原神✕仮面 〜アギト、『契約』の地にて〜   作:ジュンチェ

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盟友 Ⅳ

 

 

 

「うわああああああァ!?」

 

 

 宙を舞い、無妄の丘の切り立つ崖から真っ逆さまに落下するアギト。真下は湖、数秒後にはドポン!という音と共に彼は姿を消した。

 

 …死んだか? 女性は崖の淵から顔を覗かせるが霞がかる水面は視界が悪く何も見えない。ふむ…実に奇妙な相手だった。あの金色の虫みたいな外見もさることながら、最後まで命乞いしかしないままこちらに攻撃ひとつしてこなかった。降魔大聖曰く、『とても注意しなくてはならない相手』とのことだったが……まあ、墓荒らしには相応の報いだろう。

 

 

「―――さて、璃月港はどっちだったか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぶっはぁ!! ゲホッ ゲホッ…」

 

 

 ひどい目にあった…

 その真下、水底からなんとか浮上したホシノ。戦闘のダメージと落下の衝撃で変身解除したが、幸いなことに骨折など大きい怪我は無いのはアギト様々か。痛みを覚えつつも、じゃぶじゃぶと岸辺まで半ば藻掻くようなクロールをしてたどり着き、波に打ち上げられると仰向けになると荒い息で空を見上げた。―――もう夕暮れか。

 

 

「ぜぇ… ぜぇ…… きっつ……」

 

 

 流石に消耗が激しい。陸地にたどり着いたことで緊張の糸が切れたのか意識が遠のいていく……  

 

 

「少し…… 寝よう……」

 

 

 完全に脱力した瞬間、視界は真っ黒な世界へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 ……さて、厄介なことになった。

 

 

 無妄の丘から手短な洞窟の秘境へ逃げた須晶。『細工』はしたとはいえ、ホシノがクロウロードに負けるなんて全く思っていなかった。しかし、突然に現れたあの『仙女』のおかげで今回の目論見は御破算である。

 

 

「あの鳥を捨て駒にしてホシノのヤツと話に持ち込むつもりだったが……どうしたもんか。」

 

 

 アビスと結託した璃月港襲撃は失敗に続いてコレ。『身内』からも不満は上がりだしてる上に『アビスの王子様』も貸してやったG4を壊した上に雲隠れときた。一応、副官とおぼしき綿でも詰まってる毛玉のような魔術師がいるにはいるが、口と態度ばかりでアテにはなるまい。

 悩んでいる間にも璃月港は与えたダメージを回復していく。ある程度たてば、此方へ捜索の手も本格的に伸びてくるだろう。

 

 

「心を挫く…一手が要るな。」

 

 

「―――なら、アタシに任せてみないかい?」

 

 

 すると、物影から女性が現れる。チャイナドレスを思わせる璃月の服装をしているが、彼女もまた須晶と同じテイワットに漂着した『来訪者』である。

 

 

「『小城(おき)』、随分とタイミングが良いな?」

 

「話がしたかったんだよアンタと。なにを神罰殺人なんてチマチマとやってるのが気に入らなくてね。さっさとカチコミ入れたほうが早いだろうに…何をまごついているのさ?」

 

「相変わらず、血の気が多い。単純な暴力じゃあ何も解決しないぞ。」

 

 

 小城と呼ばれた彼女はキリッとした黒髪ショートヘアの容姿は美女の部類と言っても他言ではないが、少しキツめなメイクも相まって表情は血に飢えた獣のようだ。さあ、早く獲物を寄越せと言わんばかりに詰めよってくる。

 

 

「じゃあさ何か算段があるのかいジイサン?」

 

「――ああ。まずその一歩に新しい『異端』を処分する。」

 

 

 そう言って1枚のチラシを渡す須晶。内容は舞台の案内で、添付されていた写真には役者とおぼしき凛々しい少女が映っている。

 

 

「『麒麟仙女』、この舞台は璃月港の復活を象徴する一幕になるって話だ。そして、主演の『雲菫』とかいう小娘は神の眼を持っている。」

 

「……士気高揚の策を逆手にとって神罰殺人を行えば民衆の不安を煽れるってこと?」

 

「そうだ。」

 

 

 そして、その不安は七星への不満に繋がり…やがてはいるかすら分からない魔神モラクス=岩王帝君への不信に繋がるわけか。小城としては陰湿さは気に入らないが、代替案があるわけでも無いのでフンッと鼻を鳴らす。

 

 

「じゃあ、邪魔な奴等の露払いはアタシに任せてもらおうかしら。ここ最近、大人しくしてばかりで暴れ足りないの。」

 

「……程々にな。」

 

 

 話は終わる。立ち去る小城の背中を見送る須晶…ふむ、別に彼女は弱いわけではない。弱いわけではないのだが……

 

 

「どの道、ホシノには勝てん。」

 

 

 獣がいくらイキったところで夜空に煌く星を掴めはしない。

 

 

 

 

 

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