Episode FULL・BLAST 久遠の歌姫   作:ホシボシ

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SONG5 タタカイの引力

 

「えへ~」

 

「もう……!」

 

 

呆れ顔のシロとにんまり笑うしんのすけ。

彼のサイズに合わせたベルトとパス、しんのすけは伝説のイマジンを身体の中に潜ませ準備を整える。

五歳と言う子供ではあるが、特異点と同じ立場にあると言う事は電王になる資格が十分にあると言う事だ。

ただあくまでも護身用として使って欲しいとシロは言った。言うなればシンオウベルト、彼はそれを持って強く頷く。

 

 

「いい? しんちゃん――」

 

 

時間も惜しい、シロは素早くベルトの使い方を彼に教えていく。

一方やよいに事情を説明するハナ。仮面ライダーの事は言っても分からないだろうから省略して、とにかく自分達はこれから世界を破壊しようと企む敵の近くに行くのだと。

 

 

「でも二人はわたしが絶対に守るから安心して!」

 

 

それを聞いた二人のリアクションは、ハナの予想とは少し違う物だった。

 

 

「よく分からないけど、わたしも役に立てるかも!」

 

「え?」

 

 

ハナはてっきり二人が怖がるかと思ったのだが、やよいとキャンディに恐怖の感情は微塵も無いように感じた。

説明が足りなかったか? ハナは一瞬そう思うが、やよいの目には確かな強さがある。

ただ内気で弱気な女の子、と言う訳でもなさそうだ。

 

 

「安心して、わたしね!」

 

「う、うん」

 

「実はね――!」

 

 

彼女は目を少し輝かせながら、ポケットに手を入れて――

 

 

「……あれ?」

 

「やよい、どうしたクル?」

 

「な、無い……!」

 

 

彼女の自信に満ちた表情が一瞬にして涙目に。

 

 

「無い無い無いぃいい!!」

 

「ど、どうしたの?」

 

「無いのぉぉぉぉ!」

 

 

何やら凄まじく大切な物を落としたらしい。

どうして? 彼女は連呼する。時空の歪みに巻き込まれる前は確かに持っていたのにと。

同じくアワアワとキャンディ、どうやらその落し物の気配は感じ取れるらしく、この世界にある事はある様だ。

どうやら良太郎の上に落ちた際の衝撃でポケットの中にあったソレがやよいから離れてどこかに行ってしまったのだろう。

話を聞くにソレは丸いコンパクトケース、うまく転がったのならそれなりに距離が離れてしまう。

曲がり角の方まで曲がり、そこで誰かが拾ったのなら、等と考えられるケースは多いもの。

 

 

「仕方ない、僕の方で探してやろう」

 

「ごめんなさい、本当にごめんなさいぃい!」

 

 

結果、博士にコンパクトの形状や特徴を伝えてフードロイド達に捜索を任せる事に。

やよいは涙をダバダバと流しながらしきりに謝罪を行う。

気にしないでと笑うハナ、しかしコンパクトがあるくらいで何か変わるのだろうか? それは彼女にも察しがつかない所だが。

 

 

「さて、そろそろ行くぞ。時間が惜しい」

 

「うん、そうだね」

 

 

世界を隔てられていようが補正の力と博士の発明は揺るがない。

搭乗者の合図によって一同の前にはそれぞれのバイクが現われる。

良太郎の前にはマシンデンバード、博士の前にはマシンマッシグラー、ハナの前にはマシンゼロホーンが。

え!? 凄い! 等とと鼻息荒く叫ぶやよい達。意外と怖がらない物だなとハナは思う。

いや、しかしとにかく急がなければ。助手は博士の後ろ、やよいとキャンディはハナの後ろに乗る事に落ち着くが――

 

 

「シロぉ、オラも何かないの?」

 

「あるわよしんちゃん!」

 

 

イメージしてイメージ!

シロは少しテンション高く叫んでみせる。

実は彼女はデンオウベルトに色々な追加効果を付与した、つまり改造版を予備として保管しておいた。

それをしんのすけにシンオウベルトとして与えたのだ。シンオウベルトは使用者と言う人間を解析し、ふさわしいビークルを用意してくれる機能を備えている。

その結果――

 

 

「スーパー三輪車よ!」

 

「………」

 

 

ボン! と言う音と共にしんのすけの前に金色と緑の三輪車が。

 

 

「……バイクじゃないの?」

 

「お子様は乗れないわよ!」

 

「……でも良太郎ちゃんだって今は子供――」

 

「男の子は細かい事気にしない!!」

 

「ほーい!」

 

 

乗ってみて気づくしんのすけ、そういえばこの三輪車には覚えがある。

いやだからこそシンオウベルトが彼の記憶から具現させたのだろう。

普通の三輪車ではあるが、シロが乗るスペースもあり、さらに赤青黄色の三つのボタンが装備されている。

確か別世界に存在していたハイグレ魔王と戦った時に使ったっけ?

 

 

「よし」

 

 

博士は辺りを見回し、一同が全員バイクに乗ったことを確認する。

一勢に音を上げるエンジン、やよいが緊張ぎみに喉を鳴らした時、博士の声が発進の合図となる。

 

 

「じゃあ、行くか!」

 

 

一勢に発進するマシン達。

歪みがどうのこうのと気になる所ではあるが、とりあえずは大ショッカーを止めなければ話にならない。

面倒な事になりそうだと思いながら、博士は風を切る感覚に身を委ねた。

 

 

「出発おしんこー! ナスのぬか漬けー!!」

 

「「「ファイアー!!」」」

 

 

いつの間にか結成されていた新かすかべ防衛隊。

しんのすけの声に反応して博士達もまた気合の声をあげるのだった。

そして三台のバイクと、一台の三輪車は同じスピードで風を切って行った。

 

 

「!!」

 

 

そして道中、やよいは"ソレ"を見て表情を変える事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総合公園。

今日は休日と言う事もあってか、それなりに人は多い。

ピクニックを楽しむ者やスポーツを楽しむ者、遊具で遊ぶ子供達の笑い声なども聞こえて来る。

無数に配置されているベンチでは老夫婦が散歩の途中の休憩に談笑を楽しみ、読書に勤しむ人も。

おやおや、中にはベンチで愛を語り合っている者もいるじゃないか。とにかくココは皆が楽しめる場所であり、多くの笑顔が溢れる憩いの場所と呼ぶのがふさわしい。

 

 

「「はぁ……」」

 

 

しかし、そんな幸せな場所でこぼれる二つのため息。

公園の広場近くのベンチで、二人の男女がテンション低くうな垂れている。

少年の方は中学生、少女の方は高校生と言う所だろう。

二人はカップルと言う訳ではない。つい先ほど知り合ったのだが、共通の不安を抱えている仲と言えばいいか。

 

 

「駄目ですわ、やっぱり電話は繋がりません」

 

 

Xの文字が刻まれている黄色い帽子を被った糸目の少年は、エラーを示すディスプレイを見て声のトーンを落とす。

ピンクのシャツにオーバーオール、一見少女とも見える彼は先ほども同じ事をしたが結果は同じだった。

街中だと言うのに携帯は圏外、ネットも使えないし。

 

 

「春日部って事は分かるのにね」

 

 

隣にいた少女もため息交じりに足をプラプラとさせている。

黒髪の綺麗なボブカットが印象的な美しい少女。スタイルが良く、高校の制服越しにそれがよく伝わってきた。

並んで座る二人はつい先ほどまで他人だったが、ある共通する出来事が理由で知り合いになったと言う訳だ。

その理由とは、まあつまりはそう言う事である。

 

 

「それにしても、あのブラックホールみたいなのなんだったんだろう?」

 

「吸い込まれた時は死ぬかと思いました。ほんま、命あっただけでも儲けモンですわ」

 

 

そう、この二人もまた時空の歪みが発生させるブラックホールに巻き込まれてこの公園に転送されたと言う事だ。

 

 

「「はぁ」」

 

 

少年、名はヤサカ・マオ。少女、名は青柳(あおやぎ)美月(みつき)

二人はもう一度ため息をついてうな垂れた。命が助かったのは幸いだった。

しかし二人には問題が二つ、まず一つは彼等は別世界に転送された事を知らない事。

何故なら春日部は二人にとっても知りうる町であったからだ。そして問題二つ目、それは二人が現在どうしようもない状況にあるからであろう。

携帯は繋がらず、持ち合わせも無い、つまり帰ろうにも帰れない状況なのである。

まあ幸いなのは転送された時点でマオも美月も鉢合わせと言う形になった為、同じ状況にある人がいると言う事が分かったくらいか。

 

 

「バスもタクシーもお金が無いから使えないし」

 

 

事情を説明しようにも、ブラックホールに吸い込まれてココに来ました。

などと言っても誰も信じないだろう。自分でも自分が今置かれている状況がおかしいって事は分かっている。

そもそも自分が同じ事を言われ、信じるかと言ったらばそれは……だから。

 

 

「あかん、やっぱりヒッチハイクとかやろか?」

 

「でも、さっきの事……」

 

 

そう、行動するにしても今一つ煮え切らない二人。これもちゃんとした理由がある。

自分達の携帯が使えないと知った二人は、公園でピクニックをしていた家族連れに頼んで携帯を貸してもらった。

しかしだ、知り合いに電話をしようにも繋がらない、と言うかそんな電話番号は存在しないと結果が出た。

さらにネットで知っている場所を探した美月だが、そんな場所は存在していないとも。

 

ここは埼玉、春日部、言えば日本。

知っているには知っている筈なのだが、何か気持ち悪さを覚える二人。

それはそうだ、彼等が知っている埼玉とは違う世界なのだからここは。

もっと言えば、マオの知っている埼玉と美月の知っている埼玉は違う。

とは言えど、二人がそれに気づくわけも無く。

 

 

「「………」」

 

 

どうしようもなく、とりあえず話をする事に。

その中で更なる違和感が二人を襲う。同じ日本に生まれている筈なのだが、なんだか歴史と言うか文化にかみ合っていない部分が出てくる。

要するにマオにとって常識である事を美月が知らなかったり、美月の言っている事をマオが理解できなかったり。その内二人の中で一つの答えが浮かびつつある。

 

 

「ねえマオくん。私たちもしかして――」

 

「まさか、そないな事……」

 

 

そう、今目の前にいる彼は、彼女は、別の世界の人間では?

ただそんな事を思えど信じられるのかと言われれば。なにせただ普通に知らないだけと言う可能性もあるからだ。

ただ二人には他世界を信じられるだけの前知識と言うべき物があるだけに余計混乱してしまう。

なんとも言えぬ空気の二人、しかし取りあえずずっとココにいた所でどうにかなる訳でもない。よしと立ち上がる美月、マオの肩を叩いて笑みを浮かべる。

 

 

「とにかく動かなきゃね。取りあえずヒッチハイクしよっか!」

 

「それもそうですね。ばっちり任せてください、ワイ結構得意なんです!」

 

 

悩んでいても仕方ない、二人はプラス思考にと笑みを。

しかし立ち上がった二人の耳に、なにやら不穏な言葉が聞こえてきた。

 

 

「――れで、全――死ぬってか?」

 

「その――り、皆全て壊れる」

 

「「ッ?」」

 

 

なんだろうか? 二人は顔を見合わせて声のする茂みの方を見る。

草が生い茂った向こう側に、なにやら人影が見えたのだ。

二人が座っているベンチは広場から少しはなれた人気の少ない場所。

周りには遊具も何も無く、あまり人がこない死角とも言えよう。

 

 

「………」

 

 

表情が険しくなる美月。

マオが話しかけると、彼女は殺気の様な物を感じると一言。

 

 

「さ、殺気? そんなん分かるんですか?」

 

「まあ……多少はね」

 

 

そんなまさかとマオは苦笑する。

殺気なんざ漫画の中だけに存在する物ではないのか?

等とは思ったが、美月はその気配が、先ほどの会話が聞こえた場所から放たれていると告げる。

死ぬだの壊れるだのと物騒な言葉が聞こえてきた方向。ただふざけあってその単語を口にすることも珍しくは無い筈。

マオはあくまでも軽い気持ちだったが、美月は真剣な表情でその声の正体を確かめようと。

 

 

「少し静かにしててね」

 

「は、はい……」

 

 

姿勢を低くし、草を掻き分ける音をなるべく小さくして美月とマオは声の方へと移動していく。

すると自分達に背を向けて話している者達の姿を捉える事になるのだが、そこでマオは思わず声を漏らしそうになった。

ましてそれは美月も同じだ。

 

 

「「ッ!」」

 

 

なぜならば彼等の視界に映った者の中に、明らかに人間ではない者が混じっていたからだ。

まず目に入ったのは和服の男女。少女の方は肌の色が驚くべき程白く、目が真っ赤だった。

まあ彼等も気にはなった物の、その前にいる人物にマオたちの視線は釘付けだった。

それは人の形こそしているが、誰が見ても人とは言わないだろう。緑の身体に赤い眼、そして腕には鎌が。

カマキリ男とでも言えばいいのか? 一瞬気ぐるみや特殊メイクの類かと思ったが、どうにもそうではないらしい。

つまり化け物、マオは青ざめて口をパクパクさせている。美月もまた汗を浮かべて目を細めた。

 

 

「こんな事なら、アレを預けなければ――」

 

「?」

 

 

小声で呟く美月、そんな二人に気づいていない三人は尚も会話を続けていた。

なにやらカマキリ男は少し大きめの椅子程はある正方形の機械を持ち込んで何やら操作をしている所だった。

美月もマオも和織の背中に機械が隠れているため、なんの機械なのかはイマイチ確認できない。

それによく見たところで恐らく理解できる物ではないだろう。

 

 

「あとどれくらいで準備ができる?」

 

 

和織の言葉が聞こえてきた。

マオ達は集中して会話を拾おうと。どうやら彼等はこの人気の無い場所で機械の準備を行っていたようだ。

 

 

「便利な物だねぇ、おい」

 

「ギェギェギェ、先ほども説明したがこの機械、カマキリの卵は――」

 

 

カマキリ男は和織達に機械の説明を行った。

カマキリの卵と呼ばれる正方形の機械は簡単に言えば爆弾を地下に向けて発射する物だと。

この公園の地下は地盤がゆるく、爆弾を爆発させれば埼玉を中心に大地震を発生させる事ができると。

突然の災害は二次災害や人災を引き起こし、世界を破壊する種として十分な役割を持つ筈。

この世界は広く、念のためにもう二箇所程地震を起こしておけば勝手に滅んでくれるだろう。

 

 

「人間は馬鹿な生き物だ、パニックになれば勝手に種族同士で潰しあう」

 

「ふぅん、だといいけど」

 

 

要するにカマキリ男は地下に爆弾を打ち込む準備を淡々と進めていると言う訳だ。

顔を見合わせて声にならない声をあげるマオと美月、本当なのかと思う気持ちもあるが、カマキリ男の姿がそれを証明してるのでは?

まだ特殊メイクと言う可能性、コレもドッキリかテレビの撮影か何かと言う案もあるが、こんな人のいない場所でソレを行う理由が無い。そして――

 

 

「そろそろ露払いを頼む」

 

「やれやれ、仕方ないね。行くか墨姫ちゃん」

 

「………」

 

 

無言で頷く墨姫、彼女は懐から銃を取り出した。

露払い、今この公園で騒ぎを起こせば警察や自衛隊を呼ばれる可能性もあった為にカマキリ男は人気の無い場所を選んで作業を進めていた。

流石にカマキリの卵も銃や爆弾を受ければ壊される可能性があったからだ、だがもう今の時間ならばチャージはすぐに完了する。

ならばよりよい環境で作業を進めたい物だ。地震の効果を上げる為には広場で爆弾を地下に発射したほうがいい。つまり、広場にいる人間は邪魔。

 

 

「殺せ、一人残らずな」

 

 

カマキリ男の身体から黒い霧が溢れたかと思うと、霧は人の形を形成していき、あっと言う間に10人程のショッカー戦闘員を作り上げる。

 

 

「「!」」

 

 

マオと美月はその瞬間確信した。

コレはやはりドッキリや作り物の類ではないと言う事をだ。

黒い霧から生まれた戦闘員は明らかに動き、実体を持っているじゃないか。つい先ほどは誰もいなかったのに。

 

 

「やれやれ」

 

 

同じ様にして和織達は白狐隊を作り出す。刀を構えて草むらをかき分ける和織。

大変だ! マオと美月は音を立てるのも構わず草むらから抜け出して広場へと走った。

 

 

「あん? あららら?」

 

「さっきから……ずっと……見られてた」

 

「じゃ、じゃあ教えてよ墨姫ちゃん」

 

 

だがまあいいと鼻を鳴らす和織。今更見られてたからどうなると言う訳でもあるまい。

どうせこの公園にいる者は全て死ぬし、時間が経てば世界中の人間が滅びる。

気をつけるべきは電王達だが追ってきた気配は無いし、この場所にいるとは分からないだろう。

 

 

「みんな逃げて! 今すぐココから――ッ!!」

 

「はよう公園から離れてください! ココは危険や!!」

 

 

広場に飛び出した二人は声を嗄らしながら必死に叫ぶ。

しかし広場にいる人や遊具で遊んでいる子供達は突然現われた二人にポカンとするだけで反応は示さない。

それもそうだ、いきなり危ないから逃げろと言われても戸惑うだけ。何故ならば公園には危険な物など何も無いのだから。

だが――

 

 

「「「イーッ!!」」」

 

 

マオ達から僅かに遅れてと言う所で広場に現れたのはショッカー戦闘員と白狐隊。

合わせて10体の戦闘員たちは呆気に取られたままの家族連れや恋人達を狙って武器を構えた。

 

 

「シュッ!」

 

 

白狐の一人が鎖鎌を構え、広場でボール遊びをしていた男の子に向かって容赦なく投擲を。

空を切り裂きながら飛んでいく鎌、それは男の子を切り裂こうと牙を剥く狂気。

広場にいる誰しもの時間が止まったままだった、ショーか何かか? そう誰もが思っただろう。

 

 

「あぶない!」

 

 

いや、正確には二人だけ思考が事態に追いついている者が。

先に動いたのは美月だ、彼女は格闘技の心得がある。

繰り出されるハイキックは風を切り、男の子を切り裂こうとした鎌を命中すると軌道を逸らす事に成功した。

 

 

「フッ!!」

 

「イ゛ッッ!」

 

 

さらに彼女はその足を旋回させて後ろからナイフで切りかかってきたショッカー戦闘員の首を刈り取る様に足を入れる。

大きく露出される彼女の健康的な太もも、少し赤面しつつもスカートを片手で抑えながら彼女は足に力を込める。

 

 

「ハァッ!!」

 

「イィィ!!」

 

 

大きく大地を踏む様に足を着ける彼女。

当然首を取られていた戦闘員は地面に倒れる事に。

彼女はその隙に男の子に逃げる様叫んだ、しかし目の前から迫る異形たちに怯えているのか、彼は震えて立てそうも無い。

 

 

「クッ!」

 

 

そうしていると別の白狐達やショッカーが美月に飛び掛っていく。

男の子を後ろに守りながらでは分が悪い。それに回り込まれたら――ッ!

 

 

「ワイに任せてください!」

 

 

飛び出してきたのはマオ。

彼は美月に殴りかかろうとした戦闘員の膝の裏を思い切り蹴った。

膝が折れフラつく所を見て彼は、その曲がった膝の上に乗る様に足を出す。

戦闘員の膝に一瞬乗ったマオ、彼は帽子を押さえて戦闘員の膝を蹴る事で跳躍、一気に男の子の元へ転がってみせる。

一方で衝撃で動きを止めた戦闘員、美月はしめたと彼の頭を掴んで馬跳びを。

戦闘員の後ろへ回り込んだ美月、戦闘員達はナイフや手裏剣で彼女を狙うが、美月は戦闘員のスーツと肩を掴んで強制的に立ち上がらせ盾にする事で全ての武器を防いでみせる。

 

 

「イ゛ぃぃい!」

 

 

泡となり爆散する戦闘員、美月の前にはまだまだ敵が。

マオを見れば男の子を連れて家族の元へ送っている所だった。

襲い掛かる戦闘員は大きなカバンを振り回してけん制している。

すぐにそこへ猛ダッシュで近づき膝蹴りで吹き飛ばす美月、そうしていると完全に家族達は避難を完了させた様だ。

なんとかなったか? 彼女は安心した様に息を吐くと、一瞬で表情を険しく変えて再び戦闘員達の方へと向き直す。

 

 

「ハァァア……!」

 

 

構えを取って拳を握り締める美月、その迫力に少しだけ戦闘員も怯むような素振りを見せた。

しかしその向こうにいる和織はニヤニヤとするだけ、墨姫も相変わらず無表情だ。

 

 

「ただの人間にしては頑張るじゃないの」

 

「………」

 

 

指を鳴らす和織、すると戦闘員達は頷いて美月から離れる様に走り出す。

一瞬敵が減ったと安心する美月だが、すぐにそうでない事が分かった。

戦闘員達は今だ広場にいる人たちに狙いを変えたのだ。恐怖で立ちすくむ人や広場から逃げようとしている途中の人を襲う為に。

 

 

「させない!」

 

 

とは言うものの、一人では散らばる戦闘員を止めるのは不可能。

さらに言ってしまえば自分に向かってくる和織が!

 

 

「お兄さんは優しいから一瞬で殺してやるよ!!」

 

「ッッ」

 

 

和織の振り下ろした刀を身体を反らして回避する美月。

しかしなんだこの化け物たちは? 美月にもそう言った存在に心当たりが無いわけではない。

少なくとも自分が知っている存在とは当てはまらない様な。

 

 

("ステマ乙"も"バロスw"も、ココまで明確に感じる殺気は無かったのに!)

 

 

和織は、戦闘員達は、自分を完全に殺す気で武器を振るっている。

明確に向けられた殺意、それは美月にとってもあまり体験した事の無い緊張感を齎した。

おまけに今の自分は生身、弱い人間であり、これは現実。

 

 

(どうなってるのよ、本当に!)

 

 

早く周りの人たちを助けなければと言う焦り。

しかし和織が邪魔をしてくるせいで動くに動けない状況だった。

美月も彼を相手にするだけで精一杯、周りを助ける余裕は無い。

 

 

「美月さん!!」

 

 

マオは手に持った石を投げながら彼女の元へ。

和織は最初の一発だけは刀の柄で弾き、あとは風を前に噴射して全ての石の軌道を殺した。

 

 

「うっ!」

 

「マオ君! 何してるの、早く逃げて!」

 

「わ、ワイも男や! 女の子を見捨てて逃げるなんてでけへん!」

 

 

立派な事だ、和織は少し小馬鹿にした様に笑ってみせる。

子供が一人来た所で何も守れやしないのに。

そもそも守ると言ったって周りにいる人間を全て戦闘員の手から守るなど不可能。

 

 

「そう、意味なんて無い。頑張るだけ虚しいって話」

 

 

刀を構える和織。

 

 

「それに根本的な話、お兄さんからは逃げられないんだよな!」

 

 

彼は風を身に纏わせて地面を蹴る。

速い! 美月もマオも彼のスピードに驚愕の表情を浮かべたまま固まってしまう。

わずかな時間、一瞬とも言える時間で悟る二人、彼の刃はどこに逃げようが追ってくる筈。

駄目だ、避けられない! 二人は覚悟を固めて歯を食いしばった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!

 

 

「!?」

 

「「ッ!」」

 

 

だがその時、金属と金属がぶつかったような音が三人の耳を貫く。

同時に和織の手に伝わってくる振動、なんだコレは? 三人は三人とも同じ方向に視線を合わせて絶句する。

それは和織が振り下ろした二本の刀が、空中に浮く謎の物体によって阻まれたからだ。

突如として空中から飛来し、マオと美月を守る様にして刀の軌道に割り入る。

おかげでこうやって二人は刃からは守れた訳だが、果たして謎の物体とは何なのか? 和織は素早く辺りを確認、するとやはりと言うか何と言うか。

 

 

「お前――ッ!」

 

「ふふ、どうやら間に合ったみたいだな」

 

 

少し離れた所に見える小さな人影。

それはまさしく零月結弦、博士の姿だった。

彼は腕を突き出したポーズでマシンマッシグラーに跨っており、さらに腕をクロスさせて指揮者の様に振舞った。

すると連動してか、刃を止めていた物体が再び動き出して和織の刀を弾く。

 

 

「「!」」

 

「なんだ――ッて、うわぁあ!」

 

 

さらにその二つの物体、名をバースドライバーはマオと美月の腰の前に一人でにやってくると装着。

その瞬間に衝撃波が発生して和織を吹き飛ばしていった。

さらに自動でメダルホルダーから銀色のメダルが取り出されてドライバーへ装填される。

 

 

「な、何? 何ですのん!?」

 

「わわわ!」

 

 

意味が分かっていない二人を放置して、ドライバーはチャリンと音を鳴らしていた。

なにをする気だ、和織は吹き飛びながらも風を使って体勢を強引に整えた。

そして瞬時刀を投擲、これで二人を刺し貫こうと言うのだろう。

焦るマオたち、しかし自動でドライバーについていたハンドルが回っていき――

 

パカーン!

 

気持ちの言い音が鳴り響くと二人の体に次々と装甲が纏わりついていくではないか。

なんだなんだと焦る二人に構わず、あっという間にマオと美月はバトルスーツを着ている状態に。

当然向けられた刀はアーマーに命中し、二人は痛みや衝撃こそ感じれど致命傷にはならずに済んだ。

 

 

「な、なんやねんコレ!!」

 

 

マオは自分の体を確認するが、とてもじゃないが信じられない。

所々にカプセルが埋め込まれている様なスーツ、顔も触った感触で仮面がかぶせられていると言う事が理解できる。

ちなみにマオのスーツは美月の物とは若干色が違っていた、カプセルの周りが赤く、同じく赤線も入っている様な。

 

 

「いける!」

 

「へ?」

 

 

へたり込むマオとは対照的に、拳を握りしめて良しと呟く美月。

彼女は自らが身を纏うバトルスーツの強度が高い事を察すると、なんと逃げるのではなく逆に和織に向かって殴りかかっていったではないか。

 

 

「は? ってうお!」

 

 

美月の、いや今はバースの強烈な蹴りが和織の前髪を揺らす。

なんとか顔をズラす事で蹴りを避けた和織だが、思わずその威力を想像してしまい顔を青く染めた。

総合格闘技の練習によって培われた蹴りの威力が、バースの力を上乗せしてより高い物へと昇華する。

流石の彼もこんな蹴りを何発も喰らえば即グロッキーだと。

 

 

「焦るな焦るな!」

 

「え!? きゃあ!!」

 

 

しかしバースが追撃の回し蹴りを行おうと地面を踏みしめた時、逆に体がフワリと浮く感覚を覚えた。

そして背中に感じる感触、彼女が振り向くとそこにはフックを自分に引っ掛けている博士の――、ではなくフォーゼの姿が。

そして一気にバースの体が宙を舞ってフォーゼに引き寄せられていく。ウインチモジュールを装備していたフォーゼは、彼女を吊り上げる様にして引き戻す。

既にマオ、バースの試作品であるプロトバースもフォーゼの足元でへたり込んでいた。バースもまたあっという間にプロトバースの隣に倒れる事に。

 

 

「いたたッ!」

 

「中々アクティブなお嬢さんだな」

 

 

そう言ってフォーゼは二人の前に立つ。

刀を構えて、銃を構えてコチラを睨む二人を尻目にフォーゼは周りに視線を移した。

逃げ惑う人々と、それを追いかける戦闘員たち、恐怖で震えた足では彼等から逃げ切る事は不可能だろう。

ほら、今もナイフで切りつけられそうになる人や鎖鎌の範囲に入っている人が。

 

 

「リリース」

 

「「!」」

 

 

フォーゼが両手で指を鳴らすとマオと美月の変身が解除される。

彼等の腰から離れた二つのバースドライバー。

空中に浮遊して留まっているソレは、フォーゼの腕の動きにあわせる様にして再び空を切り裂き飛んでいく。

 

 

「「!」」

 

 

二つのドライバーは和織と墨姫めがけて突進。

反射的に引き金を引く墨姫だが、バースドライバーの強度はそれなりで彼女の弾丸をかき消しながら飛来する。

舌打ちを交え地面を転がる二人、ドライバーは彼等を通り抜けて旋回、一気に狙われた人々の下へと飛んでいく。

 

 

「なんだ?」

 

 

和織が視線を移動させると、今まさにショッカー骨戦闘員の攻撃を受けるだろうと言う人の腰へバースドライバーが自動でセットされている所だった。

ベルト着装時に発生する衝撃派で骨戦闘員は吹き飛び、ベルトはその人の腰から離れて再び別の人の下へと飛んでいく。

もちろん衝撃派ではフォローしきれないと言う攻撃もある。たとえばそれは衝撃派の範囲外から放たれる手裏剣だの鎖鎌だのと。

そうした攻撃が飛んできそうな場合は、なんとセットされたドライバーが先ほどと同じようにしてメダルを自動装填。

あっと言う間にバース、もしくはプロトバースに変身させて攻撃をアーマーで防いで見せた。

そして呆気に取られる白狐にはフォーゼが放ったミサイルが着弾して狙われた人たちから距離を離す。

そうして再び変身解除、人々は訳も分からず逃げ惑うが、二つのバースドライバーはフォーゼの指示を受けて的確に戦闘員からの攻撃をベルト装着時に放たれる衝撃派と、強制変身の二つで防いでいった。

 

 

「アブソリュート・アサイン」

 

「ッ?」

 

 

フォーゼが二つのバースドライバーに設定した新機能である。

博士の脳波に反応し、自由にバースドライバーを操る事ができる機能だ。

空中制御、自動変身装置、鉄や胴、アルミニウムを主なエネルギーとするバースを安定化させる凝縮エネルギーコイン。

通称『セルメダル』の大量生産に伴い可能となった機能であろう。簡単に言えば博士が指定した相手をバースに変身させる事ができる機能である。

これにより、今の様な状況でも人を守る事ができる訳だ。

 

 

「行くぜ行くぜ行くぜぇえええ!!」

 

「チッ!!」

 

 

さらに飛び出してくるのはマシンデンバード。

乗っている電王は片手にソードを構えてバッタバッタと戦闘員たちをなぎ払っていく。

さらにデンバードでの突進、吹き飛ばされる戦闘員たちに電王は追撃のミサイルを発射した。

 

 

「ぶっとべぇえ!」

 

 

デンバードから発射される二対のミサイルが戦闘員達を爆散させて無に帰した。

それを見てフンと鼻を鳴らす和織。攻撃の邪魔をされた事は不愉快な話ではあるが、元々人を追い払う役目を受けて広場に来たのだから今の状態はある意味目的達成となる。

とにかくと自分達の目的は電王の抹殺、および何か隣にいるイカ男の排除。それが完遂できれば自分達の地位も跳ね上がるだろうと。

だいたいこの作戦の本当の目的は時間稼ぎ、自分達は爆弾を地下に発射するまでの囮な訳だ。ここで奴らを封じれば目的は――

 

 

「ぐあああああああああ!!」

 

「「!」」

 

 

すると和織達にとって聞き覚えのある声が。

見れば緑色の光を纏ってカマキリ男が地面を転がっている所ではないか。

瞬間嫌な予感が和織の中を走る、だが案の定姿を見せたゼロノスがその一声を。

 

 

「装置は破壊したわ! 後はこいつ等を倒すだけよ!」

 

「チィイッ!!」

 

 

やはりか! 和織は思い切りゼロノスたちを睨みつけて歯を食いしばる。

しかし何故機械の位置がバレた? 彼が疑問の表情を浮かべると、それを察したかフォーゼが簡単な説明を。

要するにナゲジャロイカで後をつけていたと。和織達魔化魍は人の気配を察知する事はできても、無機物である機械の気配までは気づけなかった。

ましてや彼は自分のスピードにそれなりの自信もあった。だから後を付けて来るなど不可能と踏んでいたのだろう。

しかしナゲジャロイカはそれなりのスピードが出せる、よって何とか追跡を行えたわけだ。

 

 

「おのれ……! よくも計画を邪魔してくれたな!!」

 

 

苛立ちを隠す事無く立ち上がるカマキリ男。彼もまた大ショッカーの怪人としてのプライドがある。

よく分からない人間に自らの行動が邪魔される事ほど苛立つものは無いのだ。

カマキリ男は武器である鎖鎌を手にすると直接電王達を倒す意思を示した。

 

 

「現われよ! ショッカー戦闘員!」

 

「「「イーッ!」」」

 

 

全身に黒のタイツを纏い、骨の刺繍を施した通称骨戦闘員がカマキリ男の周りに現われる。

続けてカマキリ男が取り出したのは先ほどの公園での和織戦で彼が取り出していた物と同じく、歯車が中に入っているカプセルの様なものだった。

 

 

「おい、それはさっき使ったけど、てんで駄目だったぜ」

 

 

和織は公園で白狐隊に歯車のカプセルを投げた。

しかし結果は拒絶反応を起こして使い物にはならなかったと。

だが首を振るカマキリ男、確かにコレはまだ実験段階である事には変わりないと。

彼も無策でコレを投げる訳ではない、戦闘員にも個性があり、白狐隊には拒絶反応を起こしたとて同じ事が骨戦闘員にも言えるのかと言われれば――、だ。

 

 

「!」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

カマキリ男が空中にカプセルを放り投げると、中にあった歯車が先ほどと同じ様にして分裂、一つずつ戦闘員達の体内に埋め込まれていく。

先ほどの白狐隊は次々と拒絶反応を起こし破壊されると言う結果に終わったが、今回の骨戦闘員には確かに違う点が早々に見られた。

10体程いた骨戦闘員の中には白狐同じく拒絶反応を示して消滅する者がいたが、中には歯車を取り込んでも消えない者が。

メキメキと音を立てて変わっていく骨戦闘員の体、徐々にその面影が無くなる程にまで変化は進む。

全身タイツの様な体は徐々に明確な輪郭を作り、バトルスーツの様な素材へと変わっていった。

さらに骨の刺繍は実際の装飾品となり、装備と言う形で体へと付着する。肩アーマー等の防具も加えられ、爪は鋭利な刃へと変化を成しえた。

 

驚くべきはココからだ。

多くの変化を遂げた戦闘員ではあるが、その最もたる部分は顔であろう。

と言うのも目だしのマスクを被っていただけの彼等が、明確な顔を晒したのである。

それは意外にも普通の人間とそう変わらないもの、肌の色はフェイスペイントなのか地色なのかは不明だが、青だの赤だのと部分で変わっている。

ただ顔その物は耳があり目があり鼻があり、つまり普通の人間とそう変わらぬ物である。さらに髪の毛が確認でき、ベレー帽を被っている形となっていた。

そしてベルトバックルに輝く黄金の大鷲。

 

 

「……!」

 

 

それだけではない。

本来戦闘員とは怪人の力で生まれる為、性別と言う物が存在しない。

もちろん人型であると言うだけで臓器等も無く、人形の様な物と言っても良かった。

だが今生まれた彼等の中に、はっきりと女性型と見える個体が存在していたのだ。

体の曲線、胸の膨らみ、顔つき、そして髪の長さが女性を証明している。

 

 

「フン、やはり不安定な面は多いか」

 

「だけど完成したじゃないのさ」

 

「不完全な完成だがな」

 

 

ショッカー戦闘員強化型。

これが大ショッカーの新たなる力が一つであった。

通常の骨戦闘員のスペックを底上げし、スピードの女性型とパワーの男性型が存在している。

しかし人の形に近づいたとは言え、顔や姿は結局皆同じと言う所が不気味さと、所詮人間ではなく量産された存在と言う印象を強く残した。

男性型が二体、女性型が二体と綺麗に分かれた物だ。

 

 

「!」

 

 

その刹那、女性型が地面を蹴る。

すると前転や側転、バク転とアクロバティックな動きを連続で行いながらコチラに近づいてきたではないか!

続けて走り出す男性型、どうやらカマキリ男は脳から直接命令を送れるらしい。

とは言えど命令と言えば電王達を倒せと言うごくシンプルな物ではあるが。

 

 

「皆、下がって!」

 

 

ゼロノスが剣を振るうと雷がバチバチとカーテンの様に広がり牽制を。

彼女は草陰に隠れていたやよい、しんのすけ、助手にもっと下がる様に促した。

数が多い、ココは一端引いて様子を見たいと。カマキリ男達も引くゼロノスには特に興味を示さない、狙いは電王達に集中して向かっていく。

 

 

「悪いが少し時間を稼いでくれ、データーを取りたい」【レーェイダーァ/オン】

 

「ケッ、もともと俺一人で十分だっての!」

 

 

デンガッシャーを構えて走りだす電王と、膝を着いてレーダーモジュールを構えるフォーゼ。

美月とマオはゴクリと喉を鳴らしてその光景を見ていた。

いや、けれども抱える感情は少し違っていたのかもしれない。

美月はフォーゼの肩を掴むと、グイっと身を乗り出す。

 

 

「ねえ、アイツ等なんなの!?」

 

「まあ面倒な連中さ。それより速く逃げた方がいいと僕は思――」

 

「教えてッ!!」

 

「………」

 

 

そう言えばと思い出すフォーゼ。

彼女はバースの鎧を纏った時、逃げるのではなく立ち向かおうとしていたか。

それに隣の少年もなんだかんだと残っているし。ココは曖昧にごまかすより端的に話して納得してもらったほうが早いか。フォーゼは解析を進めながら口を開いたのだった。

 

 

「チッぃい!」

 

 

一方で先に前に出た電王が全ての戦闘員を相手をする形になるのだが、電王の動きがいつもとは違ってみせるのは気のせいだろうか?

彼に備わっている赤の力の一つ、自分に敵対する人数が多ければスペックが上がると言う物があるのだが、それでも電王は押されているといえるだろう。

 

 

「やりにくいなクソったれ!!」

 

 

そう、電王の前にいるのは一見すれば普通の女性なのだ。

男性型ならば普通に攻撃できるのだが、いざ攻撃をしようとするとモモタロスも流石に躊躇してしまうと言う物。

いやと言うよりも、そもそもの話しコレが狙いである。女性型と言えど何も本当の女性ではない。

あくまでも女性の形をしていると言うだけの話で、結局はただの怪人の力の欠片でしかない。

だが今こうしてモモタロスは、電王は敵の策略にまんまと嵌っている訳だ。

 

 

「うぉおお!!」

 

 

さらに電王の装甲から無数の火花が散る。

戦闘員達の隙間を縫うようにして墨姫が銃を発射したのだろう。

よろける電王に振り下ろされる男性型の爪、五本の閃光が装甲をさらに抉り取る。

 

 

『モモタロス、油断しないで! 結構強いよ!』

 

「そうは言ってもよ――って、ぐぁあっ!」

 

 

男性型の蹴りを受けて転がる電王。

ゼロノスの後ろに隠れてたしんのすけはムムムと表情を変えて彼女の前に出る。

はじめはやよいと助手を守る役割を与えられていたが、やはり友達を傷つけられる光景と自分の世界を壊そうとする大ショッカーたちを許す訳には行かなかったのだろう。

 

 

「「しんちゃん!」」

 

「オラ戦うぞ!」

 

 

ゼロノスやシロは彼を止めようとするが、その静止を振り切ってしんのすけは前に出る。

そして手に出現させるはシンオウベルト、彼がそれを腰に装備刺せた時、なにやら彼の体から光の球体が出てきた。

イマジンが移動する際に使う光の球体状態だ。それは地面に落ちると、明確な形を作って見せる。

 

 

「おぉ!?」

 

 

驚き腰を抜かすしんのすけ。

それもその筈だ、伝説のイマジンは明確な色を持って彼の前に現われたのだから。

上半身は裸で下は紫のタイツをはいている豚、二本足で立っており、腰にはちとせ飴の様な剣が見えた。

左右の目や、鼻の大きさが異なっており、子供の落書きの様な外見にも思える彼こそは――

 

 

「レオナルド・デカぶりオ参上」

 

(((誰――ッ?)))

 

 

凄くセクシーな声で名乗る子豚。対して汗を浮かべて現われた子豚を見るやよい達。

ただゼロノスには見覚えがある姿だ、あれはモモタロスが呼び出した伝説のイマジンであり、しんのすけも何か心当たりがある様な事を仄めかしていたような。

するとやはり目を輝かせ立ち上がるしんのすけ、彼は早速子豚を不思議がる事も無く話しかけていた。

 

 

「ぶりぶりざえもん!」

 

「いや、私はレオナルド――」

 

「えー? ぶりぶりざえもんは、ぶりぶりざえもんでしょー!?」

 

「……いやだから、私は――」

 

「ぶりぶりざえもーん、お久しぶりぶり~!」

 

「いやだからお前ッ、こらガキ! ぶりぶりざえもんって名前、よく考えなくてもダサくないか!?」

 

 

美しい私には似合わないと判断して、改名をしたのだと彼はしんのすけに告げた。

 

 

「いや待て、ブリット・ピッグでもアリだな……」

 

「えー、オラはぶりぶりざえもんが良いと思うけどなー」

 

「ちょ、ちょっとしんちゃん!」

 

 

なんだかおいていかれている様な。

ゼロノスはしんのすけに彼の詳細を、要するにぶりぶりざえもんの事を尋ねた。

すると嬉々として説明を始めるしんのすけ、何でも彼が考えた自作のヒーローらしく救いのヒーローなのだとか。

 

 

「す、救いのヒーロー……」

 

 

こ、これが?

ゼロノスは思わず声に出してまじまじと彼を見詰めてしまう。

しんのすけには申し訳ないが、どう見ても強そうには見えないのだ。と言うかあの剣、まさか本物のちとせ飴では?

 

 

「おい、人を見かけで判断するのは失礼だぞアバズレ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

げ ん

こ つ

 

 

「そうね、それは純粋に私が悪かったわ……!」

 

「だったら殴るなーッ!」

 

 

ゼロノスの拳によって生成された丸いたんこぶを擦りながら、ぶりぶりざえもんは怒りに吼えた。

とにかくと一端落ち付いて話をする事に。どうやら彼は伝説のイマジンの力によって具現したしんのすけ専用のイマジンらしい。

良太郎が桃太郎のイメージを介してモモタロスを作り上げたように、しんのすけもまた自身のイメージを介して伝説のイマジンをぶりぶりざえもんへと昇華させたと言う訳だ。

それはそれ、シロが用意したシンオウベルトの力も加わっていると彼は説明する。

彼がしんのすけと契約していないにも関わらず実体化しているのは、シロが改造したデンオウベルトの効果であると。

それは協力するイマジンを実体化させる事ができる機能が備わっていると言う訳だった。

まあ色々と難しい話を抜きして、要はつまりしんのすけの思い描く救いのヒーローである彼が、シンオウベルトの力によって具現したと言う訳だ。

 

 

「ここは任せろ。小悪党共など、私一人で十分だ」

 

「おお! カッコいいぞぶりぶりざえもん!!」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

 

和織達は仮にも魔化魍幹部の実力者、いくらなんでも一人じゃ危険だと。

しかしぶりぶりざえもんは凛とした態度で大丈夫だと口にした。

彼の姿に似合わずセクシーで威圧感のある声がいやに説得力がある。

 

 

「まずは状況を見定める事が大事なのだ。それが勝利に繋がる道しるべになる」

 

「な、なるほど」

 

 

言っている事は間違いない。

ぶりぶりざえもんは戦闘の状況を早速観察していた。

和織達の前には無数の強化型戦闘員、そしてそれにやられている電王。

彼はなんとかして戦闘員を抑えようとするが、墨姫の銃弾や和織の風、カマキリ男の鎖鎌に邪魔されて攻撃ができない状況だった。

フォーゼもレーダーを構えてみているだけ、なにやら美月たちと会話をしている様だが――

 

 

(あれはきっと逃げる準備をしているに違いない)

 

 

ぶりぶりざえもんは頷くと刀を構えて歩き出す。

小さな体であるにも関わらず、なんだか凄まじい覇気を伴っている様にも思えた。

彼は一歩、また一歩と和織達に向かって足を進めていく。その様子に怯えや恐怖、焦りは欠片とて感じられなかった。

なるほど、やはり見た目で判断してはいけなかったか、ゼロノスは心の中でもう一度彼に謝罪を行った。

 

 

「ん?」

 

 

別方向から近づいてくるぶりぶりざえもんに気づいた和織。

彼は刀を構えてニヤニヤと彼を一蹴する。なんだと思えば見るからに弱そうな奴が近づいて来た物だと。

人間の姿ではない事に加え、見たことが無いと言う事は電王側の者なのだろうが、全く覇気が感じられないときた。

 

 

「なんだぁ、お前」

 

「救いのヒーロー、ぶりぶりざえもん」

 

 

無駄な言葉は要らない。

そう言うが如く彼は腰についている刀を抜いて構えた。

面白いじゃないか、電王は墨姫に任せておけば余裕そうだし、彼は刀を構えてぶりぶりざえもんに剣先を向ける。

刀のリーチは一目瞭然、体格もまた然り。この圧倒的に不利な状況、しかし相変わらずぶりぶりざえもんに焦りの表情は無い。

 

 

「「………」」

 

 

刀を向け合い沈黙する両者。

素人の目には分からないが、きっと彼らの間には既に何度となくつばぜり合いが続けられている事だろう。

そう、ゼロノスは信じて疑わなかった。しかしだ、いざ時間が動けば、誰も予想していなかった展開が姿を見せる。

 

 

「………」

 

「っ?」

 

 

ゆっくりと、それはゆっくりと時間が進んだ。

先に動いたのはぶりぶりざえもんの方だった、彼はゆっくりと足を旋回させて体をターンしていく。

刀を構えたまま、体勢は同じで顔の向きはゼロノスの方へと。なんだ? 何か仕掛けて来るのか!?

集中する和織、そしてぶりぶりざえもんは刀を握る手に力を込めた。

来る――ッ! 背を向けているぶりぶりざえもんだが、それはきっと何か裏がある筈。和織も目を細めて刀を握る手に力を込めた。

 

 

「さあ、どこからでもかかって来い! ゼロノス共!」

 

「「「………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!?

 

 

「は!?」

 

 

ゼロノスをはじめとしたそこにいる全員が目を白くしてぶりぶりざえもんを見ただろう。

と言うか和織も汗を浮かべて彼を見ている。コイツ何言ってんだ? 何言ってんだコイツ、何かの冗談なのか!?

そこにいる人間が皆同じ様な事を考えると言う状況まで作ってみせる。

一瞬と呆気に取られていたゼロノス達だが、何も難しい話ではない、ぶりぶりざえもんはただ今の戦況を分析した結果、和織達に付くと言う判断を選んだだけ!

 

 

「う、裏切るの!?」

 

「ひでーよ豚さん! そういう人だったのねムキーッ!!」

 

「皆頑張ってるのに!!」

 

「最低クル!!」

 

「見損なったぞぶりぶりざえもん!!」

 

 

ゼロノス、助手、やよい、キャンディ、しんのすけとそこにいる全員が彼の行動を一勢非難ってなもんだ。

ワーワーと喚き散らす一同を一蹴する様にして鼻を鳴らすぶりぶりざえもん。

これ以上うるさくするとケツの●見せるぞ! と言う低俗な一声で女子達としんのすけを何とか黙らせる。

 

 

「黙れ。私は常に、強い者の味方だ」

 

 

さあ、やっちまいましょう兄貴。

和織の方をむいて蹄でサムズアップをするぶりぶりざえもん。いや蹄なんだからサムズアップなのかは知らないが。

そして当の和織もどうリアクションしていいか分からずに唸る。しかしすぐにニヤリと口だけの笑みを浮かべた。

味方が増えるのはいい事なのだろうが、こんな奴そもそもいらないと言うか。

 

 

「お兄さんは、お友達を見捨てる子は嫌いだなァ!!」

 

 

ポカンと気持ちの良い音を上げて和織の蹴りがぶりぶりざえもんを吹き飛ばす。

コロコロと転がってゼロノス達の下へ帰ってくる彼。しかしそこにいたのは味方ではなく敵と、いや鬼と変わり果てたゼロノスさん達。

 

 

「………」

 

 

ムクリと立ち上がったぶりぶりざえもんは、ふぅとため息を一つ。

そして、無駄に良い声で一言。

 

 

「ほら、殴るなら殴れよ」

 

 

げ ん

こ つ

 

 

「―――」

 

「……何やってんの?」

 

 

たんこぶを作ってうつ伏せに倒れているぶりぶりざえもんを見て、流石のしんのすけも呆れ顔で汗を浮かべていた。

しかしいつまでもそんなワチャワチャとしている時間は無かった。今は戦闘中なのだ、和織もぶりぶりざえもんを通してしんのすけ達の姿を発見する。

何もしてこないと言う事に加えて電王を優先して狙っていたが、今の電王ならば墨姫とカマキリ男だけで十分かと。

もちろんゼロノスも実力者として魔化魍の情報にはカウントされている。ココは彼女を狙うのも悪くは無いか、和織は刀を手でクルンと回すと足をゼロノスの方向へと進めていく。

 

 

「チッ!」

 

 

やるしかないか。

ゼロノスは一同を後ろに下げてゼロガッシャーを構えて姿勢を低く落とす。

できればやよい達がいるから戦いには参加したくなかったが、こうなってしまうのか。

 

 

「デネブ、やよいちゃん達をお願い」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 

デネブを実体化させてやよい達の守護を任せたゼロノス。

彼女はもう一度やよいとキャンディに、危険な目にあわせて申し訳ないと謝罪を行った。

それに対して首を振って気にしていないとやよい、むしろ彼女はコンパクトを落としてしまった自分に対してモヤモヤを抱いている様だ。

 

そう言えばとゼロノスは思う。

キャンディと言う不思議な生き物の正体は何だかんだと聞いていない。

彼女はやけにこの光景に冷静だ、気の弱そうな彼女が殺し合いとも言えるだろう戦闘を見れば臆するのは当然と思っていたし、最悪パニックを起こすのかもとまで。

ただやはり、彼女は少し怯えているような顔はすれど、どこかまだ余裕に近い物を感じてしまう。

 

 

「ぶりぶりざえもん! オラ達も行くぞ!!」

 

「分かっている。私はいつでもオーケーだ」

 

「………」

 

 

心配だなぁ、呆れた目のシロを前にしてぶりぶりざえもんはしんのすけの体に憑依する。

しかしと言っても、モモタロスの様に体を操る事は無い。それは彼がしんのすけに戦闘を一任すると言うまあなんとも人任せなスタンスが故であろう。

しんのすけはシンオウベルトを装着するとホウホウと眉を上下させる。基本的にはシンオウベルトはデンオウベルトと同じ構造、彼は四つあるスイッチの一番上が肌色になっている事に気づく。

これはぶりぶりざえもんの色だ、他の三つのスイッチは"今は"無色だが、一番上だけは色がついている。それはきっと彼がしんのすけの中にいると言う証明なのだろう。

しんのすけは良太郎の変身を見ていたため、自分もスムーズにパスをベルトへと通過させた。

 

 

「へんしん!」

 

 

光に包まれたしんのすけ。

シンオウベルトが彼のオーラを増幅させてアーマーを形成させる。

シロの言ったとおりオーラーの量がしっかりと一人分ある為、先ほどはむき出しだった彼のお尻もしっかりとアーマーで隠されていた(何故か肌色で意味深ではあるが)。

さらにしん王はベルトに四つついているボタンの内、ぶりぶりざえもんに対応している肌色のボタンをタッチする。

するとお尻を叩く様な軽快な音が鳴り響いた、そしてベルトから放たれる電子音。

 

 

『BURIBURI・FORM』

 

 

しん王の周りに追加のオーラーアーマーが出現。

装着されてしん王はプラットフォームから先ほどのしん王ブリブリフォームへと変身を完了させた。

先ほどと違っている点と言えば、やはりお尻がちゃんと隠されている点。そしてベルト中央が豚の鼻のギミックではなく、ちゃんとシンオウベルトその物と言う事か。

 

 

「オラ、参上!」

 

 

ポーズを決めるしん王を見てギョッと表情を変えた和織、どうやら思い出したく無い記憶が蘇った様だ。

さらにそこで感じる光、見れば遠くに赤い光を漏らした砲口が。

目に入った武器は和織とてどの様な攻撃が来るのか分かると言う物、彼は舌打ちを行うと一度風を見に纏わせて大ジャンプを。

 

 

「「「!!」」」

 

 

そして衝撃と震動。

激しい音が一同の耳を貫けば、電王達に襲い掛かる強化型を弾き飛ばす閃光が。

赤い光のレーザーは群がっていた戦闘員を弾き飛ばすと和織が立っていた場所を通過する。

つまりはレーザー砲、だが驚くべきは不意打ちで発動された物であるが、それにしっかりと戦闘員達は反応しており、いち早く退避行動を取っていたと言う事だ。

同じくして回避している和織達、けれどもレーザーの衝撃波はしっかりと届いており、戦闘員達はバランスを崩して倒れる事に。

 

 

「なんだぁ?」

 

 

電王がその方向を見ると、そこには胸に大きなキャノン砲を抱えているバースが見えた。

キャノン砲は廃熱作業を行っており、蒸気の中にバースは腰を落として戦闘員達を睨んでいる。

 

 

「ほう、なかなか筋がある」

 

「ふふ、どうもです」

 

 

レーダーを確認しながら頷くフォーゼ。

マオにバースを任せた彼は、ブレストキャノンを装備した状態で放たれる必殺技のブレストキャノンシュートを発動させた訳だ。

巨大なレーザーを放つ技だが、何ゆえ自身を砲台とする故の問題も感じるというもの。

以前博士自身が変身して色々と試したのだが、彼はブレストキャノンシュートの衝撃に耐えられずレーザーをまっすぐ放つ事はできなかった。

我夢に変身させた時にもデータは収集したが、彼は寝た状態でシュートを使用していた。立ち状態ではどうにもレーザーを同じ軌道上に発射し続けるのが難しく、改良の価値があるのかもとは思っていたが、今現在マオはしっかりと立って同じ場所にレーザーを照射し続けていた。

ただの子供かと思っていたが、才能があるのか、もしかしたら経験があるのか。どうやらもう少しデーターを収集する必要があるのかもしれない。

 

 

「自由に動いてくれていいが、あまりブレストキャノンは使いすぎないように。エネルギーは有限だぞ」

 

「了解です。ま、ワイに任せて下さい」

 

「それは頼もしい――」

 

 

チラリと横を見るフォーゼ。

そこにはムスッとした表情で戦闘員達を睨む美月が立っていた。

そんな彼女を纏う明確な変化、先ほどはアブソリュートアサインによってバースドライバーを装備されていた彼女だが、今は別のドライバーが彼女の腰には巻かれていた。

黒と青を基調とした物で、中心には何か球体の様な物がある様な――?

 

 

「使い方はさっき大まかに教えた通りだが、問題は?」

 

「無いわ。好きに動いていいのよね」

 

「もちろん。できれば胸を揺らしてくれ」

 

「殴るよ」

 

「ごめんなさい」

 

 

ふぅと息を吐くと同時に、一陣の風が美月の髪とスカートを揺らす。

大きく露出した彼女の長い素脚は、美しい肌の色を強調するだけでなく、筋肉質の太腿を強調させるかの様だった。

それは彼女が鍛えた証、格闘技に手を出しているからこそ、負けっぱなしじゃ収まりがつかないって物だろう。

博士は既に彼女に素質を見出しており、だからこそ実験としてそのドライバーを与えた。

思えば防御用にとバースに変身させたらば、自身が強化されたと知るやいなやで敵に殴りかかって行った。

そして蹴りの仕方、構えのフォルム、スカートからチラチラと見える脚からは鍛えている事が容易に想像できた。

だからこその闘争心、これは仕えるとフォーゼは睨んでいたのだ。彼がある設計図を元に新たに作り上げた四本目のドライバー。

 

 

「僕もテストは何度か行って人体に影響は無い事は立証済みだ、好きなだけ暴れたまえ」

 

「何だっていいわ。あいつ等をぶっ飛ばせるんならね」

 

 

これは都合がいいとフォーゼ。

時間を掛けて作ってみたは良いが、なにぶんバトルスタイルが自分とは合わない事を悟り、産廃とでも言えばいいのか?

要するに作って見たは良いが使わずに腐らせていたドライバー。美月の様なインファイターは願ってもみない逸材だ。

 

 

「フ――ッ!」

 

 

美月は手に持っていたスイッチをドライバーへとセットする。

するとジョインジョインジョイン! とスクラッチな電子音が。

これで起動準備は整った、同時に倒れていた戦闘員達も再び起き上がった所。

敵の視線を一勢に感じながら、美月は尚も敵を睨みながらドライバー上部に付いているレバーを入れた。するとドライバーから新たな電子音が。

 

 

『メテオ! レディ?』

 

 

左右の手を伸ばしてそれぞれ対になる様に旋回させ一つの円を描いた美月。

両腕が交差した所で彼女はその言葉を叫ぶ!

 

 

「変身!」

 

 

そのまま彼女はメテオドライバー横にある青い球体状のレバーを叩く様に入れる。

すると軽快な電子音と共に彼女の体が青い球体となって空に舞い上がった!

なんだ? 呆気に取られる和織達、そしてその前に立ちはだかる戦闘員を蹴散らす様に青い球体、その流星が縦横無尽にフィールドを駆け抜ける。

青い流れ星は戦闘員を蹴散らして一気に和織の元へと突進していった。

 

 

「ッ!!」

 

 

そして和織の目の前で弾ける青。

流星の中から姿を現したのはフォーゼ、バース、プロトバースに次ぐ新たなる新星!

基礎となる黒のスーツにはラメが備わっており、それはまさに星空をイメージした物。

さらに偶然にも美月のイメージカラーと同じく青の装甲が装備されていた。

全体的にアシンメトリーのデザインであるのだが、その最もな特徴と言えば頭部、つまり仮面のデザインだ。

モチーフである流れ星、流星をイメージしたソレ。残光をイメージした部分は三つの尖った角の様な物で表されている。

 

 

「ハァッ!!」

 

「!」

 

 

繰り出されるミドルキック。

和織は刀を盾にし、刃部分を脚に合わせる事でカウンターを狙った。

さらに風を蹴りの勢いを殺す様に発生させる事で、威力と軽減しようと言うのだ。

この一瞬の間に行われるカウンターを込めた防御、その判断力は流石は魔化魍幹部と言う所か。

しかし、その脚は風が吹いていないのではないかと和織に錯覚させるほど真っ直ぐだった。

勢いは微塵も変わらない、刃が待っていると言うのに何の躊躇いも迷いも無く彼女の脚は突き抜けていく。

 

 

「――ッ」

 

 

は? 和織は思わず口に出す。

刀を持った手に凄まじい衝撃が襲い掛かったと思えば、盾としていた刀が彼女の蹴りで粉砕されている。

そしてそのまま脚は胴体へと命中、和織の呼吸が止まり、彼の足は地面から離れる事に。

 

 

「ウォオオォオォォオオ!?」

 

 

肩から地面に倒れた和織はそのままゴロゴロとしばらく地面を転がって苦痛の声を上げた。

誰もが皆呆気に取られる中で、フムと声を少し高くしてうなるフォーゼ。

やはり武闘派に任せるのが一番だった、蹴りの威力は見るからにフォーゼを超えている。

動きやすさを重視し、装備を最小にする事で軽量化、繰り出される連続攻撃は変身者によって大きく左右されるスペック!

 

 

「仮面ライダーメテオ。試作段階にしては上出来だな」

 

 

流星の名を持つライダー、それこそが美月が変身したメテオだ。

彼女は脚を引き戻し地面へドンとつけると、大ショッカー達に見せ付ける様にして構えを取った。

 

 

 




☆エピナビ☆

・仮面ライダーフォーゼ

2011年9月4日から2012年8月26日にかけて放送された平成仮面ライダーシリーズ第13作にして、仮面ライダー生誕40周年記念作品だ。
シリーズ初の学園ドラマで、この学校の生徒全員と友達になると宣言する如月弦太朗を中心に宇宙と友情をテーマにした物語が進んでいくぞ!

この作品では科学技術が発達した世界に住んでいる零月結弦が変身するぞ。
まだ中学生くらいの男の子だけど、その態度は随分と偉そうで利己的なんだ。
いろいろな物を自身のラボで作っていて、フォーゼの他にバース、プロトバース、メテオのドライバーを作り上げたぞ!

ちなみにフォーゼの脚本家とクレヨンしんちゃんの作者は深い交流があり、それもあってかフォーゼとしんちゃんもまた、正式にコラボを果しているぞ。
加えて前者はしんちゃんの最新映画の脚本も担当しているんだ!


………

スーパーヒーロージェネレーション欲しいんですけど、ディケイドが出てないのが残念です。
まあアイツ出すってなるとカメンライド分のモデリング作らないといけないってのが足を引っ張ってるんでしょうけどね。

ただティガ、RX、F91の新鮮さとインパクトは魅力的なんですよね。
まあいいや、次はたぶん本編の方に番外編を更新するかも。

ではでは
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