メリークリスマス…
ドゥリン引けましたでしょうか?僕はお迎えできませんでした…あーぅ。
もう少しで年末年始、あと一息頑張ります。(不眠)
璃月、迎仙儀式の前夜祭はまだまだ続く。
まず初まりの麒麟仙女の公演が終わると、次は数日に渡る璃月港総出での競り大会が幕を開ける。商人の国と言われるだけあって、テイワット中からありとあらゆる商人や各地の品々がずらりと並び、荒れ狂うような人波とモラの潮流が巻き起こるのだ。
そして、そんな人々の流れの中心には凝光、その隣にはホシノの姿もあった。
「商人の国というのも伊達じゃないでしょう?スメールやフォンテーヌ、モンドといった各国の大商人たちがひしめき合うこんな光景はそう見られるものではないわ。」
凝光が自慢気に言う通り、迎仙儀式を商機と見いだした者たちが様々な品を携えて国境を越えてやって来る。もうテーマパークと言っても他言ではないくらいの活気だが、当のホシノは上の空…
(一昨日のこと、凝光さまには話したけど…今はどう考えているんだろう?)
甘雨と申鶴と共に退けた例のアギト…ミラージュシリーズ。恐らくは自分と同じく、このテイワットに座礁した存在だろうが、どういうわけかアンノウンと行動を共にしていた。アギトとアンノウンは殺し合う存在として本来、相容れないハズ…なのに何故?
一応、すぐに凝光には報告はしたが…『考えさせて頂戴。』と話を持ち帰られて今日に至る。一体、彼女は何を思い、どんな決断を下すのだろうか……
「――ホーシーノーくん?」
「え?あぁ、なんでしょう凝光さま!?」
しまった! 覗き込む凝光の顔に自分が上の空だったことをやっと自覚した。いけない、いけない、今日は『天権の愛人』であることを内外に強く示すという目的があったのを失念していた。
「気になることが多いのはわかるけど、レディの前でそういう態度は感心しないわ。」
いやぁ、仰るとおりで…ハイ。――ごめんなさい。
「貴方には今、『天権の愛人』としてそれ相応の振る舞いが求められることは心して頂戴。
―――それは、それとして、何か欲しいものはある?多少の値が張っても構わないわよ?」
「え、本当ですか!! じゃあ……」
どれにしよう?スメール商人の独特の柄をした布製品、フォンテーヌ商人の機械仕掛けの何かの道具……待って、あれ圧力鍋では!? 往生堂にも底がベコベコに抜けかけたボロ鍋はあるが、もし手に入れれば料理のレパートリーがグッと増え……
――「ホシノく〜ん??いくら、愛人だからって凝光さまにおねだりとかしたら駄目だからね〜??」
「うっ」
そうだ、胡桃からあらかじめ釘を刺されてたんだった…
で、でもこれは引いては往生堂の福利厚生の…あ、通りすがりの高級料理店の店主が買っていっちゃった…トホホ……
「あらあら、その行動を見るに、予め胡堂主に釘を刺されていたみたいね? 別に私としては鍋のひとつやふたつ構わないのだけれど?」
「フーちゃん曰く、俺が何か凝光さまに何か買ってもらうと、往生堂が凝光さまのヒモっていうイメージがつくから駄目ってことらしいです。
真面目だなとは思いますよ…はい。同時にだいぶケチだなって……」
「フフッ、胡堂主らしいわ。」
実際、ホシノが天権の愛人という噂を聞き齧ってやって来てきた下心だけの不届き者を尽く門前払いしているほど徹底している。
真面目さと謙虚さは美徳と言うが…それはそれとして、万年貧乏では元も子もないと思う今日この頃。美徳だけでは腹も財布も膨れやしないのだ。
慎ましいのは胸だけにし…(暴言)
とはいえ、凝光としても連れ回すだけ連れ回して手ぶらで愛人を帰すわけにもいかない。なにかこう、ギリギリ胡桃に怒られないものはないものか…
「――傘〜 傘は如何でござるか〜?」
これは丁度良い。
風呂敷を拡げた上に色とりどりの和傘や笠を並べた露店が目に入る。値段も庶民感覚からしてもそこまで高くない…よしよし。
「そこの傘を頂けないかしら?」
「毎度あり……ええっ!? 天権殿ッ!?!?」
早速、購入を持ちかけると店番をしていた白髪の少年が凝光を見るなり、動転して素っ頓狂な声を出してしまう。無理もない、自分のみすぼらしい傘が、七星である彼女の目に留まるなんて夢にも思わなかったのだから。
慌ただしい少年から客の要望した傘を受け取った凝光はホシノをちょいちょいと手招きすると、傘をさしてスッと肩を寄せた。
「どう?こうしてると、恋人みたいでしょ?」
「――!」
思わず、ドキッとするホシノ。
恐らく、最高の美女とのシュチュエーションは璃月の男なら涙を流すほど羨むだろう。それを唐突に味わうホシノの頬が染まり、心臓が高鳴らずにはいられない……ああ、駄目だ駄目だ、自分には甘雨さんが……
――あ、向こうてタルタリヤさんがこっち見てニヤニヤしてる…
スーっと胸の熱が引いていく。うっかり、視界に入れてしまった北国銀行の怪しげな出店をそそくさに凝光を誘導しながら視界を外す。後は絡まれないうちに離れたほうが良いと懐から財布を取り出した。
「凝光さま、この傘にしましょう!」
「え?いえ、私が払うわ…」
「いえいえ、フーちゃんに怒らちゃいますから!」
早いところ逃げよう。絡まれたら、下手をしたらバトルになったりするかもしれない。最近、北国銀行の門番をしている女隊員が『最近、往生堂の鍾離先生に会えないせいか、執行官さまのフラストレーションが溜まってるのよねぇ。』とかボヤいていたし。
で、話題にされた鍾離先生は有休休暇を取るなり何処かへ姿を消して音沙汰なし。残していたのは『暇な時にタルタリヤの相手をして欲しい』と書かれた恐ろしい書き置きだけ。――勘弁してほしい。
「すみません、これいくらです………」
デェェエエエン!!!
「うええ!?なになに!?!?ああっ!」
唐突に轟く銅鑼の音。この拍子に財布からジャラジャラとモラを零してしまう天権の愛人にあるまじき動きをしてしまうホシノだったが、幸いにも周りは気にせず視線を中央の特設ステージへ。司会らしき男が立っているところからして、何か催し物でも始まるのだろうか?
「あら、そろそろ始まるようね。今回の目玉であるオークションは見応えがあるものになるはずよ。」
オークション? 確かに言われてみれば商人の国の催事となればうってつけだろう。そして、ステージに立つことが許された各国の指折りの商人ともなれば、どんな品が並ぶかなんて想像もつかない。
期待のどよめきに包まれながら、司会の女性がマイクを手に取った。――あ、あの人は凝光さまの直属の秘書のひとりだっけ?
「皆様長らくお待たせいたしました、本日のメインイベントのオークションの開催します。まず、最初の出展者は…」
そして、始まるオークション。まずは一番乗りでやってきたのは太ましい璃月商人…台車に乗せてきた大きな陶器の壺が出品の品だろう。古めかしい木箱も並べて……ああ、そういえば骨董品の類いは収納するセットの箱とかも一緒だと価値が上がるとかどこかで聞いたような?
出展者も、自信があるのか意気揚々と壺の紹介をはじめる。
「この壺は、彼の岩王帝君の寵愛を受けた流派…■■流の流れを汲む……」
成る程、成る程……さっぱり、わからん。
凝光やそこそこ立派な商人なんかは感心した様子で聞き入っているが、知識の無い人間にとっては魔法の呪文と大差が無い。でも、天権の愛人である以上は、腕を組んで頷くくらいして素養があるフリぐらいはしておかないと……
「――無理しなくて良いのよ、ホシノくん。」
アッハイ。
流石、天権…素人のメッキなんて通じない。大人しくしてよ…
「ハァ…―――ん?」
アレ、なんか気配を感じる?
アンノウンやアビスの魔物とかではなさそうだけど、このムズっとする感覚は一体…
「…失礼する、ワシにも天権さまと同じ傘を頂けませぬか?」
「!」
その時、背後から声。露店に並んだのは璃月の服を和服のような改造を施した衣装を纏う男…その傍らには刀を携えている。侍?いや、商人か?
すると、視線に気がついたのかギョロリとした目玉をこちらに向けた。
「某の顔に何かついてますかな?」
稲妻より来たれし謎の剣客、福郎とホシノ…初の邂逅であった。