吹き飛ぶメロピデ要塞へ続く地上ゲート。同時に空中へ飛び出して来るのは巨大なコブラ型のミラーモンスター・ベノスネーカーとそれを相手取るリオセスリ。
『シャアァァァァァ!!』
「クソ、蛇野郎が!」
人間の身体なんぞ簡単に貫通する丸太が如き毒牙が並ぶ大口が呑み込もうと迫り、悪態をつきながらなんとかガントレットで殴りとばして退ける。
ヒルチャールくらいなら一瞬で氷結・粉砕される一撃だがベノスネーカーは軽くビンタされた程度なものらしく、『シュルルルル!』と睨むように舌を鳴らしながら、主の元へ戻っていく。
「爬虫類に低温は御法度だぞ、番犬。」
「筒石(たけいし) ヨシノ!! 重犯罪者の貴様が何故、ミラーモンスターを!?」
粉砕されたゲートから犯罪者たちを引き連れ現れる赤毛の姫君……いや、その解放された凶暴性に着飾る言葉は不適合。法に楯突く無法者たちの女王たる彼女の名は『ヨシノ』…その狂気の華は獲物に逃げられ、苦しげに吠える犬に冷徹な笑みが向けた。
「お前、脳ミソも犬並みなのか? そんなこと決まって……」
「――いたぞ! こっちだ、全員銃を構えろ!」
…ちっ、面倒なのが来た。
顔をしかめたヨシノ。ぞろぞろとやってくるシュヴルーズ率いる特巡隊こそ、自分がメロピデ要塞にぶち込まれてマズい飯を食わされる羽目になった原因のひとつ。まあ、あと最強の決闘代理人だとかいう奴と『取り逃がしたクズ』にハメられたせいでもあるのだが、まあまあ目障りな連中であることには変わりない。
「武器を捨てろ、貴様らは包囲されている! 逃げ場など無い、投降しろ!」
「…」
フン、よくも耳が腐る程聞いたセリフを言ってくれる。
これもある意味『世界共通』というやつか…… なら、こちらも共通の対抗策といこう。
「おい。」
後方に控えてい犯罪者たちに手を挙げ指示をだすヨシノ。すると、彼等は羽交い締めにした看守たちを前へ突き出す……その中にはメロピデ要塞の看護師長を務めるシグウィンの姿も。
途端に特巡隊は浮足だち、リオセスリは額に青筋を立てる。
「…人質とカネはあるに越したことはないってな。」
ヨシノは馬鹿ではない。このパターンで有効な策が『人質』なのは理解していた。相手の動きや策を大きく混乱・制限した上に、こちらは役割分担しても余裕ができる人数なので大して不自由無く有利に相手を攻略出来る。
リオセスリたちにとってこれが最悪な一手なのは言うまでもない。
「貴様らッ!」
「卑劣な真似を!!」
ああ、地団駄を踏む様は胸がスッとするものだが…… しかし、チンタラはしてられない。
あくまで目的は自分が逃げる事のみ。時間をかければ対策を講じられたり、余計な横槍が来ることも……
「――ぐあっ」
「――ぎゃっ!?」
あ? 急に背後からのつむじ風と悲鳴に振り向くヨシノ。
倒れている手下の犯罪者たち、消えている人質。――ああ、くそ遅かったか。
「サプライズ。」
「………犬の次は猫か。」
前に向き直った時にはリオセスリたちの隣に立つリネットの姿が。人質たちもしっかり救出されており、シグウィンがリオセスリに抱きかかえられている他に、捕らわれていた看守たちも息を荒くしながら特巡隊に支えられている。
「大丈夫か、看護師長!?」
「う、うん。」
(目立った外傷は無いみたい。急いで飛び出したけど取りあえずよし…)
たまたま近くにいただけのリネットだが、本当に脱獄なんて騒ぎになっているとは顔には出さないもののびっくりしていた。あのリオセスリを恐れずに来る蛮勇なんぞ正気を疑うし、何よりそんな輩を地上に放つわけにもいかないとすぐに加勢を決めたのである。隠密と風のような高速移動を活かし、見事に形成を逆転してみせたのが今。
さあ、これでヨシノの交渉材料はもう無い。
「さて、最後の警告だ。大人しく投降しろ。」
シュヴルーズの呼びかけは脅しではない。ズラリと向けられる特巡隊の銃口…鋭い眼差しは射殺を厭わないという意思。囚人たちは流石に飛び道具も無く狼狽えるばかり……
「ぼ、ボス!? ど、どうしたら!?」
――バキッ
「ふげっ」
ヨシノはすり寄ってきた囚人を殴りとばすと、その華奢な身体では創造がつかない怪力で彼を特巡隊目掛け放り投げた。すかさず、リオセスリが身を呈して跳躍してキャッチするが、これを敵対行為と見做したシュヴルーズが号令をかける。
「撃てーッ!!」
「! まって!!」
シグウィンの制止も虚しく、弾丸の嵐が囚人たちを襲う。一方の囚人たちも『ええい、畜生!』とやぶれかぶれに突撃するがあっという間に撃ち抜かれて次々と倒れていき、ヨシノはベノスネーカーに自身を包むようにトグロを巻かせてその場を耐える。
銃声と悲鳴…漂ってくる血の臭い。凄惨な光景にリネットは顔をしかめた。今迄にそれなりの場数を潜ってきた身だが、今回は指折りの酷さだ。
「撃ち方やめ! 状況を確認する!」
暫くして……硝煙に包まれた囚人たち。ベノスネーカーの影も無い…
「奴は何処だ?」
辺りを見回すシュヴルーズ。掃射された跡にヨシノはおらず、まだ煙が完全に消えない中で目を凝らし……
「―――オレがミラーモンスターが使える理由が知りたいと言ったな?」
「!?」
その時、ゆらりと人影が立ち上がる。
咽返るような鉄臭い煙から現れるは紫の鎧を纏う毒蛇の化身。
「答えは単純……オレがライダーだからだ。」
彼女の名は『仮面ライダー王蛇』。
正義に仇なし、狂気と混沌をばら撒く最悪の仮面ライダーがフォンテーヌに立つ。
★筒石 ヨシノ(仮面ライダー王蛇)
種族…人間
神の目…なし。
命の星座…なし。
メロピデ要塞に拘束されていた女性・一人称は『オレ』。殺人や恐喝など多々の罪で服役する終身刑の犯罪者。他の囚人や時には看守すら誑して脱獄を試みたり、凶暴性はリオセスリとシグウィンですら手を付けられず例外措置として更正カリキュラムではなく完全にメロピデ要塞の特別独房で自由を奪われていた。
出身地等など謎な点が多い。