ラリーを殺した犯人が分かったアリサは、レッドウッド警部に頼んで容疑者の3人をレストランの更衣室に連れて来てもらった。
レッドウッド「連れてきたよアリサ君。」
アリサ「ありがとうございます、警部。」
リッチー「それで?俺達は何で連れて来られたんだ?」
ティラ「多分、犯人が分かったんじゃない?そうじゃなければ、レストラン関係者しか来れない更衣室に呼ぶはずないし。」
デプレ「そうなんですか、警部さん?」
レッドウッド「ええ。ですが、犯人を突き止めたのは我々警察ではなく、ここにいるアリサ君でしてね。」
レッドウッド警部がアリサを手で示すと、アリサは一礼して話し始める。
アリサ「ご紹介に預かりましたクリス・ヴィンヤードの妹のアリサ・ヴィンヤードです。さて、まずは単刀直入に犯人を名指しさせていただきます。このレストランでラリーさんを殺害した事件の犯人ですが……。」
そう言って、アリサは3人の顔を順番に見た後、ある人物を指さす。
アリサ「貴方ですよね?デプレさん。」
デプレ「っ!!」
リッチー「なっ、何言ってんだよ!?デプレがそんな事するわけ……。」
アリサ「残念ですが、私の推理通りなら犯人はデプレさんになってしまうんですよ。」
ティラ「なら、貴女の推理を聞かせてもらえる?ただし、もし間違ってたら、いくらクリス様の妹といっても出るとこ出るわよ。」
アリサ「良いですよ。」
アリサに指さされたデプレを見て、リッチーは慌てて「そんな事しない」と否定するが、アリサは絶対の自信を持っていた。
それを見たティラは「推理を聞かせろ」と言ってきた。それを了承したアリサは、自分の推理を話し始める。
アリサ「まずは、デプレさんの行動ですが、私達が席に座って料理を決めた後、支配人と一緒に来ました。当然この時は、まだラリーさんは生きてました。」
ティラ「それは私も証言出来るわ。隣で料理作ってたし。」
アリサ「では、いつ殺されたのか。ティラさんなら、分かりますよね?」
いきなり、名指しされて「えっ!?」と驚くティラ。しかし、すぐに顎に手を当てて考える。
ティラ「あっ。もしかして料理長が食材を取りに行った時?」
アリサ「YES。新たに来た客である私達の為に、ラリーさんが食材を取りに行ったのは、レッドウッド警部からもらった貴方達の行動パターンを書いたこの紙にも書いてあります。」
そう言って、レッドウッド警部からもらった紙を見せるアリサ。
アリサ「デプレさんはラリーさんが食材を取りに行くのを見て、後をついて行った。恐らく「手伝いましょうか?」とでも言ったんでしょう。ラリーさんはそれを受け入れた。…貴方に殺されるとも知らずに。」
デプレはアリサの推理を黙って聞き続けている。
アリサ「そして、貴方はラリーさんが後ろを向いた瞬間に用意していた凶器で撲殺。殴られた時の叫び声は、冷凍室の扉の分厚さで聞こえなかったんでしょうね。これが今回の事件の流れですね。」
デプレ「おいおい、ちょっと待ってくれよ。料理長が殺されて警察が来た後に、俺達は身体検査を受け、さらには手荷物検査までしたんだぞ?だが、凶器らしき物は発見されなかった。」
アリサの推理にデプレは、「凶器は見つかってない」と反論するが、アリサは「フッ。」と軽く笑う。
アリサ「残念ですが、凶器は何か既に分かってますよ。」
デプレ「なんだと?」
アリサ「レッドウッド警部から、ラリーさんの頭部にはデコボコの跡があったようです。これが致命傷のようです。」
デプレ「だっ、だから何だよ?」
アリサ「貴方がラリーさん殺害に使った凶器は……「氷」ですよね?」
デプレ「っ!!」
リッチー「氷?氷でどうやって人を殺すんだよ?」
アリサ「もちろん、氷だけでは人を殺せません。ですが、その氷を袋に入れれば、『ブラックジャック』という物に早変わりです。」
アリサは、デプレが使用した凶器を暴くと、それを聞いたデプレの顔が歪む。しかし、彼は再び反論する。
デプレ「だっ、だったら、その凶器になった氷や袋を見せてみろよ!!」
アリサ「犯罪を犯すのに、店の氷や袋を使うわけがありません。ましてや、この店の氷は純氷。溶けるのに最低でも5時間はかかる。」
デプレ「なっ、なら……」
アリサ「だから貴方は、キューブアイスを使用したんですよね?」
デプレ「っ!!」
レッドウッド「キューブアイス?」
ティラ「ファストフード店等で使われる四角い氷よ。」
アリサ「ええ。彼はそのキューブアイスを袋に詰めて、ラリーさんを殴り殺し、その後はトイレにでも捨てたんでしょう。キューブアイスなら1時間〜2時間程で溶けて無くなりますから。」
デプレは自分が使った氷の種類を当てられ、動揺するがアリサは容赦しない。
アリサ「もちろん、キューブアイスを作ったのは自分の家で。それを溶けないようにドライアイスを入れたナップサック等に入れて、店に持ってきた。違う?」
デプレ「かっ、仮にあんたの言う通りだとしても、凶器である氷はもう溶けてないんだろ!?なら、俺が犯人という証拠は……」
アリサ「ありますよ。」
デプレ「何だと!?」
アリサ「私、言いましたよね?『犯罪を犯すのに、店の氷や袋を使うわけがありません。』って。その袋が貴方が犯人だという証拠になるんですよ。」
デプレ「っ!!」
レッドウッド「しかしアリサ君。その袋を既に捨てられていたら……」
アリサ「あり得ませんよ。事件が起きてから、まだ3時間半しか経ってないんですよ?しかも、彼はすぐに容疑者になった。なら、袋を捨てに行く時間は無かったので今も所持しています。」
レッドウッド「なんと!!なら、もう一度身体検査すれば……」
デプレ「やりたければやれよ!!だがな、もし出てこなかったら警察とお前を訴えるぞ!!」
レッドウッド警部が再び身体検査しようとすると、デプレは声を荒げて、「もし、凶器が出てこなかったら訴える」と叫んだ。
それを聞いたレッドウッドはたじろぐが、アリサは涼しい顔で一言。
アリサ「残念ながら、私が訴えられる事はありませんよ。なぜなら、キューブアイスを詰めた袋は………貴方が履いている『靴下』よ!!」
デプレ「っ!!!」
アリサ「貴方は家で作ったキューブアイスを店に持ってきた後、隙を見てキューブアイスを店内に持ち込み、靴下に入れて冷凍室に隠した。その後、ラリーさんが冷凍室に入ったのを見て手伝いを申し出て、隙をついて隠してた凶器を取り出してラリーさんを撲殺した。違う?」
デプレ「そっ、そんなの……お前の憶測で……。」
アリサ「なら今、貴方が履いている靴下を調べてもらう?きっと血液反応が出るわよ。その血液がラリーさんのDNAと一致したら、言い逃れは出来ないわよ。」
デプレ「〜〜〜〜っ!!」
アリサの言葉にデプレは反論出来ず、その場に膝から崩れ落ちた。するとリッチーとティラがデプレに駆け寄る。
リッチー「おい、デプレ?何で料理長を?やっぱり普段からバカにされてたからか?」
デプレ「そんな理由で殺さないさ。」
ティラ「なら、何で?」
デプレ「2人には話した事があるだろ?俺の夢を。」
2人に「なぜ料理長を殺した」と問われ、デプレはポツポツと語り始めた。
リッチー「ああ。確か『どこにもない自分のオリジナルの料理を作って、店を出したい。』だったか?」
ティラ「その目標の為に、毎日仕事終わりにこっそり試作品作ってたわね。時々、私達に味見を頼んでたし。」
デプレ「その夢が、もう少しのところで叶いかけてたんだ。」
リッチー「そうなのかよ!?」
デプレ「3週間前に来て、俺が対応した客がとある三ツ星レストランの料理長でな。俺が料理をサーブした時に俺の手を見て、『君の手は良い料理人の手だな。もし、可能なら君の料理を食べさせてけれないか?』って言ってくれたんだ。俺にとっては願ってもないチャンスだった!!」
ティラ「それで、閉店後にその人に料理を振る舞ったの?」
デプレ「ああ。その日、料理長はさっさと帰ったから、何の気兼ね無くその人に料理を振る舞ったさ。そしたらその人……」
回想
三ツ星レストランの料理長『うん!素晴らしい!やはり、私の目に狂いは無かった!!』
デプレ『ありがとうございます!』
三ツ星レストランの料理長『君、良かったら私の店で働かないか?』
デプレ『ありがたい話ですが、私には自分の店を持つという夢がありますので……』
すると料理長は顎に手当てて、考え込む。
三ツ星レストランの料理長『うむ。なら、君の夢の後押しをさせてくれないか?』
デプレ『えっ?』
三ツ星レストランの料理長『これほどの腕を持つ料理人は久々に見た。どうだろうか?店を持つまで、いろいろと入り用だろう?その全てを私が持とうじゃないか。』
デプレ『いっ、良いんですか!?』
三ツ星レストランの料理長『もちろんだとも!』
デプレ『よっ、よろしくお願いします!!』
そう言ってデプレは、三ツ星レストランの料理長の手を握り、頭を下げる。
回想終了
デプレ「これで俺も店を持てる。そう思って歓喜した。だが……(ギリッ!)」
デプレはギリッ!と歯ぎしりして、目を血走らせながら叫ぶ。
デプレ「だが、あのヤロウ!!裏から手を回して、その話を潰しやがったんだ!!」
ティラ「何ですって!?」
リッチー「マジかよ!?」
デプレ「あのヤロウは、俺が自分より上にいくのが許せなかったんだ!!奴の下らないプライドせいで、俺の夢を…未来を潰されたんだ!!」
すると、アリサがデプレの前に立つ。
アリサ「確かにラリーさんがやった事は、ひどいわ。けど、貴方も彼に負けず劣らずひどい事をしてるじゃない。」
デプレ「なに?」
アリサ「貴方がこの店で殺人を犯したせいで、この先、この店に足を運ぶ客は少なくなるわ。下手したら、閉店するかもしれない。この店の未来を無くしてしまうかもしれないのよ。」
デプレ「あっ…」
アリサ「夢を潰された時、諦めるんじゃなくてもう一度奮起してれば、何か変わってたかもね?」
デプレ「あっ…あああ…。うっ、うわぁぁぁぁぁぁっ!!(泣)」
アリサの言葉に、何かが切れたデプレは目から大量の涙を流す。
推理終了後
アリサ「疲れたわ。」
クリス「お疲れ様。」
レッドウッド警部「いやぁ〜、アリサ君!ありがとう!君のおかげでクビは免れそうだよ。」
アリサ「どういたしまして。」
レッドウッド警部「それじゃ、私はこれで。お母様にもよろしく言っといてくれ。」
そう言って、レッドウッド警部はパトカーに乗って、署へ向かった。
クリス「それじゃ、私達も帰りましょうか。」
アリサ「ええ。早くシャワー浴びて寝たい。」