海灯祭を祝して…!
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次のアプデはモンド中心か… サンドローネはどこ…
――ガンッ!!
『ぐあっ!?』
『クッ!?』
「さて、そろそろ対話をする気にはなったか?」
洞窟の外へミラージュサイズとフードの人影を叩き出した鍾離。実にワンサイドゲームも良いところで、圧倒しながら平和的解決を語るも、その口振りに慈悲は無い。やはり、璃月で神罰殺人に関わっているであろう者たちに怒りを覚えるのは当前で、勢い余れば岩柱で叩き潰してしまいそうだ。
『バケモノ…め!』
「やれやれ、同じアギトでもこうも違うとは…」
大層な大鎌の割に弱い…弱過ぎる。ホシノのアギトとは雲泥の差だ。憑依しているアンノウンもさしたる反撃もしてこない。
このまま戦闘不能にしてしまえば、捕縛は容易いだろう。ミラージュサイズは千岩軍に突き出して、アンノウンのほうは仙人たちに任せれば……む?
「……ぉぉおおぉ!!」
誰か走ってくる?視線を後に向けると青年が跳び上がり…
「――変身ッ!!」
「何ッ!?」
その姿を『異形』へ変えた。
飛びつかれる寸前、シールドを張ると野獣のように悍ましいアギト……いや、似ているが、全く別の存在が鍾離の目に飛び込む。コイツは一体ッ!?
「ガァアAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
「アビスの魔物!? いいや、違う…」
赤い複眼に蟲の触角のような円を描く双角。何より、開閉する口許がより有機的さを際立たせる。ミラージュシリーズとも違う異形なる仮面…『仮面ライダーギルス』がシールドを踏み越え、眼前に立ちはだかり咆哮をあげた。
その登場に気をとられた瞬間をミラージュサイズは見逃さない。
(ギルス…つけてきたのか! まあ、都合が良い!!)
「! 待て!!」
ここぞと、逃げ出すミラージュサイズとアンノウン。追おうにも、ギルスがソレを許さんと唸り続ける。
「仲間を逃がすか。まあ、良い…」
代わりにお前に話してもらうだけのこと。
「GAUッ!!」
「行くぞ!」
★ ★ ★ ★ ★ ★
………その日の夜
璃月港のとある料亭にて。
「さぁさぁさぁ、飲んでくだされ!」
「あ、いやぁいやぁいやぁ、ではありがたく…」
「駄ァ目、フーちゃんは未成年でしょ!!」
『飲めるよ!?』とブーッと抗議する胡桃から、ホシノは酒で満たされたグラスを取り上げた。
豪華な料理が並ぶ丸いテーブルを囲む福郎と往生堂ふたりに他・複数人。すっかり日も暮れて、今日のオークションは終わり迎えたところでふたりは福郎から食事に誘われたのだ。曰く、『祝勝会』並び『決起会』なのだらしいが…タルタリヤが聞いたら苦い顔をすることだろう。 ただ、決起会とはどういうことだろう?
「さ、さ、みなさま今日は会計はワシが持ちます故、好きに飲み食いしてくだされ!!」
今日は好き放題に飲み食いしても、財布はさして萎まない。福郎は小躍りしそうなほど上機嫌だった。
「いやはや、御二方が来てくださり感謝、感謝。ううっ、…涙が止まりませんな。」
世辞が芝居臭いうえに胡散臭いのはさておき、ホシノにとってはある意味都合が良い。彼がアギトであるかどうかを訊ねる機会を自ら用意してくれたのだ…タイミングを窺おう。
「皆様方、今回は祝勝会も含む思わぬ形になりましたが、『決起会』に来て頂きありがたく存じます!! 我等、『運送会社アギト』の新たな門出に、乾杯!」
とりあえず、かんぱー………
―――は?
「「ごふっ゛!?!? ゲホッゲホッ!?」」
思わず啜っていたグラスからむせてしまうホシノと胡桃。いや、なに『運送会社アギト』って!?
そして、なんでとんでもないこと口走ったほうが困惑しているんだ!?
「大丈夫ですか、御二方? もしかして、ワシらのこと何もご存知無いので?」
「ご存知も何も、知りたくてコッチは付いてきたんだよ!?」
「ホシノ殿に伝えた筈…我等は『同胞』であると…」
ぷんすかと怒る胡桃を尻目にホシノは息を整え福郎に向き直る。
「福郎さん、貴方は俺と同じアギトなんですか?」
そして、返ってきた答は…
「如何にも。そして、この場にいる者たち皆がそうだ。」
★ ★ ★ ★ ★ ★
「――『血狂い』? それに、クビにしたって…どういうこと?」
凝光は首を傾げる。群玉閣に北斗を呼び出し、雇っている福郎のことについて聞いてみると、信じ難い言葉が出てくる。
彼女としても、あのオークションで観衆を惹きつけてみせる手腕に加え、あのタルタリヤからの嫌がらせに近い挑戦すら堂々と捻じ伏せてみせる様は感嘆したものだ。
だが、彼と付き合いが長いであろう北斗の評価は自分とは真逆のものだった。
「雇っていたのは今日のオークションが終わるまで。あれは、アタシじゃ手に負えない生粋の血狂いだ。だから、船から身内と一緒に降りてもらったのさ。」
険しい表情は何を見た故なのだろう。並大抵のことは笑って受け入れる彼女が船から叩き出すなんて余程のこと。
「北斗、貴方は何を見たの?」
「…」
―――はじまりは、船団を長距離航行させるための人員を増やそうと考えていたところから。
冒険者協会の助力もあり、人は集まった…集まったのだが、残念ながら腕っぷしはたつものの、まあとんだ『役立たずども』だった。給料に見合う働きはしない、平気でサボるし、暴力沙汰のトラブルが後を絶たず頭を悩ませていた北斗。そんな奴等がライバルの商人から息がかかっていたと知ることになるのは後々のこと…
ある日、ついに腹に据えかねて連中と大喧嘩となった。
「まあ、横柄な連中だから揉めるに揉めた…お互いに手が出るくらいにはな。―――そんな時だったよ。福郎の奴が現れたのは…」
まるで、ふらりと花に誘われた蝶のように争いの場にやって来た。
『あのぅ、求人を出している南十字船団はここで宜しいですかな?』なんて間の抜けた声はその場にいる全員を唖然とした…状況が見えてねえのか? 勿論、数秒後には『役立たず』の大男に絡まれる……だが…
―――「では、役立たずの木偶を捻って見せましょう。」
容易く、彼は大男地面に叩きつけ腕を捻りあげて無力化。そして、刀を首筋にあてがい『首も刎ねますかな?』と一言。これで役立たずどもは震え上がり、我先にと逃げ出してから南十字船団に関わることは無い。
鮮やかな鎮圧劇に北斗は気に入り、福郎を身内ともども迎え入れるに至ったのである。
「最初はうまくやってた……スメール、フォンテーヌ、ナド・クライ…各地をまわりながら、アイツらに商人としてのノウハウ紛いのことは教えたりもした。そう、あの頃はまだ…
―――福郎の奴がおかしくなったのは、稲妻に着いてからだ。」
まるで、何かにアテられたとでもいうのか? 突然の豹変。
刀を握る福郎は『傭兵の仕事』という建前を鑑みても、彼は狂ったように人を斬った、斬り続けた。肉裂き骨断てど止まらず、血の花が大輪に咲き誇る中を刃をもって踊り、死屍累々の山の上で赤に濡れながら笑む。
それだけでは飽き足らず、南十字船団の物資・武器を勝手に稲妻の一勢力である海祇島のレジスタンスに供与するなど、無法の限りを尽くす。
「……そして、アイツは一線を越えた。」
「――一線?」
北斗は語る。福郎が犯した……あまりにも大きな過ちを。