原神✕仮面 〜アギト、『契約』の地にて〜   作:ジュンチェ

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盟友 Ⅹ

 

 

『ほらほらほらほら、どうしたぁ!! 仙人サマのチカラはそんなモンかぁ!!!』

 

「――くっ!?」

 

 

 ミラージュサイズの鎖鎌による苛烈な攻め立てに追いつめられていく申鶴。

 この鎌と重りを鎖で繋いだこの奇怪な武器をテイワットで扱う者はまずいないだろう。技術は要るが、使いこなせば近・中距離は相手を翻弄する変幻自在な戦い方を可能にする。勿論、この武器はアギト由来の召喚物なので攻撃性能はかなり高い。

 

 ブンブンと振り回して牽制する重りと、態勢が崩れるとすかさず斬りつけてくる鎌。この2つを駆使したトリッキーな攻撃に申鶴は苦戦を強いられていた。

 

 

「こんなことをしている場合では…!」

 

 

 更に彼女が思うように動けない理由はもうひとつ。撃墜した凍結状態のクロウロードが徐々に氷を剥がし、再び飛び立たんとしていたからだ。もし空に逃げられてしまえば、璃月港襲撃を止める手立ては無い。

 

 

「ええい!」

 

 

 ここは無理にでも先にクロウロードを仕留める必要だ。

 危険は承知でミラージュサイズから身を翻し、トドメの一撃を加えんと走るが、その背後から鎖鎌の重りが空中を蛇のように駆けるッ!

 

 

『そら、背中がガラ空きだ!』

 

 

 来た。しかし、申鶴の想定のうち。

 シャッ!と迫った重りを身体を捻って紙一重で回避し、飛んできた鎖を掴む。間合いが空いたことで鎖が伸びたことと、彼女が持つ常人離れした握力が為すパワープレイだ。ミラージュサイズもこれには驚き…

 

 

『何ッ!? ――な〜んちゃって!!』

 

 

 否ッ! 焦るどころか、余裕に嘲笑うと複眼を紫に光らせ強力な雷元素の放電を行い反撃。逆に感電によるダメージを与え、動きを止めてみせた。

 

 

「――がっ!?」

 

『そら、これでも喰らいな!』

 

 

 そこから始まる重りを振り回した一方的な滅多打ち。バキッ、ゴキッと獲物を叩きのめす鈍い音、飛び散る血飛沫の音が激しく響き渡り、申鶴は叩き込まれる激痛に歯を食いしばる。

 

 

(これは…流石に…)

 

『頑丈だねぇ?普通の人間なら、とっくにミンチなんだけどっ!』

 

 

 そして、致命の一撃を与えるべく鎌を振り上げるミラージュサイズ。大きく振りかぶったその瞬間を申鶴は見逃さず、蹴りを入れて強引に引き離し間合いを開けた。

 距離はとれた……しかし、ダメージの蓄積は思ったより大きい。全身のあらゆる激痛と出血からして、骨にヒビが入るくらいはいったかもしれない。

 

 

「ハァ… ハァ… 甘雨お姉さまやホシノに大口叩いてこの始末か。」

 

『辛そうじゃないか。すぐに楽にしてやるよ。』

 

 

 もうまともに獲物は動けないと判断したミラージュサイズは鎖鎌の鎖部分を柄へと変形させ、刃を手持ちに適した大きさから容易に首を刈れるくらいの大鎌へと巨大化させた。

 まさに死神といったフォルムに変貌した彼女は、獲物に死を与えるべく姿勢を低く身構える。 ――と、その前に…

 

 

『あー…でも、せめてもの慈悲だ。最期に何か言い遺すことはあるかい?』

 

「…」

 

 

 ――ほう? 情けとは舐められきられたものだ。

 

 修行の身とはいえ、こんな体たらくでは師匠からの叱責は待ったなしだが…つまり、決着を確信した奴は慢心しているということ。ならば、多少なりとも時間稼ぎと細工は出来る。 

 口許の血を腕で拭い、それとなく片手を背後に隠す。

 

 

「優しいことだ。では、訊かせてもらおう。お前は何故に我の邪魔をする? お前もホシノと同じアギトだろう?」

 

『質問しろって意味じゃないんだけどぉ?? こういう時は命乞いか、親とか恋人の名前とかさぁ喚くもんでしょ? 立場わかってる??』

 

「それはすまない。こういった経験は無くてな。」

 

 

 会話に注意を惹かせつつ、隠した片手に氷元素を仕込んだを札を忍ばせる。

 それにしても、獲物を前に舌なめずりとか油断しきっているな…

 

 

『ま、良いや! 『あの御方の兄貴』でありながら裏切った奴の話なんかしたくもないし、お前の首、貰っとくよ!』

 

「!」

 

 

 ――来るッ!

 

 ミラージュサイズが踏み込み、一気に間合いを詰めてきた。一撃で首を刎ねるつもりなのを見定め、札を取り出し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!!!」

 

 

「『!』」

 

 

 突如、頭上から落下攻撃の乱入。

 ミラージュサイズは咄嗟に急ブレーキをかけ、申鶴は自分の前に衝撃波と共に降り立つ『彼女』に目を見開く。

 

 

 

「甘雨お姉さま!?」

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、甘雨さん!俺、用事が出来ちゃて…劇はフーちゃんと一緒に行って下さい!」

 

「は、はい?」

 

 

 時は少し戻り、璃月港。敵を感知したホシノは甘雨との約束を諦めることを選び、チケットを彼女に押し付けるや『それじゃ!』と踵を返して走り去ろうとした。―――したのだが…

 

 

「待って下さい、ホシノさん。」

 

「うぇ!?」

 

 

 ガシッと掴まれる腕。甘雨は逃さなかった…彼女はすぐに事情察したのである。

 

 

「敵が現れたんですね?」

 

「…!」

 

 

 アンノウンが現れた時、ホシノがアギト由来の直感で存在を感知出来ることを彼女は既に知っていた。その直感は使命感にも似た強い衝動を起こし、忌まわしき宿敵の討伐へと駆り立てるのだと。

 加えて、ホシノの図星を突かれた表情が、本人の意思とは裏腹に真実だと雄弁に騙る。

 

 

「甘雨さん…」

 

「凝光さまとの契約がある以上、貴方を止めはしません。――ですから、私も連れて行ってください。」

 

 

 連れていく? アンノウンがいる場所に彼女を?

 脳裏に過ぎるかつて姉を目の前で失った記憶。そんなことを繰り返させるわけには……

 

 

「甘雨さん、俺は…」

 

 

 

 

「――話を聞きなさい。」

 

 

 

 

 その時、ホシノの全身を凄まじい氷の息吹を襲う。そして、アギトとしての目が、甘雨の『もうひとつの一面』を映し出す。

 人よりも遥かに大きく、嵐を孕む雲のように雄々しく青い零度の毛並みを持つ仙獣。かつて、古の時代に起きた魔神戦争を岩王帝君と共に駆け抜けた『麒麟仙女』がそこに座していた。

 

 

「私は帝君から璃月を預かった身。その役割を果たせぬことは、私の存在意義の否定に他なりません。そして、私も貴方と同じく、何よりも璃月の民を護りたいのです。

 お願いです、ホシノさん。私にチカラを貸して頂けないでしょうか?」

 

 

 我、決して庇護される者であらず。国のため、民のために戦う剣であり盾…『守護者』であると。

 

 ああ、そうか。自分はなんて彼女に無礼なことをしていたのだろう…

 

 

「行きましょう、甘雨さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

「はあっ!」

 

『グエェ!?』

 

 

 一閃。炎の一太刀が飛びたとうとしたクロウロードを葬りさり、仮面ライダーアギト・トリニティフォームSpecⅡが立つ。

 これで神罰殺人は行えない…しかし、決して安堵は出来る状況ではなかった。もうひとりの『敵』は明らかに自分と同質でありながら異端なる系譜にして、アンノウンと同じくテイワットに存在してはならない怪物。――『神』を仰ぎ、人と袂を分かったアギトたち。

 

 

「『ミラージュシリーズ』…!」

 

「来たな、裏切り者。」

 

 

 睨むアギトとは対照的に不敵に笑うミラージュサイズ。

 相対するアギト同士……初めて見るホシノ以外にもアギトに甘雨は確認をとる。

 

 

「ホシノさん…あれは……」

 

「俺と同じアギトで、『敵』です。」

 

 

 相容れない、そう言い切ったならばもう容赦は不要。 

 矢をつがえ、ミラージュサイズへ放つ。かつて、魔神戦争を戦い抜いた麒麟仙女の矢は速く鋭く、敵を穿ち弾く暇すら与えない。

 

 

『…ぐっ!?』

 

「はあっ!!」

 

 

 続くはアギト。ストームハルバードを突き出し容赦なく一撃、更にフレイムセイバーで追撃を狙うがこちらは大鎌で防がれる。

 

 

『ナメてくれるなよ!』

 

「!」

 

 

 ミラージュサイズは間合いをとると、大鎌をベルト器官に再収納した同時に両手にナイフが並ぶようなクローと背中には大鎌の先端部を持つ尾が発現。より、人から異形へ近づいた『獣身態』に変化し唸りをあげ襲いかかる。

 フレイムカリバーを力任せにクローで掴み、飛んできた氷矢は尾で弾く。そのまま、アギトの胸をぶち抜……

 

 

「私を忘れるなよ。」

 

『!?』

 

 

 寸前、爪を受け止めたのは申鶴の長柄武器。伊達に仙人の弟子ではないと、力任せにミラージュサイズを押し返すとアギトと並び立つ。

 

 

「ホシノ、すまない…私は……」

 

「話はあと!決めますよ!!」

 

 

 アギトが力強く地面を踏み込むと地面が隆起し、ミラージュサイズの足場を崩してよろめかせる。その隙にフレイムセイバーとストームハルバードを舞うように振るい、敵を呑み込む炎の竜巻を発生させた。下準備は出来た、トドメは彼女たちに任せよう。

 

 

「甘雨さん、申鶴さん!!」

 

「任されました!」

 

「わかった!」

 

 

 甘雨が氷矢を速射。続けて、申鶴が腰を下げ一気に突撃。

 矢を追い抜いてミラージュサイズを貫き、溶解・拡散反応で脆くなったボディが更に射抜かれていくのを背後で感じた。

 直後、悲鳴と憤怒が入り混じった叫びが響く。

 

 

『ぐ…あああぁぁ!? これで終わりだと、思うんじゃないよ!――くぅっ!!?』

 

 

 そして、爆発。重なり過ぎた元素反応によるものだろうか。

 無様な捨て台詞を残し、敵は消えた。

 

 

 

 ―――こうして、前夜祭の平和は護られたのである。

 

 

 

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