「……黄金夜叉!」
――またその呼び方かぁ…
秘境の中に駆けつけたアギトはまたも行秋から妙ちくりんな呼び方をされ仮面の下で微妙な顔をした…、優先すべきは敵対心を露わにしている目の前の亀だろう。
『アギト、今度コソ地ノ底へ沈メテクレル!』
「…」
「黄金夜叉、ここは一度手を貸していただきたい!」
一度は事実上の敗北を期した相手。だけど、今回は違う。
共闘をもちかける行秋に返答せず、オルタリングの右側面を叩くとバックル部分が光輝き剣の柄が現れる。今度こそ霧散せず引き抜くとアギトのクロスホーンを模した片刃の剣『フレイムセイバー』が露わになった。同時に剣士を彷彿させる右肩と胴体赤い装甲に変化したアギトは火の粉を散らし、『フレイムフォーム』へとさらなる変身。
すごい…衝撃の形態変化に行秋は息を呑む。
(姿や武器だけじゃない、扱う元素まで変わっている!)
この世界の神の目を持つ人間…神ですらあっても対応する元素は原則はひとつだけ。例えば、火の神の目を持つ者が氷元素のチカラを扱うのは不可能に近いのだが…それを戦況によって容易く複数の元素を使い分けるなんて。
『グルルルル…シャァァ!』
だが、それがどうした?
そう言わんばかりに地中に潜るトータスロード・金。いくら姿形が変わろうがまた地下に沈めてしまえば手も足も出まい…
対するアギトはフレイムセイバーを腰を落としながら居合いのように構え、静かに感覚を研ぎ澄ます……
……聞こえる。 地を掘削し、ゴゴゴゴと足元を進む音が。
「…」
一度深く潜り、気配を絶とうとしているようだ。海亀が大海を泳ぐが如くに自在な動きと速さ…恐らく、タイミングを見計らい地面から飛び出して引きずりこむつもりだろう。無論、わかっていて同じ手をくらうアギトではない。
カチッと力を込めるとフレイムセイバーの唾の翼が6枚羽に展開し、刀身に炎を迸らせる……
……まだだ
――ゴゴゴゴゴ…
……まだ ……まだ
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
『グルアァ!!』
「!」
そこッ! 背後からトータスロード・金が取び出すタイミングに合わせてフレイムセイバーは炎の三日月を描き、堅牢か甲羅を切り裂いた。炎熱を帯びた一閃の傷口は深く、命に………まだ届かない! 思わぬカウンターを受けながらもまだ敵は耐えていた。
ならばとアギトは即座に刺突の構えをとり、切っ先を勢いよく傷口に捩じ込む。ズブリと一番脆くなった場所へ深々と刃は沈みこみ、城壁が如き護りを貫く。
『グ…ォォ…オオ…!?』
「ハァァァァァ……」
終わりだ。アギトは赤熱し輝くと、フレイムセイバーを通して高熱を流し込たれたトータスロードは悶え悲鳴をあげるが逃げられない。数秒後、光輪を頭上に光らせながら怪人は爆散し中に注ぎこまれた熱エネルギーが炸裂…爆風に冒険者たちは転倒やよろめいたり、生き残っていたトータスロード・銀はその隙を逃すまいと一目散に逃げ出した。仲間の死より、自分の命が惜しいということか。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「……すごい。」
行秋は戦いの一部始終に感嘆していた。
アギトの戦いを見るのは2度目になるが、驚くことが多すぎる……
「黄金夜叉、待ってください!」
「…?」
剣をシャッと振るい立ち去ろうとしたアギトは呼びとめた。その行為に周囲の冒険者たちはぎょっとしたが、キラキラと輝く少年の瞳をアギトは無視をせずに立ち止まり振り向いた。得体の知れない輩にヒヤヒヤする周囲を尻目に行秋は頭を垂れる。
「助太刀に感謝を… 僕たちだけではあの状況は…」
「…………………黄金夜叉じゃないよ。」
――え?
「俺はアギト……『仮面ライダーアギト』。その変な呼び方じゃなくて、こっちで呼んで。
あと、怪人は俺に任せてくれ。普通の人間じゃ歯がたたないよ?」
『それじゃあね』と困惑する彼を残し、ひとっ飛びでアギトは秘境を立ち去った。ただただ茫然とする冒険者たちと見送る行秋…果たして、彼は何者なのか?どうして自分たちを助けるのか? なにもわからない…わからないけども……
「仮面ライダーアギト………か。また何処かで出会うかもしれないね。」
★ ★ ★ ★ ★ ★
『ヌゥゥ゙ゥ゙! オノレ、アギトォ!』
―――このまま手ぶらでは帰れない。
トータスロード・銀はみっともなく敗走し竹林を駆ける。今、アギトと冒険者から受けた傷が大きすぎるため地中に逃げることは出来ないが、おめおめと逃げ帰ったところで敗者に立場などありはしない。
せめて、せめて……1人でも『アギトに値する存在』を殺せれば………
『ムッ!』
その時、竹林を抜けた先の川…男女が話し合っているのが見えた。合いびきか、何かは知らないが炎と岩の凄まじい常人離れした力を感じる。
「これで、『契約』は果たしたわ。本当に私の炎を耐えるどころか吸収するなんて……」
「言ったはずだ。彼は……」
間抜けめ! すり潰してくれ…………
『ア… ガ… ァ……』
数秒後、怪人は地に伏し甲羅に幾本もの『岩』の柱を突き立てられていた。
――な、なぜだ? ロード怪人である自分がたかが人間ごときに手も足も出ないわけがない。なのに、どうして自分は自慢の甲羅をぶち抜かれて縫い留められているのだ?
破壊されたプライドが尚も現実の理解を拒み、そんな哀れな怪人を見下しながら青年……鍾離が歩いてくる。
「貴様もゆくゆく運が無い。よりにもよって、俺達が居る方向に逃げなければまだ長生き出来たものを…」
『まあ、手間は省けたが…』と腕を組み一言。
狩る側が一転、狩られる側に。獲物へと成り下った亀を淑女はまじまじと眺められ…溜め息をつかれた。
「これがアンノウン? 実物ははじめて見るけど…本当に醜いわね。」
『人…間…風情ガッ!』
ふざけやがって! …滲み出た怒りの言葉だが、これを聞いた途端にケラケラと笑う淑女。何がおかしいか理解できないトータスロード・銀…
「あら、アンタはわからないの? 神罰殺人なんて宣う割におつむはヒルチャールとそう大差ないのかしら?」
「…淑女、コイツの処理は俺が行う。君は下がっていると良い。」
鍾離は前に出る。――すると、夜空に一点の光…
「怪人、璃月に仇なす魔であろうと自分の命を奪う者の名前を聞きたいだろう?」
―――光は大きくなる… あれはほうき星…
「俺の名前は鍾離。璃月の葬儀屋・往生堂の客卿にして……」
―――そして、ほうき星はまっすぐこちらに…
「……しがないただの『凡人』さ。」
直後、隕石の落下で巨大な爆発が起こる。草木をふっとばす爆風は地形すら変え、本当にただの人間なら立っていることすら叶わないだろう。されど、彼は爆心地の程近く…ついさっきまでトータスロード・銀が縫いつけられた場所で悠然と立っている。
「――そんな『凡人』がいてたまるものか。」
思わず毒づく淑女。
彼女の一言で今回の物語は一旦、幕を引く…
往生堂の期待の大型新人、その正体を知るのはほんの一握り。
ホシノのプロフィール
★戦闘スタイルについて
→仲間にギルスって仮面ライダーがいたんだけど、その人から『パワーファイト寄りですね』って言われたことがあるんだよねぇ。もしかして、脳筋って言われてる?
★黄金夜叉について
→や、夜叉ってこの世界だとヒーローみたいな扱いなの!?俺としては悪くて強い妖怪の代表みたいなイメージだったのに……もしかして、変な呼び方とか言ったのまずかった?
★鍾離について
→先生が俺を引き取る手続きをしてくれたんだけど…もしかして、アギトだって気がついてる?う〜ん、あの人何者なんだろう? 胡桃さんも何かはぐらかすし…甘雨さんなら何か知ってるかも!(※なお、なにも知らない模様。)
★仮面ライダーについて
→???『仮面ライダーは世界や個人によって意味合いは様々だ。星野ショウイチ、彼にとっては生き方であり、プライドであり、人の証明であり、受け継いだ呪縛であり、――彼自身を孤独にするものだ。』
次回はストームフォーム回を予定…。世界観的にG3系統のライダーが回想以外で出しづらい…
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