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今回は同じホシノと同じ時間軸のテイワットで活躍する別ライダー編ということで龍騎編です。それではどうぞ!
暖炉を飛びだした火の粉 Ⅰ
「俺以外にも仮面ライダーっているんですか!?」
新月軒にホシノの声が響く。
話を切り出したタルタリヤもまさか立ち上がるまで食いつくなんて夢にも思っておらず、無作法に白い目を向ける客と店主に『ごめんね〜』と軽く手をあわせながら慌てホシノを宥めて席に座らせる。
一方、鍾離先生は何処吹く風と茶を啜っていた。その隣で『はぁ…』と淑女が溜め息をつく…
異色な4人からなる組み合わせ。タルタリヤ主催で組まれたこの会食の場はアビス教団による璃月港襲撃を退けた立役者アギトを労うためのもの……というのは建前の情報収集の場。だったのだが……
「それって、俺以外のアギト……いや、もしかしてギルス…それともクウガ!? まさかブラックさ…」
「まあまあ落ち着いて……ね?(まさかこんな食いつくなんて思わなかったな…)」
取り敢えず、対話のカードにタルタリヤが選んだのはテイワットに存在する『ホシノ以外の仮面ライダー』の話。軽いシャブのつもりが、まあ凄い食いつきようで予想外で面食らってしまったが、気を取り直して本題へ。
「やれやれ。話の続きをすると俺達、ファデュイが確認しただけで結構な数がそれぞれの国にいるようでさ。モンド、稲妻、スメール、…そして、フォンテーヌから情報が挙がってる。知りたくないかい?」
「ぜ、是非! お願いします、もしかしたら俺の仲間かも…!」
「あ〜、でも貴重な情報だし? タダというわけには……
―――おっと?」
このまま入れ食いさせて釣り上げようとしたタルタリヤだが、その口は頬を撫でる冷気に遮られる。
招かねざる客の来訪にニヤリと口角を吊り上げたのは淑女。
「これはこれは、天権の秘書官殿。些か、無作法が過ぎるんじゃなくて?」
「それは此方の台詞です。彼は凝光さまの大事な客人、それを……」
「――甘雨さんだぁ〜ァァ!!!」
「…ッッ ホシノさんッ!!」
キリリと凍てつく空気を纏った登場した甘雨…だったが、大量のハートを飛ばしてくるホシノに一瞬で融解反応を起こして台無し。じゃれつく犬のように悪気は無いのだろうけどもこれでは格好がつかない…なんて彼女の胸の内を察することなんてするはずもなく『さあ、さあ!』と自分の座っていた席に誘導する始末。
そのまま、あれよあれよと強引に着席させられてしまい、溜め息を洩らす。こんなつもりではないのだが……
「ちょっと、ホシノさん!」
「折角の話だし、甘雨さんも聞きましょう! ね!
――さ、タルタリヤさん…俺以外の『仮面ライダー』の話!」
お構い無しにも程がある。頭を抱える淑女…一応、話の内容は現場のファデュイたちが必死こいて集めてきたものばかりでそう簡単に伝えられるものではない。ましてや、天権の秘書官の前ともなれば尚のこと…
『あのねぇ…!』と苛立ちながら口を開こうとした彼女だったが、それを掌で制止したのはタルタリヤ。
「オーケー、オーケー。なら、とっておきのひとつ。
――正義を司る水神の国・フォンテーヌ…『仮面裁判』とその法と裁きの舞台で踊る仮面ライダーの話をね。」
「仮面裁判? たしか、フォンテーヌの決闘制度を更に昇華させたという…?」
仮面裁判。さっさとこの場を脱することへ脳のリソースを割こうとした甘雨の注意が強く惹かれる単語……
ホシノにとってはちんぷんかんぷんだが、名前の雰囲気的に仮面ライダーとは何かしら関係ありそうではある。
「あのタルタリヤさん、その『仮面裁判』?って何なんです?」
「まあまあ、そう焦らず。ゆっくり話をしようじゃないか…フォンテーヌの仮面ライダー…そして―――」
―――暖炉を飛びだした火の粉の話を
★ ★ ★ ★ ★ ★
水神フォカロルス…愛称・フリーナが治める水の国フォンテーヌ。理念の在り方は『正義』。
テイワットを流れる多くの川の水源である内陸湖によって隔絶される形で独自に都市を築き、草神の国スメールと同じく独自の技術が発展しているのが特徴である。科学と芸術…文明の大きな2つの華が咲き誇るこの国にはある独特なルールがあるのだが…
それは、中心街であるフォンテーヌ邸…更にその中央に建つエピクレシス歌劇場から描こう。
只今、劇場の煌びやかなステージは『裁判』の真っ只中。
演目ではなく、本物の裁判なのだが…観客は皆、傍聴に徹している。
ステージの片方に立つはフォンテーヌの有名な服屋・千織屋を営む稲妻人の少女、『千織』……落ち着きをはらい、粛々と裁判の行く末を見守っている。反対側にはフォンテーヌ人の男…身なりは良いが、遠目にも判るほどイライラして肩にチカラが入っている様子。
ピリピリとした空気……各々がたてた『代理人』がそれぞれ証拠の提出や、異議の申し立てなどを行う。その一通りを頭上の座席から最高審判官であるヌヴィレットと国を治めるフリーナが聞き届ける。
そんな一部始終を後方の座席から見届ける兄妹が一組…
「―――『民事裁判』なのにすごい盛況ぶり。」
「まあ、あの千織屋と因縁の相手との決着がここでつくかもなんだからね。そりゃあ、見逃せないと思う人は多いでしょ。」
妹…リネットは少し呆れたように声を洩らし、兄…リネは苦笑している。本業はマジシャンの2人だが、今回は本業をひとまず置いておき傍聴に来た理由はひとつ。
千織側に立つ若い青年…茶髪オールバックの初々しい新米弁護士に注意を向けている。証拠の掲示、答弁といい、自信と熱を帯びた口調ながらもしっかりと裁判を有利さを保って進めている……まあ…
「――棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)が集めた山のような千織屋や千織個人への嫌がらせや営業妨害の証拠、2人の確執を知る証人、法廷中にも関わらず注意を無視した相手側の威嚇行為…これだけあるなら、わたしでも勝てそう。」
「そう言わずにさ。それにしても、相手側の弁護人には同情しちゃうね。ここからでも判るくらいに顔が土気色になってる。」
事前準備の段階で千織側が圧倒的に有利だったのは事実。というより、裁判をすれば男側が負けるのは周囲の目から見ても必至であったのに千織の『そんなに不満なら法廷で決着をつけましょう』と言い放った一言に頭が血が昇った彼。女々しいプライドの勢いで負け戦に出てしまったのが今回のはじまりである。
そして、始まるや否や、次々と繰り出される証拠・証言に彼等側は沈む泥船といった有様。この場で一番可哀想なのは彼を担当する弁護人だろう。――何か弱みでも握られたのか?
ほんの少しだけ気になるところだが、裁判は双方の最後の意見を述べる場へ。
まずは千織側の青年から……
「――ウーサー側の行為は千織への一方的かつ明確な悪意があり、審議の中でも彼は反省の様子が見られませんでした。よって、千織側はこれまで掲示した29件の営業妨害からくる損害、並びに千織個人が受けた精神的苦痛の賠償…そして、千織屋・千織個人への接近禁止、ウーサー氏へ法による厳粛な裁きを求めます!」
まあ、妥当だろう。観客側も…更には特等席から見下ろすフリーナさえも『うんうん、そうなるよね〜』と頷くほどともはればもう逆転の余地は無いだろう。だが、審判を下すヌヴィレットはどちらに肩入れすることなく厳粛な態度を崩さず、相手側へ耳を傾ける。
「千織屋側の意見は聞き届けた。続いてウーサー氏側の意見を聞こう。」
「はい……」
相手側の弁護人…こちらもまだ若く、栗毛の幼さ残る愛らしい顔立ちだが、これまでの審理からくる疲労の色が窺える。もう自分たちが勝つことが無理なのは明白、故に最後の悪足掻きと溜息をつきながら取り出したのは医師の診断書だった。
「えぇ、先にも掲示したこちらの依頼人であるユーサー氏の診断書、打撲と軽度の骨折…此等は千織本人からの暴力行為による怪我なのは再度、明確に示しておきます。これでユーサー氏もまた店舗運営に影響をきたし、彼女から損害を受けたともとれます。
法に赦されていない暴力による報復行為…つまるところ、お互いに手をあげてしまった状況になってしまった以上は加害者と被害者という一方向の関係は成り立ちません。落ち度はお互いにある……ウーサー氏の行為は確かに目が余る節もありますが、どうか寛大な判決を。」
要約すると…殴りかえしてきたから向こうも悪いよね、喧嘩両成敗。千織からすれば、詭弁を気取った世迷い言以下の戯言だが厳粛な裁判の最中にぶん殴ったりは勿論、御法度なので煮えくり返る怒りを冷たい視線で訴えるだけに留める。
これで、両者の意見は出揃った。判決を下すのはヌヴィレット…
暫し目を閉じて吟味をすると…静かに告げた。
「判決を言い渡す。被告人・ウーサーへは千織屋へ与えた損害の賠償と並んで千織・千織屋への永続的な接近禁止を命じる。もしこれに違反した場合は禁錮刑もありうることを肝に銘じておくように。
そして、原告側・千織屋側はウーサーへの暴力行為についての罰金刑に処す。尚、状況を鑑みて計画的な報復行為とは見られず、あくまでウーサー氏への度重なる嫌がらせに耐えかねた突発的な行為と断定出来ることから、責任はあくまでウーサー氏側にあり、彼への医療費の支払いをする必要は無い。
――私の裁決は以上だ。続いて諭示裁定カーディナルの判断を仰ごう。」
続けて、懐から取り出したカードを座席のスロットに挿し込むヌヴィレット。すると、ステージに聳えるパイプオルガンのような装置・諭示裁定ガーディナルが反応して青く揺らめきながら光る。この装置はフォンテーヌの心臓そのものにして、最高審判官が自己の感情で判決が左右されないよう機械的な判断を下す役割を果たすもの。――最も、過去一度たりとも相違があった試しなど無いのだが。
「…」
さて―― 挿し込んだカードを再び取り出し、書き込まれた内容に目を通す。淡々とした視線の流れはやはり…
「ふむ、カーディナルの判断と相違は無いようだ。――双方、異議が無いようならこれで閉廷となるが…」
審判は覆らず。千織側の弁護人の青年は『よしっ』と小さくガッツポーズをし、千織も『異議なし。』とサッと一言で済ませて幕引き………
「異議ありッ!!この判決は到底、受け入れられない!」
否ッ
納得出来ないと声を荒げたのは被告人・ウーサー。整えた髪を掻き乱し、弁護人が制止する間もなく般若の顔でヌヴィレットに噛みつく。
「努力を積み重ね、成功を収めてきた私が犯罪者だと!?」
「ウーサー、判決に不服のようだが…しかしながらアナタの犯罪の証拠は審議中に列挙されているしその信憑性も高い。残念ながら、過去の功績に関係あらず万人に等しく法は適用される。それがこの国の正義だ。」
「ええい、どうせその情報の出処は棘薔薇の会あたりだろうに! ―――埒があかん、『仮面裁判』で決着をつける!!」
勢いのまた、彼が口にした『仮面裁判』という単語…同時に観客たちにどよめきが起こる。これに対し、すぐにヌヴィレットが『静粛に。』と呼びかけ沈黙を呼び戻すと改めてウーサーへと確認をとる。
「ウーサー氏、仮面裁判は自らの名誉を守るための決闘制度をより昇華させたものだ。もし負ければ、今回の判決より更に重い罪状が科される可能性もあることを理解しておられるか?」
「仕方ないだろ! でなければ、こちらの名誉は守れない!!」
加害者側が名誉などとこれまたおかしな話だが、恐らくは彼がどれだけ自分に都合がよい思考回路をしていようが周囲はもうどうでも良いことを理解している。
相対する千織も諦めと呆れの限りを尽くしな溜息をつき……
「良いでしょう、その仮面裁判とやら…受けて立つ。」
理不尽な挑戦の了承。
すると、ドッと歓声が上がる劇場。もうこうなったら止められない……
満面の微笑みを浮かべるフリーナが立ち上がり、高らかに告げる。
「――両者の代理人、前へ! さあ、ここからは皆のお待ちかねだ! 水神の名の下、仮面裁判の開幕をここに宣言するッ!!」
劇場に踊る罪と罰…… 欲望、業、交錯する人々の思い…
ここはフォンテーヌ、正義の国…
…戦わなければ、為せる正義などありはしない。
裁判の流れはたぶんこんなかんじかなと妄想。でもゲーム本編なら民事裁判だと決闘までいかなさそう。
クロリンデ欲しかったなぁ…
看護師長は…どうしようかなぁ…