Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

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SONG3 友情のクレヨン

 

『すまない……少し力を使いすぎた』

 

「うん大丈夫、ゆっくり休んでて。あとありがとう」

 

『いや、気にするな。当然の事をしたまでさ』

 

 

公園のベンチ。そう言って良太郎はふぅと息をはいて心を落ち着けた。

モモタロスにコンタクトを取ってきたのは彼の友人と名乗るイマジン(?)だった。

正確にはイマジンではないらしいのだが、リュウタロスはタロスがどうのこうのと。

何故か彼等も不思議とその記憶はぽっかり失っていたらしい。そして良太郎は彼とは初対面だった、少し緊張したが彼もまたモモタロスと同じく正義の心を宿した物だ。すぐに理解しあう事ができたので、それは良かったのだが――

問題は、全く別の所から出現した。

 

 

「良太郎、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ。ハナさんは?」

 

「わたしは平気だよ」

 

「なら……良かった」

 

 

少し疲れた様子の良太郎。

彼とハナに起こった一連の流れはこうだ。

まず始めにモモタロスの友人である『彼』から連絡があった。

いつどこで知り合ったのかは良太郎の知る所では無いが、モモタロス達ははじめは少し首を傾げていたが彼の事を思い出したのか会う事を了解したのだった。

こうして良太郎と、その彼が誰なのか気になるハナはデネブを連れてEpisode DECADEを操作して彼が指定した世界へと移動する。そこで良太郎達はその彼と出会い、話を聞く事になる。

良太郎は友人である彼がモモタロスを呼んだのは久しぶりの再会を喜び合う物とばかり思っていたのだが、事態はそんな甘いものでは無かったのだ。

彼はモモタロスと良太郎を確認すると軽い挨拶を済ませて即本題に入った。

 

 

『世界が大変な事になろうとしている』

 

 

それが彼がモモタロス達とコンタクトを取った理由であった。

彼もまた真っ先に世界間に起こっている異変を感じ取ったのだ。

そもそも友人である彼は本来世界をポンポン移動するタイプではない。それは移動しないのではなく移動できないからだ。

だいだいの話世界とはそう言うものだろう? 良太郎はEpisode DECADE関連の出来事でだいぶ世界移動に対する慣れがあるのだが、本来他世界と言うのは全く干渉し合わない物の筈なのだから。

つまり、どういう事かと言うと世界を隔てる壁が急に脆くなったと言う。

さらに良太郎とハナは彼が危険視していた事を身を以って体験する事になる。

 

時空の歪み、それが良太郎達の前にも例外なく現われた。

中からは助けてと言う声、良太郎は一瞬迷ったがあまりにもその時空の歪みが不気味だったのを覚えている。

そして友人の彼は撤退の判断を取ったらしく、力を解放して自分達を歪みから遠ざける事に成功した。

すると歪みは消滅、良太郎達は無事だったのだが、彼は慣れない世界移動に加えての歪みから皆を遠ざける為に力を必要以上に使ってしまったと言う訳だ。

 

そして今に至る。

力を失った彼を良太郎は助ける為にイマジンと契約するのと同じくして自分に憑依させ体力を回復させる事に。

ココに来るまでにも相当エネルギーを使ったのだろう。彼は気を失い、回復状態に入った。

 

 

「良太郎、辛くない?」

 

 

不安げに良太郎を気遣うハナ。

なにせ彼の身体には六つの命が入っている状態、負担もそれだけ大きくなるかとハナは思うのだ。

しかし大丈夫と良太郎、自分も結構成長したものだと笑ってみせる。それよりも心配なのは学校に帰れなくなった事だ。

そのせいでモモタロス達は常に良太郎の身体に入る事になる。先ほどから狭いと不満を漏らす面々、学校に戻れない理由は友人の彼が話してくれた。

それは学校が時空の歪みに飲み込まれたからではないかと。

 

 

「みんな大丈夫かな……?」

 

「どうだろう? ゼノン君たちもいるから大丈夫だとは思うけど……」

 

 

事態を知らない良太郎達。

不安もあるが、自分達の問題もある。

 

 

「野上、ハナちゃん、迷った時や疲れたときは甘いものが一番だ」

 

「ん、ありがとうデネブ」

 

「ありがとう」

 

 

デネブキャンディーをほお張る良太郎とハナ。

そこで良太郎はそうだとデネブを見る。

 

 

「デネブはハナさんの中に入れる?」

 

「ああ、ゼノン達が俺にも補正って奴をかけてくれたみたいなんだ」

 

 

デネブは既に契約済みのイマジンではあるが、憑依と同じようにしてハナの中に待機できるらしい。

要するにモモタロス達と同じ状態にあると言う訳だ、生身でも活動できるしハナについたまま待機する事も出来るようになったらしい。

何かありそうな時はハナに憑いていつでも守れる準備はできると。

 

 

『なにせ彼が出張ってくる訳だしねぇ、そうとうヤバイんじゃない?』

 

「うん、今までには無い雰囲気だね」

 

『面倒な釣りはしたくないんだけどなぁ』

 

 

ウラタロスが言う事は、つまり今まで以上に面倒な事が起きるのではないかと言う事だ。

最も簡単に考えられる最悪の事態は以前の様に大ショッカーが一点集中で世界を潰そうとするタイプだが、果たして……。

 

 

『へっ、歪みだか湯たんぽだか知らねーが、全員ブッ倒せばいいだけの話だろうが!』

 

『そんな簡単に済めばええけどな。あの歪み、オレでも胸騒ぎがするっちゅうもんやで』

 

 

確かにと良太郎は唸る。あの歪みは今までに無い異質さを感じた。

当然あの歪みには原因がある筈であり、それが意図的な物なのかどうなのかがネックになると言った所だろう。

 

 

『ねぇねぇ鳥さん、カメちゃん! あの穴の中ってどうなってるのかな? えへへ!』

 

『あの様な薄暗い場所は高貴な私には似合わん!』

 

『そうそう、僕もああ言う暗い場所は似合わないって言うかさ。薄汚れた先輩とかキンちゃんに聞いてよ』

 

『薄汚ねぇとは何だ! 暗い穴の中で寝るクマ公はともかくだな!』

 

『ハッ! どんな暗い所でもオレのオーラがあれば金色に輝く。そこがお前らとの差っちゅうモンやな!』

 

「あー、もう! アンタ達うるさい! 良太郎が疲れるでしょ!!」

 

 

とは言いつつ良太郎を殴ろうとするハナ。

慌ててデネブが止めたおかげで彼女のパンチは未遂に終わる。

 

 

「ご、ごめん良太郎っ! ついモモたちにやるクセが……!」

 

「……あは、あはは」

 

 

引きつった笑みを浮かべて身体を反らしていた良太郎。

中にはモモタロス達がいる訳だが、身体は良太郎のソレだ。

しかし先ほどのリュウタロスの言葉は確かに気になると言う物。

 

 

「あの穴の奥ってどうなってるのかな?」

 

 

先ほど友人の彼が言っていた事だが、おそらくは別の世界に繋がっているらしいのだが――?

なにぶん確かめるには入ってみるしかない、それは相当リスキーな物だ。

 

 

「とは言え、何かアクションを起こそうにも……ね?」

 

「うん。彼が言うにはこの世界にも何か異変が起きているらしいんだけど」

 

 

ソレが何か分からないし、最悪歪みが起こると言うだけの可能性もある。

つまりもうイベントは済んでしまったと? だったら自分達はもう何もできない。

ゼノン達が自分達を見つけて拾ってくれるしかこの世界から抜け出す方法は無いのだ。

 

 

「これからどうする? 良太郎」

 

「とりあえず彼が回復するのを待つしか無い、かな?」

 

 

本当にそれくらいしかやる事が無い。

できればもっとちゃんとした所で休みたいと言う思いはあるが、どれくらいこの世界にいるのか分からない為にお金も無駄遣いはできないとデネブが念を押した。

それはそうだと良太郎とハナ、二人は結局どこの世界かも分からぬ公園のベンチで時間を潰す事に。とりあえず今は朝、夕方まで待ってみて何もおきなければ動き出すしかない。

 

 

「もし夜まで何も無かったらどうしよう……?」

 

「うーん……」

 

 

この身体じゃ二人でホテルにも泊まれないだろうし。

 

 

『良太郎の身体が元のままだったら僕に任せてくれれば良いんだけどね』

 

「元のままでもアンタには任せないわよ、絶対に!」

 

 

ウラタロスの言葉を遮断したハナ。

一方で良太郎は言葉を続け、最悪野宿も頭に入れておかねばならないかもと彼は言う。

 

 

「ごめんハナさん。女の子に野宿させるなんて……」

 

「えっ? ああ、いいよそれくらい」

 

『そうだぜ良太郎。鼻クソ女は女じゃなくて化けも――』

 

「あぁ゛? なんですってぇ?」

 

『……なんでもないです』

 

 

ナイフの様な目つきでモモタロスを、いや良太郎を睨むハナ。

思わず彼は泡を吹きそうになるが、なんとか堪える。それに気づいたのか慌てて謝罪を行う彼女。

良太郎とモモタロス達の身体が同じなのは分かっていても忘れてしまうものだと。

 

 

「わ、わたしはさ!」

 

「え?」

 

 

そしてハナはブンブンと手を振りながら少し頬を染めて目を逸らす。

 

 

「わたしは……さ。その……りょ、良太郎と一緒なら、どこでもいいよ――なんて」

 

「う、うん。ありがとう」

 

(さっきの睨みが無かったら良太郎にも響いてたのになぁ)

 

 

残念、ウラタロスがそう思った時――

 

 

「あり? ありり? ありりりりぃ!?」

 

「「!」」

 

 

どこかで聞いた声。

良太郎達がその方向を反射的に見ると、思わず彼等はアッと声を上げる。

 

 

「あー! やっぱりそうだ!」

 

「「城ヶ咲さん!」」

 

 

良太郎達を見つけて手を振って来たのはまさかまさかの他世界での知り合い出会った城ヶ咲(じょうがさき)優子(ゆうこ)

つまりは助手だ。そして彼女がいると言う事はつまり近くには――

 

 

「へぇ、これは珍しい事もあるもんだ」

 

 

博士、零月(れいげつ)結弦(ゆづる)が歩いてくる。

相変わらずラフな格好の上に白衣と言うアンバランスさが目立つ格好で歩いてくる彼。

しかし目を見開いたままの二人、本当に彼の言うとおり珍しい事がある。

ある種無限とも言える程に数多に存在しているパラレルワールドの一つで偶然出会うなんてまさに奇跡とも言える出来事ではないか。

 

 

「なんで二人はここに?」

 

「ああ、実は――」

 

 

しかしいざ話してみると全くの偶然と言う訳でも無かった様だ。

実は博士達がいた世界にも時空の乱れが発生し、彼と助手を巻き込んでいったと。

幸い普段の道具一式は持っていたために焦りは少なかったが、元の世界に戻れる装置が故障してしまったとか。

自動修復装置があり、少し時間は掛かるが直せるレベルだったのでそれも良かったのだが、なにぶんそれまでの時間を持て余していたという訳だ。

 

 

「時空の歪みでココに?」

 

「まあな、まさかお前達もか?」

 

「いや、ぼくたちは――」

 

 

どう言う事だ? 良太郎は首を傾げる。

歪みはこの世界にも発生していたはず。

となると歪みの先にある世界はランダム? いやだとしてもあの声が気になる。

博士に聞けば確かに助けてとは聞こえたらしい、最も歪みは自分達を強制的に引き寄せたのだから助けを求める声に応えてココに来たわけではないのだが。

 

 

『出口が何通りかに設定されてる可能性もあるよ』

 

(そうだね、もう少し調べてみようか)

 

 

とりあえず四人はベンチに座りなおしてもう少し情報交換を。

良太郎はこの世界に何か異変が起きていると言う事と、世界全体にイレギュラーの事態が起こっている事を告げた。

あとは学校に戻れない事や皆に連絡がつかない事を。

 

 

「うひー、そっちも大変なんですなぁ」

 

「まあね、一瞬一生この世界で暮らすのかと思っちゃったもん」

 

 

確かにその可能性も無い事は無い。

良太郎達からしてみれば幸いこの世界も自分達の元々いた場所とそう違いないように見える。

博士にとっては色々と文明が遅れているようにも感じるだろうが。

 

 

「確かココは国は日本。町はハルヒブって所らしい」

 

「はるひぶ? うーん、聞いたことないなぁ」

 

「看板に書いてあったん……だよな? 助手君」

 

「そうですよーん」

 

 

デネブキャンディを舐めながら適当に頷く助手。まあ日本なだけマシだろうか。

まあとにかく、だ。自分達も博士達も似た様な状況となっている訳で、かつどうしていいか分からない状況らしい。

そして不安要素はまだ存在している。と言うのも丁度博士達と話し合っていた時だ、モモタロスが良太郎に声を掛けてくる。

 

 

『良太郎、臭うぜ』

 

「え?」

 

『本当に微かだがよ、大ショッカーの臭いだ』

 

「本当に!?」

 

 

大ショッカーが集結して一つの世界を襲った時があったが、モモタロスはその時に彼等の放つ匂いを記憶していた。

どの組織の怪人なのかまでは流石に分からないが、この気配は確実にそうだと。

つまり、それはこの世界に大ショッカーの怪人がいる事を意味するのだ。

 

 

「チッ、その時空の歪みって奴はそいつ等が起こしてるんじゃ無いのか?」

 

「どうだろう? でも可能性はあるね」

 

 

しかし、そうだとしたらしたでマズイ。

何せこんなにも多くの人物がイレギュラーイレギュラーと言っている事態を大ショッカーが意図的に巻き起こしたと言う事になる。

それだけ向こうに力があると言う事ではないか。

 

 

「でも取りあえずやる事はできたね」

 

 

立ち上がり手を腰に当てるハナ。まずはとにかくその大ショッカーの敵を倒す事だ。

偶然にせよ意図的にせよ放置できない相手、今はまだ臭いが薄いと言う事は近くにはいないのだろうが、今から捜せば今日中には出会えるだろうとの判断だった。

 

 

「今から街の人に怪しい人がいなかったか聞いてみようか。結弦君達も手伝ってもらえたら嬉しいんだけど……」

 

 

良太郎の言葉にため息をつく博士。

まあ面倒な事だが事態が事態だ、仕方ないかと彼等も立ち上がる。

それに彼等は他世界について色々なデータを集めたいと言うのが目的の一つ。

良太郎に付いて行けば色々な経験ができるかもしれないと、彼等は了解の意を述べた。

 

 

「モモタロス、大ショッカーは遠くにいるんだよね?」

 

『いや、そうともかぎらねぇぜ。少し臭いが近づいてきた気がする』

 

 

どうやら向こうはコチラに近づいてきたと言う訳か? ならば動かずとも敵と接触する可能性はあると。

もしかしたらこの近くで何かしようとしている可能性もある。とりあえず近くにいる人を見つけて何か聞き込みでもと助手は言った。

公園を飛び出て辺りをキョロキョロと見回す彼女、すると早速犬の散歩をしている少年を発見したとか。

 

 

「あの子に聞いてみましょう」

 

「ん?」

 

 

赤いTシャツと黄色い半ズボンのクリクリ頭の男の子が向こうから白い犬を連れて走ってくる。

どうやら散歩の途中らしい、とにかく今はとにかく情報が欲しい。博士と助手は彼でいいと合図を、しかして良太郎とハナは訝しげな表情で首をかしげている。

 

 

「ね、ねえ良太郎……あの子って――」

 

「う、うん。やっぱり気のせいとかじゃないよね」

 

 

引きつった笑みを浮かべる二人、博士はそんな二人の様子が気になって足を止める。

一方で彼に話を聞きに行く助手、怪しい人は居なかったかとかそんな適当なものだ。

 

 

『お、おい良太郎! アイツはまさか!!』

 

『え? 何、先輩達あの子の事知ってるわけ?』

 

『いや――ッ、知ってるっつうか何つうか……なぁ』

 

 

珍しく歯切れも悪いモモタロス。

博士も気になったのか聞き込みを助手に任せて固まっている良太郎達に話を聞く事に。

どう考えても二人の様子はあの子供を知っているような素振りだ。つまり二人はこの世界に来た事があると言う事なのか?

 

 

「ね、ねえ結弦くん。ハルヒブって……さ、漢字を見てそう読んだの?」

 

「ああ、季節の『春』、太陽の『日』、そして部活の『部』だ」

 

「それって……読み方違うわよ」

 

「そうなのか?」

 

「うん、かすかべ……だよ」

 

 

町によって少し変わった読み方をするのは珍しい話ではない。

こういった世界とは少し別の場所に住んでいる博士たちが間違えてしまうのも当然だ。

いやいや、だが問題はそこではない。良太郎とハナ、そしてモモタロスの記憶の中ではパズルのピースが嫌でも次々と形を作っていくと言う物。

春日部と言う場所は覚えているぞ、そしてなんだ、あの子供シルエットもまた鮮明に思い出せると言う物だ。

 

 

「ああん! お姉さんオラをナンパ? 一緒におジュースでも飲む~?」

 

「ええっ!? ナンパって私が!?」

 

「?」

 

 

なんだか向こうが騒がしい、博士は思わずそちらの方に視線を移した。

なんだが盛り上がっている様だが、良太郎とハナはため息をついて彼の元へ。

 

 

「久しぶりだね、しんちゃん」

 

「お?」

 

 

しんちゃん、そう呼ばれた男の子は良太郎達を見ると目を丸くする。

 

 

「わたし達の事覚えてるかな?」

 

 

腕を組んで前に出るハナ。

二人はしんちゃんの事を――本名を"野原しんのすけ"の事を知っている様だった。

しんのすけもまた良太郎達を見ると少し表情を変えて顎に手を置いた。

 

 

「うーん、そう言われれば確かに見覚えが……」

 

「野上良太郎だよ」

 

「わたしはハナ、久しぶりだねしんちゃん」

 

 

自己紹介を行う良太郎とハナ、するとしんのすけはポンと手を叩いておお! と声をあげる。

彼と会ったのはかなり前の事であるが色々思い出が濃厚だった為にあの日のことは鮮明に思い出せる。

いい意味でも、悪い意味でもの話ではあるが。

 

 

「良太郎ちゃんにハナちゃんか!」

 

「そうそう、久しぶ――」

 

「誰だっけ?」

 

「「う゛ッ!!」」

 

 

ずっこける二人、モモタロスは相変わらずだなと呆れ顔だ。

良太郎は汗を浮かべながらも仕方ないと首を振る。

なにせ相当前の出来事に加えて考えても見れば自分達はあの時の姿ではないのだから。

 

 

「お、覚えてないかな、時の列車デンライナーって」

 

「おお! 思い出した!」

 

 

今度は本当に思い出したようだ、しんのすけの表情もパッと明るくなる。

しかしすぐに立派な眉毛を歪ませる彼、記憶にある二人の姿と今目の前にいる二人の姿が合致しないのだ。

 

 

『ん? ちょっと待ってよ良太郎』

 

 

ウラタロスが良太郎にだけ聞こえる様にコンタクトを取る。

時間の流れや、今回の件で世界間にも強い影響を受けない事が特異点の力である事が分かっている。

要するにEpisode DECADE側の人間となった良太郎とハナの異変をちゃんと理解できていると言う事は――、だ。

 

 

『うん、しんちゃんも特異点なんだよ』

 

『へぇ! 意外だなぁ』

 

 

正確には特異点の中でも異質、言い方を変えれば特殊な物だと良太郎は言った。

と言うのも良太郎やハナが完璧な特異点とするならば彼は未熟な特異点とでも言えばいいか。

簡単に言えば自分の世界での時間軸には大きな影響を受けるが、その影響や他世界の時間軸の変化は全て確認する事ができると言う物である。

早い話が良太郎達の変化には気づいていると言う訳であり、また特異点ならではの『資格』も持っていると言う事だ。

 

 

『資格って……まさか』

 

『うん、つまり――』

 

 

黙りこむ良太郎の代わりにハナが説明を行う。

再生した時間の影響で見た目が小さくなってしまったのだと。

とは言えしんのすけは大人びた性格の子供であるがまだ五歳児、良太郎達ですらイマイチよく分かっていない仕組みを分かる訳も無く。

 

 

「怪しいゾ……確かめる必要がありますなコレは」

 

 

じっとりとした目で二人を見るしんのすけ。

意外とちゃっかりしていると言うか何と言うか。それが彼の特徴でもあるのだが。

 

 

「えぇ? 確かめる?」

 

「そうだゾ、オラの知っている良太郎ちゃんなら――」

 

 

しんのすけはフンと鼻を鳴らすと愛犬であるシロのリードを離すと両手で短パンの端を掴んで――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パ ン ツ ご と、それをずり下げる。

 

 

「「「!?」」」

 

「ほう、コイツ……」

 

 

白目になって口を開けたまま固まる三人と目をピカリと輝かせる博士。

なかなかご立派な物をお持ちで、ってうるせーよ! モモタロス達もまた目を見開いて突如現われたエレファントに目を奪われると言う物。

 

 

『うわーい! ゾウさんだゾウさん! あははは!』

 

『なるほどな! 裸の付き合いっちゅう奴か! ええやんけ!』

 

『ちょっとちょっと二人とも何言ってんの! アレ大丈夫? 疑似餌じゃなくてモロだよモロ!』

 

『御供その二、アレは芸術作品か何かか?』

 

 

騒ぐイマジン達に混じってハナ達もやっと正気に戻る。

なんだ、つまりしんのすけは突然股間のゾウさんを一同の前に晒した訳で。

 

 

「ちょ、ちょっと何してるのよしんちゃん!」

 

 

真っ赤になって顔を背けるハナ。

 

 

「い、いやん! いやんばかん! この、このどすけべ!」

 

 

同じく赤面しながら顔を覆う助手。

いやちょっと待て! 一見手で顔を覆っている様だが、目の部分はバッチリスペースを開けているじゃないか!

 

 

「このガキ。初対面の人間に恥部を晒すとは中々ロックな奴だな」

 

 

右脳で生きている様な奴は嫌いじゃない。

むしろ型に嵌らない奴ほど縛られない行動が成せる物だ。

 

 

「と言う事で助手君、ロックな彼を撮影しておきなさい」

 

「え! 今!? モロ出しの今ッ!? って言うかロックってなんだ!?」

 

 

喚く助手を放置してしんのすけは真っ直ぐな目で良太郎を見詰める。

確かめる方法はただ一つ、あの時はじめて二人が出会った時のことをしんのすけはしっかりと覚えている。

しんのすけの家とデンライナーが繋がった時、彼の家のトイレの扉がデンライナーの入り口になった為に起きたハプニングと言うか何と言うか。

 

 

「オラのおしりがちゃんと良太郎ちゃんの感触を覚えてるぞ」

 

「あぁ、ぼくは忘れたいよ……」

 

 

涙を流してうな垂れる良太郎と、首を傾げる博士。

二人の間に何があったのだろうか? 博士はそれを迷わずしんのすけに聞いてみる事に。

どうやら彼がいきなり尻を丸出しにしたのにはちゃんとした理由がある様だ。

 

 

「良太郎ちゃんがオラのおしりを――」

 

 

ポッ、と彼は頬を染めてもじもじと。

 

 

「ふぇ? どうして赤くなるの!?」

 

「―――」

 

 

それを見てさらに色素をなくす助手。

良太郎がしんのすけのお尻を!? おいおい、そいつは穏やかじゃないってと彼女は吼える。

 

 

「助手君、メモしておけ。ミスター良太郎の性癖は五歳児の生尻だ」

 

「ういーっす。えー、良太郎さんの性癖は――」

 

「止めなさい! 良太郎が誤解されちゃう!!」

 

 

ハナが拳を手に叩きつけたので黙りこむ博士たち。

前に彼女の鉄拳は目にした事があるが普通にコンクリートをぶち破っていたので下手な事はいえない。

もしも調子に乗ればあの砕かれたコンクリートが自分達に代わるだけなのだから。

 

 

「前にしんちゃんのお尻を良太郎が顔で受け止めちゃったのよ」

 

「エキセントリックな状況だ。どういう状況でそうなるのか説明してもらいたいものだね」

 

「それは良太郎の運がちょっと悪かっただけなんだから! ね、良太郎!」

 

「そうそう、だからオラのお尻をもう一度当てれば感触で思い出せるかなと」

 

「やらんでいい!」

 

 

ハナは尚も顔を赤くしつつしんちゃんの頭を抑える様にして言葉を遮った。

すると同じくして良太郎の身体から黄色い光の球体が飛び出てきてしんのすけの前に着地する。

それは砂の身体を形作り、上半身が地面から生えて下半身が空中から生える奇妙な形になって完成した。

 

 

「おいしんのすけ! 俺の事は忘れたとは言わせねぇぜ!」

 

「おお! 赤いぶりぶりざえもん!!」

 

「だからソレは違うって言ってんだろ! 俺はモモタロスだ!」

 

 

百聞は一見に。

と言う訳ではないかもしれないが、あの日から全く姿が変わっていないモモタロスには流石のしんのすけも疑う事無く事態を受け入れる。

 

 

「よ、モモちゃん。おひさしぶりぶり~」

 

「チッ、相変わらずだなしんのすけ!」

 

 

とにかくソレしまえ! モモタロスは尻を押さえながらしんのすけに注意を促す。

いやお前も尻をか! なんなんださっきからちょいちょい来る尻推しは!

博士が吼えるとモモタロスは少し気の引けた様子で博士としんのすけを交互に見やる。

 

 

「うるせー! 俺はコイツにカンチョーされたんだよ!!」

 

「なるほど! コレは中々興味深いな、助手君すぐにメモを」

 

「らじゃ、モモタロスの初めてはしんのすけ君に奪われた……っと」

 

「うぉい!!」

 

 

そこで大きく息を吸うハナ、彼女は適当に見つけた石を手に持って博士たちに見せる。

 

 

「フンッ!」

 

 

そして険しい表情でその石を握りつぶした。

硬い、それはもうとても硬い石が砕ける音。

そしてハナの手から零れ落ちる破片だの欠片だの、それを見て博士たちは無言のハナが何を言いたいのかを察する。

 

 

『少し黙ってろ』

 

「「すいませんでした」」

 

 

土下座の二人。

そうしているとモモタロスが人の気配を感じて一度良太郎の中に戻る。

咳払いを行う良太郎、ハナ達も向こうから走ってくる人物に気づいて一度心を落ち着けて衣服を整えた。

 

 

「こらおバカ! 人前でおパンツ脱ぐなっていつも言ってるでしょ!」

 

「遅いぞ母ちゃん!」

 

 

しんのすけがやって来た道から小走りにやってきたのは彼の母親である野原みさえ、それとベビーカーに乗っている彼の妹のひまわりだ。

どうやら一緒にシロの散歩に付き合っていたらしい、自由なしんのすけも抑制される者が現われれば多少は大人しくなる訳で。

まあ簡単に言えば彼にとってみさえは怖いのだろう、しんのすけも彼女に注意されれば渋々言う事を聞かざるを得ない。

パンツと半ズボンを戻すと何とか落ち着くことになった。みさえもしんのすけを注意しつつ、一緒に居た良太郎達を発見する。

 

 

「あら? 貴方たちは……?」

 

「ど、どうも。野上良太郎です」

 

「ああ! 前に電車であった」

 

 

どうやら彼女は良太郎達の事を覚えていたようだ。

時の列車の事を知りつつ平然と彼等に接する彼女は一体何者なんだと博士は表情を複雑に歪ませる。

何と言うか動じないと言えばいいか、リアクションが薄いと言えばそうか。

 

 

「あ、じゃあしんちゃん。お友達もいっぱいいるんだから遊んでもらいなさい」

 

「えー! シロのお散歩が終わったらオラもデパート連れてってくれるって言ったのに!」

 

「いいじゃない、お友達がいるんだもの。じゃ、ママはお洋服見に行ってくるわね」

 

 

良太郎達によろしくとみさえ、どうやらしんのすけがいるとスムーズに買い物ができないと睨んでの行動らしい。

まあ子供がいると玩具をねだられたりと想像は簡単につくと言う物だ。ただでさえ赤ちゃんのひまわりがいるのだから、負担はなるべく減らしたいと言う物だろう。

良太郎も良太郎で断れない性格なのか、みさえの気迫に負けてハナが口を開く前にオーケーしてしまう事に。

 

 

「あら、悪いわね良太郎くん。じゃあしんのすけの事よろしくね」

 

「ず、ずるいゾ母ちゃん! お買い物が終わったら屋上のちびっこランドで乗り物に乗せてくれる約束だよ!」

 

「えー、いいじゃないお友達と遊んでれば」

 

「あ、あのわたし達は――」

 

 

大ショッカーが近くにいる状況だ、できればしんのすけもデパートに言ってくれた方が安全ではある。

ハナはみさえに事情を話してしんのすけを一緒に連れて行ってもらおうとするのだが、その前にしんのすけがため息を一つ。

 

 

「胸も器も小さいな、みさえ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

げ ん

こ つ

 

 

「行ってらっしゃい、美人のママ!」

 

「「「「行ってらっしゃいませ、みさえさん!」」」」

 

「じゃあしんのすけを宜しくね、おホホホ!」

 

 

笑顔でデパートへ向かうみさえと手を振るしんのすけ、後ろでは良太郎達が並んで頭を下げている。

しんのすけの頭には芸術とも言える程綺麗な球体のたんこぶが盛り上がっている。

あのハナでさえみさえのおしおきの一撃を見れば断ると言う選択肢が浮かんでこなかった。

あり得ない話ではあるが、あの状況で断りの言葉でも言おう物なら自分がげんこつを受けると思ったのだろう。

 

 

「ああん、でもオラお姉さんと遊べるならデパートなんてどうでもよくなっちゃう~!」

 

「あーん! 嬉しい事言ってくれるねしんちゃーん!」

 

 

クネクネデレデレと助手に笑いかけるしんのすけ、助手も悪い気はしないのか同じくクネクネと彼に笑みを向けている。

そんな様子を汗を浮かべつつ見詰める博士たち。しかし彼もまた咳払いを一つして良太郎に詳細を求めた。

とにかく知りたいのは彼としんのすけの関係である。一体何がどうなって二人は知り合ったのか、どんな事があったのか。

 

 

「ええと、それは――」

 

 

そうだな、自分達で盛り上がっていてはいけないと良太郎は博士に彼と出会ったときの事を話そうと口を開く。

しかしその時だ、良太郎の言葉に割り入るのはモモタロスの声。

 

 

『おい、お喋りの時間はねぇぞ』

 

「え?」

 

「と言うと……」

 

 

表情を変える博士、今までの話の流れを考えるとコレは穏やかな状況ではない。

良太郎とハナは気づいていないのかモモタロスに詳細を問う、するとモモタロスは良太郎の前に出現してその方向を指差した。

 

 

「臭いが近づいてきたと思ったら、ビンゴだぜ」

 

「!」

 

 

住宅街の道から歩いてきたのは明らかに異質な二人組みであった。

それが異質と分かるのは何と言っても風貌だ。二人の男女は和服であり、少女の方に至っては肌の色が驚くべきほど青白い。

良太郎達が彼等に気づいたように和服の二人もまた良太郎達に気づく訳で、少女の赤い瞳が一同をしっかりと捉える。

 

 

「あれ? あー……ああ!」

 

 

和服の少年は扇子で自分を仰ぎながら目を上に、そしてしばし考えた後手を叩いて扇子を良太郎に向ける。

既にしんのすけを守る様にして立っていた一堂、当然だ、なぜならば彼等の和服には黄金の大鷲が堂々と刺繍されているのだから。

 

 

「大ショッカー……!」

 

「そうそう、当たり。大当たり」

 

 

大ショッカーは多くの組織が集合して成り立つ物だ。

彼らもまたその中の一つである血狂魔党のメンバーであった。

魔化魍と呼ばれる二人、男の名は和織(わおり)、女の名は墨姫(すみひめ)

 

 

「そう言うお前は電王だろう? 奇遇だなぁ、こんな所で」

 

 

扇子で良太郎を示す和織。

良太郎達が大ショッカーを認識しているのと同じく、大ショッカーの中にも世界移動を繰り返す仮面ライダー達を認識している者がいる。

それこそがこの二人であった、良太郎達の噂は有名であり、特に野上良太郎の名は特別有名だ。

 

 

「へっ! 俺らの名も売れてきたなぁ、おい!」

 

 

モモタロスが少しウキウキとした様子で答える。

本来ならば緊張感だの若干の恐怖だのを覚えそうな物だが彼にとっては関係の無い事らしい。

名前を覚えられれば狙われると言う事がありそうだが、むしろモモタロスとしてはそっちの方が都合がいい事なのかもしれない。

当然か、モモタロスはそう言う事が目的で良太郎に憑いたのだから。

 

 

「お兄さん達の間じゃガキ共の中でお前様が最強って事になってるんだよね」

 

 

和織の周りに風が吹きぬけたと思えば両手には刀が。

彼はそれを良太郎に向けるとニヤリと笑ってみせる。

特別クラスの存在を知っている彼等魔化魍達の間では野上良太郎、つまりは仮面ライダー電王が最強と認識されている。

よって彼等の間では良太郎を倒せば位が上がるのだとかなんとか。要するに良太郎を倒した物が名誉を得られると言う事だ。

 

 

「ってな訳で、お兄さんと墨姫ちゃんがキミを倒して偉くなろうかなって思ってね!」

 

「偉く……なる」

 

 

隣で無表情で立っていた墨姫も銃を両手に構えて戦闘態勢に入った。

さらに指を鳴らす和織、すると彼等の背後に闇が集り無数の兵隊を形作る。

狐の面を被った忍者の様な風貌の戦闘員、白狐隊である。人数では良太郎達の方が上と思いきやそうでもない様だ。

おまけにココは思い切り住宅街のど真ん中、和織は戦いの場にと公園を示すが、それほど広くない場所に加えて誰かがやってくる確立は非常に高い。

ましてやしんのすけを守りながら戦うと言うのもハンデか、博士はそう思っていたのだが――。

 

 

「モモタロス!」

 

「チッ、仕方ねーな!」

 

「お?」

 

 

砂状態のモモタロスはしんのすけの前に移動すると肩パーツを外してソレをポンポンとタンバリンの様に叩き合わせる。

それ外せるのか! 等と言う博士の驚きを尻目にモモタロスは呪文を。

 

 

「イマイマジンジン、イマジンジン!」

 

「おお!」

 

「!?」

 

 

モモタロスが呪文を唱えると、しんのすけの前に現在のモモタロス同様に未契約体のイマジンが現われる。

声をあげるしんのすけ、それは彼が自分で作った豚を模したオリジナルヒーローである『ぶりぶりざえもん』に似た姿だった。

姿は小さく、一見すれば弱そうに見える物だが、彼こそは伝説とされているイマジンなのだ。しかして鼻を鳴らす和織、伝説? 下らないと彼は一蹴を。

 

 

「ハッ、さっさと倒して終わらせようぜ」

 

 

ちなみにお兄さんは老若男女平等主義者なので子供であろうとも抵抗するなら殺しますと笑ってみせる。

 

 

「だからガキはさっさと帰りな。お兄さんはキミには興味ないんだから」

 

「オラ、ガキじゃないぞ! 野原しんのすけだぞ!」

 

 

その言葉に少しムッとするしんのすけ、彼は何故モモタロスが伝説のイマジンを呼び出したのかを理解した様だ。

彼は五歳児とは思えない知能を持っており、勘の鋭さもまた遥かに子供を超越していると言ってもいい。

まあそれは良い意味でも悪い意味でもあるのだが、今はプラスに働いてくれた様だ。

 

 

「良太郎ちゃん、アイツ悪い奴だよね?」

 

「……それは、聞いてみないと分からないよ」

 

 

良太郎はその言葉を和織たちに聞こえる様に。

そして同時に彼等の目を見て言った。何をするつもりなのか、良太郎がそれを問うと和織は愚問だと笑みを返す。

 

 

「そりゃ、さ。大ショッカーが世界にいるって事は分かるよな」

 

 

刀をクルリと回す和織。

隣にいる墨姫が先に口を開いて答えを告げる。

 

 

「こんな世界なんて、いらない」

 

 

世界を壊す。

それが大ショッカーが他世界に足を踏み入れる理由であろう。

何億の命がいる世界であろうとも、彼等にとってはステータスを上げるための道具でしかないのだ。

 

 

「簡単なお話だぜコレ。前も言ったけどさ」

 

 

要はただの陣取りゲームだ。

大ショッカーは世界を壊そうと、そして良太郎達は世界を守る為に大ショッカーを倒す。

そのサイクルが崩れる事は無く、それは今この現状に言える事である。

和織たちはこの世界を壊す。それが嫌なら何が何でも止めてみろと。

 

 

「へっ、そう言う事だなしんのすけ!」

 

 

いつの間にか良太郎の雰囲気が変わっていた。

和織たちからしてみれば容姿は変わっていない様に見えるが、半特異点のしんのすけからしてみれば髪を立てて赤いメッシュが入った彼が。

つまりはモモタロスが憑依していると言う事だ。M良太郎、構えるのはデンオウベルト、それは戦いの始まりを意味していた。

ため息をつく博士、あまり戦いに積極的と言う性格ではない彼としては面倒事は避けたかった。

けれどもこうなってしまっては戦わざるを得ないだろう。フォーゼドライバーを構える博士と、カバン型のパソコンを構える助手。

 

 

「ミスター良太郎。しんのすけの護衛を受け持とう」

 

「いやその必要はねぇぜ。なぁ、しんのすけ」

 

「ほい!」

 

「?」

 

 

いいよな? モモタロスの言葉に頷くしんのすけ。

博士や和織が知る訳は無いが、しんのすけが半特異点と言う事は……だ。

当然『その資格』が彼にも同じくして存在していると言う訳である。

 

 

「護衛が必要ない?」

 

「ああ、まあ見てな」

 

「ほっ!」

 

 

しんのすけは頷くと地面を蹴って跳躍、その身軽さでM良太郎の腰に自分の腰が重なる高さに身体を持っていく。

同時に巻きつけられるベルト、デンオウベルトに限った話ではないが使用者の腰にピッタリとフィットする様になっている。

そして今、しんのすけはM良太郎の身体にほぼ密着していた為ベルトは彼を巻き込んで装備される事に。

 

 

「!?」

 

 

おいおいまさか、思わず博士はポカンと動きを止めてその光景を見るだけ。

和織も変身時間までは確保してやると言うスタンスらしいが、少し表情を変えた。

当然驚く理由は二つであろう。一つ目はデンオウベルトを二人で巻くなんてと言う発想、加えてそれが実現できるのかと言う事だ。

そしてもう一つはそれを行ったと言う事は、だ。何も理由無しにデンオウベルトをしんのすけが巻く訳が無い。

それをする理由があるから、それを成しえる事ができるから。そしてその答えを二人は口にする。

 

 

「変身!」「へんしん!」

 

 

M良太郎は赤いボタンをタッチせずにパスを通過させる。

この時点では身体は良太郎として認識される為、主軸もまた野上良太郎としてデンオウベルトは判断する。

彼のオーラがフリーエネルギーとなりアーマーを形成、M良太郎は電王プラットフォームとして変身を完了させた。

そしてすぐに赤いボタンをタッチすると再びパスを翳し、主軸をモモタロスへ認証させる。

彼のオーラがアーマーとなりプラットフォームに装備され、彼は仮面ライダー電王・ソードフォームへと変身を完了させた。

 

 

「――んなッ!!」

 

 

しかし博士たちは電王の変身にはまるで視線を合わせていなかった。

それはそうだ、電王の変身よりも何倍も衝撃的な光景がすぐ近くにあったのだから。

そう、野上良太郎と共に変身を行ったのは野原しんのすけ。半特異点である彼は当然電王になれる資格を持っているのだから。

電王の前には光に包まれたしんのすけが。良太郎へ供給されるフリーエネルギーが一部しんのすけ自身の物と合わさりオーラアーマーが形成された。

通常五歳児では幼すぎる為にオーラが不安定でエネルギーとして完成しきれないケースが多い。けれども野原しんのすけと言う男は非常に想像力豊かな為に供給されたエネルギーと自身のオーラのみでアーマーを形成するに十分な力を得る事ができた。

結果、彼は良太郎と同じ様な姿の電王に変わる。

 

 

「なるほどなるほど、ガキかと思ってたら……か」

 

 

和織は少し汗を浮かべながらも笑みを浮かべていた。どんな世界にもいる物だ、仮面ライダーと言う輩は。

そう、野原しんのすけもまた仮面ライダーの名を持つ男。彼もまた電王が一人なのだ。彼の名は仮面ライダーしん王、プラットフォーム。

 

 

「ちょ、ちょっとアーマー足りてませんぜ!」

 

 

吼える助手。

と言うのもいくらアーマーを形成できたとは言え、やはり五歳児の子供、いま一つ力が足りず装甲は彼の身体を全て覆う事は無かった。

言い方を変えれば素肌の部分がチラチラと見えるという訳だ。例えばそれは目の周りであったり、例えばそれは――

 

 

「い、いやーん!」

 

 

お尻であったり。しん王はお尻を押さえて赤面する。

そう、変身は無事にできたがお尻の部分にアーマーが付与されず丸出しモロ出しってな物である。

まあ『前方』よりはマシなのだと言われればそれまでだが。フルチンで戦うヒーローかお尻丸出しで戦うヒーローなら――

ああいや、やっぱどっちもアレだな。

 

 

「――!」

 

 

しかしまだ彼の変身は終わらない。

電王がプラットフォームがソードフォームに変わった様に、しん王もまたプラットフォームから強化体へと変化を行う。

それはモモタロスが呼んだ伝説のイマジン、彼が光と球体となってしん王に憑依しフリーエネルギーをしん王に与える。

 

 

「よっしゃー! 燃えてきたー!!」

 

 

黒色の部分は紫に染まり、そして胸部腹部にはぶりぶりざえもんの顔が張り付く事に。

丁度ベルトの中央部分が豚の鼻となり、最後にソードフォーム同じく桃を模した装飾が頭部に装備された。

いや、装備と共に装飾品が反転。桃ではなくまるでお尻の様な形を作り装備が終了した。

ソードフォームの仮面を反転させた物と言えば分かりやすいか、それでしん王の変身は完全に終了する。

とは言えフリーエネルギーはやや足りず、結局はお尻のアーマーを形成する事はできなかったが。

 

 

「俺――ッ!」

 

 

電王は自分を指し示し――

 

 

「オラ――ッ!」

 

 

しん王もまた彼の隣で自分を指し示す。

 

 

「「参上!!」」

 

 

赤と桃色のオーラエネルギーが辺りを照らして軽い衝撃波を発生させる。

凄まじい力の威圧感に思わず一歩後ろに下がる和織。なるほど、彼は電王とはこれが初の対峙となる訳だが、確かに他の奴とは少し違う物を感じる。

ビリビリとした力の脈動、下手をすればコチラが殺されるかもしれないと言う明確な想いを。

 

 

「ようし! 俺の出番だな! 行くぜ!!」

 

 

デンガッシャーを素早く組み立てる電王。

妨害できそうな物ではあるが、様子を伺う為に和織達は少し後ろに下がって公園に入っていく。

追従していく白狐隊、電王はその様子を見てハッと鼻を鳴らした。

 

 

「なんだぁ? 俺にビビッてんのか? この腰抜け野郎共が!」

 

「チッ、言ってくれるな!!」

 

 

だったらと和織は懐から何かカプセルの様な物を取り出した。

半透明のテニスボール程の球体の中に歯車の様な物が確認できる。和織はそれを白狐隊の上に向かって投げた。

すると壊れる球体、中にあった歯車の様な物は分裂する様に増えて、それぞれ白狐隊の身体の中に進入していく。

なんだ? 構える電王達。しかしそこでおかしな事が起きる。当然和織が仕掛けた行動なのだから彼にとって有利になる状況になるのだと思っていた。

しかし歯車を埋め込まれた白狐隊は次々に動きを止めて消滅していく。

 

 

「?」

 

「チッ、やっぱコイツらじゃ拒絶反応が起きちまうってか」

 

 

どうやら彼の狙いは不発に終わってしまったらしい。

だったらと残っている白狐隊を彼は電王達に向かわせ、自らも刀を構えて地面を蹴った。

 

 

「俺は面倒ごとは嫌いでね、さっさと終わらせてもらうぜ!」

 

「上等だ! 行くぜ行くぜ行くぜーッ!」

 

 

同じく剣を構えて走り出す電王。

フムと唸る博士、和織の背後ではバックステップを取りながら銃を構える墨姫が。

遠距離と近距離のコンビに戦闘員、面倒な相手ではある。戦闘はあまり好みではないのに加え得意でもない為に控えようとしていた博士だが、時間が掛かるのも好ましくない。

結果彼はハナに視線を移しつつフォーゼドライバーを装備した。ハナもうなずくとゼロノスベルトを構えてチェンジレバーを右へスライドさせた。

 

 

「僕は戦闘員を何とかしよう」

 

「分かった、だったらわたしはあの女を」

 

 

博士はダルそうに首を回しながら素早く助手に命令を。

 

 

「3、8、13、22、33」

 

「了解しました!!」

 

 

助手はカバンから素早く指定されたナンバーのスイッチを博士へ投げ渡す。

彼は一つのスイッチをポケットに入れ、残りを素早くドライバーへと装填した。

 

 

『DRILL』『CHAINSAW』『HAMMER』『CLAW』

 

「さて、じゃあ始めるか」

 

 

続けて彼はドライバーに付いている赤い四つのスイッチを順に押していった。

鳴り響く待機音、そして同じくしてゼロノスドライバーからも待機音が。

ハナはカードを構えて、博士は手を大きく旋回させて敵を睨む。

 

 

3(スリー)』『2(ツー)』『1(ワン)

 

 

開始されるカウントダウン。

博士はドライバー横のレバーに手を掛ける。

対して息をはいて集中するハナ、いざ戦闘となると緊張感が強く彼女を包み込む。

 

 

「「変身!」」『ALTAIR FORM』

 

 

軽快な電子音と共に博士の周りにスチームと光が。

一方でハナもまたスーツと鎧が付与されていった。

牛の鳴き声と共に外装のアーマーが展開、ゼロノスの鎧を彼女に与えて変身を完了させた。

 

 

「っしゃらァ!」

 

 

一方でスチームを吹き飛ばすように手を払う博士。

現われたのは仮面ライダーフォーゼ、彼はキュッと頭を撫でると一度身体を丸めてタメを行った。

同じくキャッキャッとはしゃぐ助手、二人のテンションは一気に跳ね上がっていく。

 

 

「「フォーゼきたぁあああああああああ!!」」

 

 

両手を広げて天に掲げる二人、フォーゼは軽い準備体操を始めて周りを確認する。

武器を構える白狐隊、彼は電王に彼等の相手は任せろと。

 

 

「おぉ? 弦ちゃん!?」

 

「ん?」

 

 

フォーゼに反応するしん王。

なにやら彼のリアクションを察するにフォーゼを見たことがあるかの様な口ぶりだった。

しかし放った言葉の意味はフォーゼには理解できぬもの。

 

 

「弦ちゃん?」

 

「あ、いや違うか……」

 

 

お人違いだぞ、彼はそう言ってフォーゼに背を向けて走りだしてしまった。

フムとフォーゼ、きっと何かこの世界にある他のキャラクターと勘違いしたのだろう。

それくらいにしか今の彼は、しん王が言った言葉の意味を考えなかった。

 

 

「訳の分からない事に巻き込まれてストレスマックスだ。こいつ等で大発散しちゃうもんね!」

 

「行け行け博士ーッ! やっちまえー!!」

 

 

走りだすフォーゼ、白狐隊も彼を止めようと鎖鎌や手裏剣を構えて戦闘態勢に入る。

白狐隊の数は先ほどから大きく減って四体、彼等は狭い公園を飛び回りフォーゼを傷つけようとまずは手裏剣を投げる。

 

 

「フッ!」

 

 

背中のブースターであるスラストマニューバーが推進剤を噴射し、スチームと共に彼は上空高くに舞い上がる。

フォーゼの足元を通り過ぎていく手裏剣、彼は舌打ちを放ちながら白狐の一人に距離を詰めた。

 

 

「そんな危ねぇ物を人に向かって投げるな屑が!」

 

 

正論と言えばそうだが、その言葉と共にフォーゼは尖った頭で思い切り頭突きをぶち込んだ。

人に向かって頭突きをするなと言われれば終わりの様な気もするが、彼は自論とも言える道徳を唱えながら白狐の仮面を殴りつける。

 

 

「愛の一撃、道徳の一撃だバカタレが!」

 

 

顔面を殴った勢いで彼は回転、そのまま裏拳を繰り出し白狐の顔を跳ね飛ばす勢いで殴りつける。

よろけながらも反撃しようと試みる白狐だが、フォーゼは彼の手を掴みソレを封じるとそのまま勢いに任せて再び頭突きを一発、二発、三発と!

 

 

「オラオラッ!」

 

 

白衣だの博士だのと知的なイメージを植え付けつつも実際は乱雑なラフプレイである。

明確な武道の型がある訳でもなく、ただ純粋にストレスを発散させるかの様に彼は白狐を殴りつけていった。

しかし当然後ろは隙だらけ、残りの白狐達は彼の背後に回ると一勢に手裏剣を連続で投擲する!

 

 

「博士後ろ!!」

 

「うぉ! あ、危ない!」

 

 

助手の言葉に咄嗟に反応。

彼は目の前にいた白狐の肩を掴むとブースターを噴射、跳び箱を飛び越える様にして後ろに回る。

すると無数の手裏剣は白狐の身体に突き刺さっていく。

 

 

「あらまあ……」

 

 

申し訳なさそうに言いつつもフォーゼはそのまま彼の背中を蹴り飛ばして吹き飛ばす。

ダメージの限界が来たか、地面に倒れた白狐は黒い煙となって消滅した。

所詮は戦闘員、それほど耐久は無いようだ。

 

 

「貴様ら! 仲間を攻撃とは何事かね! 恥を知れ恥を!!」

 

 

そうさせたのはアンタだろ!

助手が叫ぶ中、フォーゼはそのままブースターを噴射させて残りの三体の元へ飛んでいく。

高く舞い上がったフォーゼ、彼はドライバーに装填されているスイッチの一つをオンに。

 

 

【ドォ・リ・ル/オン】

 

 

フォーゼの左足に黄色いドリルが装備される。

ドリルモジュール、彼はそのまま飛び蹴りの要領でドリルを回転させたまま白狐達の中に飛び込んでいく。

しかし彼等も多少なりとも知能は存在しているのだ、ドリルを回転させて飛び込んでくる等と単調な攻撃はしっかりと反応して回避を行ってみせた。

結果、フォーゼは地面にドリルを突き刺し、周りを囲まれる事態に。ピンチか? いやいや、彼は初めからそれを狙っていた面もある。

つまりこれは計算の内、元々ブースターで上昇して普通にキック程度じゃドリルの良さは活かされない。

フォーゼは素早く別のスイッチに手を掛けた、これこそが本来の目的。

 

 

「ヒャッハーッ!!」【チェェェンソォォー/オン】

 

 

フォーゼの右脚にチェーンソーモジュールが。

回転する刃、さらにフォーゼは地面に突き刺さったままのドリルを高速回転させた。

すると彼の身体がドリルを軸として激しく駒の様に回転、チェーンソーで回転切りを行った。

擦れる刃が白狐へ当たり激しい火花を散らしていく。よろける三体を確認しフォーゼはスイッチをオフ、装備を解除すると別のスイッチをオンに。

 

 

「セイヤ! セイセイ! セセセセーイ!!」【クゥロォウ/オン】

 

 

右腕に紫のカギ爪が装備されてフォーゼは軽快に三体を切り裂いていく。

紫色の閃光が白狐を怯ませ、豪快に火花が辺りに飛び散っていく。

 

 

「オッケー! やべぇなおい、テンション上がって来たわ!!」

 

 

普段狭苦しい研究室に篭りっぱなしの反動か、口が悪くなりゲラゲラと笑い始めるフォーゼ。

さらに敵の動きが大きく鈍った所で彼はクロースイッチを引き抜き予備のスイッチを装填する。

 

 

「ブッ飛ばす!」『CHAIN ARRAY』【チェーンア・レ・イ/オン】

 

 

右腕にチェーンアレイが。

ブンブンと豪快に振り回して先端の鉄球を白狐の身体に当てていく。

凄まじい破壊力に戦闘員が耐えられるわけも無く、クリティカルヒットを受けた一体が消滅。

さらにフォーゼは間髪入れずハンマースイッチをオン、重い一振りがもう一体を捉えて消滅させた。

あっと言う間に最後の一体、対してフォーゼはノーダメージである。余裕だったな、彼は止めを刺そうと――

 

 

「………!」

 

 

しかし途中でピタリと動きを止めるフォーゼ。

なんだ? 助手が表情を変えて彼を見た。明らかに攻撃を止める場面ではないが、彼は先ほどまで爆発といって良いいくらいのテンションを一気に落として沈黙している。

 

 

「???」

 

 

叫ぶ助手、敵はまだ消滅しきっていない。

最後の一体がまだすぐ目の前にいるじゃないかと。

しかし沈黙のフォーゼ、彼の前にいる白狐も始めは罠かと躊躇していたのだが、どうもそうじゃないと判断して鎖鎌を構える。

 

 

「え? ちょ、ちょっとちょっと博士!」

 

 

このままだと本当に攻撃されてしまう。

助手も始めは罠をしかけたのかと思ったが、どうにも今セットしているスイッチでやる事ではない様な気がする。

と言う事はつまり、彼は素の状態で止まっていると? 何故、そんな意味不明な――

 

 

「………」

 

 

フォーゼはゆっくりと助手の方を向いて、一言。

 

 

「気持ち悪くなっちゃった……」

 

「………」

 

 

は?

 

 

「えええええええええええ!?」

 

「ちょ、あ……む、無理。出ちゃう――!」

 

 

仮面の奥で吐いたら悲惨な事に。

彼はそう言ってフラフラと白狐から後退していく。

どうやらドリルでの高速回転、そのままクローやチェーンアレイを当てる為に豪快に身体を振り回していたツケが今になって回ってきた様だ。

 

 

「えぇえ!? ど、どうするんですか博士!」

 

「無理無理無理、だっても―――……」

 

「え!?」

 

 

口部分を押さえて後退していたフォーゼの動きが再びピタリと止まる。

ま、まさか! 助手はゴクリと喉を鳴らして自分も後ずさる。

 

 

「……今揺らされたら、出る」

 

「嘘」

 

「本当」

 

 

前には鎖鎌を構えてコチラにやってくる白狐が。

どうやら完全にフォーゼが弱っているのだと判断したらしい。

彼は首をグルンと回すと地面を蹴ってフォーゼに鎖鎌を投擲した。

 

 

「仕方ないなぁもう!」

 

 

フォーゼに向かった鎖が、激しい音と共に弾かれる。

視線を移動させる白狐、そこにはバースバスターを構えていた助手が。

どうやらフォーゼを助ける為に引き金を引いたと言う事なのだろう。

おかげでフォーゼの身体は守られ、彼は大切な何かを失わずに済んだ。

しかしそこで一つ問題が、と言うのも当然攻撃を防がれた白狐は面白くない。するとどうなるか?

簡単だ、白狐はそこまで知能は高くない、よって標的をフォーゼから助手に向ける。

 

 

「あっろおおおおおおおおおおお!?」

 

 

助手は驚きの表情と引きつった笑みを浮かべてケースを閉じる。

やばい! そのケースを考えては居なかった。彼女はすぐにフォーゼへ助けを求めるが、同然彼は今絶対安静である。

当然彼女を助ける余裕はないとバッサリ。

 

 

「いやいやいや、そこは無茶してでも助けてくださいなあ!」

 

「じゃあキミは嘔吐物に塗れたヒーローに助けて欲しいのか?」

 

「ノーサンキュー!」

 

 

だったらと助手は博士に叫ぶ。

こうなったら自分で何とかするしかない、あまり戦闘は得意じゃないが今はもうなりふり構っていられない。

彼女はフォーゼにバースドライバーを渡す様に叫ぶ。色々あって今あの道具はフォーゼが持っているし、使うにも彼の許可が必要と来た。

 

 

「って言ってる間に来たァアアアアアアアアアアア!!」

 

 

跳ね上がる様に跳ぶ助手、彼女が立っていた場所には鎖が打ち付けられ、地面が抉れる様に削られる。

さらに白狐は鎖を鞭が如く振るって助手を狙う。ピョンピョンとそれを器用に交わす助手であるが、このまま防戦一方ならば確実に負ける。

とは言え彼女も彼女でチキンハート、武器はあるもののスイッチを守りつつ生身で戦う事は想像しただけでも心臓が潰れそうになると。

まあ逃げたほうが絶望的な気もするが、とにかく彼女はバースを寄越せと大声に叫んでいた。

 

 

「すまん、あれまだ設定してないんだよな」

 

「なんでぇ! なんでこんな時に設定してないの!」

 

「いや、後でやればいいかなって」

 

「くそう! ゆとりはだから嫌なんだよ!! ファッ●ン!!」

 

 

暴言を交えつつ助手はやけくそに叫ぶ。

とにかく彼女たちだけにしか分からない会話ではあるが、どうやらバースドライバーは今ここになく、手元に呼ぶにしてもフォーゼがあんな状況だから仕方ないと。

 

 

「がぶち!」

 

 

しかし限界が。

白狐は鎖を彼女の足に巻きつけるとそのまま引き倒して地面へ強制的に倒す。

 

 

「やばい!」

 

 

助手は白狐が鎌をギラリと光らせて構えるのをしっかりと確認していた。

あれ? これ刺されちゃうパターンじゃないか!? 助手は目を見開いて汗を浮かべ、フォーゼを睨む。

 

 

「も、もういいっす! ゲ●まみれでもいいから助けて!!」

 

「いや、まて。今頑張ってhomazonで酔い止め注文したから、それが届くまで待て」

 

「間に合う訳ねーだろうが! ってかそれ注文できたならバースのコード設定しろよ!!」

 

 

もう向こうさん鎌を構えて斬りつける準備万端だろうが、そう叫ぶ助手にフォーゼは口笛を一つ。

 

 

「やるじゃねぇか助手君。カマをカマえて、ってか? ふぅ!」

 

「うっせーな! 今やる会話じゃないだろ! ってか状況見ろよ! 鬼かテメーは!」

 

 

ギャーギャー騒ぐ助手にお構いなしで地面を蹴った白狐、彼は助手の身体に鎌を突き立てようと目を光らせる。

叫びを上げて転がる助手、終わったと連呼して彼女は目を閉じる。物理的な意味でゆとりの犠牲になったと彼女は自らの人生を嘆いた。

 

 

「さよなら私! 生まれ変わっても私でありたいー!」

 

 

次回、城ヶ咲優子死す!

彼女は目を手で覆い迫る痛みに耐えるため歯を食いしばる。

真っ暗な世界の中、刃物が振り下ろされる音だけが鮮明に響いていた。

 

 

 




☆エピナビ☆

・クレヨンしんちゃん

1990年に連載開始。
大人びて、ちょっと生意気な主人公野原しんすけを中心としたドタバタ日常系ギャグだ。
個性的で魅力的なキャラクターが多く、ギャグはちょっとお下品だったりもするが、友達や家族の大切さを教えてくれる話も多いんだ!
子供向けの作品かもしれないが、実際連載は青年向け雑誌であり、劇場版では時にシリアスな展開が待っていることもあるぞ。

そして彼もまた仮面ライダーとなった男なんだ。
2007年8月3日に仮面ライダー電王と共演。特別番組内でしん王に変身して、電王と共にイマジンを倒したぞ!
ちなみにソフビ人形も発売されており、電王の人形もしんちゃんの作画を模した物になってるんだ。
さらに電王だけでなく、他の戦士達とも関わっているけど、それはまた次の機会に説明するよ!


………


宝くじのCMが鎧武のネタバレになるなど、誰が予測できたであろうか。
謎のイケメン金蔵と化してしまったコウタさん。まさか予告の黒い奴はタイゾウが変身して………?

はい、と言う事で今回から野原しんのすけが参戦します。
まあ、作風的に完全なキャラ崩壊の時が時がくるかもしれませんが、あくまでもパラレルと思ってお楽しみください。テレビ版じゃなく、映画版のしんちゃんです、基本的には。

はい、まあ今回はこんなもんで。
ではでは。
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