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『クククッ、少々イレギュラーこそあれど、事は順調に進んでいるなぁ。』
『…』
コイツ大丈夫だろうか。湖をはさんで遠巻きに望舒旅館の戦況を眺めるクイーン・アントロードは隣でキャッキャと興奮するアビスの魔術師に一抹の不安を覚えた。『これがうまくいけばワタシのアビス教団での地位も…』などうんたらかんたらと頭悪そうにボヤいているあたり、恐らくコイツは末端…最悪、捨て駒か。
魔術師と言うだけあって、ヒルチャールに比べてまだマシな知性こそはあるようだが品性に関してはまあ良い勝負だろう。
……それにしても、あのアギト。前の世界から続く因縁だが、よくあれだけ人間に裏切りられてもまだ護ろうという思考に至るのが不思議でならない。――『奴と同じアギト』でさえ、人間を見限ったというのに。
『頃合いだ! ヒルチャール部隊、前に出ろ!!』
『…』
まあ良い。恐らく、今日が怨敵最後の日なのは違いないのだから。
★ ★ ★ ★ ★ ★
『『『『yaaaa!!!』』』』
「…何!?」
突然の雄叫びにアギトが振り向くと望舒旅館から湖を跨ぐ両側の橋から大量のヒルチャールが進軍してくる様子が目に入った。棍棒やボウガン持ち、果ては大盾を構える巨大な暴徒まで大から小まで様々な怪物の津波が押し寄せる。
一方、アントロードたちは全く彼等を気にする様子もなく、他の人間を襲っておりヒルチャールもまた見向きもしない。
(まさか、協力しているのか!?)
アギトはヒルチャールについて詳しくはないが、創作でよく聞いたゴブリンのような人間とは共生出来ないものとは認知はしている。対しロード怪人も人間と共生不可能なのは同じだが、まさか手を組むとは思いもしなかった。
数の暴力にさらなる物量。まともに戦えるのはアギトとカタリナだけでさらなる消耗を強いられる。このままでは…
「…くっ!」
アギトはフレイムセイバーの鍔を展開し刀身に炎を纏わせる。こうなったら、強引にでも一網打尽にするしかない…腰を低く落とし振り抜く居合い。放つは眼前の全てを薙ぎ払う炎月の斬撃、灼熱が弧を描き、アントロードとヒルチャール軍団を灼き尽くす……
『yaaaa!!』
「なに!?」
……ことはない。飛び出してきた暴徒の岩壁をそのまま切り出したであろう大盾が炎の勢いを殺す。
必殺の一撃は呆気なく砕け散り、バラバラと飛び散った火の粉が望舒旅館へ燃え移る。焦った一撃を逆手にとられ、流石のアギトも冷静ではいられない。
「火が…!」
『余所見とは良い度胸だなアギト?』
「!」
その隙をついて飛んできた氷の魔力弾。覆らない勝ちを見込んだのか、不意打ちしてきたのはアビスの魔術師。アギトの身体を凍結させ自由を奪うとそこへ追い打ちにヒルチャール暴徒の岩盤盾タックルが直撃し、弾き飛ばされたアギトは変身解除まではいかなったものの地面に叩きつけられた衝撃で基本形態のグランドフォームまで戻ってしまう。
「が… は……」
『今だ!全力で叩き潰せぇ!!』
『『『『『yaaaaaa!!!!』』』』』
「!」
同時にアビスの魔術師の号令によって一斉に飛びかかるヒルチャールの軍団。態勢を崩したアギトを袋叩きにする気だ。
絶体絶命、覆う異形の影に為す術無く……
「―――おいおい君の実力はそんなもんじゃないだろ?」
否。何処からともなく飛んできた水の矢がヒルチャールたちを塵と化し…聞き覚えがある青年の声が近づいてくる。アビスの魔術師は『何奴!?』と身構え、アギトは『げぇ!?』と腰を抜かす。それもそのはず、今一番に距離をとらなきゃいけない相手がニコニコとやってくればそうなるもの……
「ファデュイの執行官としてではなく、君の親愛なる友人・タルタリヤとして助太刀してあげようじゃないか…アギトくん?」
…友人?どの口で言っているのか。北国銀行での扱いを忘れたわけではない…というより、そのせいで望舒旅館まで来る羽目になったのだから。ただ、文句を言えば即ちホシノ自身がアギトであると認めることになるのでここはグッと堪える。
すると、タルタリヤも何かを察したのかポケットをゴソゴソして何かを取り出しアギトに投げ渡す。
「これ、使いなよ。君の欠けたチカラを取り戻すのに役立つ筈さ。」
「…?」
なんだこれ…アギトがキャッチしたそれは神の目に似てるものの、黒くて禍々しいデザインのアイテム。翠の元素の光を宿すからには風元素は何かしら関係あるのだろうが……そう言えば、まだ失われたチカラも『風』だった。
『なんだ、氷の女皇の邪眼か。そんなもの使えばタダで済むはずが……』
なんかアビスの魔術師がフラグっぽいことを言っている。折角だ、回収させてもらおうじゃないか。
アギトは邪眼なる縁起が悪そうなソレをバキッと握り潰すと、芳醇に溢れ出る風元素がオルタリングを刺激し風を司る青の光を灯させた。つまり、それは喪失したチカラの奪還。
ならば!アギトは再び立ち上がるとオルタリングの左側のスイッチを叩き、バックルの賢者の石から溢れ出る光から金色と青に彩られた神秘の薙刀『ストームハルバード』を取り出す。同時に胴体と左肩が青く形態変化し身軽そうな『仮面ライダーアギト・ストームフォーム』となる。
『な、なにィィ!?!?』
「お? 青くなった!」
絵に描いたような狼狽ぶりのアビスの魔術師と嬉々とした笑みのタルタリヤ。
アギトからしても思わぬ形で取り戻した風のチカラ、この状況を打開するには最適解だろう。
「ムンッ!」
『くっ! ええい、ヒルチャールに怪人ども、やってしまえ!!』
再び襲いかかるヒルチャールとアントロードの群れ…しかし、今度は数の暴力に屈しはしない。アギトはストームハルバードを振り回し、力強くブンブンと唸りをあげる黄金の刃は神威に足る暴風を巻き起こし異形の群に牙を剥く。
『ya!? yaaaa!?』
『グエェ…!?』
小さいヒルチャール、そしてアントロードは一溜りもなく吹き飛ばされ…ヒルチャール暴徒はなんとか自らと大盾の重量で押し進もうとするが、タルタリヤの狙撃がそれを許さない。水の矢が無防備な足許を射抜き、バランスを崩した巨体が同胞を潰して大地に沈む。
呆気なく崩れた軍団…アビスの魔術師はこれには悲鳴をあげずにいられない。
『な、ナニをしているのだ貴様ら!?』
「ハァァ……」
『ヒッ!?』
足がもつれた敵、畳みかけるなら今ッ!
アギトはストームハルバードの刃を起こし、鋭い爪のような形態にすると大地を蹴り一気に間合いを詰める。寸前でアビスの魔術師はワープし逃走したものの、残された怪人たちに為す術などなく金色の刃が無慈悲に乱舞する。
「ハアアッ!!」
『『『『ギャァァァ!?』』』』
『『『『yaaaa!?!?』』』』
切り裂かれる異形たち。数秒後、爆発四散…その全てが塵と化した。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「おぉりゃあああ!!」
胡桃と幽霊フルスイングにより、館内に侵入した怪人ども叩き出され中の安全は確保された。
やれやれ、なんでこんなことに…こっちは営業に来たのであって怪人をしばきに来たわけではないのだが。取り敢えず、守っていた支配人に感謝されながら一息…そうだ、ホシノの無事を確認しないと。そんな簡単にくたばるタマではないはず…
「……んん??」
テラスから見下ろすとホシノと……どうしてタルタリヤがここに?
★ ★ ★ ★ ★ ★
「――取り敢えず、今のところはファデュイとして君に手出しすることはしないと約束するよ。ホシノ・ショウイチとしても、ね。」
タルタリヤからの言葉。願ってもないものだが、突然の態度に訝しげな顔をとるホシノ……正体が事実上、バレてしまったとはいえここで追求を止める意図が読めない。
「どういう風の吹き回しですか?」
「いやね、君と全力で戦うより下手に干渉しないほうが俺達の利益になると判断しただけさ。まあ別にどうしても相手をして欲しいって言うなら…リクエストに答えても良いけど?」
損得勘定。冷たい単語に疑念は晴れないが、これ以上踏み込もうものならかえって藪蛇だろう。ホシノとしても人間の相手はまっぴらごめんなので、詮索はしないことにした。
「俺は人間とは戦いたくありません。――だから、誰も傷つけないでください。」
「それは確約できないなぁ。なんせ俺、ファデュイだからね。」
そして、タルタリヤは手を振り去っていく。カタリナも去り際にホシノへ視線を送り、その後を追う。口にはしないが、感謝はしているということか。
取り敢えず、一件落着…と言うには望舒旅館に被害が出過ぎてしまったが、これ以上はホシノや往生堂が出る幕ではない。それだけではない、アンノウンたちがアビス教団と手を組んだとなれば…これまでのように戦い続けるのは厳しくなるだろう。基本3形態のチカラが戻ったとはいえ、油断は禁物。
「―――もっと、強くならないと…」
これ以上、失わないために。
これ以上、裏切られないために。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「あ、あの公子様…僭越ながら、あの男を放っておいてよかったのですか?」
「ん〜?」
カタリナからの質問。まあそうリアクションをとられるのも無理もない、ファデュイの執行官でありながら自他共に認めるバトルジャンキーである彼がみすみすアギトという特異な存在を野放しにするなんてある意味では正気を疑われても仕方ないだろう。
そんな理屈をタルタリヤ自身も理解したのか『あぁ…』と溜め息をついて語りだす。
「いやね、助言をもらったのさ…『彼と戦うのはまだ早い』ってね。」
★ ★ ★ ★ ★ ★
時は遡り数時間前
……
「―――つまり、鍾離先生はホシノくんがアギトだって認めるわけだ。」
「そう受け取ってもらって構わない。」
新月軒……会食の最中、タルタリヤは鍾離から事実を明かされる。
本人が何としても隠したい事柄を平然と教え、逆に欲した側のタルタリヤが正直なところ面食らっていた。そして、あえて教える意図を汲み取れずいたのである。
「良いの先生? それなら、俺なんかじゃなくて千岩軍やあの七星の秘書官とかに教えたほうが良かったんじゃない?」
「教えたところでむしろ、事態は悪化するだろう。今、七星と千岩軍は度重なる失態で冷静さを欠いている…ホシノくんが今の彼等に心を開くとは到底思えん。」
「…自分で言うのも難だけど、俺のほうがよっぽど信用してくれないと思うよ?」
この人、どうも感覚がズレているんだよなぁ。まあ、そんな人間でなければファデュイの執行官と仲良くしたいとは思わないか。
気を取り直し、タルタリヤは幾度目かの確認を鍾離にとる。
「先生、今のホシノくんが俺より弱いとしても…アギトは利用価値がある。その正体は政治的な駆け引きにも充分たりうる材料だと思うんだけど…」
「何度も言うが、今の彼は折れた剣…あと一息で鉄屑になりかけている寸前でなんとか踏み留まっているに過ぎない。
七星もその有り様を知れば『思ったより価値が無かった』と切り捨てるだけだろう。そうなれば、今度こそホシノ君は壊れる。」
七星ってそんなにドライなんだろうか。切ったはった騙して笑ってのファデュイである自分が思うのはまた変な話でもあるが、仮にも璃月を守ってきたアギトに随分とまた辛辣な。
というより、ホシノがそこまで壊れかけ硝子細工みたいなメンタルとか信じられないのだが…彼が笑顔で料理両手に甘雨を追いかけ回しているのは割と有名なのだけれども……
じゃあ、となれば浮かぶ疑問。
「…でもさ、そんな彼を拾ったのは他ならない先生じゃない?そんな壊れ物をまたどうして…?」
そう、ホシノを往生堂に迎えたのは辛辣な批評をする鍾離自身。例えアギトだと分かっていたとしてもそんな人間をなぜ受け入れたのだろう。
すると、鍾離はスッと目を閉じ語る。
「ホシノ君の受けた傷は人から受けた『裏切りの傷』だ。その傷みが戦いに駆り立てている……それは独りで背負うにはあまりに深く重い。
しかし、傷みを癒せるのはまた同じく『人のチカラ』だろう。
人の暖かさが彼を立ち直らせた時、彼は間違いなく璃月を…引いてはこのテイワットに降りかかる厄災を祓う光となる。
――俺は信じているのさ、人間のチカラを。
――『友』が交わした『契約』を。」
★ ★ ★ ★ ★ ★
(な〜んか、テキトーに勢いではぐらかされたケド。ま、弱い奴ボコッても後味が悪いしまあ良いか!)
「公子様?」
「気にしなくて良いさ。強くなったらその時、戦えば良いってコト。じっくり待たせてもらうよ。」
解らないことは深く考えない! これに限る。
璃月港に続く道……夕暮れがタルタリヤの不敵な笑みを照らす。
口には出さずとも、ろくでもない上司に目をつけられたホシノに同情を禁じえないカタリナであった…
★次回予告
ホシノ「往生堂をクビって聞いてないですよ!」
胡桃「人間なんて、いつかは皆死ぬのにね…」
――ホシノ、まさかの窮地!?
刻晴「黒い…アギト?」
G4「…」
――迫る過去、それは逃れられない。
ショウ「人はそこまで弱くはない。」
G3−X「アギトがそんな信用に足る存在だとでも?」
ホシノ「そうですよね、アギトなんて要らないですよね…」
――崩れる心、その先は
――再び目覚めろ、その魂!
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試しに次回予告っぽいものつくりました。
次はG4とG3−Xが出ますヨ!(※あと新しい原神側のキャラも) お楽しみに!