更新です、どぞどぞ……
―――襲撃から翌朝。
「なんと…このような形とはいえ、群玉閣に招いて頂けるとは感激でございます。」
福郎並びにホシノと胡桃は群玉閣に招かれた。テーブルにつく彼等と相対する凝光と甘雨…同席する刻晴は堅い面持ちで対面している。
この男が何者で昨夜に何をしたかは聞き及んでいる……ホシノと同じアギトで、襲いかかってきた野盗を斬り伏せ躊躇いなく命を奪った。飄々とした顔の裏…その隠れた一面では敵と見なした相手に対する非情さを持つ。
(――ホシノくんと同じアギトでありながら、全く違う人間。でも、彼は『神罰殺人』に対する情報を持っている可能性はありうる。)
何としても情報を引き出さねば……
「ああ、最初に申しておきますがワシ、アギトではございますが『神罰殺人』には加担しておりませぬ。恐らく凝光さまの期待に応じた話せることは何一つ無く…実に申し訳ない。」
「!」
先に釘を刺す福郎。成る程、そのわざとらしい言い回しはタダでくれる情報は無いという意思表示…駆け出しなれど一応は商人の端くれか。――ふん、度胸はある。
(――一丁前に天権の私と駆け引きするつもりかしら?)
では、相手が求めるものはなにか?モラか?天権のお墨付きか?
国のトップ相手でも動じない肝っ玉が座る腹の中にはどんな考えがある?
一方の福郎も凝光の狙いを探っていた。
(――一応、牽制はしたが…ならば、あちらは何を求めてくる?)
悪いが自分はお人好しではない。緊急事態やら良心なんて都合の良い言葉には流されない…情報が欲しいならば、吐かせてみせろ。剣が欲しいならば、対価を出してみせろ。
こちらのまだまだ不得手な刀無き舌戦の立ち合い、格段に上手であろう天権はどう切崩してくる?
(――どうする、天権?)
「ちょっと待って、凝光。」
ここで、口を挟んできたのは眉間に皺を寄せた刻晴。んむ?と福郎も彼女へ視線を移す。
「コイツには『殺人』の容疑がかかっているのは知っているわよね?なら、この場で客人として扱うのは不適格だと思うのだけれど?
情報が欲しいなら、千岩軍に引き渡すべきだと思うわ。」
どうやら、刻晴はあくまで『犯罪者』として扱いたいらしい。聞き齧ったところ、彼女はアギト…つまりはホシノを信用していないとか。ならば、同じアギトであるこの冷たい反応も然りか。まして、悪人とはいえ斬ったとなれば尚の事。
あの飛雲商会を騙っていた連中は千岩軍も追っていたとのことで、獲物を横取りされた上に殺されたならば…腸は煮えくり返っているだろう。
「正当防衛を主張するには、無理がある。殺人の他にも複数の傷害…彼に斬られた者の中には未だに生死の境を彷徨っている者もいるのよ。一応、襲われた側というのも考慮してもこれは明確に過剰防衛だわ。」
ううむ、このまま話をさせていれば牢にぶちこまれそうだ。
「お言葉ですが、刻晴様。それは、当事者では無いから言えることで、もうあの時は斬らねばワシらは死んでいた。こちらとて、無我夢中だったもので…」
「逃げる相手の首を刎ねたと聞いたけれど?」
「ええ、無我夢中だったもので…」
『衆生のため』と騙った口がいけしゃあしゃあとよくほざく。同席した胡桃は呆れを通り越し、目を見開き驚愕の顔をしていた。
無論、刻晴も無我夢中なんて戯言をはいそうですかと呑むつもりはない。眉間に更に皺を寄せて詰め寄って……
「―――そこまでにしなさい刻晴。」
しかし、遮ったのは凝光。
「話の本題から逸れている。取り調べは後にしなさい…手続きを踏んだ上でね。」
「…」
ここは取り調べ室ではない。交渉・駆け引きの場…
刻晴は一瞬くってかかろうとしたが、天権からの強い眼差しに『くっ…』と悔しげに席へと戻る。一方の福郎は窮地を救われたとニコニコとしていた。
「いやはや、肝が冷えました。この場でしょっぴかれたらどうしようかと…」
「ええ、ここはあくまでお話の場ですもの。だからこそ、貴方にも誠意ある受け答えをお願いするわ。」
さあ、ここからが腹の探り合い。
切り出したのは凝光。
「まず最初に貴方…神罰殺人に『加担はしていない』とは言ったけれど、『知らない』と言ってない。つまり、神罰殺人についてある程度の事情は把握しているんじゃないかしら?」
「んん……言葉の綾でございますな。ワシやその仲間はアギトですが、ここ最近まで璃月から離れておりました故…」
「そうね、北斗船長からも聞いているわ。貴方を璃月で拾ったのがおおよそ半年前…神罰殺人の噂がたち始めたのもその辺りからよ。」
直接的な答はのらりくらりと避ける福郎だったが、北斗の名前が出た途端に微かにピクッと微かな動揺が見て取れた。それは彼にとって失念していたこと…凝光と前の雇い主である北斗との関係。そういえば、親しい間柄とかなんとか聞いたことがある。ということは、前もって自分の情報を耳に入れているとすれば……
「勿論、『稲妻での話』も彼女は話していた。あの豪胆な北斗船長があんな顔をするなんてね……驚いたものよ。堂々と国ひとつに喧嘩を売るような行為…もし、そこらの商人なら恐れて震えあがるでしょう。」
「む………脅しですかな? 天権ともあろう方が?」
「世間話よ?」
国に喧嘩を売る?
あまりにも物騒な言葉にホシノと胡桃は困惑し、刻晴も事前に話を通してなかったのか『は?』と凝光に視線を向けた。そして、彼女はさらに一歩を詰める。
「これもあくまで個人的な興味の範疇なのだけれど……まだ手許に持っているのかしら?
――稲妻の天領奉行の九条沙羅…彼女の神の眼を。」
★ ★ ★ ★ ★ ★
「ホシノ殿…」
空に浮かぶ群玉閣を不安げに見上げる万葉。
昨夜の戦いのあと、甘雨が訪れ契約…もとい口止めを受けた。ホシノの正体を含め、諸々を口外しないこと。もし違えれば相応の対処が待っていると告げられたが…まあ、相手もいないしする気もない。
(ただ……)
脳裏に過ぎるは月光を背に立つ鬼をようなあの男…福郎。
故郷である稲妻にも妖怪である鬼はいるが、あれとは違う。まるで、魔性…人ならざる域を感じさせる揺らめくような威圧感。衆生のためと嘯き躊躇いなく人の命を奪う残忍さ…
「―――あの刀、まるで…」
「おとぎ話『修羅』のよう、かな?」
「!?」
背後からの見知らぬ声。思わず飛び退くと、視線の先には笠を被る少年なひとり……齢は自分と差は無いだろうが、璃月港では見慣れないこの和装のような出で立ちは…
「稲妻からの追手か!」
「ブー、半分ハズレ。でも半分は当たり…稲妻の人間だけど、僕は君を追いかけ回しにきたわけじゃない。」
身構える万葉に対し、声の主は軽い調子で笠をとる。素顔は美少年といって差し支えない…屈託ない表情は警戒心を和らげさせようとしてくるが、その内心は掴めない。
「『鹿野院 平蔵』…天領奉行の密偵さ。君は楓原万葉だろう?」
「!」
「有名だからね。御前試合で将軍の目の前から堂々と神の目を奪うなんて…稲妻に命知らずは数いれど、そんなことをする人間はそういないだろ?」
天領奉行……稲妻の要職御自ら出張ってきたなんて。
しかし、口振りから何か狙いはあるようだが?
「目的はなんだ?」
「まあまあ、そう睨まないで。とりあえず、話を聞いてもらいたいんだ……
――稲妻で君に負けず劣らずの無法を働いた『アギト』の話をね。」
真・アギト展行ってきました。
凄かったです。(語彙力不足)