Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫 作:ホシボシ
まだ見ていない人はスルーしてください。
「ウラァッ!」
「およ!?」
その時、助手に切りかかろうとした白狐にサイドから割り入る男が一人。
電王だ、彼はしっかりと助手の声を聞いており、和織から一度視線を外して彼女を助けに来たのだろう。
電王の大きく踏み込んだ蹴り、所謂ケンカキックは白狐を怯ませ、電王は生まれた隙にデンガッシャーの一撃で相手を吹き飛ばす。
パキーン! と、デンガッシャーの小気味いい音が助手の耳を貫いた。
「電王様ーッ!!」
「気をつけろよ、ったく!」
「そう言うテメーがな!!」
「!」
電王の背中から火花が飛び散る。
舌打ち交じりに振り返る電王、そこには風に剣を乗せている和織が見えた。
戦闘中に余所見とは余裕じゃないか、彼はそうニヤリと笑って剣を投擲する。
「チッ!」
風に乗せた剣は凄まじいスピードで電王へ向かう。
しかしイライラしつつも電王はしっかりとそれらを弾き返してみせた。
さらに和織の視界には、目には入らなかったが、小柄なしん王もしっかりと存在してる訳で。
「おぉ! モモタロスをお助けするぞ!」
そう言うとしん王はキリッと目を輝かせて腰を曲げると思い切り露出したまん丸のお尻を天に突き上げるが如く強調させる。
日光の光を反射し美しく、そして神々しく輝く彼の臀部!
いやお尻! そう、尻!
ケツっっ!!
「ぶりぶりー! ぶりぶりーッ!!」
「な、なんだ!?」
この瞬間、しん王の身体はケツとなる。
己の全てを尻へと変換させる事、それは即ち心と身体を尻へと変化させる事と同意義と言えるだろう。
人間は長い歴史の中で人間としての定義を積み重ね、作り上げていった。だからこそこの地球と言う名の惑星に住む知的生命体は人として、人間としての常識が確立された。
しかして今の彼は純粋なる尻である。そう、純度100%の一点の曇りも無い尻! 真尻!
今ココにオケツの定義を皆様に問いたい。恐らく貴方の下半身にある二つの山の様な物が一般的にはお尻と認識されている物なのであろう。
そう、尻とは人についている部分の名称でしかない。キミはケツなのかと問われ、ハイそうですと答えるのは純粋な馬鹿かふざけているか、もしくは質問の意味が分かっていないかのどれかだろう。
人間=ケツ。
その方程式を証明しようとすれば長い歴史の中で積み重なった常識に嘲笑されるだけ。
だが彼はその常識をぶち壊す。今の彼は人間ではない、己を尻と言う部分に凝縮させた新たなる生命体へと昇華したのだ。
人間を超越したその名は――
ケ ツ だ け 星 人。
「な、なんなんだよコレッ!!」
「ブリブリ~!」
和織の周りをケツを突き出した格好で動き回るしん王。
お下品な! 和織は歯を食いしばって動き回る尻を見る。
と言うよりも目が嫌でも奪われてしまう。声を出しながら尻を揺らめかせ動き回るしん王、集中力が分散してみるみる力が抜けていくじゃないか!
これじゃあ電王を狙うなんてとてもじゃないが無理な事だ、そして何よりもイラつく!
一糸纏わぬ尻が自分を馬鹿にしているかの様に感じてしまうのだ。
「糞ガキぃ、人にお尻を向けちゃ駄目ってお母さんに習わなかったのかいッ!」
「やべぇ! しんのすけ!!」
和織は歯向かうのであれば子供でも容赦はしない性格の様だ。
彼は手に持った刀を容赦なくしん王へと振り下ろす!
捉えた! 和織はニヤリと――
プリリっ! シュゥウ……!
「!?」
意味不明な擬音がしたかと思えばしん王へ振り下ろした筈の刀が地面を抉っている所だった。
汗を浮かべ口を開けたまま横を見る和織、そこには日光をより反射して美しく輝く彼の丸尻が。
「残像……だと!?」
「ぶりぶりー!」
尚もケツだけ星人状態で和織の周りを駆けるしん王。
速い、速すぎる!! 和織はワナワナと震えながら再び刀を振るう。
しかし結果は同じ、刀はしん王を捉える事無く空を切り、和織の背後に尻を擦り合わせる音が。
「ば、馬鹿な!」
彼が驚くのも無理は無い。
しん王のケツだけ星人は高速と言っても差し支えないスピードで動く事ができるのだ。
さらにまだ発動はしていないが、連続使用はできないものの一定時間スーパーケツだけ星人と呼ばれる状態にもなれる。
その間はカブトのクロックアップに楽に追いつける程である。そんなスピードを持った尻を少し速い程度の和織が捉えられる訳も無く、結果は今こうして翻弄される事に。
「チッ、お兄さんをナメんなよ!!」
「オォ!」
とは言えケツだけ星人中はしん王は何もできない。
高速で小回りが利くものの、和織はしっかりと見切っており、彼が通るだろうルートを予想して刀を振り下ろしていた。
今度こそもらった! 和織は揺ぎ無い確信を持つ。
「フンッ!」
「!?」
そして、その瞬間、衝撃が走る。
しん王の尻に向けて振り下ろされた刀、それをなんと彼は尻の割れ目で受け止めたのだ。
これぞ奥義、真剣美尻取りッッ!!
「馬鹿な! 俺の刀がケツに受け止められた!?」
「うぎぎぎぎっ!」
美しい素肌の山と山が繋がる事で間に生まれた隙間、つまり谷、お尻の割れ目。
しん王は尻をキュッと萎める事でその谷を防ぎ、丁度通った刀をオケツで止めてみせる。
な、なんだこの光景は!? そのあまりのシュールさに思わず電王やフォーゼ達、墨姫&ゼロノスも動きを止めてしまった。
いや、当人たちは結構真面目なのだがどう見てもふざけている様にしか、遊んでいる様にしか見えない。
「認めるかぁぁああ!」
「ふんぬぅうぅぅぅ!」
力を込める和織、一方のしん王も必死にケツに力を込めて抵抗を示す。
和織は歯を食いしばって尚も力を込めた。仮にも魔化魍の幹部たる自分がこんな下ネタの塊みたいな奴すら倒せない等と!
そしてしん王もまた力を尻へと込める。こんなの食らったらオケツが裂けるだろうが!!
両者一歩も譲らぬせめぎ合い。和織は一心不乱に五歳児のケツを攻略しようと攻め立てる!
そして――
プゥゥゥゥ
「いやぁぁあん!」
「んひぃん!」
しん王のケツから漏れるラッパの様な音。
そうです、屁、でございます。尻に力を込めていたのだから仕方ないと言えばそうか。
しん王は赤面して身体をくねらせ、和織はずっこけて地面へと倒れる。
「ふぅ、出た出た」
「ばっちいなお前ッッ!!」
立ち上がる和織、そこで彼に異変が。
正確に言えば和織が持っていた刀に変化が訪れた。
しん王の屁を受けた刀は振動し始め、そしてヒビが入った後に粉々に砕け散った。
「いや何でだよ! なんで屁で刀が爆発するんだよ!!」
「おお! きっとさっきお芋食べたから――」
「んな訳ねぇだろうが!」
馬鹿にしやがって!
和織は使い物にならなくなった武器を投げ捨てると、着物の裾から新しい刀を取り出した。
無限湧きらしい、しかしそんな彼の前には既に赤が!
「クッ!」
「待たせたな! 続きと行こうぜぇッ!」
電王の振り下ろした剣を刀を横にして受け止める和織。
そうだ、少しガキにペースを乱されたが、それがなんだと言うのか。
コッチは翻弄されただけでダメージは受けてない、結局振り出しに戻っただけだろうと。
「くらえ!」
「おっと!」
和織の刀を電王はしっかりと受け止めると、硬い仮面を和織の頭に打ちつけた。
要するに頭突き、よろけてうめく和織へ電王は無数の閃光を刻み付ける!
「オラオラ! いくぜいくぜぇ!!」
「ぐっ! ガァア! ちぃいい!!」
カウンターを狙うために刀を振るう和織。
しかし電王はその刀を裏拳ではじくと再びデンガッシャーの一撃を和織へ刻み付ける。
流石最強候補と言う所か、和織は試しにと刀を無茶苦茶に振るってみせるが、電王はその攻撃を無茶苦茶に刀を振り回して弾いてきた。
そればかりか、はじいた後にはしっかりとカウンターを合わせてくる始末。
(厄介な相手だな糞!)
「………」
と、さっそく和織は忘れていないだろうか?
電王が駆けつけたことでフリーになったしん王がまだそこにいる事に。
彼は少し沈黙、顎に手を当てて考え事を。彼の見上げる先には武器をぶつけ合っている電王と和織が。
ギリギリと競り合う二人を見てしん王はフムと唸って動き出す。彼はテクテクと普通に二人の横を通り過ぎ、和織の背後に回る。
しん王は背が小さい、そして先ほどの行動で彼が攻撃してこなかった事から和織の眼中には映っていないのだろう。プラス和織としても電王を相手にする事で緊張もしている。
それを知ってか知らずか、しん王は和織へナチュラルに近づくと一度動きを停止する。
「………」
しん王は両手を合わせ、指同士を絡ませ握りこぶしを作る。
そして人差し指だけ重ね伸ばした。
「ほうほう」
彼のりりしい眉毛が上下する。そしてしん王は伸ばした指を――
「ふんッ!」
BU☆SU☆RI!!
「―――」
しん王の両人差し指が和織の『*』(自主規制)を貫く!
動きが止まり、白目の和織さん。彼は時間が止まったかの様に真っ白になって静止する。
いや和織だけじゃない、周りにいた者もその光景をしっかり見ており、再び戦いの場に沈黙が。
「「「………」」」
汗を浮かべる電王、第二関節くらいまではズッポリ行っていた様な気が。
まあなんだ、自分も喰らった事がある分痛みはよく分かっている。
電王はデンガッシャーを降ろすと一歩二歩と和織から離れて心の中で合掌を行った。
「ンァァアアァァァアアァアァアアァァアアァアアァァアアァッッッ!!!!!!」
跳んだ。彼は飛んだ。文字通り、お空を飛んだ。
たかく、たかく、雲より高く。綺麗なお空へ翼を広げて。
とんだ、とんだ、誰より高く、彼は天へと飛んでいく。
だってケツが痛ぇんだから仕方ねぇわな。
「アッ! アグォオ! ッッ! くぅぅぅう!!」
和織は刀を地面に落として自分の尻を押さえながら辺りを駆け回る。
穴が空いて、穴がケツになってケツが俺で、穴で穴が開いて、ケツに穴が開いてアッー!
彼はよく分からない事を連呼しながら膝をついたり地面を転がったりも。
とにかく口にするのは苦痛に満ちた苦しみの言葉だった。とも思えば口をだらしなく開いて目を閉じ天を仰ぐ場面も。
あれ? ちょっと待って、彼昇天してない? 電王はあらあらと口を押さえて和織の様子を観察していた。
「むっ!」
指でその形、カンチョーを保ったまましん王はゼロノスと交戦していた墨姫を睨む。
煙が出ている指、動きが止まっていた墨姫も一歩一歩と後ろに下がって行った。
青白い肌で無表情の彼女は何の焦りも感じていないように見えるが、実際はどうなのだろうか?
「ハナお姉さん、いじめないでよ!」
「………!」
指を構えたまま一歩前に出るしん王、墨姫は連動する様に一歩後ろへ下がる。
銃で撃てばいい様な物だが、何かこう……とてつもない迫力を感じて引き金を引くと言う選択肢にたどり着けなかった。
怯えているとでも言うのか、銃弾を一発でも撃とう物ならば彼は自分を執拗に追いかけてくるのではと錯覚してしまう。
それだけ彼には異質な雰囲気があった、他の子供とは比べ物にならない異様な雰囲気が。
「オラ、悪いお姉さんなら容赦しないゾ!」
「………」
無言、無表情の墨姫。
まさかとは電王達も思うが、しん王の指の形が変わっていない所を見ると、墨姫にもアレを喰らわせるつもりなんだろうか?
それを彼女も理解したのか、小さな声で一言。
「無理」
「え? ちょ、ちょっと墨姫ちゃん!?」
着物を翻して地面を蹴る墨姫、彼女は和織に構う事は無く一同に背を向けて撤退を行う。
どうやら色々と己の大事な物を守る為の戦略的撤退と言う事らしい。一方で舌打ちを交えながら同じく走り出す和織。
彼もまたココは分が悪いと踏んだ様だ、相手のペースに飲まれすぎた、一端引く事でリセットしようと。
「待って! ちょっと待って墨姫ちゃん……! くぅぅう!!」
ケツを抑えながらヒョコヒョコと情けなく墨姫を追いかける和織。
「おぼえてろよチクショー!」
「おたっしゃでー!」
「うるせー! お兄さんは君の事嫌いだからなーッ!」
「………」
なんだか走れば追いつけそうな物だが、電王としても何故か凄まじい同情心が湧き上がって動く事ができなかった。
そうしている内に消えていく和織たち、そこでやっと電王達の思考が回復した様だ。
己に重なる思い出が罪悪感となり、彼を追いかける事はできなかったが、それはとてもいけない事なのでは?
「やべっ、普通に逃がしちまった」
「し、仕方……ないわよ」
「ありゃしばらく続くぜ、痛みが」
やれやれと変身を解除するゼロノスと電王、フォーゼも回復したのか深くため息をついて変身を解除する。
だがやはり呆気に取られていたとは言え、逃がしたのは彼等にとっては痛い物だ。
「問題ない」
「え?」
「助手君」
「らッじゃ!」
顎を触りながら白衣を翻してニヤリと笑う博士、一方スイッチカバンに内臓されているモニターを指し示す助手。
そこには今現在博士たちが立っている春日部市を中心としたマップが示されている。
それだけではなく、地図を少しスクロールすれば赤い点が二つ移動している所だった。どうやらこの赤い点が和織と墨姫らしい。
「フードロイド、ナゲジャロイカ」
どうやらフォーゼは酔っている最中であってもやる事はやっておいた様だ。
食べ物を模した支援メカであるフードロイドが一つナゲジャロイカ、ナゲット型の偵察機が四つ入っており、その二つをそれぞれ和織達に追尾されていると。
その情報はカバンのパソコンに送られ、リアルタイムで位置が表示されていると言う訳だ。
「やるわね」
「ふふーん、当然だとも」
ハナの言葉にドヤ顔で白衣を整える博士。
まあしかし今はもっと優先させる事があると彼は良太郎達を通り抜け、丁度変身を解除しているしん王のところへ。
「なかなかアグレッシブで素晴らしい戦いぶりだったよ」
「いやぁ、照れますな」
後ろを向いてニヘラと笑うしんのすけ。
博士は手を出して自己紹介を。
「オラ、野原しんのすけ。ちょぴりシャイな五歳児」
(どこが……)
汗を浮かべるハナ。
そんな彼女の前でしんのすけと博士は握手を行う。
博士としても型にハマらない人間は興味が湧く物であり、好印象に映っていた様だ。
和織と墨姫はおそらく本拠地に向かうはず、と言う訳で泳がせる時間に良太郎は博士達にしんのすけとの出会いを説明する事に。
アレはまだ良太郎がモモタロスとしか契約を結んでいない時の話。
何か特殊な線路に繋がったとオーナーが言っていたが、今にして思えばアレは他世界への干渉を果していたのだろう。
野原家のトイレとデンライナーの入り口が繋がってしまい、丁度用を足そうとしたしんのすけが尻を丸出しにしたままデンライナーに入ってきたと。
「その時にオラのお尻を良太郎ちゃんが受け止めてくれたんだよね」
「………」
複雑な表情でうな垂れる良太郎。
良太郎視点、扉が開いたと思ったら尻が飛んで来て自分の顔面にぶつかった等と。
おかげでしんのすけは尻餅をついて痛い目を見る事は無かったが、良太郎としては運の悪さを発揮する結果となった訳だ。
「ふぅん、貴重な経験だったなミスター良太郎。助手君メモを」
「えーっと、良太郎さんは既に顔面騎乗のプレイを体験済――」
「う゛ぉい!!」
「………」
唸る様な声をあげて二人を睨むハナ、助手も博士も固まって青くなる。
悪ふざけが過ぎると彼女から鉄拳制裁を受けそうな物だ。しかし博士としても知的欲求を満たしたい物、小声で一言だけ。
「柔らかかったか? 良太郎」
「まあ……結構」
「……いやん」
尻の感触を思い出して少し赤くなる良太郎、頬に手を当ててポッと赤くなるしんのすけ。
何だコレ、何なんだコレ、ハナは無性に負けた気がして苛立ちが心の中に芽生える。
そんな彼女の表情に気づいたのか、ニヤリと笑って博士は鼻を鳴らした。
「はっはー! 嫉妬かい? ミスハナぁ。だったらキミが良太郎に顔面騎乗をしてやれば――」
博士が殴られたのは、言うまでも無い。
「ちょっとちょっとさっきから下ネタが酷すぎるよ!」
一分後、真っ赤になって震えているハナを抑えたのはウラタロスだった。
こんな調子でやってたら『R』がついてしまうよと彼は必死に皆を諭した。
神なる世界の神々には清純なシーンだけを見せておかなければ、この作品の存在が抹消されてしまうかもしれないじゃないか!
「助手、コレっ、顔の形変わってないか!?」
「い、いやっ。ちょっとクレーターが出来てるだけですよ」
「あーあーもう! 釣る魚は選ばないと!」
U良太郎は顔面が凹んでいる博士を見てヤレヤレと。
とにかく今優先させるべきは大ショッカーをこの世界から追い払う事だ。
和織たちがいたと言う事は当然この世界を破壊するつもりで、と言う事だろう。
向こうは逃げただけでこの世界からは撤退していない、つまりまた襲ってくるか、もしくはその前に世界を破壊する種を植えるかだろう。
「そこの所忘れないでよ? じゃあね」
良太郎の中に戻るウラタロス。
そこで凹んでいた顔が元に戻った博士はフムと唸った。
少し真面目な話をしようと一同に持ちかける。ハナがまだ睨んでいる様な気がするが、気のせいであってくれと博士は心の中で祈るだけ。
「先ほど和服の奴が、僕達を見た時に奇遇だなと言っていたのは覚えているか?」
「確かに……あ!」
良太郎も気づいたのだろう。
和織のリアクションは、自分達がここにいる事を知らない様な素振りだった。
つまり時空の歪みには彼等は関係していないのか? いや一概にはそうは言えないが、少なくとも彼等が歪みを起こし、博士達を引き寄せたのでは無い可能性の方が圧倒的に高い筈。
「もしくは、歪みの影響を奴らも理解しきれていないか――」
大ショッカーは絡んでこそいるが、流石に和織達にまでいちいち説明はしていないか、だ。
そんな言葉の途中だったが、そこで誰もが分かる異変が起こる。
それは空気が、景色が振動したと誰しもが理解できる体感があったからだ。
震えている? 何が? ただの地震と言う訳でもない、何故なら周りの木々は不動のままだったからだ。
「ぉお!?」
「コレは――、まさか!」
この感覚、間違いないと博士は汗を浮かべて叫ぶ。
これこそが彼と助手をこの世界に引きずりこんだ原因だったからだ。
つまり良太郎達も頭を悩ませている時空の歪みが巻き起こす物なのだと!
「!」
呆気に取られる一同。
しかしその間にもブラックホールの様な球体が生まれ、歪みの象徴とも言える存在を目にする事に。
とは言え対処などできる訳も無い、しかも空気が震えてからブラックホールが出現するまで時間も短い。
まさか二度目が起こるなんて考えても見なかった。焦る良太郎とハナ、せっかく『彼』が守ってくれたのに。
「「「ッ!?」」」
しかし歪みのブラックホールに吸い込まれるとばかり思っていた良太郎達に全く予想していなかった出来事が起こる。
なんとブラックホールから何かが飛び出してきたのだ。つまり今回の歪みは、引き寄せるのではなく、博士達がこの世界に排出されたのと同じ事。
もちろんそんな事を良太郎達が知る由もなく、激しい光が巻き起こり一同は目を反射的に閉じる。
「ふぁあぁん」
「ッ!?」
情けない良太郎の声が聞こえたが、一同は光の中で何が起こっているのか確認できずにいた。
ただ振動とフラッシュに耐える為に必死で歯を食いしばる。
平衡感覚がグチャグチャになる。まるで洗濯機の中に放り込まれた様だ。
そうやって耐えていた一同。やがてゆっくりと空気の振動が収まり、辺りは静寂に包まれた。
「――…!」
目を開けた一同がまず思った事と言えば、それは良太郎の姿が消えていると言う事だ。
いや、消えていると言うのはこの場からいなくなったと言う事ではなく、一瞬そう思っただけと言う話。
すぐに皆は良太郎がどこにいったのかを確認する事に。
「ふえぇぇ」
答えは下。彼は地面に倒れ、そして目を回していた。
顎に手を当てる博士。野上良太郎と言う男は非常に運が悪いと聞く。
そう、運が悪いからこうなったのか?
「まあ、だがある意味運が良かったとも言える様な」
「ッ? りょ、良太郎――って、え!?」
「一部の紳士な奴には羨ましがられるシチュエーションだな」
混乱するハナ、うつ伏せで倒れる良太郎の背中には見知らぬ女の子が同じく倒れていたからだ。
しんのすけの時同じく良太郎がクッションになってくれたと言う事だろうが、彼女は一体どこから?
いや、答えは明白だろう。今起こったことを考えるならば。
「う、うぅうん……ッ?」
同じくうめき声を上げる女の子。
見た目は中学生くらいだろうか? 黄色の巻き毛が特徴的だった。
だが一同の注目はすぐに女の子から外れる事になる。下にいた良太郎もまた同じだ。
いや、と言うより良太郎は目を回していた為、何が起こっているかまだ理解しきっていないだろうが。
「え?」
「は?」
「おぉ?」
すぐ各々声を上げていく博士達。
女の子の上に、さらに別の生き物がいたのだ。そう生き物、人間ではなく生き物だ。
それは誰もが人間ではないと一目で分かる物、だったらなんなのかと言う話になるのだが。
「くるぅうぅぅ」
「「「………」」」
女の子の上には、よく分からない謎の生物が目を回していた。
羊の様な、猫の様な、長い黄色の耳が丸まって渦巻きの様になっている。固まる一同、なんなんだコレは一体。
とにかく分かっている事と言えば、変な生き物が目を回しており、その下に女の子が目を回しており、その下で良太郎が目を回していると言う事だけ。
「――ろ」
「ん……!」
声が聞こえる。
意識が覚醒していく少女、目を擦って鈍った思考を回復させる。
なんだ? えっと、自分はどうなって……? 彼女は過去を振り返りながらゆっくりと目を開いた。
太陽の光が目を差し、眉を顰める少女、ここは外? と言うかココはどこ?
自分は一体どうなって――
「起きろ!」
「ひっ!」
ビクリと目を見開き肩を震わせる少女。
なんだなんだ? 反射的に辺りを見回すと公園の景色が見える。
公園? あれ? なんで自分は公園に? 混乱する少女であったが、再び自分を急かす様な声が聞こえてきた。
それも、下から。
「起きたなら離れやがれ!!」
「わ、わわわわ!!」
そこで少女は、今現在自分が誰かの上に倒れている事を把握する。
離れる様に言ったのは自分が下敷きにしていた人だったと言う訳だ。
なんでこんな事になっているのかは知らないが、とにかくその光景だけを信じて少女は跳ね上がる。
「あ、あの! ごめんなさい!!」
とび上がり良太郎から距離を開ける少女。
あわあわと唇を震わせて謝罪を彼女は二、三回と行っていた。
「ったく……! 良太郎、大丈夫か?」
『ふ、ふぁぁん』
「相変わらず運悪いなお前!」
そう言ってM良太郎は気だるそうに立ち上がる。
モモタロスとしても女の子を跳ね除けて起きると言う事には抵抗を感じたのだろう。彼は服についた砂を払うと、その視線を少女に向ける事に。
鋭い目つきにビクッと少女は怯み、一歩後ろへ下がる。
「んで、誰だよお前?」
「え、あっ! だ、誰って……!」
M良太郎の迫力、威圧感に怯んでいる少女。
彼女としてはいきなり視界がブラックアウトしたと思えばこうなっていたと。
そんな混乱状態でのコレだ、怯えてしまうのも無理は無いか。
震える唇ではうまく言葉も紡げない、少女も焦りが募る。
「ちょっと止めなさいよ馬鹿モモ! 彼女怖がってるじゃない!」
「アデェッ! ちょ、おまっ! コレ身体は良太郎だぞ!!」
「あ゛……ッ! と、とにかくアンタは一回引っ込んでて!」
「ッ、仕方ねぇな」
ハナの無慈悲なる腹パンがモモタロスを粛清して裏へと引っ込ませる。
良太郎に戻った彼はフラつきながらも大きくため息を一つ。
ハナは視線を良太郎から逸らす意味も含め、少女の方へと向けていく。
「ごめんなさい、大丈夫だった?」
笑顔のつもりのハナ。
しかし実際はモモタロスに対する怒りの感情が表情に出たままである。
要するに人一人殺って来たぞと言うくらいの殺気が目に宿っている訳で。
元々表情がキツめの彼女、少女は安心するどころか涙を浮かべる事に。
「ひぃい! ご、ごめんなさいぃ!」
「……え?」
な、なんで? なんで泣きそうなの?
少しショックを覚えたハナ。だがこのままでは本当に泣いてしまう。
それを察したか彼女の中にいたデネブが声をあげた。ここは任せてくれと、ハナとしても自分では彼女を落ち着かせる事は難しいと踏んだか、彼にバトンを渡す事に。
「おねがいね、デネブ」(複雑だわ……)
『ああ、任せてくれ』
目を閉じるハナ、そして彼女が次に目を開くと瞳は美しいグリーンに。
髪型はツインテールとなり、サイドテールが緑一色に。
デネブ憑依体、つまりDハナは先ほどとは違ってにこやかな笑みを浮かべて少女へ近づいた。
「やあはじめまして、さっきは怖がらせてごめんね」
「え? あ……! いえ!」
「混乱してるだろう? コレでも舐めて気分を落ち着かせよう!」
ハナがポケットから取り出したのはデネブキャンディ。
少女はお礼を言って受け取ると、言われるがままにソレを口に含んだ。
すると先ほど涙を浮かべていたとは思えない程パッと明るく表情が変わった。
「おいしい!」
「うんうん、それは良かった良かった」
そこで話を切り出すデネブ。
博士達がそうだった様に、彼女はおそらく時空の歪みに巻き込まれてこの世界へ飛ばされたと見るのが妥当なところか。
色々と混乱しているだろうが、とにかく一度情報を交換しておきたい。
「まずは色々話す前に、キミの名前を教えてもらおうかな?」
「あ、えと……はい。わたしの名前は黄瀬やよいです」
黄瀬やよい、その名乗った少女はペコリと頭を下げる。
後で聞いた話だが内気な性格らしく、確かに小動物の様な可愛らしさと儚さを持った少女だった。
内巻きのセミロングヘアで白のヘアバンドをしており、少し小柄な姿。と言っても年齢は14歳、つまり中学生である。
おそらくハナや良太郎達の『今』よりは若干年上だろう。身長も彼女の方がやや高いと言った物か、Dハナはとりあえずその事を簡単に彼女へ告げる。
加えて自己紹介を。
「そうかそうか、俺は……じゃなかった、私はハナ。どうぞよろしく!」
Dハナはやよいの手を掴んでブンブンと握手を行う。
その無邪気さに気を許したのか、やよいも笑みを浮かべてよろしくと返してくれた。
そうしていると唸り声をあげつつ会話に参加する良太郎、まだ身体が痛い気がするが。
特に腹の部分が。あ、ハナが目を逸らしたぞ。
「さっきは本当にごめん、ぼくは野上良太郎」
ハナの時同じく自己紹介を行うやよい。
彼女は心の中で首を傾げていた、なんだかさっきと全然雰囲気が違う様な、と。
荒々しい態度は消えてふにゃふにゃと、どちからと言えば自分と同じ空気を感じてしまうのは気のせいだろうか?
「ぼく、ちょっと多重人格の気があって……だから、怖がらせちゃったらごめんね」
「え? あ、いえ! わたしの方こそそんな事情があるなんて分からなくて……ごめんなさい!」
「ううん、ぼくの方こそ――」
「わたしの――」
「ぼくの――」
「ちょ、ちょっとストップ! 終わり終わり!」
謝りに謝りを重ね、それを五回程度繰り返したところでハナが憑依を解いてストップをかけた。
これじゃあ話が進みやしない、とにかくと彼女はやよいに時空の歪みの事を簡単に説明する。
まあいきなり他世界だのと打ち明けるのはどうかとも思ったが、なにぶん状況が状況の為にゆっくりと説明とはいかない。
それに彼女だって身をもってして世界移動を体験したのだから、今更信じないと言う訳にもいかないだろう。
博士達は自分の研究所にいる所を歪みに引き込まれてコチラにやって来た、ならば彼女もまた同じ状況と言う事ではないのだろうか?
それを良太郎が聞くと、やよいは汗を浮かべて頷く。思い当たる物がある様だ。
「放課後、一度家に帰って……それから、みんなと遊びに行こうって!」
混乱しているのか、少しぶつ切りに言葉を紡いでいく彼女。
それはそうか、いきなり自分の世界から他のパラレルワールドに飛ばされたなんて脳が追いつく訳が無い。
けれども良太郎とハナが想像しているよりはずっと冷静だった、パニックになって泣き叫ぶ物かとも覚悟したのだが、怯えたようにしながらもやよいの目はしっかりとした光を持っている。そこには何か、強さの様な物が見て取れた。
ただの中学生の女の子ではないのか? そんな事を思わせるくらいに。
「それから……そう! 待ち合わせの場所に行ったら先に着いていた筈の友達がいなくて!」
携帯で話した時にはもう先に着いていると連絡があった筈。
なのに自分がそこに行けば誰もいなかったのだ。
待ち合わせの場所を間違えたのか? それともトイレか何かで一時的に離れているのか? もしくは隠れているのか?
等と、彼女は色々なパターンを頭の中で思い浮かべた。しかし周りを見ても隠れている気配は無い、すぐに彼女は携帯で連絡を取ろうとするが繋がらなかったと言う。
その時点では特に怪しまなかったやよい、彼女達は5人で遊びに行こうといっており、待ち合わせには3人が既に到着している筈。
彼女は少しだけ遅れると言った最後の一人に連絡を入れた。すると普通に繋がり、3人の姿が見えない事を伝えると一緒に探そうと言うことになる。
「友達が待ち合わせの場所に来るまで少し待ってたんですけど、先に来てた三人はやっぱり現われなくて……」
そうしている内に残りの一人がやってくる。
二人で合流して三人を捜そうと言う事になったのだが、その時だった。
助けと言う声が聞こえたのは。
「助けて?」
「はい、どこからかそんな声が」
それはやけにか細く、でも自分達の耳をしっかりと貫く声だった。
どこから聞こえてくるのかしばらくは分からなかったが、徐々に声がする方向を歩いていくと人気の無い路地にたどり着いた。
そこで、二人の前に現われた物こそがブラックホール。時空の歪みが原因で現われる世界間を強引に繋げたトンネルだったのだ。
やよい達はすぐに逃げようとしたのだが、その引力と何よりも助けを求める声に心を引かれて動く事ができなかった。
そうしていると二人は吸い込まれ、彼女は良太郎の上にと言う事だった。
「あ!」
すぐに辺りをキョロキョロと確認する彼女。
良太郎もまた彼女が何をしているのかは話を聞いていたから分かる。
やよいは一緒に吸い込まれたという友人を探しているのだろう、だがココにいるのは明らかにやよい一人だけだ。
いや違うか、正確に言えば一人と――
「きゃぁぁああああ!!」
「「!?」」
汗を浮かべ驚愕の表情で叫ぶやよい。
なんだろうか? 良太郎達はふと視線を横へずらすと――
「む゛ーッ! む゛―ッッ!!」
「よし、じゃあ調べ終わった後はジンギスカンといくか」
「ホットプレートでいいですかね? あ、しんちゃんお肉好き?」
「うん! 好き好きー! でもオラ優子ちゃんは、もっと好・き」
「いやーん!」
「あは~!」
「キャンディぃぃいいい!!」
「「………」」
良太郎とハナの視線の先には、博士があの不思議な生き物をフードロイド・バガミールでサーチしている所だった。
いや問題はそこじゃなく不思議な生き物、たった今やよいがキャンディと言ったその子が口を塞がれて縛られている所である。
すぐ隣にはホットプレートと焼肉のタレ、良太郎とハナは汗を浮かべてその光景を見ていた。
こいつ等、何してんだ……?
「キャンディをいじめないでーッ!」
「む!?」
やよいはキャンディを縛っていた布を引き剥がすと、彼女を抱きかかえて博士達から距離を取る。
目に涙を浮かべウルウルとしている彼女を見れば、自然と心にチクリとした物を感じてしまうものだ。
「やめてくれないか、僕が悪いみたいに感じてしまう」
「悪いよぉ! キャンディはわたしのお友達なんだから!」
「なんだ、知り合いだったのか! ってっきり非常食かと……」
「どうなったらそういう思考にたどり着くのよ!!」
ハナのツッコミが炸裂し、彼女はキャンディを開放してあげる。
キャンディは大きく息を吸い込んで、直後ため息。口を塞がれていたおかげで苦しかったようだ。
彼女は大きく頬を膨らませると博士にちっちゃな手を突き出して抗議を一つ。
「酷いクル! とってもとぉぉっても苦しかったクル!!」
「「なっ! 喋った!?」」
「ほうほう、よくできたぬいぐるみですな」
眉毛を上下に動かすしんのすけ。
特に驚く素振りはない、どうやらキャンディがぬいぐるみだと思っている様だ。
そうなのか? 一瞬ハナもその考えを抱くが、頬を膨らませたキャンディは次にしんのすけを指差す。
「違うクル! キャンディはぬいぐるみじゃないクル!」
「おぉ!?」
汗を浮かべて一歩後ろへ下がるしんのすけ。彼も驚く時は普通に驚くらしい。
そうしていると良太郎の中から溢れていくる物が。やばい、彼がそう思った時にはもう良太郎の人格が叩き落されている所だった。
「うわー! すっごーい!」
「!」
ハナの隣をステップで通り抜け、彼はやよいに抱きかかえられているキャンディに思い切り顔を近づける。
おどろいてフラつくやよい、目の前にいる良太郎は先ほどとは全く雰囲気が違って見える。
これが先ほど言っていた多重人格のソレなのだろうか? 一番最初はキツメで、主人格である彼は優しそうで、今の彼は非常に子供っぽい。
「何コレ! 羊さん? 犬さん? 猫ちゃん? それともウサギさんかな!?」
ツンツンと指でキャンディを弄くる良太郎。
やよい視点では彼の容姿は変わっていないが、彼女以外はなんだかんだと補正だのを受けている為に良太郎の変化を確認する事ができていた。
「リュウタロス……!」
ハナが止めようとするとキャンディが渦巻きの様に丸めていた黄色いモコモコの耳を振り回す。
どうやら指が鬱陶しかった様だ、彼女は再びプイッと良太郎から視線を外すと不満げに声を漏らす。
「キャンディは羊でも犬でも猫でもウサギでもないクル!」
「え!? じゃあ何々!? ボク気になる! 教えて教えて教えてぇ!」
「キャンディは――」
足を止めるハナ、そしてゴクリと喉を鳴らす博士達。
確かに気になると言えばそうだ、なんどと世界を移動してきたが、こんな不思議な生き物は久しぶりに見る。
皆興味を彼女へ集中しているのだろう、すると少しだけ自慢げにキャンディは笑みを浮かべタメの時間を作る。
「キャンディは――」
十秒たったくらいか、彼女はムフンと鼻を鳴らした。
「……!」
来る! 一体彼女はなんなん――
「キャンディはキャンディくる!」
「ウザいクル! もったいぶってそれクルか!」
「博士ー、移ってる移ってる」
博士はキャンディの頬を掴むと青筋を立てて睨みつける。
わわわわわと慌てるやよいとキャンディ、一方博士はビキビキと怒りのメーターが上昇中の様だった。
「だいたいさっきからクルってなんなんクル! 露骨なキャラ付けは止めるクルクル!!」
「博士ー、酷くなってまーす」
くそが! こうなったらと博士は新たなフードロイドを取り出す。
ファーストフードのポテトをイメージしたポテチョキン。
彼には文字通り両手に二つのハサミが装備されており――
「クッル! クルクッ! クルクルルルル!」
変な笑い声をあげる博士。
あれ? コイツわざとか? 助手はツッコミを放棄して押し黙る事に。
だが当のやよいとキャンディは抱きしめあってガクガクと震えている。
まあ当然と言えば当然か、怪しげな笑みを浮かべてハサミを持ってる奴が近づいてくるのだから。
「かくなる上は、バラバラに解剖してでもキミの正体を暴いてやるクルぜぇぇええ!」
「「ヒィイイイイイイ!!」」
「ヒィーハハハハッ!!」
腰を抜かして涙を流すやよいとキャンディ。
隣ではいつの間にかR良太郎としんのすけが意気投合しており、しんのすけが作詞作曲した半けつラップ(リミックスバージョン)を歌い踊っている。
「オラのオケツはプリプリ、お前はプリティー! YO! YO!」
「チェケラ! オケツにチェケラ! YO! YO!」
「………」
こいつ等、自由すぎる。
ハナはピクピクと眉を動かして拳を構えた。
げ ん
こ つ
「怖 が っ て る で しょッ!」
「嫌だなハナ君! 冗談に決まってるだろ! おい助手! 脳みそ、耳から脳みそ出てないか!? って言うか頭割れてないかコレ! どうなってる!?」
「どうにもなってませんよぉ、おおげさなんだから博士は」
頭に大きなたんこぶを作ってもだえ苦しむ博士。
ハナの鉄拳が彼を撃ち抜いたらば、みさえ同じく綺麗な球体のたんこぶが博士の頭に。
まったく、このままだったらいつまで経ってもまともに話もできないじゃないか。時空の歪みがどうのと緊急事態なのに、緊張感がまるで無いと来た。
「と言う訳でリュウタロスは引っ込んで!」
「えー、まだ二番が――」
「はッ! やッ! くっ!」
「ひぇ!」
視線に刺し殺される!
リュウタロスは身の危険を感じて良太郎の中に引っ込んでいく。
同じく汗を浮かべ呆気に取られるしんのすけ、みさえのげんこつに並ぶ威力を持っているとは……。
「ハナお姉さん、モーレツ……!」
「しんちゃんも、ちょっと良い子にしててね!」
ハナは腕を組んで鼻をフンと鳴らした。そしてそのままやよい達の方へと足を進める。
「ごめんねやよいさん、キャンディ。変なのが怖がらせちゃって」
博士も反省(物理)に反省(強制)してるから。
ハナの笑顔にやよいとキャンディは引きつった笑みを浮かべる。
いや、もちろん彼女のおかげで助かったのだが、なんだかまだ闘志が纏わりついている様な気がして圧されてしまうのだ。
「う……うん。いいのハナちゃん。ちょっとビックリしちゃっただけだから」
「キ、キャンディは心が広いから許してあげるクル!」
若干強制力を感じないでもないが、とりあえず一同には落ち着きの時間が齎される。
ハナはとりあえずキャンディとやよいに現在の状況と自分達の情報をもう一度簡単に伝えていく。
キャンディには驚かされたが、シャルルを知っているが故に簡単に受け入れる事はできた。
とりあえず彼女も他世界からやってきた身、キャンディの様な生き物がいてもおかしくはないだろうと。
「しんちゃんも聞いて!」
「お?」
世界は一つじゃない。
互いがその姿を、存在を知らずとも現実には数多の平行世界が存在しているのだと。
そして今、なんらかの要因によってその壁が歪み、脆くなってしまっている。
時空の歪みと呼ばれるソレ、それに巻き込まれてやよい達はここにいるのだ。
そして先ほどの話を聞くに、巻き込まれたのは彼女だけではないだろう。
「じゃ、じゃあ皆も」
「うん、可能性は高いと思う」
「そんな……!」
やよいと、たまたま彼女にくっついていたキャンディ、そして彼女の親友は一緒に同じ歪みに巻き込まれた。
しかし今ココにいるのはやよいとキャンディのみ。歪みから出てくる所で彼等は出会ったのだから間違いないだろう。
だったら一緒に巻き込まれた友人はどうなったのか?
「良太郎の中に今、時空の歪みに少し詳しい人がいるんだけど……」
今は休息状態の為に話を聞くことはできない。
しかし、彼から教えてもらった情報の中に、歪みの簡単な説明があった。
もちろんそれも100%正しい情報ではないが少なくとも今はソレが最も信頼できる。
「彼が言うには、時空の歪みの中を彷徨う事は無いって」
「じゃあ、つまり――」
「うん、だからその子も必ずどこかの世界に飛ばされたんだと思う」
加えて歪みは『現状』ランダムに発生する物ではない筈。
つまり今こうして彼女はこの世界にやってきたが、それは偶然ではないと言う事だ。
前もってこの世界が、しんのすけの住んでいる世界が歪みの影響を強く受けているとの説明があったから良太郎達はココに来た。
そうしたら現に歪みに巻き込まれた博士達がココにやって来て、今もやよい達がココに来た訳で。
「他にも影響を受けてる世界はいくつかあるけど、多くは無いわ」
歪みに巻き込まれ行き着く世界は、数箇所に必ず分かれている。
要するに、その候補の世界のどれかに彼女の友人が飛ばされた可能性が高い。
それを聞くと少し安心した様にやよいは笑う。再会できる可能性は高い、ハナも彼女が無事に友人達と再会して元の世界に帰れるように協力すると胸を叩いた。
ココで知り合ったのも何かの縁だ、それを聞くとやよいは初めて本物の笑顔を彼女に向ける。
「ありがとうハナちゃん!」
「うん! 必ず元の世界に帰ろうね!」
そんな二人から少し離れた所で頭を押さえ首を振る良太郎。
とりあえず憑依は解除されたがリュウタロスには困ったものだ、動物や珍しい物を見るとすぐに――
「あれ?」
そう言えばと彼は思い出す。動物と言えば、だ。
「しんちゃん、シロくんは?」
「お? おぉ! てっかり忘れてた!」
「それを言うなら、ちゃっかりでしょ……?」
道理で犬嫌いのモモタロスが反応しない筈だ。
しんのすけの愛犬であるシロの姿が見当たらない。
思えば色々あったからいつの間にかリードを離してしまったのだろう。
「おーいシロー?」
「遠くに行っちゃったのかな?」
少し辺りを見回してみるが彼の姿は無い。
遠くにも行っていない思うのだが、ココは博士の支援メカにお願いして捜してもらおうか。
等と良太郎が言った時、またも目に見えて分かる異変が一つ。
「しんちゃん」
「お?」
しんのすけを呼ぶ声がして良太郎達は声がする方向へ顔を向ける。するとそこにいたのは――
「おぉ、シロ。心配したんだぞ!」
「……ッ?」
そこには彼の愛犬であるシロが。
しんのすけが駆け寄って頬ずりをすると、彼は少し困ったような表情を浮かべた。
そう、明確な感情を見せたのだ。それだけでなく。
「相変わらずだね……しんちゃんってば」
「あへぇえ!?」
良太郎は目を丸くして思わず腰を抜かしてしまった。
だってそうだろう、彼の愛犬であるシロが普通に喋っているのだから。
対して普通にシロを撫でているしんのすけ、この世界では普通の事なのだろうか?
「どうしたの良太郎ちゃん、そんなに慌てて」
「いやっ! シロくんって喋るんだなぁって……!」
「………」
「「………」」
「おぉ!? シロ、おしゃべりできるのかお前!」
「「………」」
なんかそんな事だろうと思ったよ、良太郎は引きつった笑みでフラフラと立ち上がる。
一方でシロも驚くしんのすけを見てため息をついていた。
コレも驚くべき話ではあるが、こう言ったシチュエーションは二度目らしい。
「わざとやってない? それとも忘れちゃった?」
「?」
「酷いなぁ、一緒に戦った仲なのに」
シロはクルンと一回転をした後、良太郎の前にやって来る。
「はじめまして、私は時空警察所属、リング・スノーストームです」
「えぇ!?」
犬が時空警察?
コレには良太郎を含め、中にいるイマジン達も驚愕の表情を浮かべる。
そして瞬時、良太郎の脳裏を駆ける記憶。今回の様な事は珍しい話ではない、急激に無くしていた記憶を思い出すといえばいいのか?
時空警察と言えば色々お世話になった事があるし、一時は自分も形だけだが所属していたものだ。
「今はしんのすけ君の愛犬であるシロの体を借りて貴方にコンタクトを取っています」
「!」
博士やハナ達も気づいたのか、ザワザワと彼の周りに集る。
そこでピンと来たのか声をあげるしんのすけ、彼はシロの事をシロとではなくリングお姉さんと言った。
それはつまり今目の前にいるシロが、シロ本人では無いと言う事の証明。そしてしんのすけにはその心当たりが、明確な記憶がある。
「なんなんだ? 喋る羊の次は喋る犬か? 全く、飽きないなこの世界は」
「キャンディは羊じゃないクル! 妖精さんクル!」
「なんだ、童貞をこじらせたオッサンか。ちょっと可愛いとか思って損をし――」
博士の頭に山盛りのたんこぶが練成されたのは言うまでも無い。
「ハッ! ミスター良太郎も大変だな! ハナくんと付き合ったら毎日SMプレイだぞ! きっと夜は鞭を持ち出してくるに違いない! 同情するよ! ハッ!!」
「つ、付き合――ッ!? まだお仕置きが必要の様ねッ!!」
「すいませんでした。どうぞお話を続けてください!」
なんとかたんこぶが回復した博士も加えて会話に再開する事に。
まあいろいろふざけた発言はスルーして、彼の言う通り先ほどからイベントが連続で発生しすぎていると言ってもいい。
逆に言えばそれだけのこの世界に、いや世界全体通して起こっている異変が異常だと言う事だ。
「喋る犬と言うのは少し語弊があります」
また変な人達がいっぱいいるなぁ、等と思いつつも真面目に状況を説明するシロ。
彼は今彼の声で話しているのではなく、時空警察に所属するリングと言う女性の声で話している。
彼女は今、シロの身体を使って行動しているのだ。以前にも同じ状況があったらしい、だからしんのすけのリアクションも意外と薄いものだったのか。
時空警察。
またはタイムパトロールとは文字通り時間に関係する犯罪者を取り締まる団体である。
良太郎もそれは分かっている、過去にデンライナーを改造して署を作った事もあるからだ。
まあ良太郎とハナが時空警察に所属していた期間は本当に僅かな物だが。
「以前、私はパトロール中に時空犯罪者に攻撃を受け、やむなく空間移動を行った時があるんです」
一か八かの空間移動。その結果彼女はしんのすけの家、つまり野原家の庭に転送された。
問題は庭の地下、つまり土の中だったと言う訳だ。乗っていたタイムマシンは多くの機能が損傷しており、彼女はなんとか残った機能を使って不本意ながらもシロに憑依を行った。
「憑依……?」
「はい、イマジンの技術を使った
モモタロスが良太郎に憑依する一連の流れを時空警察は人工的に作り出した。
その技術で、と言う事なのだろう。とにかくシロに憑依した彼女は、しんのすけ一家に協力を依頼し、歴史を改変せんとする時空犯罪者と戦ったのだ。
(なるほど、だから大ショッカーの前でも彼は……)
時空犯罪者は本気でしんのすけを殺す気だった。
そんな殺気に満ち満ちた状況を潜り抜けてきたのだ、ただの五歳児とはレベルが違って見えるのも納得できる話ではないか。
さらにリングもしんのすけも口にはしなかったが、彼が修羅場を潜り抜けた回数は一度ではない。
野原しんのすけと言う男は五歳児にして、何度と無く世界の危機や凶悪な敵との対峙を繰り返してきたのだ。
「恥ずかしい話、今回も同じ様な事になってしまった訳で……」
時空の歪みを確認した彼女はパトロールと言う事でこの世界にやってきたのだが、運悪く入り口に敵がいて鉢合わせになってしまった。
「敵?」
「風使いの少年と銃を持った女の子でした」
「和織達ね」
リングが時空警察だと知るやいなや彼等は攻撃を開始。
彼女ももちろん抵抗したのだが和織たちの実力もそれなりで撤退を余儀なくされた。
しかし和織達は執拗に追ってくる、このままではマズイと踏んだ彼女は転移を行ったわけだ。
「結果、この公園の地下に……」
人気も少ない公園、彼女はどうしようかと思っていたがそこへシロがやってきたと言う訳だ。
今回もまた憑依システムは生きていた、デジャブの中で今彼女はこうして再びシロとして世界に立っていると。
「じゃあキミは、今この地面の下に?」
「はい、タイムマシンの修復機能は生きているので時間があれば地上に出られるのですが」
空気も食料も問題は無いと。
ただやはりその時間をオチオチと待っている時間があるのか? と言われれば微妙だ。
もちろん彼女としても世界の異変の正体や、これから何が起ころうとしているのかは知らないのだが。
「それより教えてください。貴方は何者ですか? 良太郎さん」
「?」
「何故電王に? パスはどこで……」
「あぁ、えっと……」
そうだった、良太郎はまいったなと。
自分はEpisode DECADE側の登場人物として登録されている。
要するに、電王の世界に自分とハナは存在していない事に。
Episode DECADEは言うなれば小さき島、大陸側の人間である彼女が自分を知らないのは当然であると言えよう。
デンライナー署を作った事も彼等からの記憶には残っていない。もちろんアーカイブドキュメントにも。
現にリングは過去の資料を問い合わせたが、良太郎とハナに、彼が変身する電王とゼロノスに関するデーターは残っていなかった。
「うーん……」
なんて説明すればいいのだろうか?
うまく言わないと時空警察に目を付けられると言う可能性も出てくる。
いやそもそも彼女が所属している時空警察と自分達が知っている時空警察は一緒なのか?
一緒ならば時空警察は自分達よりも前に世界間を移動していたと?
ああ、もうややこしい。仕方ない、良太郎は心の中にいる彼にコンタクトを。
(お願い、ウラタロス)
(川や海や湖、状況変われば適した釣竿を選ばないとね)
三分後。
「――と、まあそんな所かな」
「成る程……! 納得です!」
「まさかそんな感動的な理由があるなんて! うぅ! 優子感動!」
「がんどうグルぅうぅ! ズビーッ!」
「苦労したんだね、良太郎くん……!」
目頭が熱くなったのかシロ(リング)や助手、やよい、キャンディは涙を浮かべながら良太郎の話を真剣に聞いて心を打たれていた。
しかしジットリとした目の博士、ハナ、しんのすけ。
「「「………」」」」
三人の眼に映る良太郎はメガネをかけていて、それはもう饒舌に自分がパスを拾った理由を彼女に話していた。
確かに彼がパスを拾った理由は辻褄が合っており、人によっては涙を流して十分感動できる内容に仕上がっていただろう。
事実シロは彼の言い分に納得した様だし、問題は無いといえばそう。
ただ――
「ねえ、ハナお姉さん」
「……なあに?」
「あれ、本当?」
「全部嘘」
「ほうほう」
「――だろうと思ったよ。だがジョニーが良太郎を庇って死んだ下りは映画化できるぞ」
即答のハナ。
しんのすけは相変わらずジットリとした目で良太郎を見ながら眉毛を動かしていた。
良太郎と契約したイマジンと言う存在、彼の身体を勝手に使う時もあるが、彼等は良太郎を守る為に存在している。
そして良太郎もまた状況に合わせて彼等の力を借りる時があるのだ。
敵の存在を感知でき、用心棒として頼りになるモモタロス。
今の様に巧みな話術で他者を丸め込むウラタロス。
どんな相手にも動じず身体能力が高いキンタロス。
自由奔放だが催眠術で相手を洗脳できるリュウタロス。
相手を収縮させる力を持ち自らがナンバーワンだと信じるジーク。
いかなる状況においても良太郎は自分のペースに流れを持っていく事ができ、それが彼の強さだと言えよう。
とまあ今回もウラタロスの巧みな話術によってシロを納得させる事ができた。
シロは時空警察として彼等に協力したいと。なんとかごまかせた様だ、良太郎は安心してため息を漏らす。
(ありがとうウラタロス)
(ま、困ったらいつでも呼んでよね。良・太・郎)
憑依を解除するウラタロス。
そこでフムと唸る博士、随分とにぎやかな面子になった物だと。
一度状況を整理しよう。
良太郎はまず司達がいた学校。
つまり良太郎が拠点としている世界から、しんのすけの世界へとやって来た。
ハナも、イマジンに振り回されがちで運の悪い良太郎の保護者役として一緒に来たと。
そして良太郎達は自分でこの世界に来たのではなく、モモタロス達の古い友人に呼び出されてと言う訳だ。
彼は良太郎に現在無数の世界がおかしな状況になっていると告げる。
その異変を象徴するのは、時空の歪みと呼ばれる存在。
通常パラレルワールドは互いが干渉し合う事なく成立している物、それは世界が混じり合わない様に確固たる壁が存在しているからである。
しかし今回、時空の歪みと言うブラックホールの様なトンネルがその壁を破壊してしまう。
モモタロスの友人は時空の歪みの影響が強く出る世界をピックアップし、調査に向かった。
その中で良太郎にも知らせておこうと彼を呼び出し、共に調査に協力してくれと頼みにやってきたのだ。
良太郎も世界の危機とあれば協力しない訳にもいかない、それに珍しいモモタロス達の友人と言う彼の頼みを快諾した。
だがしかし早速歪みが襲来、良太郎達を吸い込もうと。歪みの先には別世界があると友人は考えていたが、いくらなんでも無策でつっ込むのは危険すぎる。友人も良太郎達の命を預かったと自負する身、彼等に危ない橋を渡らせる訳にはいかなかった。
彼は慣れない世界移動繰り返した身体で歪みの力に必死に抵抗を示した。持てる力を解放し、精神を削って良太郎達を歪みから守ったのだ。
その反動として現在かれは休息状態となり良太郎の中で気を失っている。
一端学校に戻ろうと思った良太郎達だが、何故か学校側とコンタクトが取れなくなったのはその後だった。
つまり完全な孤立、良太郎とハナはしんのすけの世界で立ち往生となってしまった。
すると同じく別世界で歪みのブラックホールに巻き込まれた
合流した彼等にさらに良太郎の知り合いだった野原しんのすけとの再会が待っていた。
一方同じくして和織達から逃げてきた時空警察リングスノーストームが公園の地下に不時着。
身動きが取れない状況の為に他の生き物の身体を借りる憑依システムを施行、たまたま公園内をうろついていたシロに憑依を行った。
彼女が身体を感触を確かめている間に、良太郎達は全ての世界を支配しようと目論む大ショッカーの魔化魍が一派と激突。
この一連の出来事に大ショッカーがどれだけ絡んでいるのかは知らないが、とりあえず電王に変身したしんのすけ、その名はしん王のカンチョーによって彼等を撃退する事に成功する。
逃げた和織達を追跡している中、時空の歪みによって別世界にいた黄瀬やよいと謎の生物であるキャンディが現われた。
友達と遊びに行く途中で歪みに巻き込まれた彼女、そしてその中でシロの身体を借りたリングも彼等にコンタクトを図ったと言う訳だ。
そして今に至る。
自己紹介も諸々済んだ一同の意識を集中させたのは、アストロスイッチカバンが鳴らすアラームの音だった。
「どうやら……定まった様だな」
「和織と墨姫……でしたっけ? 先ほどから同じ場所に留まってるみたいですん」
マップが示すのは春日部にある大きな公園。
公園と言っても今良太郎達がいる子供の遊び場と言うよりはバーベキュー場だの体育館だのがあるワンランク上の総合公園と言う形だった。
人が多い場所だが木を隠すなら森の中と言う事なのだろうか? それに人が多いとは言え、意外と死角もある場所だ、どうやらココで何かを企んでいると言う事か。
「なんにせよ放っておけないよ」
「まあそうだな、タダでさえ面倒な事が起きてるのにこれ以上面倒な事をされても困る」
頷きあう良太郎と博士。
とりあえず次は向こうも全力で自分達を潰そうと命を賭けてくるかもしれない、加えて世界を何が何でも潰そうと。
ハナと助手には、しんのすけとやよい達を守ってもらう様に二人は告げる。
しかし――
「オラも行くぞ! 春日部の町は悪者なんかに好きにさせないもん!」
「………」
まあそうか。彼だって戦える力は一応ある。
さらに言えばこの世界は、この町は彼の生まれた思い入れのある場所だ。
それがどこの誰とも知らない奴らに壊されるなんて納得できるわけが無い。
そしてそれを指を咥えて見ていろと言うのも酷な話か。
「―――ッ」
それに無いとは思うが和織達が囮と言う可能性も無くはない。
下手に別れればそれだけ不利な状況に陥るケースもある。
まあそんな事を言ったらその逆の場合も考えられるのだが。
「じゃあ、一緒に行こっか」
「!」
博士が考えている間に良太郎がポンと答えを出す。
それが彼の長所なのかもしれない、意外と決断力や行動力はあるのが彼の特徴だから。
「え? い、いいの良太郎?」
「うん、しんちゃんの気持ちは分かるし」
「流石は良太郎ちゃん! 話がわかるぅ!」
それに一緒に行くとは言えやよい達には後ろに下がっててもらえばいいだけの話だ。
ここに待機ではなく、公園の傍で待機と言う事もできる。それを聞くとハナも渋々ではあるが納得した様だ。
さらに話を聞いていたシロがしんのすけにある物を授けた。
彼女はしんのすけがまさか電王になっているとは思わなかったが、タイムマシンに残っている転送機能を使ってある物を本部から取り寄せる事に成功した。
「パスとデンオウベルトです。これでしんちゃんも単独で変身できるわ」
「おぉ! シロ太もも!」
シロはしん王の変身プロセスを見ていたらしい。
良太郎からフリーエネルギーを借りるやり方では電王の力もしん王の力も100パーセントと言う訳にはいかない。
現にしん王の姿を見せてもらったが、お尻の部分までフリーエネルギーが回らずオーラアーマーが構成されていなかったじゃないかと。
元々良太郎はオーラが少なく、アーマーが貧弱と言う欠点もある。各イマジンがそれを補う形とはなっているが、しん王へフリーエネルギーを与える部分に関してはイマジン達はどうしようもできない。
伝説のイマジンも、フリーエネルギーを上乗せしているものの、結局丸出しになっているお尻がそれを物語っているじゃないか。
「太っ腹の間違いでしょ? もう!」
とにかくとそれを克服するためには、しんのすけ自身がしん王への直接変身機構を手に入れる事が必要であるとシロは睨んだ。
生憎と本部へ助けを求める機能が故障していたが、物を取り寄せる機能は生きていた為、シロは予備のデンオウベルトとパスを時空警察から引っ張ってきたと。
ちゃんとしんのすけのサイズに合わせて小型化しているソレは、紛れも無くデンオウベルトと同型の物だった。
「すっごく貴重な物だからね、玩具じゃないんだからね!」
「やだなぁ、オラだってそのくらい分かってるぞ!」
ぷいっと後ろを向くしんのすけ。
しかし――
「えへ~」
「本当かなぁ……」
後ろを向いてニンマリと笑うしんのすけを見て、シロは何度目か分からぬため息をついた。
☆エピナビ☆
・リングスノーストーム
1995年4月15日公開に公開されたクレヨンしんちゃんの劇場版3作目『雲黒斎の野望』に登場するキャラクターだ。
タイムパトロールの一員で、劇中ではシロの体を借りて野原家と共に時空犯罪者を追う事になるぞ!
今作では電王の時空警察とリンク。映画同じくシロの体を借りてしんのすけのサポートキャラとなったんだ。
彼女がしんのすけに渡した改造デンオウベルト。
つまりシンオウベルトによって、しんのすけはしん王に一人で変身する事が可能となった。
さらにまだ秘密がある様で、それは今後明らかになる事だろう!
………
クロスで一番難しい所はその原作を見てない、つまり知らない人に不親切な作りにどうしてもなってしまう所かなと書いている内に思ってきます。
一応この作品は元ネタ知らなくても問題ないようには作ってるつもりではあります。
その為にオリジナルやパラレルを入れてはいるんですが、どうしても分かりにくい所は出てきてしまいますね。その点は申し訳ないです。
エピナビで説明した様にリングはしんちゃんの映画のキャラです。
しんちゃんは昔から結構好きでビデオとか借りて見てたんですが、映画も同じくらい好きです。
まあ最近のと言うとロボとーちゃんくらいしか見ていないんですが、また今回作品に出すと言う事で見ていけたらなとも思ってますね。
あくまでも日常系のアニメとは違って、映画は思いっきりファンタジーでクオリティの高い作品も多いんですよね。まだ全然しんちゃんの映画見てないって人は、個人的に――
・雲黒斎の野望
・ヘンダーランド
・大人帝国
・ヤキニクロード
この四つがお勧めです。
あとはまあ戦国とかロボとーちゃんかな。
はい、で鎧武終わりましたね。
個人的にですが平成二期の中では一番好きな作品になりました。
どっちかって言うとライダー多いのが好みなんで、作風がストライクって感じでしょうか。
あとは前後編じゃないってのもポイント高かったです。
フォームで言うとカチドキが一番好きでしたね。
あの旗を使ったアクションは新鮮で、見た目もテーマソングもツボに入りました。
いつか、出せれば……いいんですが……。
あとは地味にサブライダーの中じゃ一番グリドンが好きでしたね。
記者会見の時にいたってのが理由のひとつなんですが、中身もいい感じのキャラで。
まあ最後はせめてイナゴくらい倒してくれればと思ったんですが、スペックが気合でなんとかならない世界だったんで仕方ないのかなw?
あと結構ラスボスがアレだったのが意外で面白かったです。
なんか新鮮な感じでした。あー、なるほどなるほど、みたいな。
ポッと出感もありつつ、ラスボスとして納得できる所もありつつ、絶妙なバランスでしたね。
はい、まあ長々と申し訳ない。
だいたいそんな感じでしょうか。次のドライブも期待しておきます。
できればまたディケイドとの共演を期待して。
次回はちょっと未定ですね。
まあ次でたぶん絡んでくる作品のキャラは最低でも一人は出た事になると思います。
気長にお待ちくださればなと! ではでは。