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フォンテーヌ編つづきでございます。
―――『仮面裁判』とは?
それは元々フォンテーヌにあった『決闘制度』を更に昇華させたものである。
下された判決に納得がいかない被告人が己の名誉ため命を賭けて戦うというものが決闘制度なのだが、これには幾つもの致命的な問題がある。そのことに統治者であるフリーナは頭を悩ませていた。
フォンテーヌのテイワットの最先端をいく科学力はカーディナルが裁判の際に収集する人々の感情エネルギーに由来するのだが……
「まずい…マズイマズイマズイ! このままだと、そう遠くないうちにエネルギーが枯渇しちゃうじゃないか!?」
執務室に響く悲鳴。渡された報告書はフォンテーヌのエネルギー事情が逼迫していることを連ねており、このままでは都市機能に深刻なダメージを与えかねないことは容易に予想できる内容だった。
どうしてこんなことに? 更に目を通すと…
「…ふむふむ、法整備や警備隊の尽力による治安の安定化によって犯罪率の低下…それに比例して裁判の回数も減少、加えて民衆がエンタメ性より公正・公平を裁判に求めるように意識が変化しつつあることが更に拍車をかけている。」
要は国が安定して発展すればするほど、裁判からエネルギーを獲る機会が無くなり、先細りしていくというわけか……
――ふむふむ…
「誰だい、こんなガバガバのエネルギーシステムを創ったやつ。」
現・水神である。
「ううん、参ったなぁ。やはり、裁判と決闘制度に何かコンテンツとしてテコ入れをしないといけないわけか。」
どうしたら良い?誰もが審判の行く末を注目する凶悪犯罪なんて早々起きないし、民事裁判はまあまあ数があるものの民衆の関心はあまり向かない。しかし、今のフォンテーヌのエネルギー事情を考えれば定期的に注目度の高い裁判か『決闘』を行わなければ国を賄っていくのは厳しいだろう。
「犯罪率が低いのは良いことだけど、どうしたものかな……決闘制度の敷居を下げて…いや、でもそう簡単にはいかないよね。神の目を持つ者と持たない者の格差もあるし、そもそも決闘自体に忌避感を持つ人間もいるくらいだし……」
ううむ、歌劇のように演出を凝るのは難しいのは難しいし……
待てよ?
「―――良いことを思いついたぞ!」
それから、産まれたが決闘制度を発展させた『仮面裁判』。
水神の権能で創造したライダーシステムを使えば誰であろうとも神の目の有無に関わらず対等に戦うことが出来、何よりライダー同士の戦いはド派手で大いに盛り上がり民衆からの評判は好評。その熱狂はフォンテーヌを支えるエネルギーとなり、この功績はフリーナの評判をより強く押し上げることになった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「―――まあ、つまるところ…何事も解決するには『暴力』に限るんだよね!」
ウーサー側の弁護人はその愛らしい童顔とは先までの不健康な顔が嘘のように、不釣り合いな凶暴な笑みを浮かべてカードデッキを取り出す。論で勝てないなら力づく…あまりにも法に携わる人間とは思えない発言に、相対する千織の代理人はドン引きしていた。
「おいアンタ、仮にも弁護士だろ!? そんな発言して良いのかよ!?」
「別に? 弁護士なんて趣味みたいなもんだし…本業は決闘代理人だから。」
決闘代理人以前に、人として大問題とツッコみたいのだが?
そんなこちらの気持ちなんてお構いなしに彼はカードデッキを構え、同時に虚像が重なりVバックルが出現。それにカードデッキをバックルに勢いよく挿し込んだ。
「変身!」
浮き上がる鏡のエフェクトと角を持つ偶蹄類の怪人が飛び回って変身完了。捻れた双角が印象的な『仮面ライダーインペラー』がステージ上でスポットライトと歓声を浴びる。
「さあ、どうする新人クン?? 大人しく降参するなら今のうちだけど? その場合、僕の依頼人の名誉は守られるし、楽なんだよこっちもさ?」
「…ッ」
インペラーからの挑発。口ぶりからして最初から真っ当に裁判でケリをつけるつもりなんてサラサラ無かったんだろう。
しかし、ここで引き下がればどうなる?千織・千織屋は再び被害を受け、今度こそ再起不能になるまで攻撃される可能性もありうるはず…
―――そんなこと、許してなるものか。
「舐めんなよっ! …ふぅぅ、変身!!」
意を決し変身……鏡のエフェクトが炸裂して鉄仮面の仮面ライダー。その名は仮面ライダー龍騎………その青灰色にくすんだブランク体だった。
「は?」
途端に空気が変わる。依頼人である千織は冷静さを崩し目を見開き、観客もどよめいて、フリーナもまさかの事態に困惑して立ち上がる。
「待ち給え! 君ィ、契約モンスターはどうしたんだい!?!?」
「えっと、その…カードを忘れてきたと言いますか、なんと言いますか……」
フォンテーヌの仮面ライダーは契約するミラーモンスターという存在がいてこそ真価を発揮するライダーシステムだ。無契約、もしくは契約カードであるアドベントを紛失した場合はこのブランク体となり、その戦闘力の差はまさに雲泥、天と地。
なお、カードデッキは契約した状態で渡されるのでブランク体なんてまず成り得る筈が本来ならば無い。
今まで余裕を持って見据えていたリネも驚かずにはいられなった。
「シン兄さん!? 忘れるなんてそんな馬鹿な…」
「…」
この時、もう少し落ち着いていれば自分の妹がバツが悪そうにステージから目を背けていることに気がついただろうが、視界がそちらに向くことはなく目まぐるしい展開に釘付けのまま。
周囲が混乱に包まれていく中、笑い転げていたのはインペラー。
「これはこれは驚いた! 契約モンスター無しで変身するってことは戦うつもりってわけだ。そこそこ決闘代理人やってるけどさ、僕も随分と舐められたもんだね。」
言葉は嘲笑の中に微かに怒気が含まれて紡がれる。
されど、龍騎は臆することはない。
「正しいほうが勝つ…つまり、俺が勝つ。何も変わらない。」
「あ? ――これ以上、笑わせるなよ?『正義』ってのは勝者の特権なんだよなァ!!」
とうとう激昂するインペラー。彼からしてみれば馬鹿にされているとしか思えないシュチュエーションだ。
滾る怒りのままダッ!!と鋭い跳躍で一気に迫り、得意の蹴りを見舞いにかかるがこれを龍騎は冷静に身体を反らして回避。更に続くビュンビュンと空気を切るキックの連撃を紙一重で躱し続け、その様相に観客…更にはフリーナすらも歓声をあげ手に汗握る。
「やるじゃないか!アドベントのカードを忘れたと聞いた時はどうなるかと思ったが、楽しませてくれる! 流石、『暖炉を飛びだした火の粉』…クロリンデが推すだけはあるね!」
「…」
一方、フリーナの警護を務めるため後ろに控えていたクロリンデは複雑な表情で戦いの行く末を見守っていたが……
最中、戦いは龍騎がインペラーにクロスカウンターを決めたのを契機に更に加速していく。
「このっ、調子に乗るなよ?」
口許を拭い、インペラーがカードデッキから取り出す1枚のカード…それを右足のバイザーに投げて装填すると電子音声が響いた。
【 ADVENT 】
『『『『シャアァァ!!!』』』』
「!」
そして、飛びだすはガゼル型怪人タイプのミラーモンスター、ギガゼールの群れ…全部で4体。ここでまさかの数の有利をとられ、龍騎に一斉に襲いかかる。
「…う!? ぐっ!?」
「卑怯とか言うなよ。お前は言えた成りの人間じゃないだろ?」
逃げ場がないステージ上でコンビネーションを駆使したリンチによりゴリゴリと削られていく龍騎。このまま終わるのかと観客たちが興奮と悲鳴…諦観でグチャグチャになる視線と一方的な暴力晒されながらも、彼はまだ折れない。ギガゼールの体当たりを受けながらこちらもカードデッキからカードを選び、左手のライドライザーへ滑りこませる。
【 GUARD VENT 】
「ふっ!」
召喚すれはセラミックコーティングのように薄い盾。人間相手なら問題なくても、仮面ライダーやミラーモンスターの相手には心許ないそれを担ぎ上げヒルチャール・暴徒のように突進。先頭のギガゼールを体当たりし、力まかせに押し出すと続けて後方のギガゼールを蹴散らしながら強引にインペラーを目指す。
だが…
「契約モンスターを盾に突っ込む気か。でも残念、ちょうど間引こうと思ってたんだ!」
【 SPIN VENT 】
無慈悲。主たるインペラーはカードを新たなに装填すると、二連装ドリル・ガゼルスタッブを左腕に装着。雄々しき獣の角を磨きあげたようなその武装は容赦なく、肉盾にされたギガゼールごと龍騎を貫き……
………否!
「今だ!」
「なに!?」
すかさず、龍騎はギガゼールと盾ごとドリルに穿たれる寸前にインペラーの懐に滑り込み、彼のカードデッキに手をかけてカードを抜き取った。実に1秒に満たない間に一連の流れをこなし、背後をとるなりその1枚を装填する。
【 COPY VENT 】
選んだのはコピー。文字通り、相手のカード効果をコピーしてしまうカードである。
使用するなり、ガゼルスタッブが龍騎の左腕に装着されてインペラーのガラ空きの背中にドリルの先端が迫っていき…
「おりゃああああ!!!」
「ぐあっ!?」
勢いよく突き上げ。綺麗に空中に打ち上げられたインペラー…その視線は偶然にもフリーナにあい、『え?』と呆けた顔をバッチリ見てしまった。
「やあ、これはどうも……」
「はああァァァァァァ!!!!」
――ドゴッ!!
同時に龍騎のライダーキックが空中で直撃…これがトドメとなり、インペラーは落下。そのまま立ち上がれず変身解除となり、勝敗は決す。
仮面裁判の決着…この審判は顔を険しくしていたヌヴィレットではなく、クロリンデに小突かれて我にかえったフリーナの口から下される。
「勝負あり! 勝者・千織屋側決闘代理人・シン! 仮面ライダー龍騎!! さあ、皆の者喝采を! 持てる者はグラスを手に!」
「――勝った… 勝った?」
観客からの大波のような喝采がステージに押し寄せ、龍騎は肩で息をしながらも笑う……よく見れば、リネとリネットの姿もある。良かった、愛する弟と妹の前で恥をかかなくて済んだ……これで万事解決……
「はは…はははは…… あ。」
否。視線を少しずらした先……顔は笑っているけど、サングラスに隠れた眼は絶対に笑っていない金髪のレディがこちらに手を振っている。そこそこ彼女と付き合いが長いから解る、あれは公衆の場だから押さえているだけで胸に栓された怒りを炸裂させるのを待っているのだ。
「…あー、まずいかも。」
仮面裁判の幕は下りる…… ただ、役者にはまだなお苦難が付き纏う。
今のところ、フォンテーヌが一番に仮面ライダーと融合し原神の原作とかけ離れた様相になっている。モンドや璃月はあくまで漂流者が流れついただけ。ある意味、一番壊れているともとれる。