どうやってもショウの漢字が出てこねえんだよー!?
だからカタカナ表記になっているのは許して…
降魔大聖……呼びやすい名のひとつは『ショウ』と言う。
岩王帝君により遥か古の時代から璃月の守護を任された夜叉の一人であり、人の繁栄を見守り多くの魔を討ち祓ってきた。
――そんな彼が例えファデュイであっても、人間に手をあげることは無いはずなのだが
「…観念しろ、貴様等がいくら抗ったところで無駄だ。」
「ハァ… ハァ…!」
ショウは槍を地面に這いつくばる雷蛍術師へ向ける。
鋭い視線は容赦はしないと鬼気迫るもので、勢いからして彼女の勢いを奪いかねないと思わせた。
しかし、そこへ荷車を飛び降りたホシノが割って入る。荷車は制止しようとした胡桃を乗せてあっという間に遠くへ逃げてしまい、男ふたりが対峙する形となった。
「やめろ! なんでこんなことをするんだ!?」
「退け。―――む、貴様は…」
ショウはホシノを見て少し驚いた様子。面識は無いはずだが…
とにかく、いくらファデュイのメンバーと言っても女性が一方的に攻撃されているのを見て見ぬ振りは出来ないとホシノはオルタリングを腹に出現させ身構えた。
「変身!」
そして、基本形態をすっ飛ばしてアギト・フレイムフォームに変身。しかし、握るフレイムセイバーは逆刃で構えられ…ショウはその姿勢に目を細める。
「なんだ、手加減のつもりか?」
「傷つけたくない。退いてください。」
ほう? 仮にも夜叉相手に加減とは……余程腕に自信があるのか、はたまたとんでも無い間抜けなのか。本人は至って真面目そうだが……ふむ。
「まあ良いだろう。夜叉を騙るほどの実力、どれ程か見せてもらおうか。」
★ ★ ★ ★ ★ ★
さて、逆刃の構えなどしていたアギト……やはり、人間の姿ををした存在に真っ向から斬りかかるなんて気が引けるのだ(※なお、某・闇の力とかいうクソ神は除く)
………なんて考えが早々に笑えないほどの甘えだったと悟る。
「…ぬっ うっ!?」
速いっ!?ショウの繰り出す槍はまさに疾風が如く素早く、鋭い。逆刃持ちのフレイムセイバーで受け流しきれるような生易しいものではなくゴリゴリと体幹を削られ、情けなくモタモタしているとギャン!と剣は頭上を舞っていた。
迫る一突。その時、アギトの懐からジャックンが飛びだし割って入る!
『ええい、何をしているショウイチ!』
「ジャックン!?」
「!? 貴殿…」
ジャックンは即座に岩元素を結晶化した盾を張り、ショウの槍を止めた。猛烈な攻勢はその僅かな一瞬だけ止まり、そのタイミングを逃すまいとアギトはもう1本のフレイムセイバーをオルタリングから召喚しカウンターの一振り…後ろに跳んでかわされてしまうが間合いをとることには成功した。これで、なんとか仕切り直しが出来そうだ。
『ショウイチ、あれは夜叉だ。貴様とは年季も格も段違いな相手、手加減なんぞ出来る相手では無い!』
「や、夜叉…? 本物!?」
もう少し早く教えて欲しかったが…
とにかく、真正面から戦うのは無謀の極み……
「なら、全力叩きこんで無力化します!」
『…は?』
――殴れとは言ってないぞ?
ジャックンの真意を他所にアギトは落ちてきたフレイムセイバーをキャッチして二刀流。速さが持ち味なら手数の勝負、話も加減も出来ないのなら己の全霊をもって話をしたくなるまで叩きのめす。これが星野ショウイチというアギトである。正義のヒーローとは一体…
相対するショウも構え直す。今度こそ真っ当な勝負になるはず…
「…はっ!」
「フッ!」
『おい、バカ止まらんか!? ええい…!』
もう仙霊如きでは止められない。アギトの双剣乱舞とショウの槍の連撃が激しくぶつかりあい火花を散らす! 両者譲らず、実力はほぼ互角…退かず譲らず……
「むんっ!」
「!」
打ち合いから暫し、均衡を崩しに出たのはアギト。ショウの槍をフレイムセイバー2本で挟みこむ形で封じるとクロスホーン状の鍔を展開…炎の刃でジリジリと力を込めていく。狙いはショウの動きを封じたまま槍を破壊してしまおうということか……
――だが
「甘いな。」
「!?」
あえてショウは退くどころか風元素を纏い対抗する。つまり、炎元素と風元素がぶつかりあう形になれば当然ながら元素反応が起こり、拡散による爆発でアギトはふっとばされ近くの岩に叩きつけられてしまう。
「かはっ!? …ぐ、うっ……」
『いかん! ショウイチ、しっかりしろ!!』
想定外の大ダメージに呻くアギト。ジャックンが助け起こそうとするが、それよりも早くトドメを刺そうとする影が迫る!
『ショウイチ!』
「!」
眼前に滑り込む矛先! そして…
――ガッ!!
★ ★ ★ ★ ★ ★
「さて、ここまでだな。」
ふぅ…と冷めたようなショウの発言。彼の矛先はアギトの頭を逸れて、その後ろの岩に突き刺さっていた。アレがまともに顔面に入っていたら頭蓋が砕けるまでいかなくても、眼球が粉砕されて失明くらいはしていたかもしれない。
一方、アギトのフレイムセイバーもショウの腹ギリギリのところで刃が寸止めされる形になっており、お互いに下手に動けば大怪我は免れないだろう。
このような形になったのは、ショウもやはり最初からアギトを手に掛けるつもりなんて毛頭に無かったから……そして、背中を晒せば間違いなく『奴』が喰いついてくると判断していたから。
「アァァ…ギィ…トォォ!!!!」
その時、いきなり2人へ飛びかかってくる雷蛍術師。されど、ショウは焦ることなく札を取り出すと奇声をあげる彼女の顔面に投げつけた。すると、顔面に叩きつけられるや否や弱った蝿のように雷蛍術師は悶え苦しみ身体から『何か』が分離する。
引き剥がされたソレは怪人……黒い虫の異形にアギトはそれがアントロードだと気がついた。
「他者に憑依することで探知から逃れるとは…ヒルチャールとは比べ物にならない知性と性質だな。」
『グルルルル…』
人間への憑依…行使する者は少ないがロード怪人に備わる能力のひとつ。これは例え奴等への探知能力に特化したアギトとて見破ることは簡単ではない。
つまり、ショウは最初から雷蛍術師からアントロードを引き剥がそうとしていただけで図らずも邪魔をしてしまったということか。
『シャアッ!』
結果、不意打ちの失敗をしたアントロード。このままでは分が悪いと一目散に跳躍して逃走…アギトは『待て!』と追おうとするが、ショウが引き留める。
「あれは我が追う。貴様はそこの倒れている女を望舒旅館へ連れて行け。」
「ちょ…!」
そのまま雷蛍術師を押し付ける形でショウは去ってしまった。
自分も後を追いたいのは山々だが、ぐったりと地面に倒れる彼女を放置することが出来ず抱き上げたアギトは望舒旅館を目指す。
「ああもう……こういう時、バイクがあればなぁ。」
……つくづく、仮面ライダーの名折れな展開である。
★解説
ショウが雷蛍術師と戦っていたのは憑依していたアントロードを引き剥がすため。ホシノはこれを誤解する形で交戦してしまった。
ロード怪人の憑依はアギトや仙人ですら探知を困難にし、これが璃月の神罰殺人にて後手後手にまわってしまった原因である。しかし、本来なら憑依は上位のエルロード怪人くらいしか行わないはずだが…?