闇影は忍務以外の時は年上にはさん付けし、自分の事は呼び捨てにするように言ってあります。
妖魔討伐の翌日、闇影は真姫に頼んで四国の観光名所を巡っていた。
闇影「すまないな、真姫さん。観光名所を巡るって言ったら、運転手を買って出てくれて。」
真姫「構いませんよ。闇影様に四国の事を知ってもらういい機会ですから。あっ、そろそろ有名なスポットですよ。」
真姫が運転した車が到着し、車から降りた2人は崖へと向かっていく。
真姫「ここは夕日と朝日がとてもキレイに見える、絶景ポイントなんですよ。」
闇影「へぇ〜、それは凄いな。ん?」
真姫「どうしました?あれは……。」
真姫オススメの絶景ポイントへ向かっていると、2人の目の前に思い詰めた顔をしたメイドが立っていた。そして……
?「七槻、ごめんね。」
闇影「ずいぶん思い詰めた顔をしているな。」
真姫「何かあったの?」
?「っ!?貴方達は?」
闇影「俺は米花町で私立探偵をしている天宮闇影だ。」
真姫「私は探偵ではないわ。闇影の学校の先輩よ。」
闇影「何があったかは知らないが、話してみないか?話すだけでも、気が楽になるぞ。」
闇影と真姫はメイドの両側に立ち、彼女に何があったのかと、訊ねる。するとメイドはオドオドしながらも、闇影達に話し始める。
?「あ、あの私…水口香奈と申します。この近くの“ラベンダー屋敷”で働いているんです。」
真姫「あのラベンダー屋敷で、ですか?」
闇影「真姫さん、ラベンダー屋敷とは?」
真姫「あっ、闇影が知らないのも当然ですよね。ラベンダー屋敷とはこの近くで、ラベンダーがたくさん植えられている屋敷なんです。なんでも、その屋敷のお嬢様がラベンダーが大好きらしくて。」
闇影「なるほどな。それで、そこで働いてる君は何でこんな所に?」
?→香奈「実は、そのお嬢様が亡くなられたんです。最初は自殺だと警察は言っていたのに、フラリと屋敷に立ち寄った高校生探偵がこれは殺人だと。それで私……事件当時はお嬢様と2人っきりだったので疑われて……連日厳しい取り調べを受けて……私、やってないのに。うっ、うう…(泣)」
真姫「そう、辛かったわね。」
事件の内容を話し始めた香奈は、その時の事を思い出して、涙を流し始める。それを見た真姫は彼女を抱きしめて背中をさすり、落ち着かせる。
闇影「ちなみに、その高校生探偵の名前は?」
香奈「いえ、名乗らずに立ち去ったので……。」
闇影「なるほどな。……。」
真姫「闇影?」
闇影「よし、決めた。そのラベンダー屋敷の事件、俺も調査しよう。」
香奈「えっ!?でっ、でも……。」
香奈の話を聞いた闇影はしばらく考え込むと、自分も事件の調査をすると言い出した。
闇影「最初は自殺だったのに、その後、殺人に変わった。いくら高校生探偵の言葉とは言え、高校生は高校生。恐らく、警察は今回の事件を本当にお嬢様の自殺かと疑っていたんだろう。」
真姫「その時に、その件の高校生探偵が現れて殺人だと警察に進言したと。」
闇影「それが1番危険なんだ。『本当にそうなのだろうか?』と疑っている時に見知らぬ人間とはいえ、それなりの証拠を提示されて『これは殺人だ。』と言われれば、『やっぱりか!!』と思い込んでしまう。」
真姫「ならば、第三者であり私立探偵の闇影がもう一度調査して、自殺か殺人かを明らかにしようという事ね?」
闇影「そういう事だ。ただ、香奈さんをこのまま放っておくのは問題だな。また警察に連れて行かれて、厳しい取り調べを受けかねない。」
真姫「ならば、彼女は私が保護するわ。これでもこの一帯の名士だから、しばらくは警察も寄ってこないわ。」
ラベンダー屋敷の事件の再調査をすると言い出す闇影だが、香奈をこのままにしておけないのでどうするか悩む。すると真姫が彼女を保護すると言い出した。
闇影「それはありがたいですね。よろしくお願いします。」
真姫「任せて。それじゃ、行きましょうか香奈さん。」
香奈「あっ。」
闇影「ん?どうした?」
香奈「実は私、警察の取り調べがキツくて自殺しようとここに来たんです。その事を昨日親友に話したので、もしかしたらここに……。」
そう言った瞬間、香奈の名前を呼びながら駆け寄って来る女性が見え、彼女に抱きついた。
?「香奈ーーー!!」
香奈「七槻!!」
?→七槻「良かった間に合って!!」
闇影「彼女が、君がさっき話していた親友か?」
七槻「えっと、貴方達は?」
闇影「天宮闇影。米花町で私立探偵をしている。」
真姫「私は真姫。闇影の学校の先輩よ。」
七槻「初めまして。私は越水七槻と言います。駆け出しの探偵です。」
香奈「七槻、実はこの人達は私の話を聞いてくれて、それでラベンダー屋敷の事件を再調査してくれるって言ってくれたの。」
七槻「そうなの!?それじゃ、闇影さんでしたよね?私も一緒に連れて行ってくれませんか?」
闇影「もちろんだ。調査するには多くの視点が必要だからな。」
七槻「ありがとうございます!!」
こうして、香奈は真姫に保護され、闇影は七槻を連れてラベンダー屋敷の事件を再調査する事になった。
絶景スポットの駐車場にて
真姫「それじゃ、香奈さんを私の自宅に連れて行くわね。」
闇影「お願いします。」
香奈を乗せた真姫の車はあっという間に見えなくなり、残された2人はこれからどうするか、話し合う事にした。
七槻「これからどうしますか?」
闇影「その前に、もう少し仲間を増やしておきたい。一本電話をかけても良いか?」
七槻「あっ、どうぞ。」
闇影「もしもし、久しぶり。今、どこにいるんだ?へぇー、なら丁度いいな。実は……。」
―数分後
闇影「電話で呼び出した奴がすぐにここに来てくれるから、もう少し待っててくれ。」
七槻「あの〜、いったい誰を呼んだんですか?」
闇影「それは来てからのお楽しみという事で。」
それから数十分後、2人の側にアルファ・ロメオが停車し、中からダンディーな男性が出てきた。
?「よお、闇影久しぶりだな!」
闇影「茂木こそ、久しぶりだな。」
七槻「ええっ!?呼んだ人って……あの名探偵と名高い茂木遥史さんだったんですか!?っていうか、闇影さんって茂木探偵より年下ですよね?何でタメ口なんですか?」
闇影「休暇で外国に行ってた時に、彼がマフィアに囲まれてるのを見つけてな。彼を救出する為に、マフィア達を足腰立たなくしたんだ。」
茂木「それ以降、闇影とはダチでな。ダチならタメ口で話すのは当然だろ?」
七槻「な、なるほど……(汗)」
七槻(っていうか、マフィア相手に足腰立たなくなるほど攻撃した闇影さんって何者なのーー!?)
茂木「さて、ここで立ち話もなんだし。話は車に乗ってからにしようや。」
そう言われて、闇影と七槻は茂木のアルファ・ロメオに乗り込み、茂木は運転席に乗ってエンジンをかけ、走り始める。
茂木「ざっくりと闇影から電話で話は聞いたが、自殺だった事件が殺人に切り替わったんだってな?」
七槻「はい。それで当時、屋敷にお嬢様と2人っきりだった私の親友の香奈が疑われて……。でも、そのお嬢様が自殺した後、私は香奈に頼まれて屋敷に向かって調べたんです。でも、何か細工された跡は無くてこれはお嬢様の自殺に間違いないと……。」
茂木「変な話だよな。何で急に自殺が殺人に……。ん?闇影、何やってんだ?」
闇影「はいはい。そういう事なので、お願いします。あぁ、悪い。小田切刑事部長に連絡していたんだ。『もしかしたら、ラベンダー屋敷の事件を担当している四国の警察は間違った証拠で民間人を追い詰めているかもしれない。第三者目線から事件を調査する為にも力を貸してくれませんか?』ってな。そしたら、快く力を貸してくれたよ。」
茂木「へぇ〜、警視庁にもツテがあんのかよ。スゲェな。」
七槻「一探偵が持つツテにしては大き過ぎるような……(汗)」
闇影「『1人で出来る事なんてたかが知れている。仲間やその周りの人間を頼れ。』が死んだじいさんの口癖だからな。それより、茂木……」
茂木「おうよ!ラベンダー屋敷を担当している警察署に直行だな!」
闇影のツテのおかげでラベンダー屋敷事件の証拠品を見れる事になったので、一行は事件を担当している警察署に向かう事にした。
―警察署・会議室
署員から提出されたラベンダー屋敷事件の証拠品を会議室を借りて見ていく3人。すると、茂木がおかしな物を発見した。
茂木「何だこりゃ?頭が切れたネジ?」
七槻「えっ!?」
闇影「警察が書いた部屋の図面や書類によると、自殺したお嬢様の部屋の窓の1つが、窓枠は接着剤で軽く止めておき、その上にプライヤーで切られた寸足らずなネジの頭をはめ込んだだけになってたみたいだな。」
七槻「そんな!?私が調べた時は絶対にそんな風にはなってませんでした!!窓枠も押して確かめたから、間違いありません!!」
闇影「そもそも、このネジも変だ。半年も野ざらしになってた割には綺麗過ぎる。」
茂木「という事は、嬢ちゃんが調査に来た後に、この細工をした奴がいるってわけか。んじゃ、次はやる事は決まったな。」
闇影「ああ。」
そう言った後、3人は警察署から出ていき、再びアルファ・ロメオに乗ってラベンダー屋敷がある町の隣町へと向かっていた。
七槻「あの、何で隣町に?」
茂木「あの窓枠の細工はやり慣れた奴の仕業だ。なら、他のとこでもやってんじゃねぇかと思ってな。」
その後、隣町に到着した3人は聞き込みを開始すると予想通り、ラベンダー屋敷と同じ細工で空き巣に入られた家がある事が分かったので、次に狙われそうな家を見張る事にした。
するとまたしても予想通り、空き巣犯の槌尾という男が現れたのですかさず茂木と闇影が取り押さえ、警察署へと連れて行き、ラベンダー屋敷の細工も槌尾の仕業だと証明した。
これにより、七槻の親友の香奈の疑いは晴れた。
署長「御三方のおかげでラベンダー屋敷の事件は解決しました。ありがとうございました。」
闇影「別に大した事はしてねぇよ。それより、分かってんだろうな?」
署長「はい。無実の人を連日厳しく取り調べして、精神的に追い詰めた事をキチンと謝罪する為の会見を開きます。」
―その後
七槻「あの茂木さん、闇影さんありがとうございました!!」
闇影「気にするな。無実の人間を助けるのは当然の事だ。」
茂木「それに、まだ全部終わっちゃいねぇからな。」
七槻「終わってないって?」
闇影「自己顕示欲の為に間違った推理をペラペラと警察に話して、君の親友を追い詰めた高校生探偵がまだ誰か判明してないだろ?」
七槻「でも、その高校生探偵はどこの誰か分からないって香奈が……。」
茂木「安心しな。空き巣犯の事を聞き回るのと同時に、その高校生探偵の事も聞き回って似顔絵を作った。」
闇影「どうもそいつは探偵っていうのを甘く考えてるみたいだからな。キツーいお灸を据えてやるさ。」
そう言った後、茂木と闇影は件の高校生探偵を探る為に四国を後にした。
その数週間後、新聞には『ラベンダー屋敷の事件を解決に導いた高校生探偵T.Jは、自己顕示の為に無実の人に罪を着せた。』という見出しと『ラベンダー屋敷を担当した警察署の杜撰な捜査発覚』という見出しが載った。
そして、例の高校生探偵は2度姿を見せなくなったという。
―数ヶ月後・米花町にて
七槻「遂に到着したね米花町!!」
香奈「でも、大丈夫かな?この町って犯罪が物凄く多いらしいけど?」
七槻「大丈夫、私がついてるから。さっ、闇影さんの事務所に行くよ。あの時のお礼を言いにね!」
―闇影の事務所にて
闇影「おや、越水七槻さんに水口香奈さんか。遠路はるばるようこそ。それで今日はどうしたんだ?」
七槻「あの時のお礼を言いに来ました!香奈を助けてくれて、本当にありがとうございました!!」
香奈「ありがとうございました!!」
闇影「あの時も言ったと思うが、当然の事をしたまでだ。気にする必要は無い。だが、七槻さんはお礼を言いに来ただけじゃ無さそうだな?」
七槻「さすがは闇影さんですね。」
そう言うと、七槻はいきなり頭を下げて一言。
七槻「お願いします、私を闇影さんの事務所で雇って下さい!」
闇影「別に俺の所じゃなくても、他に有名な事務所はあるだろう?」
七槻「いえ、闇影さんの人の事を想いながら捜査する姿に感動したんです。闇影さんこそ、私の目指す探偵そのものだって。だから、お願いします!!」
七槻の懸命な言葉に、しばらくどうしようか悩む闇影だったが……
闇影「分かった、雇おう。正直、少し手が足りなくなってきたからな。」
七槻「ありがとうございます!!」
闇影(いつまでもマンションの部屋を事務所代わりにするんじゃなくて、本格的に事務所を構える必要がありそうだな。)
こうして、闇影の探偵事務所に新たに1人、所員が増えたのだった。
オマケ
七槻「ちなみに、この事務所の副所長はどちらに?挨拶したいんですが?」
闇影「ああ。あいつは別の依頼が入ってるからいない。戻ってきたら連絡するから、その時にな。」
香奈「副所長さんって、どんな方ですか?」
闇影「俺より4つ年下で、俺の義妹になるな。だが、洞察力や観察力は高いぞ。」
七槻「そうなんですか!?会うのが楽しみ〜!!」
本当に越水七槻が犯人と分かった時は、「この人が犯人!?そんな!?」と愕然となりましたね。
ですが、この話では自己顕示欲野郎はもう人前に出てこないので、七槻が探偵甲子園を開く事もありません。