあげよっか?」

 

「うるせぇ死ね! 耳が腐るッッ!!」

 

 

怒ったのか、ディスは扉を強く、音が出る様に閉めると食堂から出て行ってしまった。

一方悪びれる事無く、再びだらしなく机に顔を伏せる朱雀たち。それを見て離れたところに座っていた銀髪の少年、リラは大きなため息をついた。

客が来ているというのにこいつ等は……。

 

 

「ごめんね、騒がしくて。みんなその、ちょっと我が強くてさ」

 

「い、いいと思うよ。自由なのはさ。あはは……」

 

 

とは言うものの、リラの隣にいた青色の髪の少年は引きつった笑みを浮かべて、額に汗を浮かべていた。

 

 

「ちょっと待っててね。もうすぐ、ぼく達のリーダーがくると思うから」

 

「うん。ありがとうリラくん。それにしても驚いたよ、こんなにも世界って数があるなんて」

 

 

彼――、イオリ・セイはある日友人と共にいた所、時空の歪みが生んだブラックホールに巻き込まれ、気づいたら全く知らない秋葉原(ココ)にいた。

知っている町の筈なのに知らない場所、途方にくれていると、リラと知り合い、ココに来たのだ。

セイは既に『他世界』という考えは知っていたので、割とすぐに事態を受け入れる事ができた。

 

尤も、不安はあるがそれよりも興味の方が多いのが現状だ。

ガンプラを実際の世界で動かすことができるリアルブートアシムレーションがこの世界に来た瞬間使える様になった。

なぜか? セイは先ほどからそれを調べているが、全く分からない。

しかしヒントはあった。歪みのブラックホールに巻き込まれる瞬間、セイはしっかりと『助けて』と言う声を聞いている。

そしてブラックホールの中で、プラモデルのパーツが見えた気がした。

 

 

「だー! もう我慢できねー! 出前を取るもんね!」

 

 

大声が聞こえる。見れば朱雀が頭を掻き毟って立ち上がるのが見えた。

お腹からは獣の唸るような声が聞こえている。限界が来たのだろう、どこからか一枚のチラシを取り出すと、携帯電話を取り出した。

 

 

「いいのかしら? 勝手に」

 

「いいんだよ。待たせるアイツ等が悪い。お前も、リラとセイも食うだろ!」

 

 

早速電話を取る朱雀。

しかし巳麗は朱雀が持っているチラシを見て、あきれた様にため息をつく。

 

 

「ちょっとアンタ、これ前の世界のヤツじゃない。繋がる訳ないわよ」

 

「え? いや、でも繋がってるぜ?」

 

「え?」

 

「ほら、出た。あ、もしもし? 悪いけど出前頼みてーんだけど」

 

『ぃ』

 

「今腹減ってるからさ、なんかテキトーに持ってきてよ」

 

『りょ』

 

 

電話が切れた。

会話になっていなかった気がするが。そもそもこの屋敷の場所も伝えていない状態。誰もがそう思う中、眼を輝かせてウキウキと朱雀は笑顔になる。

するとバイクのエンジン音が聞こえた。は? 巳麗が間抜けな声を上げると同時に、室内に来客を告げるチャイムが鳴った。

 

 

「お! 来た来た!」

 

「え? 嘘でしょ!? はや!」

 

 

巳麗は海東達が帰ってきたのだとばかり思っていたが、窓を開けて外を見ると、門の前に赤いラインが入った白のライダースーツに身を包んだ女性が立っていた。

その背後には白いバイク。座席の後ろには四角いボックスがあり、そこに『R』の紋章が刻まれている。

女性は青いフルフェイスのヘルメットを取った。すると金色の髪が風になびき、素顔が晒される。

タレ目でアンニュイな表情。肌は日に焼けているのか、薄い小麦色である。

女性はヘルメットと入れ替えるように『R』のマークが刻まれた帽子をかぶり、ボックスから薄くて大きい正方形の箱を取り出した。

 

 

「ぃーす、ドラドラピザぅーす」

 

「おーおー! 来てくれたか!」

 

「テンアゲで、きぃ」

 

「はい、これ金な!」

 

「ん、ウケる」

 

「いつも悪いな。いや、この前食ったときにハマっちまってさー」

 

「ま? ウケる」

 

「そうだ、アンタも食ってくか?」

 

「マジウケる」

 

 

会話は? 会話はどこ? あの二人はしゃべっているの?

巳麗達は汗を浮かべながら二人のやり取りを見ているが、朱雀は気にせず言葉を並べていた。

 

 

「そういえばアンタ、前の男とは違うな」

 

「あーし、霧桐(ギリギリ)トマルっす。ドラドラピザはぁ、あーしと、進矛パイセンと店長でやらせてうぃーっす。SNSのページあるんでぇ、よければフォローしてくれれば、ウケる」

 

 

携帯を見せるトマル。そこには同じく店員でる(つき)進矛(すすむ)と、トマルが釣りをしている写真があった。

目は笑っていないが口は吊り上げている二人。その中央ではドライブドライバーが楽しそうに笑っており、写真には誰が押したのかは知らないが『いいね』がそこそこ押されていた。

他にも海水浴だのBBQだのと、ずいぶん楽しそうである。しかしそもそもこいつ等誰やねんと言う話。

あと気になるのは前回朱雀と会ったのは別の世界のはずだ、にも関わらずドラドラピザはこの世界にある。これは一体――?

 

 

「ん?」

 

 

するとエンジン音が。

一同が視線を移すと、カラフルな車が走ってきた。

 

 

「うぇ、なんだアレ!」

 

「ウケる」

 

(コイツこればっかだな)

 

 

さすがの朱雀もトマルのボキャブラリーの低さが気になりだした頃、前方からやってきたのは痛車(いたしゃ)だった。

所謂アニメキャラなどがステッカーや塗装で大きく施された車の事である。にじよめ学園ズキューーン葵の痛車、『マシンイタッシャー』を運転していたのは信夫。

助手席にはゆめりあ、後部座席にはタイガとマリンが座っており、隣にはマシンディエンダーに乗った海東が。

 

 

「あら、朱雀、そちらの方は」

 

「ああ、ピザ屋。ほら、この間の――ってお前はしらねーか」

 

「トマルぇす。ドラドラピザぇぁ、よろぃっちゅりぃ!」

 

「は?」

 

 

英語かな?

そんな事を思いつつ、屋敷にいるメンバーたちも騒ぎを聞きつけたのか、正門前に集まってくる。

 

 

「おや、君がセイくんか」

 

「あ、どうも。イオリセイです。迷子になってたところをリラ君に助けてもらって」

 

「ああ、ああ、別に気にする事はないよ。ただ情報を――」

 

 

そこで、空気が震えた。

そして、声。

 

 

『――けて』

 

「なん――」

 

『たすけて』

 

「ッ!!」

 

 

それは一瞬だった。

一同が立っていた丁度中央部分の景色がぐにゃりと歪んだかと思うと、空気が振動。

地鳴りに似た音がして歪んだ部分が黒く染まっていく。それはまるで空間に穴があいた様な感覚だった。

 

 

「な、なんじゃコリャ!!」

 

 

地面に膝をつく一同。

わざとではなく、膝をつかなければ体がブラックホールの方へ持っていかれそうだった。

凄まじい引力に歯を食いしばる一同。あんなものに吸い込まれてはどうなるか全く予想はつかないが、少なくともロクな事にはならないだろうて。

その時、声を上げたのはセイだった。目を細め、ブラックホールの向こうを睨んでいる。

 

 

「これッ、同じです! ボクが巻き込まれた穴と!!」

 

「タイガ! では、これがそうなのかな!?」

 

「おそらく! 皆さん、近くの物に捕まって!!」

 

 

時間と共により引き込まれる力は強くなっていく。

何とかしなければとは思うのだが、少しでも気を抜けば引き込まれそうな状況、手を離す事はできず、地面や柱を掴むだけで精一杯だった。

しかしココで動いたのは朱雀だ。片手を地面につきながら、もう片方の手でオーズドライバーを取り出すと素早く装着。

地面を転がりながらも三枚のメダルをセットしてスキャンを開始する。

 

 

「変身!」『タカ!』『クジャク!』『コンドル!』【タ~~ジャ~~ド~~ルーーッ!】

 

「うわッ! 姿が変わった!?」

 

 

驚くセイの言葉を受けて、タジャドルは赤い翼を広げて飛び上がった。

その勢いは引力を振り切り、同じく踏ん張っていたリラの腕を掴んで屋敷の屋上に上がる。

どうやらある程度ブラックホールから離れれば引力の影響は消えるらしい。

呼吸を荒げ、双方は崩れ落ちる。

 

 

「大丈夫かリラ」

 

「う、うん。ありがとう朱雀ちゃん」

 

「おお、気にすんな。まあ良かった良かった」

 

「欠片とてよくねーわ! な ぜ リ ラ し か 助 け な い! まずはリーダーである僕を助けるのが部下としての使命だろうがアホたれくん!」

 

「うるせぇハイエナ! お前はむしろ吸われろ!!」

 

 

海東の言葉を一蹴するタジャドルだが、あまり冗談を言っている場合ではない。

柱に捕まっていた信夫に関しては体が浮き上がっており、ゆめりあに至っては信夫の脚を掴んでかろうじて耐えている状況だ。

 

 

「のぶにゃーんッ! 絶対離しちゃダメにャーんッッ!! あ、やべッ! ウィッグ取れた! マジやべっ! おうふ!」

 

「ゆめりあ、お前キャラ忘れてるぞッ! ウィッグくらいどうでもいいだろうが!! 今はとにかく踏ん張れ!!」

 

「く、くっそー! 未婚で死んでたまるかーッッ!!」

 

「あれ? お前結婚してなかったっけ?」

 

「気のせいじゃったわ! わたしもそんな気がしてたけど妄想だったわ! 清き乙女なのですわよ! だから死ねねーんだよ!!」

 

 

とにかくマズイ状況だ。

ココで指を鳴らす海東。吸い込まれそうになっている信夫達の姿を見て何かを考え付いたらしい。

 

 

「僕にいい作戦がある!」

 

「なんですか!」「なんですのッ!」「なにッ!?」

 

「アレは穴だ! つまり穴は塞げばいい! 信夫とゆめりあを犠牲にし、あの穴に突っ込めば、穴が塞がるかもしれない!」

 

「なるほど! 前々から分かってましたけど、あなたって相当なクズですわね!」

 

「うるさい黙れ! 僕は僕の味方なんだ!!」

 

 

ココでさすがにマズイと思ったのか、先ほどからずっと無表情で踏ん張っていたトマルがゆっくりと立ち上がる。

金髪をなびかせ、トマルもまたドライバーを取り出すと、それを腰にかざして装備する。

マッハドライバー。レバーを上げるとパラリラ――、と音がなり、待機音が。トマルはどこからかバイクのミニカーを取り出すと、それをレバーに装填する。

 

 

『シグナルバイク!』

 

「変身」

 

 

そしてレバーを戻すと、再び電子音。

 

 

『ライダー!』『マッハ!』

 

 

派手な音が鳴り響くとトマルに装甲が付与されていき、あっという間に変身が完了した。

ライダースーツをイメージした姿にフルフェイスのヘルメットを模した仮面。

そしてドライバーとくれば、彼女もまたディエンド達と同じ存在であると言わざるを得ないだろう。

尤も、トマル本人に自覚はないが。ああいや、今の姿は仮面ライダーマッハと呼ぶのが相応しい。

 

 

「最近のピザ屋は進化がしているなあ」

 

「ウケる」『ズーット・マッハーッ!』

 

 

海東の言葉を軽く受け流したマッハは、ベルトにあるボタンを連打した。

そして地面を蹴ると、凄まじいスピードで移動を開始する。

信夫とゆめりあを抱えて救出すると、そのままマリンとタイガ、セイと海東を同じように抱えて引力の範囲外まで持っていく。

 

 

「なッ!」

 

思わず声が漏れた。

一瞬で皆を救出したその速さとパワー。ただのピザ屋と思っていたが、どうやらとんでもないスペックを隠し持っているらしい。

しかしてやはり疲労はしているのか、マッハは変身を解除すると地面にへたり込んで大きくため息をついた。

 

 

「萎えぽよ……マジだる……」

 

「で、でも助かりましたわ。ありがとうございます」

 

「あ、お礼はSNSで『いいね』押していただければそれで。あ、あとクーポン券どうぞ。割引とドリンク無料になるんで」

 

「後にしたまえ! まだ歪みは収まっていないんだから!」

 

 

改めて一同は前にあるブラックホールを見る。

すると声が。

 

 

『たすけて……! たすけてぇ』

 

 

それはずいぶんと悲痛な声だった。声が震えている。泣いているのかもしれない。

まるでこの世の全ての苦痛を背負ったかのような、思わず耳を塞ぎたくなる様なすすり泣く声が聞こえる。

声が高い。女の子――、いや男の子かもしれない。そして言葉は続く。

 

 

『たすけてぇ……、かめんらいだぁ』

 

「!」

 

『たすけてぇ……! がんだむ』

 

「これは、一体……」

 

『たすけてぇ……ッ! れんじゃ――ぁ』

 

 

まるで手を伸ばすように、助けを求める言葉が聞こえた。

申し訳ないが、こんな怪しい歪みの中だ。飛び込むと言う選択肢はを海東は思いつかなかった。

それに罠と言う可能性もあるし、冷たい話かもしれないが、見ず知らずの人間を助けるためにとんでもないリスクを背負う覚悟はもてない。

それは海東以外のメンバーもそうだったろう。情報が無いのにうかつな行動はできない。勇気と無謀は違うとはよく言ったもの。

しかしその中に、違う想いを抱えている者がいた。赤木信夫は、激しい引力の中、一歩前に足を出す。

 

 

「のぶにゃん……、まさか――ッ!」

 

「スーパー戦隊の事をレンジャーって言うのは、子供には良くある事なんだ」

 

「じゃああの中にいるのは――、でも、危ないニャ!」

 

「それでも、助けてって聞こえた」

 

「まさか信夫、あの中に入る気かい?」

 

「ああ。俺は偉大なる公認様じゃない。ただの戦隊オタクだ。でも、今は普通に変身できるんだろ。だったら、俺は赤木信夫じゃない。アキバレンジャーのアキバレッドだ!」

 

 

ダンッ! と、信夫は地面を蹴って前に走り出した。

 

 

「俺が知ってるヒーローなら、助けを求める声は無視しないからな!」

 

 

すると隣に気配。

みると、ゆめりあも信夫の隣に。

 

 

「仮にも、にゃーも戦隊を見てきた身。それにアキバレンジャーとしてのプライドくらい、ちょびっと程度あるニャ」

 

 

さらにセイも信夫達の近くへ走る。

 

 

「大丈夫。ボクはあれに巻き込まれてますから、入ったらきっと別の世界に行くんだと思います」

 

「キミは確か、セイくん!」

 

「はい。あそこに入ったらもしかしたら帰られるかもしれないし、第一、友達も巻き込まれてるはずだから、無視はできない!」

 

 

それに――、うまくは説明できないからセイはそれを言う事はなかったが、何か、見逃してはいけない気がした。

あの助けを求める声を無視しては、いけない気がしたから。

 

 

「よし! じゃあ行こう!」

 

 

ブラックホールの引力の範囲に入る三人。

それを見た海東はため息をついてタイガに耳打ちを。

 

 

「適当にやっておいてくれたまえ」

 

 

そう言うと海東は信夫達の隣にやってくる。

 

 

「いいのか、アンタ」

 

「海東大輝だ。まあ、僕はトレジャーハンターだからね、向こうに行けば珍しいお宝が手に入るかもしれない。こういうのは嫌いじゃないんだ」

 

 

ならば迷う必要は無いだろう。

セイ、信夫、ゆめりあ、海東はブラックホールの中に飛び込むと、そのまま暗闇の渦に意識を沈めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

白い部屋が見えた。

ぼんやりと靄が掛かっているからか、あまり景色は見えない。

しかしそこで楽しそうに話す声が聞こえた。一人は少女、もう一人は――、よく分からない。

でも楽しそうだという事はよく伝わってきた。

 

 

『私が――のは、――ゃんとかね、あとはやっぱり――、リ――アが――き』

 

『ぼく――だから――ウ――ラ――と、―――ダー、あと――ン――だよ』

 

 

ノイズ交じりの言葉はうまく聞き取れないが、それでも二人が笑っているのが見えて、嫌な気分はしない。

そして、クリアな声が聞こえた。

 

 

「いつか、会えるかな?」

 

 

すると、少女は笑った。

 

 

「会えるよ。きっと、―――れば」

 

 

そこで、意識は途切れた。

 

 

「……!」

 

 

ゆっくりと目を覚ました少年の名前は、聖司。

司はぼんやりと鈍る思考のまま、体を起こすと、辺りを見回す。

見えたのは、ひたすら広がる白。

 

 

「さむっ」

 

 

体がブルっと震えた。

ええっと、何がどうなったんだっけ?

意識が覚醒してくると、徐々に自分がいる場所の特異性が目に付いてくる。

 

 

「え!?」

 

 

そう、雪だ。雪が積もっていた。

それもそれなりの量だ。北海道とはいかないが、東北だの北陸地方くらいはあるのではないか?

そして周囲を確認すると、隣に我夢が倒れているのが見えた。司と同じく気を失っているのだろう。

さらに周囲を見回すと、まるで自分たちを囲むように大量の雪だるまが設置されているではないか。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

さらに雪には木の枝か何かで書いた様な細い線で、よく分からない模様や呪文みたいなものが書いてある。

雪だるまで囲まれた魔法陣の中心に司と我夢が寝ているのだ。

これは一体――? さらに周囲を確認する司。雪だるまを目で追っていると、そこには背中が。

 

 

「ってお前かよ! 双護!」

 

「ん? ああ、起きたか司」

 

 

雪だるまを作っていた双護は、またも新たな一体を作り上げると、円形に並べていた所に追加を。

 

 

「この魔法陣もお前が?」

 

「ああ。お前達が早く目覚める為に、目覚めの儀式を行っていたところだ」

 

「普通に起こせよッ!!」

 

 

司は呆れた様にため息をつくと倒れていた我夢の肩をゆする。

すると唸り声をあげて目を覚ます我夢。先ほどの司と同じようなリアクションを取ると、キョロキョロと周囲を確認する。

 

 

「雪ですか……」

 

「悪いけど変身して鬼火使ってくれないか? 気絶してたから、体が冷えてる」

 

 

確かに――、という事で数分後、三人は我夢が起こした火を囲んで座っていた。

どうやらココは山の中、見渡す限りの銀世界。

吹雪いてはおらず、天気も晴れであった為、現在の気温はそうでもないが、これが夜になるとどうなるかは分からない。

困った事にバイクは呼べず、電話を掛けてみるが誰とも繋がらない状況であった。身体能力増加、インスタントホッパーの効果は問題なく働いているようだが、不安は募る。

 

 

「おーい! ゼノン、フルーラ!!」

 

 

大声で呼んでみるが反応はなし。司の声がむなしく響くだけだった。

 

 

「困りましたね。確か僕達は――」

 

 

記憶を思い出させる三人。

いつもの様に大ショッカーの企みを阻止したはいいが、学校に戻って、それから自分たちを呼ぶ声が聞こえて、それでブラックホールに巻き込まれた。

そして気づけば、この雪の中。

 

 

「普通に考えて、別の世界に送られたと考えるのが妥当だな」

 

「ワームホール的なやつか。世界と世界を繋ぐトンネルに巻き込まれたのかもしれない」

 

「大丈夫なんですか? 世界はたくさんあるんですよね? 僕達そこではぐれたなんて……」

 

「ゼノン達だって馬鹿じゃないんだ。俺たちがいなくなった事にはちゃんと気づいてくれるだろう。だから問題は、どれだけ掛かるかだな」

 

 

変身すれば最悪凍死は無いだろうが、食料の問題や色々と頭を抱える点はある。

 

 

「そういえばお腹すきましたね」

 

「メシ食う前に巻き込まれたからな……」

 

 

腹部を押さえる我夢と司。

すると木にもたれかかっていた双護はニヤリと笑ってあるものを取り出した。

一つはきれいに拭いた木の枝、もう一つは――

 

 

「お前らが目覚める前に集めておいた」

 

「おお、キノコか――って、大丈夫かよソレ!」

 

 

双護が取り出した三つのキノコは鮮やかな青色のカサに、赤い斑点が浮かび上がっている。さらにその斑点、よく見ればドクロマークである。

 

 

「ココまで親切すぎるアウトは初めて見ましたよ!」

 

「絶対毒だろコレ! まあ肉体強化は内臓にも適応されてるらしいから、ちょっとやそおっとは大丈夫だろうけど、絶対止めておいた方がいいぞ!」

 

「ふっ、落ち着け二人とも。そんなに俺が信用できないか?」

 

((できないから言ってるんだけど……))

 

「まあ聞け。俺は中学の頃、ボーイスカウトの経験があってな。そこでサバイバル術をかなり学んだんだ」

 

 

食べられる山菜やキノコの見分け方は特に力を入れたと。

そんな双護が厳選したキノコがコチラである。全体的なブルーとドクロ状の赤い斑点は確かに気が引けてしまうかもしれない。

しかしそこが素人と玄人の差であると。

 

 

「これはドクハイッテマンネンダケと言ってな――」

 

「待て待て待て待て! マジか! お前マジか!」

 

「落ち着け司。学者ジョークだよ。無毒になのに見るからに毒が入ってそうな見た目を皮肉ってるんだ」

 

「いやッ、でも本当に大丈夫なんですか双護先輩」

 

「もちろん落とし穴はある。ドクハイッテマンネンダケには所謂、姿が似ている"もどき"である、ホントニドクハイッテマンネンデダケと言うのがあってな。見た目はほぼ同じなんだが、そっちには毒があるんだ」

 

「え、じゃあそれは……」

 

「安心しろ。コチラは無毒だ。俺が取ってきたのは正確にはドクハイッテマンネンダケではなく、ホントニドクハイッテマンネンデダケのもどきである、ウソウソジツハドクナンテハイッテナインヤデダケだ。もちろん無毒、ワイにまかせとき」

 

「もうコレ何なのか、わかんねぇな。あと誰?」

 

 

寒さと空腹で若干テンションがおかしくなっている面々。

しかし双護はキノコを枝に刺して焚き火でこんがり焼くと、司と我夢に見せ付ける。

ああ、香ばしい匂いが鼻を刺激する。なるほどたしかにおいしそうだ。ゴクリと喉を鳴らす二人、双護は自慢げな笑みを浮かべると、キノコを一口。

 

 

「うむ、美味でおじゃる」

 

 

そこで双護は青ざめると泡を吹いて倒れた。

 

 

「………」「………」

 

 

なんとなく分かってたけどね!

司と我夢は頭を抱えてうな垂れると、大きなため息をついた。

 

 

「マズイですよコレ、どうしますか?」

 

「やばいよぁ。まあ死なないとは思うけど病院を探すしかないか」

 

 

すると足音が聞こえた。

司と我夢が振り向くと、そこにはモコモコの暖かそうな服をきた少女が立っていた。

 

 

「あ、あ、あ! もしかして毒キノコ食べちゃったんですか!」

 

「え? あ、ああ。そうみたいなんだ」

 

 

青に近い緑のツインテールを揺らしながら少女は双護の状態を確認する。

どうやら少女はこの近くに住んでいるらしく、先ほど司がゼノン達を呼んだ時の声を聞きつけてやって来たのだと。

 

 

「どうかな? マズイ? 一応、食べたヤツは無毒だって言って食べたんだけど」

 

「あー、大丈夫だよ。このキノコさ、ウソウソジツハドクナンテハイッテナインヤデダケって言う無毒のキノコに似てるんだけど、最近見つかった新種で、ワイハモウウソツカヘンカライウケドコレフツウニドクキノコヤデって言う毒キノコなんだ」

 

「深い世界だ……」

 

「この近くに私が住んでる小さい村があるから、そこに運んでくれれば休めるよ」

 

「ありがとう、助かるよ。実は遭難中でさ」

 

「へぇ、大変だね。でももう大丈夫だよ。私ユキミって言うんだ。よろしくね!」

 

「ああ、俺は聖司、倒れてるのは天王路双護って言うんだ」

 

「相原我夢です。よろしくお願いします」

 

「ん、よろしく。じゃあ行こう!」

 

 

司は双護を背負うとユキミに案内されるまま、彼女が住んでいる村を目指す。

一面の白は長年住んでいるユキミがいなければ確実に迷ってしまいそうなもの。

しかし歩くことものの数分で景色は変わり、ひらけた場所にやってきた。

そこは確かに小さい村であった。ペンションの様なものが二つほど、あとは小屋がチラホラあって、後は何も無い。

 

 

「今はみんなで住んでるの。ほら、あそこ」

 

 

一番大きなペンションに案内される司達。

玄関を潜ると、メイド服の女性がやってきた。きれいな桃色の髪が印象的で、優しそうな女性である。

 

 

「あ、ルカルカさん。ただいま!」

 

「おかえりなさいユキミちゃん。そちらの方達は?」

 

「うん、お客さん!」

 

 

自己紹介を交わす一同。

ルカルカという女性はこのペンションの持ち主だった男性に仕えていたが、その男性が亡くなってしまってからは一人で管理しているのだとか。

今はユキミたちと所謂ルームシェアと言う形で一緒に住んでいる。

 

 

「みんなは!?」

 

「ええ、リビングにいます。暖炉の方の」

 

「うん!」

 

 

司は空き部屋に双護を寝かしつけると、残りの住人に挨拶を済ませるためにリビングへ向かう。

扉を開くと、暖かい風が吹いてきた。大きな暖炉が見える部屋で、そこには司達とそう年齢が変わらないだろう少年少女が。ルカルカはメンバーの紹介を。

 

「お客様ですよみんな」

 

「おお、珍しいねー」

 

 

黄緑色の少女はヘソを出した服を着ていた。

名前はグルミと言うらしい。

 

 

「なにもない所だけど、ゆっくりしていってください」

 

 

白い髪に赤い目の少女は静かにつぶやいた。

名前はコハクと言うらしい。

 

 

「ルカルカ、お茶を淹れてあげて」

 

 

司達より年上で――、おそらく25歳くらいだろうか?

黄色い髪に青い目の青年、彼の名前はレイン。

そして、彼の前にいたのは車椅子に座った女性だった。レインとよく似ているが、関係は分からないと言う。

黄色い髪で、青い目はうつろ、白いリボンが特徴的だった。

 

 

「彼女はユリン様です。今は少し――、病のほうを」

 

「そうですか、それは……なんと言っていいか。俺は聖司です。少し迷ってしまいまして」

 

「相原我夢です。よ、よろしくお願いします」

 

 

なにか、少し――、違和感があった。

既視感とでも言えばいいのか。ココに来た事が無いはずなのに、来たような気がして。

その時――、ビクッと司の肩が震える。隣にいたユキミに話しかけられたのだ。

 

 

「ヨロシク!」

 

「……あ、ああ」

 

 

よろしく。

なんだか、やけに、時計の針の音が耳に入った。

外は、風が強くなり、吹雪になろうとしていた。

 

 





☆エピナビ☆


・非公認戦隊アキバレンジャー

2012年、4月6日から6月29日と2013年、4月5日から6月28日に放送された特撮ヒーローだ。
非公認であるため、スーパー戦隊シリーズには含まれておらず、良い子は見ちゃダメのキャッチコピーの通り、ギャグ、エロ、メタの三つを多く含んだ作品になっているぞ。
スーパー戦隊オタクの赤木信夫が、アキバレンジャーとなって妄想の世界で悪と戦うストーリーになっているぞ。
非公認ではあるものの、いろいろな歴代スーパー戦隊のネタや、一部は本人が登場するお祭り作品なんだ。
ちなみに、メインライターの人は仮面ライダークウガのメインライターでもあるんだ。ギャップが凄いね!

………

読者どの! この作品のアキバレンジャーの世界設定はオリジナルですぞ。
一応無印と痛を混ぜ合わせたものになりますぞ。
ゆえに、ゆめりあは未婚ですぞ。と言うよりこの作品ではどちらかと言うと赤×黄になりますぞ。
マイナーですがゴメンですぞ!

とりあえず全部の作品が出てきたので改めて書きますが、この作品はディケイド×メビウス×ビルドファイターズ×アキバレンジャー×スマプリ×しんちゃんとボカロの多重クロスですぞ。
ココまで読んでもらえなたら分かると思いますが、クセがすごいですぞ。完全に趣味で書いてますな! 申し訳ありませんぞ!
なるべく知らない原作があっても何とかしたいとは思っておりますが、そもそも更新も遅いんで、あまり期待はしないでほしいですぞ!

このしゃべり方たのしいですぞ! おなりですぞ!
次回もよろしくですぞ!
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